"軍団最強”の男   作:いまげ

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接続話みたいな?


16.【屍骸王】

□コルトス草原 【大死霊】ノスフェラ・トゥ

 

「しかし【屍骸王】へ転職できるのなら、この素材は今すぐには使わない方がいいかもだネェ」

 

 屍屋系統は死体型モンスターの作成に特化した生産職。その超級職である【屍骸王】であるならば、より多くのボーナスを期待できる。

 

 今の合計レベル五百にも満たない状態ではなく、【屍骸王】のレベルをあげてから、超級職のスキルを得てからの方が伝説級の特典素材を生かせるだろう。

 

「問題は転職クエストですね」

「そうだネェ。屍屋系統の超級職なんだから、まず間違いなくその条件は死体型モンスターの作成。しかも、性能を重視したタイプ。最低でも純竜級のアンデットは作れないといけないかも…」

 

 純竜級は一体で上級職パーティーと同等の戦力を持つ。それくらいの戦力を作れなければ、超級職になる資格すらないということだろう。まして転職条件に伝説級モンスターの撃破が入っているくらいだ。それ以上の難易度も十分考えられる。

 

「なんにせよだ。ヨモ」

「はい。ノスフェラ様」

 

 瞬間、ヨモは黒い粒子に解け、漆黒の玉座をかたどる。そこに腰掛け、アイテムボックスから【清浄のクリスタル】を複数取り出し、スキルの発動を行う。

 

「《転念怨遷》」

 

 手に持った青の輝きのクリスタルたちは即座に色を黒に変え、漆黒の輝きを放つようになる。

 

 この結果は《転念怨遷》によるもの。ここ(戦場)には数多くの材料がある。

 

 例えば、それは【甲竜王】に殺されたティアンの無辜の魂であったり、縄張りを奪われたモンスターの怨念だったり、この世界を訪れるマスターたちの嫉妬や強欲といった醜い感情だったりだ。

 そこから膨大な怨念を生みだし、【清浄のクリスタル】を【怨念のクリスタル】へと変える。

 

「これだけあれば、条件は満たせるかネェ?」

 

 先ほどの【甲竜王】との戦闘で、すべての【怨念のクリスタル】を使い切ってしまったわけだが、強力なアンデットを作成するには、これが欠かせない。【怨念のクリスタル】があれば純竜級を超えるアンデットの作成もたやすく行える。

 

 さらに、【怨念のクリスタル】をあの店(【死霊術師】専門店)で交換材料に使えば、アンデット用の素材も問題なく手に入る。純竜級以上のアンデットの素材になり得るものは持ち合わせてはいるが

 

「…さすがに【純竜猛狼】を素材に使ったら、まずいだろうしネェ」

 

 フィルルとの約束の品だ。それを反故にして、超級職になりましたといったら、文句を言われるのが目に見えてる。さすがにそこで【純竜猛狼】を素材に使うほどの恥知らずではない。

 

 【屍骸王】への転職クエストのために純竜級の【完全遺骸】や【全身骨格】が必要となるが、その問題も【怨念のクリスタル】を売却することで解決する。

 

 ゆえに【怨念のクリスタル】を複数作ったのだが…

 

「そのクリスタルが【甲竜王】を倒したカギかな?」

「…」

 

 …厄介な奴が来たネェ。

 

「そのクリスタルは強力なエネルギーを秘めている。それを使えば、あのUBMも倒すのは不可能ではないかな」

「…」

「これは失礼をした。私としたことが礼儀を欠いてしまうとは…私の名前は鳳城院秀臣だ。以後お見知りおきを」

「…知ってるネェ、有名人」

 

 何度か霊都でエンブリオと一緒に見かけている。”美食家”の鳳城院といえば、彼の連れているエンブリオ(・・・・)も合わせて霊都じゃ有名だ。

 

「それを言えば私も君の噂を聞いたことがある。骸骨の風体をした【大死霊】のマスターがいると…初めて聞いた時はそんなバカな真似をするものがいるのとは思わなかったものだが…」

「馬鹿な真似で悪かったネェ」

「そうとも!そんな身体(骸骨)ではこの世界の美食を味わうことはできない!!!それが!!どれだけの!!大罪か!!君は理解しているのかね!!!」

「…」

「失礼。取り乱してしまった」

 

 なぜなら”美食”の変態としてその名を轟かせているからだ。

 

 ◇

 

 【食戦鬼(フードオーク)】鳳城院秀臣。【食戦士(フードファイター)】 の上級職である【食戦鬼】に就いているマスターだ。

 

 【食戦士】はHPの上昇が大きい前衛職。これだけならば普通のジョブだが、【食戦士】は一風変わったスキルを持っている。

 それは《威食同源》。食事を行うことで各種バフ、特に最大HPを大幅に上昇させるスキル。

 

 ちなみになぜそのジョブを選んだかを聞けば、名前に“食”がついていたからという筋金入りである。

「そのアイテムを用いて特別の召喚を行ったというところかな?」

「…見ていたのかい?」

 

 近くにモンスターやマスターはいなかったはず。そもそも近くにいたのなら、【贄喰】の怨念が反応してもおかしくはない。そうした反応はなかったため、考えづらいことだが…

 

「黄金のテールスープ!!至高の一品だが、【食戦鬼】たるわたしが食べれば、それは食べた者の視力に補正を与える極上の一品となるのだ!!!」

「へぇ 」

 

 うるさい。超うるさい。

 

 しかし、なるほど【食戦鬼】のバフには視力補正のものもあるのか。それがあれば、遠くから戦況を観ていたというわけか。

 

「私としては一度土をつけられた相手だ。どうにかして倒す算段を考えていたのだが、パーティー制限が掛かってね。まあ、倒せるのなら誰でもいいと思っていたが」

「君もクエストを失敗した身か。しかし、君はそんなことに興味はなさそうだがネェ」

 

 “美食家”は食事のためにしか戦わない。呆れる発言だが、それが彼の口癖らしい。

 

「それはあいつが!私に振る舞われるはずの食材を!!配達者ごと殺してしまったからだ!!!」

「…そうか」

 

 食の恨みは恐ろしいというが、“美食家”の彼の怒りは相当なものだったのだろう。たぶん。

 

「この手で敵を討ちたかったが、クエストを受けた君たちを邪魔するわけにもいかない。だから君たちを邪魔しようとしていた奴らを邪魔していたのさ」

 

 漁夫の利を得ようとしたマスターたちか。確かに虎丸達だけで押さえられるとは妙だと思ったが、こいつの奮闘のおかげか。

 

「感謝するべきかネェ?」

「必要ないさ。元より食材の恨みは君が晴らしてくれた。それよりさっきのスキルについて…」

「そう、感謝はいらないか」

 

 ポチポチっと。

 

 ◇

 

「…逃げられた(ログアウト)か」

「ふん、所詮、美食のなんたるかも理解できん俗物だ。我等と話が合うわけもない」

「ライブラ」

 

 ノスフェラが話の喧しさに堪えかねてログアウトした直後、秀臣の左手から少女が現れる。黒と白が混ざりあった髪色をしている美しい少女。

 

 それこそが彼のエンブリオ【天秤乙女 ライブラ】である。 “美食家”鳳城院秀臣とそのエンブリオ、ライブラは霊都で有名なコンビだ。主にマスターの変態性とエンブリオの美しさでだか…

 

「して、次はどうする。また新たな食材を求め、旅をするのか?」

「そうだな。今回の件で気づいたのだが…UBMは特典武具だけでなく、素材も落とすようだ」

 

 ノスフェラが【甲竜王】を倒した際の特典を見たのだろう。確かに多くの場合、UBMを倒した際の特典は武具の形となることが多い。

 それはアジャスト機能によるもの。強いUBMを倒せるのは多くの場合、戦闘職。つまり、彼らにとって必要なものとなる。故に、生産職にアジャストする例は少ないのだ。例外として身近に加工できる人間がいる場合も素材となることがあるらしい。

 

 今さらといえば今更なことだが、秀臣はそれに興味を引かれたらしい。

 

「それで?」

「UBMの素材を使った料理。どれ程の美食となるか興奮が止まらん!!」

「…我がマスターながら筋金の入った美食家ぶりだな。さすがの私でもあきれたぞ」

「よし、UBMを目指して北に向かう。ついて来い、ラーイブラ!!」

 

 そうして鳳城院秀臣は走り出す。彼がフィルルとどう交わり、どのような物語を残すのかは先の話。

 

 ◇

 

 あの場からログアウトし、霊都のセーブポイントにログインしなおす。しかし、厄介な奴に絡まれたものだ。

 

 ”食人鬼”

 

 それが鳳城院秀臣の二つ名だ。ちなみに”美食家”というのは自称である。もちろん人を食べるという意味ではなく、食が関わると人が変わり、鬼の如く存在になるが故。

 デンドロが始まって、まだ二か月近くしか経っていないのに、二つ名を得ていることがその存在感のすごさを表している。ちなみにノスフェラの二つ名は”骸拾い”である。

 

「あれでも、上級マスターの中でも上から数えた方が早いくらいに強いってのが、また苛立つネェ」

 

 それこそ、複数の上級マスターを相手に立ちまわり、あの【甲竜王】に対して倒す手段が立てられる位には強い。

 

「まあ、いつまでも変態の話をしていてもしょうがない。まずはギルドに報告だネェ」

 

 ギルドに【甲竜王】討伐の報告をして報奨金をもらう。その額なんと2億リル。二人で割っても1億リルもらえる。

 このうちのさらに半分は【純竜猛狼】と共にフィルルに渡すが、それでも5千万リルは残る。この金を何に使うかと言えば、素材購入である。

 

 通いなれた【死霊術師】専門店に訪れるやいなや、店主が顔を出し、挨拶をかわす。

 

「おや、これは半日ぶりですね。ノスフェラ様。また【怨念のクリスタル】を売ってもらえるので?」

「いや、アンデットの素材を買いに来たんだヨォ。できるだけ強いモンスターの素材がほしいネェ」

「というと?」

「最低でも純竜級モンスターの素材がほしいネェ」

「…ホウ。無理難題をおっしゃる。そんなものがあれば即座に売り切れてしまいますよ。と半日前なら言っていたんですがね。いまはちょうど一体【完全遺骸】としてあります。3千万リルいただきますがよろしいですかね?」

「購入するヨォ」

 

 元より金は多くあるし、報奨金も出ている。3千万リルくらいならすぐに出せる。

 

「しかし、さっき店に来たときはなかったはずだけどネェ」

「マスターが増えてから、もっと言うなら上級と呼ばれるマスターが増えてからこちらの流通事情は大きく変わっております。ノスフェラ様の【怨念のクリスタル】もそうですが、価値が大きく変動しているのです」

「というと?」

「我々には不可能に近い、純竜級のモンスターを単騎で倒すという行為もマスターには珍しくはありません。そうして純竜の討伐件数が増えれば、当然そのドロップアイテムも増えます。その中には【完全遺骸】や【全身骨格】といった素材ももちろんあります。多くのマスターはそれを換金アイテムだと考えて、私目の店に売りに来るのです。それこそ昼夜問わずに」

「それじゃ、この店は赤字じゃないのかい?」

「マスターは正しい相場というものを知りません。売り上げに比べれば、二束三文程度の出費ですよ」

「…あくどいネェ」

「もちろん【死霊術師】の皆様には還元をしておりますとも。だからこうしてノスフェラ様もほしい素材が手に入る。WinWinでしょう」

「確かにネェ」

 

 しかし、【死霊術師】専門店のオーナーだけあって狡猾だ。これじゃあ、私の【怨念のクリスタル】も裏じゃどうなっているかわかったもんじゃない。

 

「それでは【ドラグ・マッド・ワイバーン】の【完全遺骸】。お受け取りください」

「…ああ」

「これからも当店をご贔屓に」

 

 …気が変わらなければね

 

 

 店を出て一時間後、ノスフェラは奇妙な空間にいた。

 

 白一色の空間。果ては見えずどこまでも続く地平線。

 

 そして、目の前には白い屍骸が鎮座していた。

 

『なるほどネェ』

 

 屍屋系統への転職が可能なクリスタルに触れ、【屍骸王】の選択肢を選ぶと

 

【転職の試練に挑みますか?】

 

 という表示がされた。

 

 『はい』と答えたところ、即座にこの奇妙な空間にとばされた。

 

 この空間に唯一存在する屍骸には、こう書かれている。

 

【試練の骸を用い、至高の一品を作り上げよ】

【成功すれば、次代の【屍骸王】の座を与える】

【失敗すれば、次に試練を受けられるのは一か月後である】

 

 なるほど。死体型モンスターの制作に特化した屍屋系統の超級職の試練は用意された屍骸を用いて最高の一品を作り上げろといったところか。

 

「………」

 

 仕入れた素材が無駄になったがまあいい。普通に作って、半々といったところだろう。だが、それはティアンであればの話だ。 

 私はマスターで強いアンデットを作成する()は我が手の中にある。

 

 【怨念のクリスタル】を白い屍骸に埋め込み、それを核にアンデットの再構築を行う。作り上げた屍骸の色は白から黒へと変貌し、溢れんばかりの威圧と怨念を放っていた。

 

『【屍骸王】。いただくネェ』

 

 ここに試練は達成され、ノスフェラ・トゥは【屍骸王】の座についた。

 <Infinite Dendrogram>のサービス開始から二か月足らずのスピード出世である。

 

 

 ◇

 【屍骸王】へとなった後ノスフェラはこれでもかというほどレベル上げに勤しんだ。多くの経験値はアンデットの制作で稼いだり、モンスターを討伐したりした。

 

 【屍骸王】のうれしい誤算として《死霊術》や《デッドリーミキサー》といった【大死霊】由来のスキルも問題なく扱えたことだ。

 本来それらのスキルは使えないはずの屍屋系統だが、超級職である【屍骸王】は死者の使役に特化している【大死霊】の要素も少なからず含むため、サブジョブにおいていれば問題なくつかえるようだ。

 

 これでモンスターを倒してのレベル上げもはかどるというもの。ステータスの伸びは生産職というだけあって、大きい数値ではないが、覚えるスキルが破格の性能のモノばかり。

 

 試しに試練のために購入していた【ドラグ・マッド・ワイバーン】のアンデットを制作したが、素晴らしい出来だった。

 

 これで【甲竜王】のアンデットを作ったらどうなるのかとワクワクしていると… 

 

「すまない。君がノスフェラだろうか?」

 

 見慣れないパーティーに出くわした。

 

 ◇

 

 その半日あと、フィルルもデスぺナ明けでログインし、ノスフェラと落ち合った。

 

「え?なんで超級職になってるの?」

「君の尊い犠牲のおかげだよ」

「え?俺損しかしてないよ?おかしくない?」

「君の犠牲は私にさらなる力をもたらしたのダァ」

 

 そういってノスフェラは特典素材を見せつける。それは雄弁にクエストの成功も物語っていた。

 

「まあ、クエストが成功して良かった。しかし、あの人型の黒いオーラは何だったんだ?あれが叫んだ瞬間、俺は死んだんだが…」

「前に話した【贄喰】。その怨念の具現化だヨォ。君という【生贄】を使って敵を討ったんだネェ」

「あの話って本当だったのか!?」

「驚くところはそこかい。まあいい、これを受け取ってくれ」

 

 そうしてノスフェラはフィルルにアイテムボックスを渡す。

 

「中に今回のクエストの報酬の半分、1億リルと、約束していた【純竜猛狼】と5千万リルが入っている。納めてくれたまえ」

「へぇ、約束忘れてなかったんだな」

 

 そうして中身を確認すると見慣れないアイテムが入っていた。

 

「これは?」

「メッセージを残せるマジックアイテムらしい。ある人から預かっていてネェ」

「ほーん。再生は…これか」

 

 マジックアイテムを起動すると

 

『フィルル。フルメタルだ』

 

 フルメタルからのメッセージだった。

 

『俺たちのクエストを代わりにクリアしてくれたそうだな。お前も死んでしまったようだが…ありがとう。まずは礼を言わせてくれ。俺たちのせいでいろいろ面倒ごとにも巻き込まれたそうじゃないか。言いたいことはほかにもいろいろあるが、感謝の気持ちだけは真っ先に伝えようと思ってな。

 …俺たちは旅に出る。今回のクエストを通して自分たちを鍛え直し、見つめ直そうと思ってな。とりあえずは北のアルター王国を目指そうと思う。次に会うときはお前に助けられるのではなく、お前を助けられる、そんな強さを手に入れる。

 だから、次会うときはまた一緒にクエストを受けよう。今度こそクエストを成功させよう。一緒にUBMを倒そう。これからも…お互いに頑張ろう。自分たちの力を誇れるように』

 

 そうして音声は切れた。…俺も言いたいことはたくさんあった。伝えたいことはたくさんあったのだ。

 

 【甲竜王】との戦いのこと

 最初のクエストのドルイドコンビをテイムしたこと

 ゼプータでの出来事

 そして、初めてパーティーを組んでくれてうれしかったこと…

 

「ノスフェラ」

「なんだい?」

「俺も旅に出ようと思う。とりあえずはレジェンダリアをめぐる。それでたくさん強くなる」

「いいネェ。私も素材集めの旅に出ようと思っていたんだ。一緒にどうだい?」

「ああ。一緒にいこう」

 

 そうして、二人は旅立つ。多くの出会いと経験を求めて。

 

 




接続章といいながらエピローグっぽくなってしまった(しかも内容が拙い)

とりあえず、多くの伏線?を残しつつ次のお話しへ

もちっとだけ続くんじゃ

感想お待ちしております。
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