"軍団最強”の男   作:いまげ
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三(千)体のモンスターを生贄に神召喚とかどこの遊戯王だよ。


46.決着

 神話級特典武具【天地海誕 メテロ】の有するスキル《天地海闢》は【天地海闢 メテロ】を召喚する。神話級どころかイレギュラーに相当する【メテロ】を召喚する破格のスキルである。

 

 だが、これは【メテロ】の性質とフィルルにアジャストした結果である。【天地海闢 メテロ】の性質とは【海玉唯在 メテロ】から生まれる海洋生物型亜人であるということ。

 

 つまり、【メテロ】の有する特性は”誕生”。

 

 【天地海闢 メテロ】を誕生させ、召喚することこそが【天地海誕】の持つ唯一のスキルとなった。

 それは言うまでもなく破格のスキル。イレギュラーという強大な力を生前よりも劣った状態とはいえ呼び出す。超級武具の力には一歩譲るが、あまりにも強すぎる力。

 

 そのため、制限も大きいものであった。

 

 第一の制限はフィルルが既に解禁しているスキル解放条件。

 【聖騎士】の《グランドクロス》のように、強力なスキルには解禁するために条件が設定される。

 《天地海闢》の条件は、神話級<UBM>三体のMVP討伐。

 <UBM>のMVP討伐は同じ<超級>のノスフェラですら三体しか成し遂げておらず、神話級ともなれば、多くの<超級>でもなし遂げられない大きな壁である。

 それを三体倒すというのは<Infinite Dendrogram>の中でも最上級の難易度を誇る。

 だが、フィルルは【三源元素 クリスタリヴ】、【一切皆空 アヴァシンハ】そして【天地海闢 メテロ】を討伐したことでその条件を満たしていた。

 

 そう、フィルルは【天地海誕 メテロ】を獲得したときにその条件を満たしていたのだ。

 

 第二の制限は、生贄。

 

 【天地海闢 メテロ】の顕現にはモンスターの生贄が必要となる。

 【魔将軍】のスキルに代表されるように強力なモンスターの召喚にはそれ相応の生贄が必要となる。その数、実に三千体。

 これはアジャストだけではなく、それだけの力を行使するために誰が使おうとも必要な制約である。仮に生贄でない方法を取るとすれば、一分につき20万のMP消費を求められただろう。

 だが、フィルルはそれを容易くクリアした。

 【三源輝套 クリスタリヴ】と【武双勲章 シノギタチ】の組み合わせである。それによって即座に三千体の【スポアエレメンタル】を生みだせるフィルルにとって数のみを要求する条件など無いに等しい。

 

 そして、第三の制限は、劣化。

 

 ここまでの条件を達成してなお、召喚される【天地海闢 メテロ】は生前の三分の一のステータスしか持ち合わせておらず、十分という制限時間を持つ。

 

 本来呼び出されるのは精々、神話級悪魔ゼロオーバーと同格といったところだっただろう。

 だが、フィルルの持つ【武双勲章 シノギタチ】の能力によって《天地開闢》のスキルが強化され、生前のステータスを誇る【天地海闢 メテロ】を三十分顕現させることができる。

 

 そう、今ここにドライフを襲おうとしたイレギュラーがフィルルの手によって再び顕現したのだ。

 

 ◇

 

『あれは…』

『フィルルが倒したはずのUBM。となるとあの特典武具は召喚スキルを持ったものだったというわけか』

 

 召喚スキルを持った特典武具は数少ない。皇王もフランクリンも実物を見るのは初めてだった。まして、それをフィルルが持っているなど、皇王をしても予測しきれなかった。

 

(やはり…誰もこいつの存在を知りえなかったようだな)

 

 フィルルは【獣王】や皇王の様子を見て思考する。

 

(あのまま、胞子を基に超ステータスで戦ってもよかったが、あの皇王のことだ。十中八九その状態でも戦える対応策を考えていただろう)

 

 フィルルは【獣王】とその後ろにいる皇王への警戒心を強めていた。【獣王】とレヴィアタンの動きは確実にフィルルの必殺スキルを知ってのモノだった。

 自分の手の内は全て知られており、対応策を立てられている。そうフィルルは考えていた。

 

 その状況をひっくり返す、切り札。

 それはフィルルですら一度も使ったことのない【天地海誕】を使うこと。だが、これはまさしく切り札でありジョーカーでもある。

 なぜならば【メテロ】がどう動くか、それはフィルルですらあずかり知らぬことだからだ。

 

 フィルルは【獣王】を警戒しつつ、自分が召喚した【メテロ】を見た。

 

(色々思うところはあるが、でもやっぱり見てみたかったってのが大きいかな。”物理最強”にあの【メテロ】がどう戦うのかを)

 

 そうフィルルが考えていると【メテロ】が口を開く。

 

「誰かと思えば、我を降した人間ではないか。よもや貴様に召喚されるとはな」

 

 【メテロ】の言葉にフィルルは警戒を強める。今の【メテロ】は主人であるフィルルにすら牙をむける気迫がある。

 

「案ずるな。召喚者である貴様を攻撃しようとは思わん」

 

 そう言うと、【メテロ】は【獣王】達に向けて移動する。どうやら、【メテロ】は自身が置かれている状況を正しく理解しているようだった。だが、それがフィルルを攻撃しない理由にはならないだろう。

 

「だが…巻き込まない自信はないぞ」

 

 そして、その予測が正しいものであることを証明するように、【メテロ】は爆発した(・・・・)

 

「クソ、このタイミングで自爆かよ」

 

 そして、その《髄液爆覇》の威力は生前のモノを遥かに凌駕していた。なぜなら【天地海闢 メテロ】もまたフィルルのパーティー内のモンスターであるからだ。つまり、フィルルの持つ《魔物強化》がメテロにも適用され、そのステータスを60パーセント上昇させていた。

 

 《髄液爆覇》は【メテロ】のステータスを基に威力が決定する。単純な威力はあの時の1.6倍になっているということになる。その威力は【獣王】やレヴィアタンの防御を超えてダメージを与える。遠く離れた俺自身にもダメージを与えるほどだった。

 

 【獣王】の《獣心憑依》をトレースしているとはいえ、この威力はヤバい。まして、直撃した【獣王】達は…いやこの瞬間ですらフィルルのステータスは変化していない。それはつまり、【獣王】も【怪獣女王】も生きているということ。

 

『ふざけたモンスターです。現れて即座に自爆するなど…』

 

 爆風が止んだ中から現れたのは傷を負ったレヴィアタンだった。

 

「ああ、それには俺も同意する。…とっさに獣王を庇ったか」

 

 その巨体を持って自ら【獣王】の盾となった。あの一瞬で良い判断だ。

 

『ええ。ですがもう終わりです。虎の子のモンスターも今の自爆で消え失せた。あとは先ほどと同じように消し飛ばしてあげます』

 

 確かにこのままフィルルと【獣王】の戦闘が続けば、レヴィアタンの言う通りになるだろう。あくまでこのまま戦闘が続けば…だが。

 

「ここで残念なお知らせだ。俺の召喚したアイツだけどな。まだ死んでねえぞ」

 

 そう、《獣心憑依》が途切れていないことから【獣王】達の安否が分かったように、《魔物強化》の適用から【メテロ】が未だ生き残っていることは分かっている。そもそも【軍神】であるフィルルには配下の【メテロ】がどこにいるかなどすぐに分かる。

 

 いや、それ以前にフィルル自身は何度もあの爆発を見ている。そもそも、あれは自爆ではなく…だとすれば…。

 

 未だ姿を見せない理由はただ一つ。

 

「レヴィアタン」

『?』

「アンタのその巨体は紛れもない武器だがよ、それ故に弱点にもなるんだぜ」

『なにをッ…』

 

 その瞬間、レヴィアタンは吐血した。まるで体内で爆弾(・・・・・)が爆発した(・・・・・)かのように(・・・・・)

  

 答えはただ一つ。

 《髄液爆覇》によって肉体を気体に変えた【メテロ】はそのまま巨大なレヴィアタンの体内に入りこみ、その肉体を《三態自在》によって再構成し、爆発した。

 

 こんな手は普通の人間にもモンスターにも使えないだろう。だが、規格外のサイズを持つレヴィアタンであれば体内に入りこみ、肉体を再構成できる。

 そして、その爆発はいくら強固な体表を持っているとはいえ、その内側はそこまでの防御力ではないレヴィアタンの致命傷となり得る。むしろ、体内で爆発を喰らって尚、生きているレヴィアタンの生命力こそ驚嘆すべきだろう。

 

 だが、それもこれでおしまい。

 

 一度目は耐えれても二度目は無理だろう。

 

 そして体内に潜りこんだ生体爆弾を取り除く術などありはしない。レヴィアタンはここで死に絶え、そして【獣王】のステータスも貧弱なモノに戻る。

 そうなれば、【メテロ】にあっけなく殺されるだろう。

 

 戦いの結末を想起していると目の前のレヴィアタンは消え失せ、【獣王】の真横に再び現れた。

 

「…紋章に一度戻して、再び呼び出したのか」

 

 確かにそれなら、【メテロ】の体内爆弾からレヴィアタンを守ることはできる。だが…

 

「一歩間違えれば無防備な自分を晒していただろうに」

 

 【メテロ】の性質を読み切った上で、いつ爆発するか知れない爆弾を前に自身の最強の獣を手札に戻し、隙を見せるなど【獣王】は中々剛胆な性格らしい。おそらく仕切り直しのタイミングもフィルルの動きを見越した上で行ったのだろうが…

 

「だが、【メテロ】は消えたわけじゃない。呼び出したレヴィアタンの体内に再び入りこめば…」

『残念だけど、それはないよ』

 

 今まで一切言葉を発してこなかった【獣王】が、ベヘモットが言葉を発した。それは俺を認めたということなのか、それとも…最後の手向けなのか。

 

『――《■■■■■(レヴィアタン)》』

 

 そこにいたのは一体の…終末の獣であった。

 

 この瞬間、開闢と終焉、二体のイレギュラーがぶつかり合う。 

 

 ◇

 

「それで…君はあの”物理最強”に勝てたのかい?」

 

 デスぺナルティから復帰したノスフェラの疑問に俺は答える。

 

「…引き分け?」

「おや、【ブローチ】を壊したほうが勝ちっていうルールでどうやったら引き分けになるんだい?」

「皇王に止められたんだよ。俺…というより【メテロ】と【獣王】がガチでやりあったら、絶対安全って話だった地下実験場がぶっ壊れかけたらしくてな。観客席だった皇王にも被害が及びかねないってことで途中終了だよ」

 

 なるほどねー、といいながらノスフェラは虎丸の調整を行う。

 アンデットモンスターでもある虎丸はこうして製作者であるノスフェラに定期的に身体を見てもらわなけれならない。俺が【死霊術師】であればノスフェラに手間を取らせなくて済むんだが…まあ【屍骸王】のノスフェラにしてもらえる以上その必要もないだろう。ノスフェラもノリノリだし。

 

「それで、君は戦争には参加するのかネェ?」

「いや、正直よく分からん。皇王からは追って連絡がくるって話なんだが…」

「その前に出国すればいいんじゃないかい?」

「一応、”幻獣旅団”の件で便宜を図ってもらったしなー。あまり不義理ってのも…」

 

 決闘に参加すればその時点でフルメタル達の指名手配を解除する。皇王はその約束は確かに果たしてくれていた。この時点で俺の目標は達成できているんだが、それでサヨナラっていうのはどうも…。

 

「君も変なところで律儀というかこだわるというか…」

「うるせーよ」

「…ああ。”幻獣旅団”で思いだした。君の二つ名なんだけどネェ」

「俺の二つ名がどうした?」

「変わったよ。”幻獣旅団”から”軍団最強”に」

 

「…へっ?」

 

 それは<Infinite Dendrogram>の世界に”最強”と呼ばれる四人目の存在が生まれた瞬間だった。




ちなみに【メテロ】さんは水が近くにあると更に戦闘力が増します。

無くても二代目火影みたいにはなりますが。







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