"軍団最強”の男   作:いまげ

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5.VSドルイド

□霊都アムニール 【従魔師】フィルル・ルルル・ルルレット

 

「それじゃあ陣形の確認だ」

 

 そういいながらフルメタルさんは紙にペンを走らせていく。

 

 ドリルマンは前衛タンク。

 タンクが得意と言っていたし、異論はなさそうだ。

 

 フルメタルさんは中衛アタッカー。

 【拳士】なのに前衛ではなく中衛なのかと思ったが、パーティーの指揮と戦闘を同時に行うためらしい。

 

 ゆるりは後衛でヒーラー。

 基本はゆるりの生存を第一に考えて動き、ゆるりはパーティーメンバーを俯瞰し、回復を行う。

 

 ロゼはデバッファー兼前衛アタッカー兼タンク…らしい。

 デバッファーは【狩人】由来らしいが、さらに前衛アタッカーとタンクをこなすと豪語した。これだからガードナーのマスターは(偏見) …フルメタルさんも承認したからしょうがない。

 

 フィガロはオールラウンダー。

 なんでも【闘士】はほぼ全ての武器種を使用できるため、剣や斧で前衛に出ることも、弓で後衛に回ることも出来るらしい。戦局に合わせて必要な行動をとってもらうのは負担が大きいと思ったが、彼は嫌な顔をせず引き受けてくれた。

 

 そして俺は中衛アタッカー兼サブリーダーらしい。

 虎丸で攻撃を行い、俺自身は周りのフォローをする。サブリーダーといってもなんでも屋の側面が強い。

 

 陣形の確認を終えるとフルメタルさんは咳払いをした。

 自然と視線が彼に集まる。

  

「繰り返すようで悪いが、所詮俺たちは初めて一週間もたってないルーキーたちだ。負けることは不思議ではない。ギルドの人たちにはまだ早いといわれた。だが俺たちは死なない。多少の無茶ができる。何よりエンブリオがある!俺たちなら勝てる!!いくぞ!!!」

 

「「「「「応」」」」」

 

 ◇ 

 

 活き込んでいつもの東の狩り場に来たのはいいが…

 

 多くの敵は一人によって蹂躙されていた。いや正確には一人と一匹か。

 象がぶつかるだけで大抵のモンスターは吹っ飛び、死体も残さず消えていく。生き残ったモンスターも象の上から放たれた矢によって確実に命を奪われていく。

 

 その蹂躙を俺はあきれたように見ていた。

 おい、これ俺たちいらないんじゃないのか?あいつ一人で亜竜クラスも倒せるんじゃ?

 

 確かにここいらにいるモンスターは俺と虎丸のコンビなら苦戦することなく倒せるだろう。

 しかし、それもエンブリオのスキルを使ったうえでだ。あんな昔の無双ゲーの雑魚キャラみたいにぶつかれば吹っ飛ぶというものでない。

 

「不思議そうですねー、フィルルさん」

「いや、そりゃそうでしょ。ここいらにいるのは雑魚モンスターといっても…」

「あんな一方的な蹂躙になるはずがない。ですかー?」

 

 ゆるりは俺の疑問に答えるように

 

「だって彼女のガネーシャは既に第三形態に進化したエンブリオですから」

「第三形態だって?第二ではなく?」

「この目で見たからまちがいありませーん」

 

 なんでもゆるりとロゼはこのパーティーを組む前からコンビで狩りを行っていたらしい。

 ロゼとガネーシャが攻撃、ゆるりが回復。そのコンビで既にこの狩場より強いモンスターがいる狩場で戦っていたそうだ。

 

 ただし、その狩場で何度か危ない場面もあり、生きのこってきたものの、装備や回復アイテムの出費でお金が怪しくなってきた。そのため、実入りのいい冒険者クエストを受けたというのだ。

 

「その危ないっていってたときはまだお互いに第二形態でしたし。第三形態になったいまならいけそうですけどねー」

 

 どうやら第三形態に進化したのは冒険者クエストを受けると決めた後らしい。

 

「それでも、亜竜クラス?のモンスターを一人では厳しいだろうってーロゼちゃんはいってましたけどねー」

 

 進化かー。俺のエンブリオはまだ第二形態にさえなっていないんだよなー。てか第二段階になったらどうなるのか予想がつかない。MPの消費が減るくらいでいいんだけど…

 

「片付いたぞ」

 

 そういってロゼはこちらに戻ってくる。

 周りを見渡すと確かにモンスターはいないようだった。

 

「…別にここまで蹂躙する必要はなかったんじゃねーの?」

「そうはいっても、いざ例のモンスターと戦うときにほかのモンスターが襲っていたら迷惑だろう」

「そりゃ、まあ確かに」

「しかし、【ブラック・ドルイド】なるモンスターはどこにいるのであるか?」

 

 周りのモンスターはロゼが蹂躙し大変見晴らしがよくなっている。しかし、件のモンスターはどこにも見つからない。

 

「これではドルイドを見つけることが自体が大変そうだな」

「そもそもドルイドってどんなモンスターなんだい?」

 

 フィガロがフルメタルさんに疑問を呈する。そういや、俺も詳しくは知らないな。いったいどんな姿のモンスターなんだ?

 ドルイドっていうくらいだから案外人型だったり?

 

「どうやらゴリラ型のモンスターらしい」

「ぶっ」

 

 俺は思わず吹き出してしまう。

 俺そいつ見たことあるわー。超見たことあるわー。

 

 ◇

 

 俺の案内で以前ゴリラ型のモンスターを見た場所に案内する。

 しかし、以前見たといってもここにいまもいるとは限らないし、そもそも別のモンスターということもある。

 

 …ビンゴだった。

 

 黒いゴリラが地面に座ってバナナを喰っていた。もうゴリラ型のモンスターではなくゴリラだった。

 

「どうするリーダー?」

 

 ロゼはフルメタルさんに確認を求める。

 

「…陣形を。相手が油断しているとはいえ亜竜クラスのモンスターに変わりはない」

「「「「「了解」」」」」

 

 ドルイドに気づかれないように予定通りの陣形を組み、あらかじめ決めてあった戦術の準備をする。

 

「かかれ!!」

 

 フルメタルさんの掛け声とともにガネーシャに乗ったロゼが突撃する。

 同時にフィガロが弓を構えて矢を放ち、相手の注意を引く。しかし、その矢はあらぬ方向に飛び

 

「ご、ごめん」

「気にするな、結果オーライだ」

 

 ドルイドは飛んでいった矢の方に注意を引かれ隙だらけだった。

 そこにガネーシャの突撃が当たる。雑魚モンスターを蹂躙するほどの一撃は…たしかにドルイドにダメージを与えていた。 

 

 すかさず、ロゼはガネーシャの上からボウガンで矢を放つ。それはただの矢でなく【毒】状態を付与する矢だった。

 それをまともにくらったドルイドは明らかにたじろく。

 

 その間に俺たちもドルイドとの距離を詰める。ガネーシャの突撃攻撃は確かに強力だが、再び使うには距離をとらなければならない。

 その隙をカバーするのが、俺たちの仕事だ。

 

 ドリルマンが自身のエンブリオであるドリルを構えながら突撃する。鈍足ながら回転しながら迫るそれは恐怖心を煽る。

 

 それはモンスターであるドルイドも同じらしい。ドルイドはドリルを避けるために身体を動かすが、

 

「ニャー」

 

 ドルイドの死角から虎丸の<スラッシュ・クロ―>が炸裂する。

 最初のガネーシャの突撃のときにロゼと一緒にその背に乗っていたのだ。

 

 完全に動きの止まったドルイドにドリルが迫る。ドルイドは躱すことはあきらめてドリルマンに向かって殴りかかる。マスターの【剣士】を一撃で屠る拳。それがドリルマンに襲い掛かる。

 

 …その一撃をドリルマンは受けきった。

 

 その理由はドリルマンのエンブリオの能力。ドリルが回転している間マスターのENDをあげるというもの。ドリルの回転にはSPを消費し、その能力は亜竜クラスの一撃を耐えるほどの耐久力を与える。

 

 回転するドリルとその防御力による攻防一体攻撃。それがドリルマンのエンブリオ【回転鉄馬 ユニコーン】の能力である。

 

 しかし、亜竜クラスの一撃を耐えたとはいえ、下級職のHPではそう何度も同じ攻撃を受けらえるものではない。

 

 ドルイドがさらに攻撃を加える寸前、白い光がドリルマンを包んだ。

 

 たちまちドリルマンのHPを全回復し、ドルイドの攻撃を再び耐えた。同時に白い光がまたもや包む。 

 

 それを為したのはゆるりのサーフボード型エンブリオ【飛翔歌唱翼 セイレーン】

 セイレーンが有する能力は2つ。

 

 一つは《飛翔の片翼》

 エンブリオに乗ると文字通り飛翔が可能となる。これによって三次元の動きが可能となり、自身は安全圏から確実に回復魔法を与えることができる。 

 

 もう一つは《歌唱の片翼》

 エンブリオに乗っている際に歌を歌うことで自らの回復魔法の性能をあげるというもの。

 

 この二つの能力によって回復職として最善の行動を繰り返す。それがゆるりの戦術。

 

 激昂したドルイドがさらにドリルマンに攻撃を加えようとしたときに、ドルイドに二度目の衝撃が襲う。即ちガネーシャの突撃である。

 

 さらにガネーシャの鼻が地面に向けて、空気を大噴出しガネーシャの巨体ごと空中に浮かした。さらに巨体を浮かした推力をそのまま落下エネルギーに変えて、ドルイドに墜突した。

 

 【噴推空象 ガネーシャ】の能力は空気噴出能力。

 ほかのガードナーと比較しても高い物理ステータスを持つガネーシャの攻撃を空気噴出能力により、さらに強力なものに変える。

 

 その一撃を数回当てれば亜竜クラスでさえ打倒できる。

 

 ドルイドがガネーシャの攻撃にたじろく隙に各々が回復アイテムでMP、SPを回復する。

 

「よし、作戦はうまくいっているぞ!今の攻撃パターンを繰り返していけ!イレギュラーが起これば俺とフィガロで対応する」

「「「「応」」」」

 

 そうしてガネーシャを中心とした攻撃が続いていく。

 危なげもなく、そう時間がたたないうちにドルイドを倒せるだろうとパーティーメンバーは考えていた。

 

 ただ一人、俺だけは別のことを考えていた。

 

 …おかしい。最初の接触時に【毒】状態をドルイドに付与したはず…

 

 それが今は見られない。状態異常回復能力を持っている?いやそんなことをしている素振りはなかった。

 

 それにいくらなんでもHPが多すぎる。今のでガネーシャの攻撃は5度目。普通に撃破していてもおかしくない。

 

 しかし、ドルイドは今も戦い続けている。優勢なのはこちらだが、それも回復アイテムがある状態でだ。このままじゃ回復アイテムが底をつき、いずれ形勢が逆転するかもしれん。

 

 …考えられる理由は一つか。

 

「フルメタルさん、フィガロ。イレギュラーの発生だ。おそらく奴には回復役の仲間がいる」

 

 




【回転鉄馬 ユニコーン】 
TYPE:アームズ
到達形態:第一形態

【飛翔歌唱翼 セイレーン】
TYPE:チャリオット
到達形態:第二形態

【噴推空象 ガネーシャ】
TYPE:ガードナー
到達形態:第三形態
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