そしてFGOプレイヤーの方々、周回お疲れ様でした。
それにしても、センター試験はFGOと世界史Bとのリアルコラボイベントだったのか・・・・・・?というコメントにはとにかく笑った。仕方ないですよね。
狼の遠吠えが響く霧の立ち込める夜の森。黒髪の青年は迫って来る人間だった者から逃げ惑う。
逃げ出してからどれくらい経過しただろうか。撒いたと思い森を出ようとすると遭遇するという場面に何度も出くわし、体力がかなり削られ、恐怖心から吐き気が来ている。
「ハァ・・・ハァ・・・ゲホッゲホッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
『ァァ゛・・・』
少なくとも30分は走っているというのにも関わらず、息切れの一つもしていないのを確認して、人間だったソレには肉体の限界が無いように見えた。人間を止めたからだろうか?
「こっちに・・・」
『・・・・・・』
他の場所と比べても木々が多く暗い場所に入り、左へ右へと移動する。霧のおかげで更に暗い為、しばらくは見つからないだろう。
「スゥー・・・・・・ハァ・・・・・・」
ゆっくりと息を整える。まだ来た方角は覚えている、迷うことは無い・・・・・・
「・・・・・・ふぅ」
「・・・・・・お前、誰だ。」
心臓が一瞬止まる。安心した直後に突如話し掛けられつい体が逃げようと体制を取る。
「待て、落ち着け。お前は誰だ?」
「・・・・・・貴方は誰だ。」
白髪にしわくちゃの肌を持った男性は自分の名を聞かれアブサラム・ウェイトリーと答えた。
「アブサラム・ウェイトリー・・・カーターさんが何度か言っていたような・・・」
「カーター・・・あぁ、お前はカーターの召使いか。何しに来た?ここはお前らのような者が来る場所ではない神聖な儀式の場だ。」
儀式?何やら不穏な単語が耳に入ったが、今はこのアブサラムさんにこの事態を解決する方法が無いか聞いてみることにする。
「追われているんです、化け物に。村から此処まで逃げて来たのですがまだ追われていて・・・。」
「化け物・・・それはどんな姿をしていた?」
アブサラムさんは化け物の話に興味を示す。怪異的な話の為信じてくれるか心配だったがどうやら話を聞いてはくれそうだ。
「腐った死体のようでした。焦点が合わず、喉が潰れているようでした。」
「口は爛れていたか?」
「はい」
アブサラムさんはほう、と笑いながら一人納得しているようだった。正体を知っているかのような素振りに俺は質問をする。
「アレが何なのか知っているのですか?」
「喉が潰れているのは知らないが、
「食屍鬼・・・どうしたら逃げられるでしょうか?何か弱点などは無いのでしょうか?」
そう言うとアブサラムはニヤニヤと笑いながら質問に答える。その少々薄気味悪い笑みは場の暗い雰囲気と合わさり恐怖心を少し煽る。
「お前は食屍鬼から逃げたいのか、成る程な。そうだな、私の持つ屋敷に来い。」
「屋敷?それはどこに?」
「この森だ、・・・着いて来い。」
そう言われた俺はアブサラムさんの後ろに付いていく。道中で食屍鬼に襲われないか心配になって聞いたが、御守りがあるから大丈夫だと言う。
「御守りって何ですか?」
「エルダーサイン、その亜種だ。」
エルダーサインって、聞いたこと無いから亜種とか言われてもな・・・・・・
「具体的な効果は?」
「分かり易く言えば神秘的要素を持つ外敵への御守りだ。これはそういった類の者から身を隠すことが出来る。元は旧支配者などに対して効果を発揮するものだった。・・・・・・これは貰い物でね、カーターの姪の親の物だ。最も、それも誰かから貰った物だったらしいがな。」
旧支配者?何を支配していたのだろうか?
それよりも、このアブサラムさんはアビゲイルの親と知り合っていたらしい。もしかしたらこの人ならアビゲイルの両親の死因を知っているのかもしれない。
「あの、アビゲイルお嬢様の両親に何があったのか知りませんか?カーター様に聞いても教えてくれなかったので・・・・・・」
「ほう、カーターに教えて貰えなかったのか。アイツらは門を潜って死んだ。耐えられなかったから死んだのだ。私は、ただ門を開く方法を教えただけのこと。自殺のようなものだ。」
「っ!・・・門・・・それは、何の門だったのですか?」
俺が興味を持ったのが伝わったのか、アブサラムさんは此方を向き、ニィっと笑う。やはり気味の悪い笑みだ。
「気になるか?」
「・・・・・・はい」
「・・・・・・窮極の門だ」
俺の目的、窮極の門の番人の覚醒。その番人に関係する窮極の門を、この人は知っているのか・・・・・・?しかもアビゲイルの両親は一度、窮極の門を潜っている・・・・・・?
「・・・これは、ふと思ったことなのですが・・・・・・」
「何だ?」
「門があるなら、鍵もあるのですか?」
そう言うとアブサラムさんは全身を震わせながら笑い始める。その姿は恐怖心を煽り、俺を更に不安にさせる。
「ハッハッハ・・・何故そう思った?」
「いえ、単純に扉を開けるには鍵が必要ではと思いまして。その、あるんですか?」
「さて、どうだろうな。・・・着いたぞ、入れ。」
話していたら、いつの間にか小屋に着いていた。小屋はアビゲイルの個室2つ分の大きさで木造、そのボロボロの外見から年季が入っていることが伺える。
「失礼します・・・」
中は予想より散らかっておらず綺麗だった。どうやらアブサラムさんは整理整頓をしっかりとするタイプのようで、本棚には綺麗に全ての本が収まっている。アブサラムさんは何かを持って目の前の席に座る。
「座れ、客に飯を奢る位のことはするさ。・・・まぁ、この貧しい村で出される賄いなど、飯と言える物かは分からんがな。」
「ありがとうございます。」
出されたのはパンに少量のシチュー。味がとても薄いが温かいシチューが汗で冷えた体を暖める。
「それで、お前は何者だ。ただの人には見えないが・・・・・・。お前からは形容し難い臭いがする。」
「えぇっ!?、あ、いや、そんなに臭いますか・・・・・・?」
「違う。いや、確かに汗で少し臭うが、そういう話ではない。」
マジか、今度水風呂で念入りに体を洗っておこう。
「お前からは外なる者に連なる臭いがする。表現出来ない臭いがな。常人には理解出来ないだろうがな。」
「外なる者、そうだ、その外なる者とは何なのですか?」
アブサラムさんは席を立ち、古びた日記のような物を取り出した。
「それは?」
「ウェイトリー家の知恵が詰まった本だ。外なる者だけではない。大いなる者達に関することが記述されている。」
アブサラムさんはそう言いながらもペラペラとページを捲る。やがてとあるページで捲るのを止め、此方にそれを渡す。外なる者と書かれている。
「外なる神、人には理解出来ない言語を用い、人に興味本位で関わることのある存在・・・・・・」
「そうだ、我らウェイトリー家はその外なる神の一柱である一にして全、全にして一なる者の住む場所へ続く門の在処を伝えられている。」
「ウェイトリー家の方々は既にその門を潜ったことがあるのですか?」
「無い。我らのようなか弱い猿では彼の王に会うことは愚か、その門を潜る資格もない。無理に通ろうとすればウィリアムズ共のようになるだろうよ。」
死ぬ。ということだろうか。だが門を潜っていないのならばどうやってウェイトリー家はその先に外なる者が居ると知っているのだろうか?聞いてみた方が良いだろう。
「何故門の先に外なる神が居ると知ることが出来たのですか?」
「ウムルという者がかつてウェイトリー家の下に来たことがあったらしい。その者が伝えていったのが始まりだ。どうやらそのウムルはその外なる者の使者を名乗っていたらしい。」
え、ウムルさんに滅茶苦茶会いたいんですけど。うわぁ・・・まだ生きていればなぁ・・・
「何だ?ウムルにようでも会ったのか?」
「いえ、ただ気になっただけで・・・・・・。それで、門を潜る資格はどうしたら手に入るのですか?」
少しばかり緊張する。これが分かれば俺の使命は果たされるのだ。その方法を実行すれば、俺はやっとシュブニ様の求める者を見ることが出来る。
「資格は与えられる物だ。外なる神から唐突にな。興味を持たれれば、自然といつかは与えられる物だ。」
「つまりは・・・?」
「我らは資格を与えることは出来ない。」
残念だ。これで全て終わったと思ったのだが・・・・・・。いや、まだ可能性はある。シュブニ様が資格を与えている可能性も・・・・・・!
「他の外なる神から資格を貰った場合はどうなのですか?」
「駄目だな。よっぽどのことでも無ければ意味は無い。」
面倒な・・・・・・。良いじゃないか少し位別の資格でも・・・・・・。
「はぁ・・・・・・。これ、読んでも良いですか?」
「好きにしろ。理解出来るのならな。」
許可を貰い、外なる者以外のページも読む。どうやら銀の鍵などついても少しばかり書かれているようだ。あ、もしかして・・・・・・。
「アブサラムさんってカーター様の持つエルサレムの琴を読んだことあったりしますか?メモに銀の鍵、外なる者って書かれていたんですけど・・・・・・。」
「いや、私は知らないな。・・・・・・だが、そうか。奴は外なる者について知っているのか・・・・・・フフ、フハハハハハハ!」
怖いからいきなり笑わないでくれませんか!?
まぁ、だろうなとは思ってもいたが、やはりアブサラムさんでもないか。ならやっぱりあのメモを書いた人物は・・・
俺が思考していると、アブサラムさんは笑うのを止め、しわくちゃの顔で此方を見る。
「気にいった。カーターなんぞに仕えさせるのは惜しいな・・・。お前、しばらく此処を使って良いぞ。」
「良いんですか?」
驚いた。まさか使用許可が貰えるとは・・・。これで外なる神について、門と鍵についても十分に調べられそうだ。
「今夜はここに泊まっていけ。食屍鬼は朝にはあまり目立つ行動をしない。朝になってから此処を出た方が安全だ。」
「あ、ありがとうございます・・・」
親切にしてくれて嬉しい半面、心の底では実験台にされそうな気がしなくもない為、正直不安で仕方がない。せめてもう少し善人っぽい顔をしてくれていればなぁ・・・。
「何、心配するな。ただの親切心だ。」
「・・・・・・」
えぇ~・・・本当で御座るかぁ~・・・・・・?
今回の題名の別名は、アブサラムさん、顔怖過ぎて滅茶苦茶恐怖心を煽る回。
『クトゥルーの呼び声』の帯にFGOのアビーとラヴィニアが写っているようです。帯めっちゃ欲しい・・・
それにしても、ウムルって誰のことだろうなー(棒読み)