"軍団最強”の男   作:いまげ

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お待たせしました。

展開に迷ってました。あと設定。


37.【軍神】VS【天地海闢】

 破滅へのカウントダウンは始まった。

 

 ◇

 

「【天地海闢】だと?お前は【海玉唯在】じゃなかったのか!」

 

 フィルルの当然の問いに【メテロ】は嗤う。

 

「更なる問いを投げるか。まあいい、褒美を躊躇う我ではない。【海玉唯在】は卵、この我を生み出すためのな」

「卵…だと?」

 

 それはフィルルの理解の範疇を越えていた。UBMは常識を吹き飛ばした奴が多いが、それでも、今回のはイレギュラー過ぎる。UBMから生まれるUBMなどそれほど規格外な存在だ。

 

「問いには答えた。さてと…此方も疑問はある。《水閃》を如何に防いだかだが…ふむ、我は問いを投げるなどというつまらん真似はせん」

 

 その瞬間、大海より超々高水圧カッターが放たれる。【殺陸兵鬼】と【屍骸王】を屠り、一度はフィルルをも貫いた脅威の一撃がその身を襲う。

 

「ツッ!」

「よく避けた。だが我が見たいのはそれではない!」

 

 更なる《水閃》がフィルル目掛けて放たれる。その連射はフィルルを以てしても躱しきれるものではない。

 

「その身が貫かれるのも時間の問題だ。さあ、どう出る!」

 

 その言葉の直後、【メテロ】の周囲に胞子が舞う。そして、その胞子は煌めき、魔力の波状攻撃が繰り出される。オーラは【メテロ】を確実に捉えた。…だが、【メテロ】は傷一つ負っていなかった。

 

「古代伝説級でも喰らえば即死だっていうのに…無傷かよ」

「この我を相手にしているというのに、秤が古代伝説級(それ)では見誤るだろうな」

 

 フィルルの言葉は正しい。古代伝説級UBM【天獅子 クィスヤッコ】はそのオーラの波状攻撃に為す術なく消え去った。ただそのオーラの波状攻撃を以ってしても【メテロ】の膨大なステータスの前では大したダメージを与えられないというだけのこと。

 

「驚くのはいいが…隙だらけだぞ」

 

 その瞬間フィルルを襲ったのは十二の《水閃》。連射される《水閃》は辛うじて躱せても、同時に多数放たれる《水閃》は躱せない。なにより、今までは一切そんなことはしていなかった。

 

 そこに隙が生まれた。

 

 それもそのはず【メテロ】は生まれたばかりのUBM。今が一番フラットな状態であり、ここから成長する余地が無限にある。今の同時《水閃》も【海玉唯在】の時にはなく、【天地海闢】が新たに生み出した技。故にフィルルは全身に《水閃》をくらい…【メテロ】の周囲を漂っていた胞子達が爆発した。

 

 その爆発の威力は先ほどのオーラ攻撃を上回り、【メテロ】の五体を捉え吹き飛ばした。それもそのはず、今の爆発は最終奥義に匹敵するものだからだ。

 

 【蟲将軍】の最終奥義に《イーブン・ア・ワーム・ウィル・バーン》というものがある。それは最終奥義の中でも数少ない配下に代償を払わせるスキル。パーティ内の魔蟲が死亡した際、ステータスの合計に応じて大爆発させるというもの。

 しかし、それは魔蟲を対象としたもので、エレメンタルでそのスキルを使うことはできない。まして、フィルルは【蟲将軍】ではない。であるならば、今の光景は不可解である。

 

 その答えを解くのが【軍神】の能力だ。

 

 【軍神】は軍団スキル特化職。このジョブには多くの特徴がある。

 

 第一にレベルアップによるステータス上昇が全くと言っていいほどないこと。ステータス上昇が他の超級職と比べて少ないと言われている【神】シリーズのなかでもこれほどステータス上昇がないジョブは珍しい。

 

 第二に《軍団》、自身のパーティー枠を千単位で拡張するもの。ただし、《軍団》のスキルはスキルレベルが上がりづらく、全マスターのなかで最も《軍団》スキルを扱っているフィルルですら未だレベル2である。

 

 第三に軍団スキル特化職でありながら、配下のステータスを強化するスキルは一切覚えないこと。それ故にステータス強化は下級職や上級職のものを使わなければならない。現にフィルルは【高位従魔師】の《魔物強化》スキルを利用している。

 

 第四に《机上の空略》というスキル。それは軍団スキルを自在に生み出すことができるというもの。これぞまさしく【軍神】の【軍神】足るスキル。自身が望んだ軍団スキルを生みだすということは、扱いさえ間違えなければ最強と言えるスキル。

 

 しかし、初めてそのスキルを覚えたフィルルは困惑した。軍団スキルを生み出すといっても彼には何が軍団スキルと見なされるかわからなかったからだ。

 

 まずフィルルが考えたのは配下のステータスを強化するスキル。しかし、【軍神】の《机上の空略》では一切のステータス強化スキルを生み出すことはできなかった。

 

 次に考えたのは他の将軍職を参考にするというもの。レジェンダリアに所属していたフィルルにとって、一番分かりやすい将軍は【蟲将軍】だった。そして、有名であるが故にそのスキルの内容もある程度知っていた。

 

 それは《魔蟲強化》、《イーブン・ア・ワーム・ウィル・バーン》、《コロニー・フォー・ワン》の三つである。

 

 《魔蟲強化》は【蟲将軍】の場合、スキルレベルEXの100%上昇となる。

 《イーブン・ア・ワーム・ウィル・バーン》は先だって説明した通り、死亡した配下の魔蟲を爆発させるスキル。

 《コロニー・フォー・ワン》は【蟲将軍】のパッシブスキルであり、自らのダメージを効果範囲内にいる配下魔蟲に肩代わりさせ《ライフリンク》より対象が遥かに広く、数も多い。

 

 その中で《机上の空略》ではステータス強化スキルを生みだせないことは既に実証済みのため、《魔蟲強化》の方は歯牙にもかけなかった。

 だが、残りの二つは違う。自身の保有するスキルや特典武具と組み合わせればそれは最強の武器となり得る。そのために、フィルルはそのスキルに強い関心を寄せた。

 

 そして生みだされたのが《屍爆の陣》と《円環の陣》である。

 

 《屍爆の陣》は自身の配下のエレメンタル(・・・・・・)モンスターが死亡したとき、そのモンスターを爆発させる。その威力は《イーブン・ア・ワーム・ウィル・バーン》と同様にそのモンスターのステータス合計に応じた爆発を起こす。伝説級のステータスを持っている【スポアエレメンタル】が起こす大爆発は六桁に到達したENDを持つ【メテロ】の防御を突破する。

 そして《円環の陣》はフィルルが《机上の空略》で生みだした最強のスキル。その能力は自らのダメージと状態異常を効果範囲内にいる配下のエレメンタルに肩代わりさせることだ。

 

 この二つのスキルとフィルルの持つ神話級特典武具【三源輝套 クリスタリヴ】と古代伝説級特典武具【武双勲章 シノギタチ】、そして【喝采劇場 アンフィテアトルム】のスキルの組み合わせはフィルルを最強足らしめる。

 それは千を超える伝説級の胞子をほぼ無限に生みだし、それら全てを倒さない限りフィルルは傷つくことはなく、身代わりとなった胞子が死ぬたびに大爆発を起こす。

 

 この最強コンボを突破できる術はほとんどない。”最強”のUBMである【天地海闢 メテロ】もそのコンボを喰らい、身体を吹き飛ばされた。莫大なステータスを持つ【メテロ】だが、そのサイズ故にHPは他の神話級UBMに比べて多くはなく、容易くHPを全損させていただろう。

 

 だが…その瞬間、吹き飛ばされたはずの【メテロ】の五体が動きだす。吹き飛ばされた肉体は意思をもったかのように蠢き、重なり、カタチを成す。吹き飛ばされたはずの【天地海闢 メテロ】の姿に。

 

「驚いたぞ。今の爆発、我が《液状生命体》でなければ終わっていたかもしれんな」

「…」

 

 そう、フィルルは失念していた。【海玉唯在 メテロ】は《液状生命体》だった。であるならばその子である【天地海闢 メテロ】も《液状生命体》である可能性は高く、それは事実だった。

 《液状生命体》である【メテロ】を害する術は今のフィルルには無い。故にほぼ無敵の生存能力を持ち合わせているフィルルであっても【メテロ】を倒すことはできない。

 

「…今その術がない?だったらその術を生みだすだけだ!」

「強い意思だ。だが、それが間に合うかな?我は既に答えを出している」

「!」

 

 その言葉はフィルルを酷く動揺させる。

 

「貴様は自身へのダメージを芥共に肩代わりさせているのであろう。こんな風に」

 

 その言葉と同時に大海より二十四の《水閃》が放たれ、フィルルの身体を幾重にも貫く。そしてフィルルにはダメージがなく、その周囲の【スポアエレメンタル】が爆発する。

 

「そして、ダメージを肩代わりし死んだ芥は我を脅かすほどの爆発を生む。なるほど確かに強力な技だ」

「…」

 

 自身の持つスキルを完全に看破されてしまったことに驚愕するフィルル。それは相手はただ強いだけでなく、賢さすら持ち合わせているということだからだ。

 

「だがな。同時に吹き飛ばしたらどうなるかな?」

「!!!」

 

 その瞬間、【メテロ】の身体が爆発した。その爆音と閃光は瞬く間に広がり、フィルルの周囲に展開されていた【スポアエレメンタル】の群れを焼き尽くし、フィルルをも巻き込んだ。

 

 この爆発は《屍爆の陣》を参考に【メテロ】が新たに生みだしたスキル。彼は自身の肉体と魔力(MP)を用いて疑似的な水蒸気爆発を引き起こしたのだ。

 この水蒸気爆発は神話級UBMを複数体でも破壊できるほどのエネルギーを有している。それをまともにくらったフィルルはその胞子を全て失い、自身も大ダメージを負った。

 そうフィルルは生きていた。《円環の陣》と【救命のブローチ】によってギリギリのところで一命を取り留めたのだ。

 

「…ありえねえ。いきなり自爆しやがった」

 

 それは当然の思いだった。自らの肉体を基に水蒸気爆発を起こせばそれは強力だろう。だが、それは自身の死と同義だ。確かに無限に近い残機を持っているフィルルを倒すには超広域殲滅火力を用いるしかない。

 

 だが結果はこれだ。フィルルは生き残り、【メテロ】はその身を無駄に犠牲にした。結末だけを見れば、功を焦った【メテロ】が自爆しただけだが…

 

「フム、今のでも殺し切れんか」

 

 次の瞬間、フィルルの目の前に【天地海闢 メテロ】は姿を現した。一切の前触れもなく現れた【メテロ】は出現と同時に、指先から超々高水圧レーザー《水窮閃》を放ち、フィルルの額を貫いた。

 

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