"軍団最強”の男   作:いまげ

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一応最終章。
敵も味方も出てくる奴等全員チート。
そしてこれまで以上に独自色が強いものとなります。
それでも良ければご覧ください。


三神激突編
31.嵐の前の


 ◆◆◆

 

 ■???・四号保管庫

 

「…やはり数が足りんか」

 

 そこは不思議な質感の空間だった。そこにいるのは<UBM>を担当している管理AI四号ジャバウォック。そう、ここは<UBM>の保管庫である。

 

 その部屋の主人が今思案するのは自身の持ち駒(・・・)のことである。ジャバウォックにとって、自身の最高傑作【三極竜 グローリア】が敗れ去ったことは記憶に新しい。

 

 【グローリア】はSUBMと呼ばれる存在。それは神話級を超えた超級の<UBM>である。SUBMの目的はただ一つ、<超級>を生み出すことだ。尋常な手段では倒せない強敵を用意することで、燻っている<マスター>の進化を促す。

 

 三つ首を持つ超魔竜【グローリア】はその目的に見合った規格外の能力を複数有していた。

 第一に神話級金属さえも容易く誘拐させる極光のブレス。

 第二にレベル499以下の人間と99以下のモンスターを絶死させる結界。

 第三にHPの低下に比例したステータス、スキルの強化。

 …そして脅威的な再生能力。

 

 そう、【グローリア】は最悪の業禍と厄災を撒き散らしながら、数多の<超級>を生みだす予定だった。

 

 だが、結果は災禍を撒き散らし、多くのティアン、マスターに爪痕を残し、…そしてついに一人も新たな<超級>を生み出すことなく、四人の<超級>の手で葬られた。

 

 そしてそれは【グローリア】に限った話ではない。

 

 最初に投入されたSUBM【一騎当千 グレイテスト・ワン】もまた、投入直後に二人の超級によって人知れず討伐された。

 二番目のSUBM【双胴白鯨 モビーディック・ツイン】は<超級>に進化した者によって討たれるという理想的な働きこそしたが、生みだす<超級>の数は想定を下回る数だった。

 

 三体のSUBMを投入して片手で数えられるほどの<超級>すら生み出せていないのは問題であった。

 生じたのは仮に残り四体のSUBMを投入しても、<超級>を満足に増やすことはできないのではないかという疑問。

 多くの<超級>を生みだすには、より多くのSUBMを投入すればいいだけなのだがそれも難しい。SUBMを作るのは<超級>を生みだす以上に難しいからだ。

 

 モンスターにはレベル100に大きな壁がある。だが、その壁をぶち抜いた者すべてがSUBMとなるわけではない。多くの場合、制御不能のイレギュラーとなり、管理AIによって秘密裏に処理される。だが…

 

「…<超級>の数を増やすだけならば、SUBMにこだわる必要はない、か」

 

 尋常ならざる敵というのであれば、イレギュラーでも同じこと。<Infinite Dendrogram>のサービスが開始してからは管理AIは大それた行動はとりづらい。突如発生したイレギュラーの対処は以前とは違い穏便なものに限られる。うまく立ち回ればイレギュラーによって<超級>の発生条件を十分満たせる。

 

 制御するのではなく、解き放つことでSUBMの代わりとする。

 

 それは彼のもう一つの目的からは離れるが…それは本来の目的の付録のようなもの。大事なのはあくまで<超級>の数を増やすこと。であれば、制御可能の是非は管理AI側の都合であり、マスターにとってはどちらも災禍に変わりはなく、それは<超級>になり得る糧となる。

 

 ここに他の管理AIがいれば、まず間違いなく止めたであろう愚行だが、今この場に彼を止められるものはいなかった。なにより…

 

「他も随分好き勝手にやっている。…そういえば以前二号が面白いことをしていたな」

 

 他の管理AIのことを思い浮かべながら、彼は以前の出来事を思い出していた。そう…あれはまだ<Infinite Debdrogram>のサービスが間もない頃、未だUBMを討伐したマスターがいない頃のことだ。

 

 あれを参考にすればイレギュラーを、そして<超級>を増やすという難儀な目的を叶えられるかもしれない。そして、その計画に相応しいUBMは手持ちの中にいる。そして万が一でもそのイレギュラーが制御可能の個体であれば…

 

「うむ、名付けるならばそれは…<三神激突>」

 

 そしてジャバウォックに<三神激突>と名付けられた計画はSUBMの襲来に匹敵する戦いへと発展する。そしてその事件の中心にいる人物は他でもない…フィルル・ルルル・ルルレットである。

 

 ◇

 

「うぅ、キモチわりい」 

 

 嘔吐。間違えた、王都を出てからアルター王国の方某に出かけ、最終的に皇国へと周り、その最北部に来ているのだが、

 

「グランバロアに行こうとした途端これじゃあネェ。あきらめた方がいいネェ」

「…もう、…船には乗らん」

 

 船酔いだった。皇国も一通り周り終えたし、次の国に行こうという算段になって、じゃあグランバロアに行こうとなったのだが…船に乗った瞬間これであった。

 

 すぐに船を飛び出し、元の港町に戻ってしまった。そうだね、よく考えたら俺リアルで船乗ったことなかったわ。しかし、まさかゲームの世界で船酔いになるとは…

 

「目的地変更。次の国はカルディナだネェ」

「船に乗らなくてもグランバロアには行けるんだ、あきらめる必要は…」

「グランバロアは船が集まってできた国だ。多分、船酔いで死ぬネェ、キミ」

「…」

 

 想像しただけでヤバかった。オエッ。

 

「よし、カルディナに行こう」

「簡単だネェ。まあそっちの方が好都合だけどネェ。しかし…」

 

 ふと、ノスフェラは南の方を見る。

 

「どうかしたのか?」

「…ああ、王国に襲来したっていう【グローリア】に思うところがあってネェ」

「ああ…いくつかの都市や街が落とされたっていう」

「私たちが以前訪れたところもね」

 

 それは…まあそうだろう。俺たちがアルター王国で訪れていないところなどないのだから。

 

「俺たちがいたら悲劇を防げたとでも思っているのか?」

「それは…」

「無理だよな。噂に聞いた【グローリア】はモンスターを即死させる能力を持っているんだろ。なら俺たちはまず土俵に立てない」

 

 俺たちは精霊とアンデットという違いはあるものの分類としてはモンスターを主軸に戦う。そのモンスターの展開を封じられたら、残っているのは人間と骸骨だけ。あとは極光にやられて死ぬだけだな。お話にならない、相性が最悪だ。

 

「しかし、その【グローリア】を倒したっていう<アルター王国三巨頭>ってのはすごいよな。うち一人は知り合いだけど…」

「【超闘士】フィガロかい?」

「あいつまじですごいよな、一番強い状態のグローリアと戦って、首を一つ落とすなんて。王国最強は間違いなくフィガロだな」

「仲間の話となると饒舌となるのは君の長所であり、欠点だネェ」

 

 うるせえな、昔の仲間を誇りに思って何が悪いってんだよ。

 

 でもそんなフィガロと戦ったら俺とあいつどっちが勝つかな。結局アルターにいた頃は戦わなかったし。うーんあいつ【グローリア】の特典武具の持ってるからなあ。神話級特典武具だけでもやばいっていうのにその上位となれば…うん、俺負けるわ。

 

「<超級>といえば、この国の<超級>はどうなんだい?」

「ん?ああ、一人しか知らないな。決闘ランキング一位、【魔将軍】ローガン・ゴットバルト」

 

 ”矛盾数式”と呼ばれる広域制圧型の超級だ。

 

「【魔将軍】か?君はそっちの方に関心があるのかな、【軍神】さん?」

「そこまでじゃねえよ。ジョブに関連があるってだけだからな」

 

 【魔将軍】も【軍神】も《軍団》スキルを持つ超級職だし、スキル(・・・)のこともあるがそれだけだ。それよりも気になるのは…

 

「一回試合を見たが…ありゃ強いな。神話級の悪魔を三体召喚してステータス三倍強化とか、ここいらのマスターじゃまず勝てない」

「君でもかい?」

「わかってて聞いてるだろ。俺は必殺スキルで相性勝ちできるけど、他の超級は厳しいんじゃないか?」

 

 超々音速で迫る三体の神話級悪魔。STR、ENDも規格外。それを相手にできるのは純粋にステータスに特化した超級。そうでなければ勝負にすらならないだろう。俺は《終劇》でその悪魔を圧倒できるけど…、うんやっぱりデンドロは相性ゲーだわ。

 

「【魔将軍】を直接倒せば誰でもいけるんじゃないかネェ」

「三体の三倍強化神話級悪魔を掻い潜ってか?」

「…やっぱり<超級>はみんなぶっ壊れだネェ」

「多分、みんなお前には言われたくないと思う」

「それをいうなら”矛盾数式”はどう考えても君の方だよネェ?”幻獣旅団”さん」

 

 …否定できない自分がいる。ローガンは亜竜級を一体生贄に捧げることで二千体の亜竜級を生みだすことができるから”矛盾数式”の二つ名が与えられている。しかし、それで言えば俺はほぼノーコストで亜竜級を千体、いやそれ以上も…

 

「しかし、皇国の超級は二人だけかネェ?もし【グローリア】みたいなSUBMが来たら滅ぶんじゃないかいこの国。実際、アルターは超級が三人いてようやくだ。そのうちの一人でも欠けていたら、まず間違いなくアルターは滅んでいただろうし」

「…それはどうだろうな」

 

 皇国所属の超級は現在二人。先ほどの決闘ランキング一位の【魔将軍】ローガン・ゴットバルトと討伐ランキング一位の【獣王】。そして【獣王】は詳細不明なので何とも言えない。【獣王】が単騎でSUBMを討伐できるっていうぶっ壊れた性能しているならともかく普通の超級だと厳しいだろう。

 

「まあ、仮に今来ても<超級>が二人いるからちょうどいいんじゃないか?」

「絶対にこれまで以上にめんどくさいことになるから却下だネェ。この国にはなぜか消されたように怨念が少ないし長居する理由があまりないんだよネェ。面倒ごとになる前に退散だ」

 

 まあ、【グローリア】がアルターで猛威を振るって月日はそんなに経っていない。そんななか、隣国のドライフにSUBMが現れるなんてことはまずないだろう。

 

 グランバロアに行くのは船酔い的な意味でヤバいから、やっぱりカルディナかな、次に行くとしたら。

 

「よし、じゃあカルディナに向かって…」

「これはこれは…いつか見た顔だ。こんなところで会えるとは神に感謝するべきかな?」

 

 カルディナに行く算段をしている最中、変な男に話しかけられた。

 




フラグをたてるのに忙しい。

そして、随分前に登場した彼の登場です。

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