"軍団最強”の男   作:いまげ
<< 前の話 次の話 >>

33 / 51
テンポよくいきます


33.【食王】VS【殺陸兵鬼】

 ◇

 

「誘導はうまくいったようだな」

 

 三体の最上級神話級UBMを戦わせ<イレギュラー>、ないしSUBMを誕生させる計画。そして、その場に多くの準<超級>を配置することで願わくば<超級>の誕生を狙う。以前、ある管理AIがUBM同士を戦わせる事件を発生させ、ルーキーがその二体のUBM討伐を果たせるか見るというものを参考にしたもの。

 

 <DIN>の社長をしている管理AIを通して準<超級>達にUBMの情報を流し、あの場に鉢合わせるという予定だったが…

 

「十二号がほとんどをPKしてしまったか」

 

 予定外にラビットが集まった準<超級>を倒してしまっていた。それ自体は予測できた事案だ。彼は準<超級>と戦い、その進化を促す役割だ。彼を責めることはできない。

 

 むしろ、非があるのはこちら側。彼の活動範囲で連絡もせずに準<超級>が集まればこうなるのは予想できたはずだ。

 

「ふむ。【グレイテストワン】が戦果を残せなかった代わりにドライフでと思ったのが裏目に出たか」

 

 始まりのSUBM、【一騎当千 グレイテストワン】は【獣王】と【冥王】に人知れず討伐された。その補填にドライフに新たな<超級>進化促進剤として行いたかったのだが…

 

「本来の目的は<イレギュラー>の誕生だ。<マスター>がおらずとも問題はない。先ずはその成功を祈るか。しかし、【食王】か。願わくば、彼が<超級>に至ってくれれば良いが」

 

 

「ふむ、UBMが三体か。ならば、私はあの鬼を倒そう。肉があるものでないと食材にならんのは経験済みだからね」

 

 そういうと、鳳城院は返事を聞かずに【殺陸兵鬼】の元に走っていった。

 

「アイツに倒せると思うか?」

「さあ?だけど、手を貸すというわけにはいかないネェ。他に二体も似たようなのがいる。私はあの海上の奴を討つよ」

「ってことは俺が上空の奴か。俺は空を飛べるからいいけど、お前どうやって戦う気だ?」

「やり方はいくらでもあるさ」

 

 そういってノスフェラはアンデットを呼び出し、戦闘態勢をとる。

 

 …俺も往くか。

 

◇ 

 

「勢いよく出てきたのはいいが、厳しいのではないか?あの小童に【ブローチ】を砕かれているし、まして相手は神話級UBM。以前戦ったものとは偉い違いだ」

「だが、勝つ。それが私だよ、ライブラ」

 

 その大物過ぎる発言に溜め息をつく、ライブラ。しかし、こうなっては仕方ない。こうなった秀臣が止まらないことは誰よりも知っていた。ならば、戦いは不可避だろう。ただ…

 

「ステータスが半減しているのはどういうわけだ?」

「十中八九、あいつの能力。恐らく領域内に存在する者のステータスを半減するもの」

「【衰弱】と似たようなものか」

 

 【衰弱】はステータスが半減する強力な病毒系状態異常。熟練者でも忌避する物であるため、大抵は対応する耐性装備をつける。無論、鳳城院も耐性装備を身に付けているが…

 

「【衰弱】とは似て非なる状態異常だろう。或いはその強化番だが…どちらにしても私のステータスが半減していることに変わりはない。ライブラ、量れるか?」

「ああ、だがとんでもない数値だぞ奴は」

 

【殺陸兵鬼 ネトラプレシス】

 HP:12345678

 MP:98765

 SP:98765

 STR:86643

 AGI:88093

 END:82334

 DEX:85344

 LUC:877

 

「……」

「正に神話の怪物。神話級モンスターのステータスが四万前後と考えれば、その倍近くあるあいつは純粋性能型の極みだな。それに奴のステータス半減能力を考えれば…この国の<超級>、【魔将軍】の強化済み神話級悪魔でも勝てないだろうな」

 

 ステータスだけでも脅威だというのに、さらに倍の数値が必要。超級職でも決して容易ではない数値だ。それでも…

 

倒せそうだな(・・・・・・)

「綱渡りではあるがな」

 

 そう、そんな化け物を相手にして鳳城院はあろうことか勝てるといった。その要因はいくつかある。

 

「あれほどのステータスとステータス半減能力。まず他の能力はない。そしてこちらには、ライブラ。君がいる。ならば負ける道理がない」

「…であるな」

 

 そう言って【天秤星女 ライブラ】は再びその姿を変える、夜の如き暗き宝石に黄金の如く輝く星が彩られたネックレスへと。

 

 だが、そのアクセサリーには大した装備補正はなく、【ネトラプレシス】を倒すには遠く足りない。事実、鳳城院のステータスは【殺陸兵鬼】に比べて貧弱なものだ。

 

 鳳城院秀臣

 職業:【食王】

 レベル:278(合計レベル:778)

 HP:235588

 MP:6632

 SP:6432

 STR:7462

 AGI:5664

 END:21456

 DEX:2848

 LUC:74

 

 さらにこのステータスが【ネトラプレシス】の能力によって半減する。このままでは【ネトラプレシス】の間合いに入った瞬間に邪魔だとばかりに消されてしまうだろう。今この時に狙われていないのは悪鬼の目的が他のUBMであって<マスター>ではないためだ。だが、もし歯向かえば、その瞬間にアウトだ。

 

 だがそれは鳳城院に与えることになる。【殺陸兵鬼】という(ジャイアント)強大な敵に勝つ(キリングの)可能性を。

 

「《秤は重さのみを測る(ノットイコール)》」

 

 その瞬間、鳳城院は超々音速機動で悪鬼に迫る。そして特典武具の剣によって【ネトラプレシス】の躰体を切り裂いた。

 

 その特典武具は伝説級UBM【断捨離 ククルマ】を倒した時に手に入れたもの。鳳城院は特典食材が手に入らなかったと残念がったが、ライブラは安堵していた。自らの能力にこれほど都合のいいものはないと。

 

 【捨離剣 ククルマ】の有する能力は単純、自身のAGI以下の防御力を無視する刀身を形成するというもの。それによって超々音速機動できる鳳城院は【ネトラプレシス】を両断できる攻撃能力を手に入れた。

 

 それ自体は納得がいく結果であるが、なぜ鳳城院は超々音速機動できるのか。その答えは《秤は重さのみを測る(ノットイコール)》にある。

 

 鳳城院秀臣

 職業:【食王】

 レベル:278(合計レベル:778)

 HP:2832

 MP:3316

 SP:3216

 STR:3731

 AGI:117794

 END:10728

 DEX:1424

 LUC:37

 

 そう、【天秤星女 ライブラ】の能力はステータスを入れ替えるというもの。ステータスの各数値はどれも同価値、故にそれを入れ替えるといったスキル。他のスキルであれば、ステータスはHP、MP、SPは十分の一にして判定すること多いが、【ライブラ】のスキルにはそれがなくその数値のままで行うことができる。

 

 今、鳳城院は半減したステータスの中からHPとAGIを入れ替えた。半減したといってもその速度は破格であり、そしてその生命力は下級職並となった。

 

 生命力を入れ替えれば強大な敵にも勝てるというジャイアントキリング。現に皇国最強にして最速のPKに立ち向かえるほど。さらに【食王】のスキルレベルEXの《威食同源》によってさらにHPやENDを強化することも可能な彼には最高に適したスキルだ。

 

 【殺陸兵鬼】を圧倒できる速度と切断力を手にした鳳城院はその力をもって悪鬼に傷を負わせていく。だが、それはギリギリの攻撃。今の鳳城院のHPからすれば【ネトラプレシス】の攻撃をかすりでもしたら、或いは紙一重で躱しても、その風圧でやられかねない。

 

 鳳城院は細心の注意を払い、【殺陸兵鬼】の脚や拳の攻撃を掻い潜り、斬撃を加えていく。一撃でも喰らえば即死を意味する戦いは、それでも戦況は鳳城院に有利に傾きつつある。しかし…

 

『このままでは…負けるな』

 

 偽りない戦況分析を【ライブラ】は口にした。

 

 戦況は一撃もらえば死が確定するとはいえ、鳳城院は確実に押しつつある。だがそれでも…

 

「スキルの維持時間か…」

『《秤は重さのみを測る(ノットイコール)》はまだ幾分か維持できそうだが…それでも相手のHPが破格すぎる』

 

 そう、【殺陸兵鬼 ネトラプレシス】のHPは八桁に到達している。それは尋常な手段では削り切れるものではない。

 この状態が永遠に維持できれば削り切ることも可能だろうが…《秤は重さのみを測る(ノットイコール)》の継続時間を考えれば、机上の空論である。

 

 ならば…

 

「必殺スキルを使う」

『…それしかないか。しかし、どれを選ぶ?』

「ENDだ」

『だが、それでは【捨離剣】でも太刀打ちできんぞ』

「問題ないさ」

 

 そう言って鳳城院は【捨離剣】をしまい、アイテムボックスからあるアイテム群を取り出す。

 

『そうか、それなら…』

「ああ、ではいくぞ!《天秤は万物を正しく秤る(ライブラ)》!!」

 

 その瞬間、【ネトラプレシス】は違和感を感じた。同格のUBMの戦いの前に邪魔をする目の前の敵を始末しようとしたが、相手が思いのほか素早かったため手間取ったが殺せる自信は十分あった。そう感じていた時に襲った急な違和感。その正体は一体何か。

 

 それを知ることなく、ともすれば振り払うようにより過激に目の前の男に攻撃を加えていく。剣をしまった男は新たに手にしたジュエルから魔法を飛ばしていく。それ自体は大した威力がないことはすぐにわかった。故に躱すことはないと判断し、【殺陸兵鬼】は攻撃を受けて大ダメージ(・・・・・)を受けた。

 

『?』

 

 それこそが必殺スキル《天秤は万物を正しく秤る(ライブラ)》の能力。ライブラの能力を他者にも適用するというもの。それ故に…

 

 【殺陸兵鬼 ネトラプレシス】

 HP:82334

 MP:98765

 SP:98765

 STR:86643

 AGI:88093

 END:12334678

 DEX:85344

 LUC:877

 

 【殺陸兵鬼】はこの瞬間、地上で最高の、いや最硬の耐久力を手に入れ、HPは純竜程度のモノとなった。そう、生命力を入れ替えれば強大な敵にも勝てるというジャイアントキリングは何も自分だけを意味するのではなく、相手も含まれる。自身と相手、HPを都合のいい数値に入れ替えれば強敵にも勝てるというモノ。

 

 だが、本来なら八桁に到達したENDを相手に攻撃を加えてもダメージは与えられないだろう。ただ、そのジュエルに入っていた魔法は相手の防御に左右されない固定ダメージのモノ。

 

 一撃八〇〇ダメージというトップクラスの戦いでは価値が低いものだが、想像を絶する防御力となり、それに反して極端にHPが低く、ダメージ減算を持っていない【ネトラプレシス】相手にはこれ以上ない特攻アイテム。

 

 百以上あれば容易に【殺陸兵鬼】を討伐できる。彼はそのジュエルを三百以上持ち合わせている。その半分を使えば、十分に勝ち得る。そして、【ネトラプレシス】は脅威的なステータスと強力なステータス半減スキル以外にはスキルを持ち合わせていない。

 

 故に、そのまま問題なく鳳城院は【殺陸兵鬼 ネトラプレシス】のHPを削り半分にした。その瞬間、鳳城院の眼前に拳が迫った。その攻撃を認識できなかった鳳城院はその躰体を撃ち抜かれた。【救命のブローチ】を【兎神】に砕かれていた鳳城院は【身代わり竜鱗】といったアイテムの甲斐むなしく、身体を砕かれデスぺナルティとなった。

 

 




テンポよくとは言ったが、まさか死ぬとは…
準<超級>が最上位の神話級UBMに勝てるわけなかったやんや。





※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。