"軍団最強”の男   作:いまげ
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決着です!


15.【浄穢境界 ヨモツヒラサカ】

□コルトス草原 【獣戦鬼】フィルル・ルルル・ルルレット

 

「死んでくれるか…だと?」

「そうだ」

 

ノスフェラは俺の目を見据え、肯定した。ノスフェラのそんな態度に腹をたて、掴み掛かろうとし、断念した。

 

いまの俺には足がない。ノスフェラに掴み掛かることはできず、最早死を待つしかない身。どうやっても勝つとは言ったものの俺自身には勝つ手段がない。

 

俺の【アンフィテアトルム】は破格のステータス上昇を生み出すことができる。しかし、そこには明確な弱点が存在する。

 

 それはパーティーメンバーの存在。スキルがパーティーメンバーに依存しているため、戦力がメンバーに極端に左右される。現にパーティーから恐骸が失われたことで、俺のステータスは半減している。

 

 さらに虎丸達のステータスも減少しているだろう。衰弱しているとはいえ、相手は伝説級UBM。虎丸達で攻撃させても返り討ちになるだけか。…なら。

 

「…それで奴に勝てるのか?このクエストをクリアできるのか?」

「確率は半々…かな。ただこのまま続けるよりも勝ち目はある。一度見せた《デッドリーミキサー》も二度は通用しないだろうしね。」

 

 …だったら、仕方ないか…

 

「この命もらってくれ!」

「…ありがとう」

 

 ◇

 

 深手を負いすぎたか

 全くやってくれる

 人間どもめ

 ここまでの大傷を負ったのはいつ以来か

 能力上、傷を負えば負うほどスキルを強くできるとはいえだ

 連戦が効いているか

 最初の集団戦で生命力(HP)を半分まで削られ、途中で幾分か回復したが、それでも今の戦闘で残り十万もない

 しかし、あれ(・・)から逃げるためにここまで来たというのに、これでは…

 だが、このままやられることはない

 やつらの手は知り尽くした

 男の方は強力な身体能力(ステータス)を持っているが、今は足を破壊し、まともに動くことすらできないだろう

 骸骨の方は強力なアンデットを有していたが、そいつも既に破壊している

 あとは破壊エネルギーの放出にのみ気をつけていればよい

 乱戦の中ならいざ知らず、距離のある今の段階でそんなものは通用しない

 この距離なら口腔からの必殺の咆哮(ブレス)で破壊エネルギーごと破壊(・・)できる

 手掌からのモノとは違い威力が桁違いのため、あの骸骨を骨ごと消しつくすだろう

 もはや焦る必要は…

 なんだあの人型の怨念は!?

 

 ◇

  

 【浄穢境界 ヨモツヒラサカ】。TYPE:アポストルwithキャッスルの第六形態に到達したノスフェラ・トゥのエンブリオ。

 

 アポストルの特性は 部分的に“世界”を掌握し、己を利する“世界”へと作り変える支配者の力。強力な能力のの代償に、アポストルは共通してステータス補正が皆無となるが、“世界”を箱庭のように切り取り支配して改変する世界掌握能力の前には些細な問題といえる。

 

 キャッスルの特性は一概には言えないが、生産能力を持つものが大半で、耐久性が高く防衛線に向きのものが多い

 

 その二つのハイブリットである【ヨモツヒラサカ】の能力特性は何かと言えば、怨念の生成である。

 【浄穢境界 ヨモツヒラサカ】が第一形態のころから覚えている固有スキル《転念怨遷》は怨念を生みだすスキル。

 しかし、怨念を生産するとはどういう原理か。どのようなものであれ、生産するのであれば材料がいる。ではその材料とは…

 

 肉体の死と共に消える無垢の魂。残滓がなければ無垢の魂としてただ穏やかに消えるだけのモノ。

 

 そう、それ(無垢の魂)こそが怨念の材料である。アポストルの特性を利用し、箱庭のように区切った世界の中の無垢の魂を支配、改変して、怨念を生みだすスキル。

 

 第六形態となった今では一の無垢の魂から百の怨念を生みだすことができる。まさに湧き出す温泉かの如く怨念を生みだし、【清浄のクリスタル】を一瞬で【怨念のクリスタル】に変えるほど。

 同様にその場に漂うただの怨念(・・)さえも怨念を生みだす糧とできる。それもまた同様に、一の怨念から百の怨念を生みだす。

 

 そしてこのスキルで生みだす怨念はすべて《ヨモツヒラサカの怨念》となる。これの意味するところは大きい。なぜなら、ただ一人の怨念、しかもエンブリオの怨念であるならば、容易にコントロール可能。周りにある他の怨念もヨモツの怨念となるため、暴走する可能性も少ない。

 

 まさに怨念を生みだし、それを使役するに当たっては最高峰のエンブリオである。

 

 

 …では【浄穢境界 ヨモツヒラサカ】の必殺スキルとは何か?

 

 怨念を生みだすことに特化したエンブリオの必殺スキル。単純に考えれば、より高効率で莫大な怨念を生みだすことだが、それは違う。

 

 その答えはより強い(・・)怨念を生みだすことである。

 

 怨念は本来であれば、魂にのみ影響を及ぼすもの。だが、古来より強すぎる怨念は魂だけでなく肉体にも影響をもたらす。死者の強すぎる怨念が生者を殺し、死者を増やす。そのような話は枚挙にいとまがない。

 

 強い怨念を生みだすスキル。だが、エンブリオの必殺スキルを持って行われるそれは通常の強い怨念とは次元が異なる。文字通り、物理的()干渉が()可能な()怨念を生みだす。

 

「ヨモ、始めるよ」

「ハイ、ノスフェラ様」

 

 宣言と同時、ノスフェラの紋章からヨモツが飛び出し、そのままノスフェラの玉座となる。ノスフェラは玉座に座り、アイテムボックスから四つの【怨念のクリスタル】と薄黒いクリスタルを取り出す。

 

「これで足りるかい?」

『十分です』

「良かった。今はこれだけしかないからね」

 

 能力上、【怨念のクリスタル】を作成するのは容易いノスフェラだが、純竜の討伐やアンデットの作成、ギルドへの売却で、もはや手持ちは四つだけ。必殺スキルを使うための虎の子だったが、UBMを倒すのに四つで足りるかは疑問であった。

 

「じゃあいくよ。フィルルは死ぬ準備(・・・・)はできたかい?」

「ああ、虎丸達も説得してジュエルに戻した。いつでも来い!」

 

 最早、地に臥すだけのフィルルであったが、やるべきことはしっかりやっていた。

 ただの身辺整理ではあるが、虎丸達がノスフェラを恨まないためのフォローは必要だ。特に虎丸はこの場に駆けつけUBMと戦おうとしたくらいだ。討伐のためとは言え、無断でフィルルを殺せば遺恨が残る。

 

「…良かった。では…《穢土の浄魂、浄土の穢魂(ヨモツ)反転するは我が境界にて(ヒラサカ)》」

 

 瞬間、ノスフェラの持っていた四つの【怨念のクリスタル】が黒く輝き砕け散る。黒紫の莫大な怨念がその場に漂い、最後のクリスタルからは赤黒い魂が飛び出し、混ざり合うように渦を巻き、カタチを変えていく。

 渦から黒紫色の腕が伸び、順に胴が、両足が、顔が形成される。まさに人型の怨念というべきそれは莫大な殺気と怨念を振りまく男の姿だった。

 

 生きた怨念。それは生者を恨み、生者に対して死を与える行動のみを行う。故に生みだされたこの怨念もまた、自分の最も得意な(スキル)を放ち、死を拡げる。

 

『《Sacrificeeeee……Vaniiishinggg!!!》』

 

 スキルの発動と同時、【生贄】(フィルル)は即座に消え失せ、敵であった【甲竜王 ドラグアーマー】も消え失せた。決着というには、あまりにもあっけなく二つの魂がこの場から消え失せた。

 

 この現象は【生贄】を生け贄に捧げることで発動する彼の、【贄喰】の最も特意なスキルによるもの。

 

 《サクリファイスバニッシング》

 一つの【生贄】を犠牲に合計HP十万以下のモノ達を即座に消滅させるスキル。

 雑兵に対して使えば百以上のものを容易く殺し、一体に絞れば上位の純竜すらも即座に消す。

 

 連戦でダメージを負っていた【甲竜王】のHPは十万以下となっており、このスキルの対象内となっている。故に《竜王気》や堅牢な装甲、強固な耐久力(END)といった【甲竜王】の【甲竜王】の所以となる防御力を無視して即座に【甲竜王】は消え失せたのだ。

 

 ◇

 

【<UBM>【甲竜王 ドラグアーマー】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【ノスフェラ・トゥ】がMVPに選出されました】

【【ノスフェラ・トゥ】にMVP特典【甲竜王完全遺骸 ドラグアーマー】を贈与します】

 

 そして、それを行った【贄喰】もまた消え失せる。もとより、十秒しか維持できないものとは言え、殺すべき生者(・・)がいなくなったこの戦場では消え失せるのも道理だろう。…ここには既に骸骨(アンデット)しかいないのだから。怨念の消失と今のメッセージが私に戦闘の終了を告げている。

 

「…よかった、本当によかったよ。フィルルにはああいったけど、この顛末は相当な幸運だ」

 

 ヨモの必殺スキルで生みだす生きた怨念。それは生前保有していたスキルも使用可能である。定義によっても異なるが、端から見れば魂の蘇生ともいうべき御業。だが、あまりにも扱いが難しい。

 

 まず、制限時間。生きた怨念は十秒しか存在できず、それを過ぎれば即座に霧散してしまうこと。

 

 次に発動条件。【怨念のクリスタル】を複数使うこと。

超級職への転職条件の一つでもある【怨念のクリスタル】を複数使う。大量生産できる私でも、その怨念が強力なスキルを使えるようにするためにより多くの【怨念のクリスタル】が必要であること。

 

 さらに、核となる怨念は自身で確保している必要がある。私自身は怨念を見るとこができないため、その収集にはヨモの目が必要となる。【贄喰】の怨念も【サクリファイス・クリスタル】と共にヨモが見つけ、怨念の詳細を教えてくれた。

 

 そして最後の一つ。これが最もデカいのだが、生きた怨念は制御不能であること。

 

 怨念そのものであるため、生者を殺す行動をとるといわれているが、それでも行動を固定することはできない。アンデットの種族とアバターである私は死者とされ、狙われることはないはずが、それでもあのスキルが私目がけて放たれてもおかしくない。  

 

 それに怨念は生前得意としたスキルや死の直前に使ったスキルを使う傾向にあるが、それが相手に通用するスキルかは限らない。

 

 さらに暴走状態のため、そもそもスキルを発動しない可能性も高い。元より理性のない怨念、スキルを使うことなく、暴れるだけで消え失せることもありうる。

 

「問題点は山積みだネェ。〈超級〉になったらこの問題は解決できるかな?」

「頑張りましょう。ノスフェラ様」

「そうだネェ。…約束通りフィルルには【純竜猛狼】と大金を渡すか。私には特典素材が手に入ったことだし」

 

 【甲竜王完全遺骸 ドラグアーマー】

 <伝説級素材>

 爪甲と逆転の甲竜人の概念を具現化した伝説の素材。

 素材に使えば、生前に近い能力を再現できる。

 ※譲渡・売却不可アイテム

 

「これを他の【完全遺骸】のように使えば、ドラグアーマーを再現できるのかネェ?…ん?もうひとつアナウンスが届いて…」

 

【制作したアンデットが伝説級モンスターを撃破しました】

【条件解放により、【屍骸王(キング・オブ・アナトミー)】への転職クエストが解放されました】

【詳細は屍屋系統への転職可能なクリスタルでご確認ください】

 

「制作したアンデットって…あの怨念も分類上はアンデットになるんだネェ。しかし、屍屋系統の超級職か…」

 

 屍屋(アナトミスト)はアンデット、それも死体型モンスターの作成に特化した生産職。【死霊術師】のように《死霊術》や戦闘スキルは一切使えないが、作成した死体にはボーナスが加わり、より強いアンデットにすることができる。【刀鍛冶】が作った剣を【剣士】が扱うように、【屍屋】が作った死体を【死霊術師】を扱う関係だ。

 

「しかし、生産職とは言え、超級職への転職可能になるとは大変だネェ。…フィルルに何言われるかな」

 

 後日、フィルルがデスぺナスティー明けにログインすると【屍骸王】となったノスフェラに出会い、大バッシングを受けるのだが、それはまた別の話。

 

 ◆ 

 

 「制圧完了。敵対勢力ヲ討伐スルモ、該当者ヲ確認デキズ。ココヲ拠点ニ捜索ヲ継続」

 

 その瞬間、巨大なクリスタルから幾千ものエレメンタルが生み出され、その嵐はセプータを飛び出し、森全体に拡がった。

 

  




一応第一部完なのかな?

ほとんどフィルルが何もしていないのは内緒だぞ。

…これじゃ軍団最強じゃなくて、怨念最強じゃ?

とりあえず、将軍職に就こうか、フィルル君。

というわけで感想、評価、どしどしお寄せください。正直突っ込みどころありすぎるし、駄文の拙作ですが、評価してもらえるとうれしいです。





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