Infinite Dendrogram総合掲示板 作:レイティス
次回からは掲示板形式に戻ります。
□■とあるUBMについて
【屍怨霊操 ヘルミーナ】はかつて【覇王】、【龍帝】、【猫神】が覇を競った三強時代に【
動乱の時代において、彼女は最も魂魄の扱いが巧みであり、【死霊王】のスキル《魂魄共鳴》と【屍将軍】の《軍団》により莫大な程の
《魂魄共鳴》により配下のアンデッドとHPを共有し、共有する配下の数を《軍団》で数千に引き上げる。
死に事欠かないその時代において、彼女は戦場跡を漁っては配下を増やし、自身の勢力を増やしていた。
しかしある日、彼女は戦場に残る死体に思いを馳せ、予定より早くに到着し、その場面を目撃してしまう。
【覇王】ロクフェル・アドラスターの振るう一刀が大地を両断し、【猫神】シュレディンガー・キャットの数百の分身を余さず消滅させた瞬間を。
その余波だけで数万のHPを減らした事にも気付かず、ただただ戦慄の内にあった。
──一体一体が最高峰のアンデッドにも勝るほどの【猫神】が数百と消し飛ぶなら、私もアンデッドごと滅ぶのではないか?
億を超える共有HPを持つ死の王は、長く忘れていた死の恐怖に思考を埋め尽くされた。
一刀の元に全てを切り裂く【覇王】の力も、それと長く争い決着が付かない力を持つ【龍帝】の魔術も、先程の絶技を持っても滅びぬ【猫神】の異能も。
どれと相対しても私は滅ぼされてしまう。どれかの元につかなければ。
そして、彼女はどの勢力に降るかに悩み、各陣営についた場合の未来図を想定し──即座に決断した。
あの地を割った一撃が、自分に向くことがこわい。
【龍帝】についた場合でも、【猫神】と共に行く場合でも、【覇王】の
陣営を決めた彼女は拠点を大陸西部の研究所に移し、【覇王】に対する手土産を入手する準備を整えていた。
彼女が狙うはアドラスターの同盟国レジェンダリアの国家元首
<アクシデントサークル>に代表される地の利が理由なのか侵略せずに同盟国としている国のトップを、ひいてはその国を明け渡せばそれは何よりの土産となるだろう。
アンデッドを増産し、大魔術のために怨念を溜め込み、いざ【妖精女王】に襲撃を掛けようとした夜に──【猫神】シュレディンガー・キャットの襲撃を受けた。
無数のアンデッドと地の利はあれど【覇王】、【龍帝】と並び称される無尽蔵の【猫神】の前に彼女は怨念を暴走させ、人の理を外れた。
職業により種族がアンデッドとなっていたティアンから、真正のアンデッドへと。
程なくUBMと認定されたそれは今ではダンジョンと化した研究所に籠り、生への執着と【猫神】への憎悪を募らせ、力を蓄えて行った。
《魂魄共鳴》が変化し周囲のアンデッドモンスター全てのHP・MP・SPを共有する《終魂輪廻》。
《軍団》が変化し領域内で死亡したあらゆる生物を即座にアンデッド化し配下に置く《死廃領域》。
UBMとなったことで習得した配下のアンデッドモンスターの数に応じて自身をあらゆる攻撃から防ぐ《霊怨障壁》。
それらのスキルで
戦闘タイプの<超級>でも相性が悪ければ敗れるほどのUBMだが、それは逆を言えば───
◇◇◇
□【狩猟王】ケイ・ローン
「レベル76、詳細ステータス《看破》不可能! 古代伝説級だねこりゃ!」
「雑魚アンデッドたちが急に倒れなくなりましたー!」
「…取り巻きの方のHP見るに全共有してるなこれ。ケイもファルマも出し惜しみ止めろ。UBMとか予想外のサプライズだぞオイ」
「むしろロートスこそだろ!」
アバターとはいえ同族の誼で
念のためオーナー…【
幸い、この状況を打破する手はある。必要なのは時間と注意を逸らす手段、そして最終的な打点。
そこまで考えて戦闘に集中するべく、【星輪馬具 サジタリウス】の能力により矢を取り出す。
矢筒型のエルダーアームズ、サジタリウスの特性は「特殊矢の生成」。
初撃に使用した隠密不意打ち用の《黒星の影矢》、相手の大魔法を相殺した矢速重視の《彗星の光矢》でもなく、
「《恒星の爆矢》、《アローレイン》」
爆破能力を持つ《恒星の爆矢》を番え、放つ。
【狩猟王】のパッシブスキル《矢速向上》レベルEXにより超音速に至った矢がその矢速を《神域の猟技》にて攻撃力に変えて飛来する。
《アローレイン》により百に拡散した矢が狙い違わずアンデッドの下半身を貫き、爆砕する。
足を失ったゾンビは移動手段が這いずりのみとなり、その速度は大幅に低下する。
「体力は削り切れずとも脚部破壊で足止めはできるみたいだぞ!」
「りょーかってうわぁ!? 這いずりゾンビきもい!」
足を失っても上半身のみで這いずるアンデッドは確かに一種のホラーだが、移動速度は確実に落ちている。
HP全損を狙わないのなら手段はいくらでもある。
「《ナミング・デトネーション》!」
「《ベノム・エクスプロージョン》!」
「《流星の雨矢》、《アローレイン》!」
「「「《アローレイン》!」」」
麻痺で、溶解毒で、弓矢で相手の足を遅らせる。
人馬種族の斉射も加わり、千を超えるアンデッドの群れはハリネズミのようになっていた。
攻撃の合間に前衛であるファルマとルビアにアンデッドは群がるが、ルビアはフヨウの【ポルックス】により空中へのナミング&アウェイに徹し、ファルマはスキルによるステータスによりそもそもアンデッドを近寄らせない。
【毒神】のスキル《薬毒自在》により毒の効果を反転した今、必殺スキルで作製された劇毒により強力な全ステータスバフとリジェネを受けている。
【屍怨霊操 ヘルミーナ】にこそ黒いオーラにより攻撃が通らないが、周辺のアンデッドの足止めは問題なく行えていた。
特に【麻痺】【衰弱】で四倍化しているAGIに関しては3万を超えており、今も最上位の《ジャイアント・テラー・ゾンビ》相手でも一切攻撃を受けず【麻痺】にしてしまった。
【屍怨霊操 ヘルミーナ】も闇属性魔法で攻撃をしてくるが、相手は魔法型なのかAGIの差は歴然であり、発動後から《彗星の光矢》により迎撃が可能である。
やはりアンデッドの統率・強化に特化しているUBMらしい。
「おい、このままじゃやばいんじゃないのか?」
「一か八かアンデッド共と一緒に強行突破を……」
UBMの登場に楽観していた傭兵たちも、このままではジリ貧と判断したのか行動を起こそうとしていた。
……しかしその前にこちらの足止めの成果が発動した。
「
ロートスのエンブリオ、【招彗天罰 ネメシス】の必殺スキルの宣言と共に、アンデッドに対し世界が牙を剥いた。
◆◆◆
■【大死霊】メイズ
「う、動かん・・・っ!?」
司教の男が杖を振り上げ未知のスキルを宣言した直後、
その直後に身体に力が入らなくなり、UBMの援護どころか動くことすらままならなくなってしまった。
アンデッドも同様のようで、UBMに侍る少数の最上位アンデッド以外は散々たる有様となっていた。
あるゾンビはまともに歩くことができなくなり、石に躓いたあと這いずることなくそのまま肉が崩れ落ちた。
あるスケルトンはぴくりとも動くことがなくなり、緩慢と動く他アンデッドにぶつかってばらばらとなった。
あるレイスは魔法を放とうとしても術に失敗し、運悪く発動した<アクシデントサークル>により発生した浄化魔法によって昇天した。
「ど、どうした・・・!? なんでアンデッドが動かないんだ!?」
「わからんがとにかくやばいゾォ! いつでも逃げれるようにしとけェ」
しかし、何故か他の傭兵たちには影響がないらしく、混乱している。
──「アンデッド」のみを対象としたデバフなのか?
原因を考えた私は即座に自身の詳細ステータスを開き、──その結果に絶望した。
メイズ
レベル:100(合計レベル:500)
職業:【大死霊】
HP:9305(-1136)
MP:45312(-1136)
SP:1611(-1136)
STR:851(-1136)
AGI:614(-1136)
END:1947(-1136)
DEX:1385(-1136)
LUK:100(-1136)
全ステータスに対する強力な固定値減算。
それがこのスキルの結果であり、アンデッドが手も足も出なくなる結果でもある。
ステータスがマイナスとなればまともな行動は望めず、特にこの
「お、おい! 今度は霞がでけぇぞ!」
「魔力散しの魔道具だってあるってぇのに!」
「───これだけの数を範囲内に捉えるのは初めてだ。これだけ数が多ければ」
その死因とはこの地に満ちる魔力がランダムな魔法を発動させる自然現象。
「──【ネメシス】のモチーフの通り、お前らを絶滅させるぐらいわけはない。」
《アクシデントサークル》によって発動した大魔法《イマジナリー・メテオ》が、
◆
「クエスト完了、全員、
【大死霊】メイズは声を振り絞って即座に傭兵たちのクエスト終了を宣言し、クエスト中には使用を禁じていた緊急避難用のジェムの使用を行わせる。
絶叫に我に返った傭兵たちが次々にアイテムボックスからジェムを取り出し、放り投げる。
ジェムが発動した場所では先程のものより小規模ながらも続々と薄霞が漂い始める。
「【アクシデントジェム】……【
傭兵たちがカルディナで購入した<アクシデントサークル>を人為的に発生させる【アクシデントジェム】。
それはとある<マスター>がカルディナに販売した作品だったが、メイズにとって迫る死を回避できる可能性があるものならなんでも構わなかった。
しかし、隕石の落下までのタイムラグに動く者は他にもいた。
一人は【狩猟王】。しかし狙いはメイズを含む傭兵たちではなく、
「《彗星の光矢》二十四、──《
必殺スキルの使用と同時に矢筒……【星輪馬具 サジタリウス】が一本の矢に変化する。
矢筒の中に入っていた二十四本を一本に束ねた星矢構えた先に狙うのは【屍怨霊操 ヘルミーナ】。
隕石によりアンデッドの数が減ったタイミングで相手の首魁を狙撃するタイミングを伺う。
『《DEEEDDDDDDDRYYYYYYY───》』
そしてもう一人はその鏃を向けられた【屍怨霊操 ヘルミーナ】だった。
魔法の《詠唱》と共に莫大な量のMPし、隕石を迎え撃たんとする。
《終魂輪廻》により数百万に至る共有MPの半分を費やし、霊廟や動けなくなった周囲のアンデッドの怨念を破壊力に変換する。
かつて【猫神】の分身を消し飛ばす際には怨念の制御に失敗してしまった広域殲滅魔法《デッドリーノヴァ》を、今度は万全の状態で放つ。
「──《孤毒の坩堝》」
『《NOOOVAAAAAA──!?》』
直前に、短剣を《霊怨障壁》により骨身で弾いた途端に《終魂輪廻》による共有が解かれ、今度は《魔法威力拡大》分の消費MP不足により術式は失敗した。
その事に困惑し、次の手を打とうと動こうとした時、上空から《イマジナリー・メテオ》が炸裂し、
「──《ソニックショット》」
毒の影響か隕石によりアンデッドが全壊により減っていることによってか薄れていた《霊怨障壁》を貫通し、超々音速で射出された矢が【屍怨霊操 ヘルミーナ】の頭部を破壊した。
◇◇◇
【<UBM>【屍怨霊操 ヘルミーナ】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【ロートス・バル】がMVPに選出されました】
【【ロートス・バル】にMVP特典【操怨外套 ヘルミーネ】を贈与します】
「やったぜ」
「構成段階で若干覚悟してたけど初UBMでこれは悔しいなぁ」
「いやお前ら……こちらとしては目標に逃げられてクエストも失敗だってのに…」
UBMの討伐と《孤毒の坩堝》によりHP共有が解かれたことによりアンデッドが光となり消え去り、霊廟前の広場にはマスターと人馬種族、そして<アクシデントサークル>により死亡、あるいは【気絶】した傭兵だけが残った。
しかし、傭兵たちの人数は半分ぐらいであり、首謀者の【大死霊】メイズの姿もない。
運良く(メイズ以外の傭兵が)<アクシデントサークル>によって転移魔法が発動したのかそこには何も残っていなかった。
「すまない、首長さん。相手を取り逃がしてしまった。秘宝に関しては残った傭兵の物品とこちらから補填させてもらう」
「いえ、こちらこそ身内の凶行を止められなかった責任があるので・・・」
結局、秘宝の奪還のクエスト失敗の代わりとして人馬種族が代々仕えている【妖精女王】がクエストを出す時は優先的に受けて欲しいということで決着した。
この事件をきっかけに妖精郷の宮廷に渦巻く政闘にレジェンダリアクランランキング第五位、<星を見る者たち>が関わっていくが、それはまた別の話。
◇◆◇
□■???
【獅吼錯御 アコニオン】
最終到達レベル:61
討伐MVP:【傭兵王】ジグソー Lv92(合計レベル592)
<エンブリオ>:【永輪流転 ウロボロス】
MVP特典:伝説級【獅哮巨剣 アコニオン】
【屍怨霊操 ヘルミーナ】
最終到達レベル:76
討伐MVP:【司教】ロートス・バル Lv100(合計レベル 500)
<エンブリオ>:【招彗天罰 ネメシス】
MVP特典:古代伝説級【操怨外套 ヘルミーネ】
【死樹界 モーメント・デイ】
最終到達レベル:22
討伐MVP:【砲撃操縦士】グラン Lv100(合計レベル 462)
<エンブリオ>:【無貌神晶 ナイアーラトテップ】
MVP特典:逸話級【死樹果実 モーメント・デイ】
【酷氷鱗鮫 フォルネイギル】
最終到達レベル:53
討伐MVP:【鍛冶王】村正宗 Lv52(合計レベル 552)
<エンブリオ>:【夢幻鍛槌 モルフェウス】
MVP特典:伝説級【酷氷鱗鮫完全遺骸 フォルネイギル】
【大魔國 モレク】
最終到達レベル:79
討伐MVP:【天将軍】テスタメント Lv105(合計レベル 605)
<エンブリオ>:【白虹天冠 ハイロゥ】
MVP特典:古代伝説級【昇天魔角 モレク】
「ウム。やはり<超級><超級職>が増えると<UBM>の討伐ペースも上がるな。これが好循環になるといいが」
無数の情報ウィンドウが流れていく空間で管理AI四号、ジャバウォックは感嘆の声を上げた。
<UBM>の討伐状況報告の確認をしているのは彼の趣味でもあるが、調整のためでもある。
地球時間にして約二か月後に控える<Infinite Dendrogram>のアニバーサリーイベント、ひいてはその際に投下を開始する<SUBM>達のためでもある。
<マスター>は彼をして良い意味で予想を超えて<UBM>の討伐を行っている。
ジャバウォックが自らデザインして投下した<UBM>、条件を満たして自然と"成った"ために認定した<UBM>、あるいは<マスター>増加前には存在こそ確認されていたがティアンが放置していたような<UBM>。
多くの<マスター>は<UBM>に蹂躙されるが、彼ら管理AIが目を掛ける者も、そうでない者にも最近は<UBM>を討伐する<マスター>が増えてきている。
圧倒的な力により、卓越した技巧により、鬼謀極まる戦術により、そして何より<エンブリオ>の進化により。
様々な要因で増加し、控えている分も含めると膨大な<UBM>が枯渇することはないだろうがこれは嬉しい悲鳴だ。
「この分なら、<SUBM>の戦闘は期待できるものとなるだろう。
ジャバウォックはそう呟くと、データ解析のため対<UBM>の戦闘記録の閲覧を続けるのであった。
Episode End
説明しきれなかった解説:
《
ロートス・バルのエンブリオ【招彗天罰 ネメシス】の必殺スキル。
「ワールドの範囲内で最も数が多い種族」の任意対象に対し、対象の全ステータスを「対象の種族数」と同じだけ固定値減算する。
少数精鋭には効果が薄いが大軍を機能不全にする特殊広域制圧型必殺スキル。
多分各国に一人ぐらいはいるであろう戦争に出したらやべースキル。
上昇手段の少ないLUKのマイナスが大きく、実力だけではどうにもならないレジェンダリアでは特に強力。
《
ケンタウロス兄貴ことケイ・ローンのエンブリオ【星輪馬具 サジタリウス】の必殺スキル。
矢筒内に存在する矢を一本に束ね、効果を全て重ね合わせた矢として放つスキル。
使用後一日の間エンブリオの使用ができなくなるデメリットがあるが、今回の《彗星の光矢》の場合一本当たり矢速+30000の効果があるため、合計矢速にして70万越えのAGIを持つ矢を放てる。
《孤毒の坩堝》
【毒神】ファルマが開発したスキル。
相手に毒を与えると共に使用することで、対象の「従属キャパシティ」と「パーティ枠」を大幅に減少させるスキル。
このスキルにより《死廃領域》の支配範囲が縮小し、HP・MP・SP共有が解かれてしまったのがヘルミーナの敗因。
減少量は毒の強度に依存するが、【毒神】ファルマが使用した場合、【将軍】や【従魔師】系統超級職でもないとキャパシティもパーティ枠も「0」となってしまう。
ついた別名が「お前もソロスレ住人だポイズン」
なお当のソロスレでは「てめーソロスレ卒業しただろーが!」とツッコミを受けた。
【招彗天罰 ネメシス】
<マスター>:ロートス・バル
TYPE:ワールド 到達形態:Ⅵ
能力特性:強大対象デバフ
スキル:《陽食結界》《星雲乱盾》等
必殺スキル:《
モチーフ:地球における大量絶滅を説明するために仮定された仮説上の太陽の伴星ネメシス
備考:同名別モチーフのエンブリオが将来的に出てきそう。
「最大ステータス半減」「最大合計レベルの対象からの防御」等強い・多い対象に対して強い。
どうしてメイデンじゃないんだ・・・?
【星輪馬具 サジタリウス】
<マスター>:ケイ・ローン
TYPE:エルダーアームズ 到達形態:Ⅵ
能力特性:特殊矢生成
スキル:《彗星の光矢》《黒星の影矢》《流星の雨矢》《恒星の爆矢》等
必殺スキル:《
モチーフ:黄道十二星座の一つ、射手座の別名サジタリウス
備考:矢筒から様々な効果を持つ特殊矢を生成するエンブリオ。
1本ずつ生成する他24本セットで生成することで消費SPが割引されたり。