光の一族と光を目指し歩む者達が力を合わせ、紡いだ『希望』という大いなる光に包まれ、遥か昔に忘れ無くした『ナニ』かが満たされていくような充足感味わいながらを消えた暗黒の支配者が居た。
しかし彼は暗黒の支配者。
たとえ光に満たされようと、たとえば無くした『ナニ』かを思いだそうと彼は暗黒の支配者なのだ。
この世に暗黒が、闇があるかぎり暗黒の支配者は何度でも何度でも甦る。
そして甦った彼が光に目覚めることも、無くした物を取り戻すことも、歩んできた道を後悔することもない。
それは彼が暗黒を統べる者だから。
なぜなら暗黒が、闇が彼を求めて放さないから。
なにより彼が暗黒を愛し、光を憎む者だから。
誰もが恐怖と畏怖の念を込めて彼の名を呼ぶ
『暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人』と···
~
弱肉強食という言葉をそのまま当てはめたようなこの世界では怪物と人が命を掛けて戦い、互いの生活を奪い合っていた。
そんな世界の人々が古代林と呼ぶ場所、その奥に巨大か蜘蛛の巣が張り巡らせた場所がある。
そこには無数の卵の殻とたった一つ未だ産まれてな黒色の卵があった。
~中~
(此処は・・・いや、此処がなんにせよ一先ずはこの窮屈な場所から出ることが先決か)
彼が目を覚ましたのは狭く球体状の何かの中だった。
自身が暗黒に魅いられてからほんの数度経験したどの蘇り方とも違う感覚と状況。
それでも彼が戸惑うことなく行動に出来たのは今に至るまでの数々の強敵と戦いとそれにより培ってきた経験があってこそかもしれない。
身を捩る
腕を伸ばす
足を動かす
目を凝らす
五感を研ぎ澄ます
嘗ての姿とは身体を動かしたときの感覚が違う。
普通ならば大きく戸惑う『それ』も彼にとってはたいした問題ではない。
そうこうして動くうちに自身を覆っていた『ナニ』かが砕け、彼は闇に閉ざされた空間から外に出ることに成功した。
(地球でも暗黒宇宙でもない場所か・・・)
彼の眼前に広がるは広大な大地は地球を含め、彼が降り立ったどの星とも違うものだった。
そして辺りに散らばる大小様々な骨や生物の残骸は怪獣には遠く及ばないものの地球人と比べたら大きく、その形状は怪獣に近しいものがチラホラあった。
(別の宇宙か、はたまた余が興味を示さぬ程に塵芥に等しい果ての果ての星か・・・蘇った場所が何処かなどどうでも良いことだ。 しかしどおりで動きにくいわけだ・・違和感の正体はコレか・・・)
周囲を見渡し、未知の地と知ってなお彼にとっては些細な事でしかなかった。
そんな彼は初めて自身の姿を認識しき、かつてと勝手が違う理由を把握した。
彼の姿は人々が『ネルスキュラ』と呼ぶ大型の蜘蛛だった。
(ククク・・フッ、グァッハッハッ!!)
嘆くでも憤るでもなく豪快な笑い声が木霊する。
(暗黒を支配した余が脆弱で吹けば飛ぶような虫けらになるとは中々に面白い!!)
彼が言葉を放つ度に闇が空を覆う。
(良いだろう・・・余にとって姿などたいした意味はない。 暗黒の巨人であろうが、怪獣であろうが、それが脆弱な虫けらであろうが余が暗黒の皇帝であることに変わりない!!)
空は暗雲に覆われ、闇が彼を取り巻いた。
次第に空は晴れていき、取り巻いていた闇も消えた。
時間すれば数十秒、その一瞬の内にネルスキュラとなった彼の白色の甲殻は闇のように漆黒に染まり、不気味な橙色だった場所は血のように紅くなり、半透明な複眼は紫色へと変わった。
(余は皇帝!! 姿がなんであろうと余の目的はかわらん!! この世界も暗黒へと変えるまでだ!!)
後に大蜘蛛皇帝と呼ばれるネルスキュラ誕生の瞬間である。