闇の帝王の気まぐれ   作:ベルガシード

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ベルガシードです。
大分キャラ崩壊してますのてご了承ください。


ジルとして、ロングボトムとして

 

私の名前はジル・ロングボトム。

もうすぐ一歳になる、イギリス人の赤ちゃんだ。ただ、普通の赤ちゃんと違うのは、「日本人として生きてきた記憶」をもつこと。そして——

 

「ほらジル、シャボン玉だよ。綺麗だろう?」

「ちょっとフランク、いくらジルが好きだからって作りすぎですよ。今夕食作ってるんですから…」

「まあまあお義母さん、私達騎士団の仕事で余り遊んでやれないんだから、たまにはこうやって遊ばせてくださいよ」

「はあ全く…『エバネスコ!』」

 

シャボン玉のいくつかが消える。

 

「うえーーん、えーーん」

「ほらお義母さん、泣き出しちゃったじゃないですか」

「はぁ…ごめんなさいねジル。ほら、元気だして」

 

杖を振って新しいシャボン玉を作ってくれた。きゃっきゃと喜ぶ私。

そう、私が今いるのは、世界的に有名かつ私の大好きなシリーズ、ハリー・ポッターの世界なのである。それも作中でかなりの重要人物であるネビル・ロングボトムの立ち位置に。

初めて気づいた時は驚いたけど、さらに不思議なのは私がネビルではなく「ネビルの立ち位置にいる女の子」、つまり別人となっている事だった。そのせいで先にも書いたように名前は「ジル」となっている。

このことに気がついた時の私の心には驚き、恐怖、不安、そして少しの喜びと興奮があった。だって、死んだと思ったら一番好きな作品の登場人物に生まれ変われたんだよ?これだけでも有難いと思うべきな気がする。

まあ、魔法族の暮らしも楽な訳では無いんだけれど。

さっき両親が自分で言ってたように、両親たちは「不死鳥の騎士団」と呼ばれるレジスタンス組織に所属している。知らない人たちのために簡単に説明すると、闇の帝王・ヴォルデモートの一味に対抗するため、ホグワーツ現校長アルバス・ダンブルドアが作った組織だ。まあ闇の魔法使いに対抗する組織とは言っても公式の組織ではないため、できるだけ活動は隠密に行う必要がある。とくにうちの両親は優秀な魔法使いでかつ闇祓いなので、様々な任務に必要とされあちこちを飛び回っている。娘としてはそれが誇らしい(と思っていることを誰も知らないが)反面、しょっちゅうどちらか(或いは両方)いなくなる両親に少し寂しさも感じていた。

話を戻すと、そういう両親がいない時には、私は原作にもいたネビル——この私ジルの「ばあちゃん」、オーガスタ・ロングボトムに面倒を見てもらっている。そしてこのばあちゃんがまたしんどいのである。闇祓いとして優秀な息子に誇りを持ち、そしてその娘である私にも多大なる期待を寄せていた。てかまだ私一歳にもなってないし。期待する方がおかしくないか?この前風邪を引いた時なんか、耳元で

 

「ジル、貴方は誇るべき父をお持ちの将来立派に育つであろう、いや育つ娘なのです。気を確かにお持ちなさい」

「頑張りなさい。貴方はロングボトムの名を継ぐ者なのです」

 

とか何とか延々と囁かれてましたわ。はっきり言って怖いし不気味だ。交番とかあったら訴えていいレベルだと思う。てかそもそもそんな事言われるほど死にかけてないし。

そもそも、現代人の私にはこういう「家の誇り」みたいなのがいまいちピンとこない。特に私みたいな境遇なら尚更だ。

とにかく。こういうことがあるので私はばあちゃんが苦手だ。ネビル、若干馬鹿にしててすまん。

 

でも、その反面、嬉しいこともある。

 

「ジル、もう話せるようになったのか?早いな~」

「さっすが私たちのジル!」

「そりゃそうよ、ロングボトムの名を継ぐんですから」

 

数日後。

ちょっと喋っただけで、両親とばあちゃんは喜んでいた。特にばあちゃんなんかは、嬉しさのあまりか涙ぐんでいた。それ程かなあ?別にこれ魔法でも何でもないし、殆どの赤ちゃんがやってる事なのに。

でも…嬉しかった。始めて「親」に褒められて。

私には親がいない。

物心ついた時にはもう居なかった。今みたいに喋れるようになる頃に既に施設にいた。何で居なくなったのか、それは分からない。事故か何かで死んだのかもしれないし、育てる程の余裕が無かったのかも。或いは…捨てられたのかもしれない。

多分、その理由は永遠に分からないだろう。転生してしまったのでは尚更だ。だから私は、友達を何より大事にしてきた。友達が好きだった。友達といると、何より幸せだった。それは、両親の代わりに友達を心の拠り所にしていたからなのかも。前世で死んだのだって、トラックから友達を庇ったからだった。友達のために死ねて幸せ…みたいに思ってしまっていたのかもしれない。

けれど、始めて血の繋がった人たちに褒められると、何だか、友達に褒められるのとは違う喜びがあった。なんというか、嬉しいと誇らしいの中間のような…言葉で言い表すことは出来なかった。ああ、これが親に褒められるってことなんだと、何だか不思議な気持ちになった。そして、そう褒められるたびに思えるのだ。

 

「私も、ロングボトムの家の名に恥じない子になろう」

 

って。いきなりカッコつけてなんだと思うかもしれない。もしかしたら、褒められる自分に酔っているだけなのかもしれない。それでもそう思えるのだ。ばあちゃんの言葉がどうとか関係なく。そしてそう思える自分が、何だかこの世界に居場所を見つけたような気がしていた。例え、転生した存在だとしても。

頑張ろう。

胸を張って、

 

「私は、ジル。ジル・ロングボトムです!」

 

て言えるぐらい、強く。

 

* * * * *

 

「「Happy Birthday to you,Happy Birthday to you,Happy Birthday dear Jill…Happy Birthday to you!」」

「おめでとう!ジル!」

「おめでとー!!」

「しっかしジルも一歳かぁ。早いなあ」

 

アルジー大叔父さんが感慨深げに言う。

 

「でもまだまだ小さくて可愛いなあ」

「小さくてもちゃんと成長していますよ、叔父さん」

「そうですよ、もう喋れるようになったんですから」

「本当なのか?」

「まあまだちょっとですけどね」

「そりゃそうですよ、なんたってジルですからね」

 

母がクスクス笑い、ばあちゃんが誇らしげに笑った。

とうとう私も一歳になった。

嬉しい。

けど、怖い。

その日が来ることが。

一歳のハロウィーンの後が。

ネビルの子供時代に影を落としたあの出来事が。

堪らなく、怖かった。




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