1.カテゴリーエラー
□霊都アムニール 【従魔師】フィルル・ルルル・ルルレット
「はあ、デンドロやめよっかな」
このとき、俺は確かにデンドロをやめようかと思い悩んでいた。
別にリアルすぎるモンスターにやられたわけでも、ほかの悪質なプレイヤーに何かされたわけでも、NPCが俺に冷たいというわけでもない。むしろ、NPCはかなり良くしてくれたし、最初はプレイヤーと勘違いしていたくらいなのだが(閑話休題)
「いきなりこれは挫けるなあ」
俺は自分の左手の甲を見つめる。そこには孵化したばかりのエンブリオ、彼だけの
<エンブリオ>はプレイヤーの行動パターンや得られた経験値、バイオリズム、人格に応じ孵化し、無限のパターンに進化するもの。
色違いでもパーツ違いでもなく、固有スキルも含めて真の意味で無限のパターンに進化する。プレイヤーによって真の意味で千差万別化するオンリーワン。アイテムや装備という枠を超えた相棒だと管理AIのチェシャは言っていた。
そして、チェシャは俺にとって大事となるエンブリオの種類についてこうも言っていた。
「プレイヤーが装備する武器や防具、道具型のTYPE:アームズ
プレイヤーを護衛するモンスター型のTYPE:ガードナー
プレイヤーが搭乗する乗り物型のTYPE:チャリオッツ
プレイヤーが居住できる建物型のTYPE:キャッスル
プレイヤーが展開する結界型のTYPE:テリトリー
あとほかにもレアカテゴリーがいくつかあるよー」
そう確率は五分の一。
確率で言えば外れる可能性のほうが大きいが、エンブリオの性質上、望むTYPEのエンブリオが生まれると思っていたし、逆にそうではないTYPEが生まれる可能性を失念していた。
ちなみにチェシャが言うようにレアカテゴリーが生まれる可能性もあったため、厳密には確率は五分の一ではないが、自分からレアカテゴリーが生まれるとは思っていなかったし、望んでいたTYPEも、実際に孵化したエンブリオもレアカテゴリーなどではなく通常カテゴリーに含まれるものだった(閑話休題)
望むTYPEに合わせて転職をしていた俺にとってこれは由々しき問題だった。なんならエンブリオが孵化する前に【従魔師】のジョブを選んだのも、孵化するエンブリオのTYPEを誘導しようとしたものだ。
しかし、現実とは非常なものだ。
そもそも、俺がデンドロを始めたのは現実にはいない怪物を見たかったから。さらに言うなら自分から生まれた
そう、俺は
それが違うTYPEのエンブリオが生まれようものなら少しは挫けるというものだ。しかも自分から生まれたエンブリオの姿を確認できないというのも大きい。
自分というものからどんな
「まあ、大金も懸けたわけで、ゲームとしても文句のつけようもないし、いつまでもグジグジ言ってもしょうがないしな」
<Infinite Dendrogram>は売りとなる四つの要素がある。
一つは完全なるリアリティ。
五感を完璧に再現する可能。
二つ、単一サーバー。
仮に億人単位でも全プレイヤーが同じ世界で接続可能。
三つ、個別選択可能なグラフィック。
現実視、3DCG、2Dアニメーションの中から選択可能。
四つ、ゲーム内時間の加速。
ゲーム内では現実の三倍の速度で時が進む。
このような破格のゲームの機器の価格が日本円にして1万円前後という値段設定だったのは一顧客としてうれしいことだが、残念ながら俺は初日には買えなかった。
そもそも
ひとつ前の<NEXT WORLD>は俺もやったが、
正直、<Infinite Dendrogram>の発売日当日に行われた全世界のメディアでの発表は顧客を馬鹿にしているとさえ思ったものだ。
…次の日にそれは大きく裏切られ、その日のうちに<Infinite Dendrogram>を手に入れゲームを行うために、学生の分際で定価の三倍のお金をつぎ込んだアカウントがこちらになります(閑話休題)
「まあ、頑張りますかね。しかし、このスキルはどうやって戦えばいいのかねえ?」
俺は困惑したように
勢いで書きました。気になるところがあればいってください。
原作0話を参考に作りました。ちょくちょく引用がありますがご自愛を。