遊☆戯☆王ARC-V THE KING OF SPIRITS   作:Sepia

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Duel3 風の魔法使い

 

 シティ最強のデュエリストとは誰だろう?

 その質問をすれば、十人中十人全員がキングの称号を持つデュエリストだと答えるだろう。

 つまり、ジャック・アトラスである。

 彼はキングの称号を求めて戦ってきた挑戦者を次々と返り討ちにして、無敗伝説を築きあげた。 

 ジャック最強説に異論を唱えようとするのは、これよりジャックと戦い、自分がキングとなろうとするデュエリストくらいなものだ。

 

 ならば、シティの外では? 

 サテライトでの最強のデュエリストは一体誰だろう?

 

 サテライト出身でありながら、実力を認められて雇われてトップスへと足を踏み入れたデュエリストであろうか。

 

 強い……というよりは、頭のおかしい連中が多すぎるためにルナのデュエリストですら関わり合いになりたくないと思われている町にいるデュエリスト達だろうか?それとも、ルナと最前線で戦い続けるデュエリスト達であろうか。

 

 こればかりは分からない。

 ジャックという名前に対し、知名度が低すぎるのだ。

 どれだけ強くでも、話題にならなけれな誰も知らない人でしかない。

 

 では、場所を限定して、ミソラタウンではどうだろう。

 特産物も何もない田舎のミソラタウンで最強のデュエリストとして名前が真っ先に上がるとしたら、やはりエル・アーネストになるだろう。

 

 彼女自身、今となってはデュエルをするわけではないので、ミソラタウンに住む住人は彼女のデュエルをした時の姿を知らないのだ。弟よりもずっと幼い子供たちを相手にデュエルを教えるときも、自分のデッキではなく、孤児院からのものとして貸し出している共通のデッキで文字の書き方、倫理観、デュエルの流儀などを教えているのだ。いずれは立派なデュエリストとなるべくできる教育を行っているのだ。

 

 そのせいでエルはミソラタウンでは知名度がやたら高い。

 

 最強かどうかは置いておいたとしても、ミソラタウンでは一番有名なデュエリストであることは間違いない。 

 

 それはデュエリストとして有名というよりは、有名だった人だデュエリストだったというべきであろうか。彼女が評価されているの尾はデュエルの腕ではなく、孤児院の経営者としての手腕だろう。青と白を基本とした修道服を着ておきながら、機械の修理だったり野菜の販売だったり、物の配達だったりなんでもやっている。シスターというよりは何でも屋に近い。

 

 エル本人からして修道服を着ている理由は、小さな子供が安心するかな、という程度のものであり、神様なんて微塵も信じていない人間なのだ。修道服に初めて袖を通したとき、弟に頭でも打ったのかと心配されたまである。

 

 そんななんでもできる人、というのがミソラタウンにおける今の彼女の評価であり、近所でも何か問題があれば彼女のもとへと相談にいけるようば気軽さも持ち合わせていた。

 

 人間として完璧で、どこに出しても恥ずかしくない姉。

 むしろ、下手なことをすれば実の弟である自分が彼女にとって唯一の汚点となりかねない。

 それが、ナギから見たエルの評価である。

 

 そんな有名人の実態はというと、

 

「があああああああああああ。ぐぅうううううううううう」

「……先生」

「むにゃむにゃ……」

「先生、身体が冷えますよ」

 

 毛布すらひかず、ドライバーを持ったまま腹を出して車庫の床で眠りこけていた。

 普段着している修道服はしわだらけになっていて、後でアイロンでもかけようとこの光景を見たリンは思った。

 

「先生!いい加減に起きてください!」

「ん、んんん?あぁリン。おはよう」

「おはようじゃないですよ。もう午後2時じゃないですか」

「午後2時か……じゃあ5時くらいになったら起こしてくれる?いや、晩御飯ができたら呼んでくれる?そのときは、お姉ちゃんの威厳を維持するためにもナギには適当な理由をつけといて、リンが直接来てくれたらうれしいかな。私はそれまでもうひと眠りして」

「バカなこと言ってないで早く起きてください!一体どうしたんですか!昨日、明日は商品の納品に行こうとか言っていたじゃないですか!」

「ほら、一応わたしが請け負った修理の仕事が一段落したことだし、今日は遅くまで寝ていてもいいかなって思ってね。もともと無理難題をダメもとで依頼されたんだし、完成した今となっては午前中くらい寝てようが誤差よ誤差」

「もう午後だっていってるじゃないですか!」

 

 リンからしたら、弟のナギは節穴であった。

 エル・アーネストという人間は親の手も借りず、デュエリストとはいえ少女が幼い弟を死なせずに育て上げているのだ。

 そして、今では孤児院の院長の座について、自分たちのように多くの子の面倒を見ている。

 身内としては誇らしいという気持ちはわかる。

 

 けれど、身内ゆえに気づくべき欠点のようなものを、リンからしたら逆にナギは見落としている気がする。一度指摘したこともあるが、ナギは些細な問題だと間をおかずに言い切ったこともある。

 

 頼りになる人ではあるのだが、どこか抜けている姉弟であるため、自分がしっかりとしなければという意識がリンにはあった。

 

 周囲を見渡してみると、デュエルディスクを修理でもしていたのか、近くにある机の上にはボルトやネジと言った部品の類が散乱していた。

 

「……あとで片づけておきますね」

「ありがとう。ねぇリン。ちょっと思ったんだけど」

「なんですか」

「私のお母さんになってくれない?」

「本当にしっかりしてください!起きてください!寝ぼけないでくださいよ!」

 

 リンは半泣きになりながらもエルをなんとかたたき起こすが、エルが完全に復活するまで30分はかかってしまった。やっていることは、親が寝坊助な子供を起こすのと何ら変わらないが、あいにくとエルは17歳。今年の誕生日を迎えたら18になる。そしてリンは11歳。年齢としては6つ違う。十代の6つは大きいものだ。ナギにとってはエルは実姉ゆえにお姉ちゃんあるが、両親の顔を知らないリンにとってエルは親という認識に近い。そんな人間の親になったら、いっきにおばあちゃんになってしまう感覚であった。それだけは避けたかった。

 

 エルは復活した後、しぶしぶ本来の予定であった修理品の納品に向かうことにして、Dホイールの準備を始める。その最中に思い出したかのようにエルは言った。

 

「あ、そうだ。近いうちにナギとユーゴを本格的に鍛えようと思うわ。とりあえず、いろいろやらせ

てみることにしたわ。リンはどうする?」

「……はい?」

 

 その内容に、リンは戸惑ってしまう。

 なにしろ、エルは普段から、子供は遊ぶべきだという主張をしていたからだ。

 サテライトにいる子供は、幼いころから両親の仕事を手伝わされる。

 それは人手が足りないからであり、お金がないからでもあった。

 

 けれどそれは本当なら悲しいこと。

 

 身内の仕事を手伝うことは立派なことだが、本来は保護者として不甲斐ない。

 できるならば、子供たちには遊んでいてほしい。

 将来のことの心配なんてしないでほしい。

 

 エル・アーネストとは、そんな風に考えている人だった。

 

「先生、急にどうしたんですか?今までそんなこと言いもしなかったですよね?」

「いやね、ナギの将来について考えていたの。シティにある学校にでも行かせた方がいいのか、それともチームにでも入れて経験を深めさせるか」

「シティの学校っていうと、デュエルアカデミアですか?」

「えぇ。でもね、ナギは考えたすえの結論として行くつもりはないって言ったの。最強のデュエリストである私のもとにいるのが一番成長できるって言ってくれたから、これはお姉ちゃんとしては覚悟を決めたわ。一人鍛えるのなら、あと何人か鍛えるのも変わらないし、この際だからユーゴにもいろいろやらせてみることにしたの」

 

 デュエルアカデミアにナギが行きたいというのなら、行かせるつもりだった。

 もし、昔エル自身がやったように、デュエルチームにでも参加して経験を積みたいというのなた、後輩に頼むこともした。

 

 けれど、ナギの選択は自分のもとにいることだった。 

 それゆえに覚悟が決まったともいえる。

 

 ナギとユーゴが、成長できる舞台を整えるのも自分の仕事だ。

 子供には遊んでいてほしい。それが自分の願いであるが、二人ともただ遊んでいるだけの子供でいるつもりはない。そのことを認めるつもりでいた。 

 

「リン、あなたはどうする?」

 

 そして、それはリンも同じだった。

 リンだって、ただ与えられるものをそのまま受け取って生きていくつもりはない。

 

「もちろん、わたしもやります」

 

 ユーゴはシティのキングという夢がある。

 ナギもシティに行ってやりたいことがあるという。

 わたしの夢は?

 

「わたしは、ユーゴが夢をかなえるところを特等席で見てみたいですから」

「そう。それじゃ、ナギを、ユーゴを、ずっと支えてあげてね」

「はい!」

「リンがいてくれるなら安心ね。それじゃいってくるわ。私は最短でも三日は帰ってこないと思うけど、二人をお願いね。我が弟はなんだかんだ手がかかるし、ユーゴは向こう見ずなところがあるし。何かあったらハジメのおじいさんに相談するといいわ」

「分かりました」

「それじゃ行ってくるわ。アクセラレーションッ!」

 

 エルが仕事でいなくなって、リンはしばらく車庫の掃除を始めた。

 ネジを分別して、散らばったドライバーを片付けて、誇りのたまった床を雑巾でふく。

 力仕事で役に立ちそうな男二人は食料を買い出し担当だったはずが、直前になって食費を浮かせるのだと川へと釣りに行ったきり戻ってこない。ちゃんと釣れているのだろうか。

 

……遅い。あいつら何やってるんだろう)

 

 いい加減夕飯の支度を始めたいのに、ユーゴとナギは帰ってこない。

 夕方くらいになっても帰ってこず、探しに行くべきかと思い始めた頃に、ブロロロロロロ―――――という機械音が近づいてきているのを聞いた。

 

「Dホイールの音?」

 

 先生に仕事を依頼しに来た人でも来たのだろうかと、リンは一人で外に出る。

 すると、

 

「え?」

 

 やってきていたのはDホイールに乗った集団だった。

 大体30名はいるだろうか。

 一人一人がDホイールに乗り込んで、教会まで一直線にかけてきたのだ。

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 Dホイーラーの集団のリーダー格と思われる一人が出てくる。彼はDホイールから降りると、大声で叫んだ。

 

「私たちはデュエルチーム、スィクル!エル・アーネストに決闘を挑みに来た!」

「……またぁ?」

 

 過激なデュエルチームは縄張り争いをやっていると聞いたことがある。

 だが、どうしてそんなことをこの場で宣言するのかというと、リンには心当たりがあった。

 実は今までもこういうことがあったのである。

 

 経験として、今までのケースではこのようである。

 ミソラタウンを自分たちの縄張りにする。

 そのため、まずは手始めとしてミソラタウンで一番有名なデュエリスト、すなわちエル・アーネストとかいう小娘を叩つぶしてみせる……ということらしい。事実、スィクルからの代表者は大声で叫んだ。

 

「出てくるのですエル・アーネストッ!!あなたがこのミソラタウンの顔役だということは知っています!さぁ、デュエルだぁ!」

「……あのぉ」

「む、なんでしょう。ここは今から戦場と化すから、無関係な人間は離れていたほうがいいですよ。危険ですから」

「先生はいま不在ですよ」

「なんと?ならば仕方がありません。出直すとしよう。ところでお嬢さん、エル・アーネストがいつ頃帰ってくるか教えてもらえないだろうか。その時になってまだくるとしましょう」

 

 ガラの悪いデュエルチームだと、暴虐の限りを尽くしていくこともあるらしいが、どうやらこのスィクルとかいうチームは単純にエルに挑戦しに来たらしい。たまに、挑戦しに来たはいいものの、エルの顔を見るだけでひきつった顔で逃げ出すチームもこれまでにはあったが、このチームは礼儀正しく見えた。リーダーと思われる人物は青年だったが、年齢で言えばエルよりも上のような気がする。

 

 けれど、デュエルに相手をする分にはいいかな、とリンは思った。

 

「先生はいないけど、挑戦ということなら別に問題ないわよ。わたしが相手をしてあげる」

 

 エル・アーネストはデュエルをしない。

 リンでさえ知っていることといえば、昔は強かったという噂だけだ。

 似たように勝負を挑む人間が出てきては、いつもこう言って断っている。

 

『恥ずかしい話だけど、今の私は全力を出せないのよ。それはこちらの落ち度よ。十全の力で向き合わないなんて無礼を働くわけにはいかないわ』

 

 ナギが持っている二体のシンクロモンスターは、かつてエルが使っていてものだという。

 けれど、自分のカードを託したから今のデッキが十全でない、ということではないように思う。

 弟のナギがいうには、先生のデッキの中身は昔と今で違うらしいのだ。

 そうなると、気持ちの問題となる。

 デュエルをするような気分が乗らないのだろう。

 

 実際、エルへの挑戦者相手には、よく代理としてナギがデュエルをしている。

 ナギに勝てたらエルがデュエルを受ける、という条件を持ち掛けれたりすると、ナギはすごくやる気を出す。普段はよく負けたりするのに、異常な勝負強さを見せたりもする。

 

 あの姉弟の過去に何があったのかは知らないけど、嫌なことはさせたくないのだろう。

 そして、それは私も同じこと。

 ナギもユーゴもいない今、出直されるくらいなら今ここで自分が戦う。

 

 普段ナギがやっていることを代わりに私がやる。

 

 それだけだ。

 

「お嬢さんが?」

「えぇいいでしょう。私に勝てないようなデュエリストが、先生に勝てるわけがないんだし。前哨戦には申し分ないはずよ」

 

 リンはミソラタウンの中でもしっかりした少女と言われる。けれど、まだ11歳。

 年上からは見くびられるような年代でしかない。それゆえに、すぐにスィクルから反論が来る。

 

「お前のような小娘の相手をするほど、俺たちも暇じゃない!」

 

 あら、そうかしらと反論をしようとしたが、リンの助け舟は意外なところからやってきた。

 

「馬鹿者!相手を子供と思って甘く見るな!人を見かけで判断する人間は、いずれ相手の力量を見極められない人間になりうる!」

 

 リーダーと思われる人間が、いさめたのだ。

 

「しかし、ボス!」

「我々は大勢だ。しかも、いずれも彼女よりは年上だ。それなのに、いざおじけずにデュエルを挑むだけの度胸があることを、まずは認めなければならない!ここは彼女に敬意を表するべきだ」

「ボス!その通りでした!私が間違ってました!」

 

 どうやら、今回の相手は比較的良識のある挑戦者らしい。

 そういう相手と戦うというのなら、願ってもいないことだ。

 

「では、始めましょうか。お嬢さん」

「いいの?」

「もちろん。だって、私たちはデュエリスト。その誇りがあるのなら、互いに戦意があるのなら、やることはただ一つ。我の名はデューク!」

「リンよ」

 

「「デュエルッ!!」」

 

  リンLP8000 VS デューク LP8000

 

「レディーファーストです。先行と後攻。好きな方をどうぞ」

「そう?それじゃわたしのターンからいくわ私はモンスターを一枚セットしてターンエンドよ」 

 

 リン

LP8000

HAND:5 → 4

MIAN: 裏守備モンスター一体

 

「私のターンです。ドローッ!」

 

 デューク

LP8000

HAND:5 → 6

 

「私は手札から、ナチュル・パンプキンを通常召喚!」

「カボチャ?」

 

 フィールドに出てきたの、カボチャを連想させる下級モンスター。

 そもそもパンプキンとは、カボチャを意味する言葉である。

 まさに、見た目通りの名前を持つモンスターであった。

 

「えぇ。私の故郷は、このミソラタウンと変わらないくらいの田舎だったのですよ」

「じゃあ、デュエリストとしての腕試しの旅でもしているの?」

「大体はそんなところですかね。しかし、田舎者だと思われは困ります」

「その通りだぜ。俺たちはただの田舎者では終わらない!ボス、頑張ってくれ!」

「慕われているのね」

「このカボチャは相手フィールド上にモンスターが存在する状態で通常召喚に成功した時、手札から仲間を呼ぶことができる。さぁこい!ナチュル・スタッグ!」

 

《ナチュル・スタッグ》

効果モンスター

星6/地属性/昆虫族/攻2200/守1500

 

「今度はクワガタムシ?」

「まだです!自分が「ナチュル」モンスターの効果を発動したターン、手札のこのモンスターを特殊召喚できる!さぁ出て来い、ナチュル・ハイドランシー!」

 

 ナチュル・ハイドランシー ATK1900

 

「これは……アジサイの花?」

「えぇ、そうです。詳しいのですね」

「これでも女の子よ。普段付き合っている連中が男二人なだけで、花だって普通に好きよ」

 

 いつぞや、ユーゴがプレゼントだと言ってどこかで摘んできた花をくれたことがある。

 それがアジサイだったのだが、当の本人は何の花か知りもしなかった。

 エルがアジサイの花だと教えていたが、そこにはユーゴ自身興味はなさそうだった。

 それでも、自分のために花を持ってきてくれたことはうれしかったのだだから覚えている。

 

「カボチャ、クワガタ、アジサイ……。あなたは、故郷を田舎だといったけれど、あなた、随分とと故郷が好きなようね」

 

 人の好み、性格、人生。

 それはデッキに現れる。

 

 人のデッキを使うことがあったとしても、どうにも馴染まないことがあるのは使い手とデッキの相性が出てくるからだ。

 

 このデュークとかいうデュエリストは、このサテライトという田舎の中でも、自分の故郷を恥じてはいないのだろう。

 

「あなたのことが少しだけわかった気がする。さぁ来なさい。今度はわたしをみせてあげる」

「ぜひ。まずはナチュル・スタッグでセットモンスターを攻撃です!」

「攻撃されたモンスターはリバースモンスターよ」

 

《ガスタの希望 カムイ》

効果モンスター

星2/風属性/サイキック族/攻 200/守1000

 

「ガスタの希望カムイの守備力は1000。戦闘によって破壊されるけど、破壊される前に発動するリバース効果により、「ガスタ」チューナーを特殊召喚する。よって、わたしはデッキからレベル3のチューナーモンスター、ガスタ・ガルドを守備表示で特殊召喚するわ」

 

《ガスタ・ガルド》

チューナー

星3/風属性/鳥獣族/攻 500/守 500

 

「私には二体の攻撃が残っている。次はナチュル・パンプキンで攻撃です!」

 

 ナチュル・パンプキン ATK 1400 VS ガスタ・ガルド DEF 500

 

「ガスタ・ガルドはフィールドから墓地に送られた時、デッキからレベル2以下の「ガスタ」モンスターを呼べる。来なさいガスタ・イグル!」

「私が破壊したモンスターはいずれもガスタという名前をもっていました。ということは、そのモンスターも……」

「えぇ。この子は戦闘によって墓地に送られた時、デッキからチューナー以外のレベル4以下の「ガスタ」を特殊召喚できる効果を持っているわ。どうする、攻撃する?」

「……ここで攻撃しても、状況に応じたガスタが出てくるだけでしょう。私はまだナチュル・ハイドランシーの攻撃が残っていますが、攻撃はせずにターンエンドにします」

「そう、それじゃわたしのターンッ!」

 

 デューク 

LP8000

HAND:3

MAIN:ナチュル・パンプキン

   ナチュル・スタッグ

   ナチュル・ハイドランシー

 

 リン

LP8000

HAND:4 → 5 

MAIN:ガスタ・イグル(レベル1チューナー)

 

「わたしは手札のガスタ・グリフを墓地に送ることで、THEトリッキーを特殊召喚!」

 

《THE トリッキー》

効果モンスター

星5/風属性/魔法使い族/攻2000/守1200

 

「そして、ガスタ・グリフは手札から墓地に送られた場合、デッキのガスタを一体特殊召喚することができる効果を持っている。さぁ来なさい、ガスタの疾風リーズ!」

 

《ガスタの疾風 リーズ》

効果モンスター

星5/風属性/サイキック族/攻1900/守1400

1ターンに1度、手札を1枚デッキの一番下に戻し、相手フィールド上のモンスター1体と自分フィールド上の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターのコントロールを入れ替える。

 

「わたしはガスタ・イグルを攻撃表示に変更するわ」

 

ガスタ・イグル DEF400 → ATK200 

 

「わたしはリーズは自分の手札を一枚デッキの一番下へと戻し、相手フィールド上のモンスター一体と、フィールドのガスタ・イグルのコントロールを入れ替える!わたしが選択するのは当然、ナチュル・スタッグ!」

 

 リン

LP8000

HAND:2

MAIN:THE トリッキー(ATK2000)

   ガスタの疾風 リーズ(ATK1900)

   ナチュル・スタッグ(ATK2200)

 

デューク 

LP8000

HAND:3

MAIN:ガスタ・イグル(ATK200)

   ナチュル・ハイドランシー(ATK1900)

   ナチュル・パンプキン(ATK1400)

 

「わたしはナチュル・スタッグで、攻撃表示のガスタ・イグルを攻撃よ!」

 

 デューク LP8000 → 6000

 

「さらに、戦闘によって破壊されたことで、わたしの墓地へと送られたガスタ・イグルは効果が発動するわ」

 

《ガスタ・イグル》

チューナー(効果モンスター)

星1/風属性/鳥獣族/攻 200/守 400

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキからチューナー以外のレベル4以下の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

 

「わたしはチューナー以外のレベル4ガスタを……ガスタの静寂 カームをデッキから特殊召喚よ!総攻撃!いきなさい、ガスタの疾風リーズでナチュル・パンプキンを、THEトリッキーでナチュル・ハイドランシーを攻撃するわ!」

 

 ガスタの疾風リーズ ATK 1900 VS ナチュル・パンプキンATK1400

THEトリッキー    ATK2000 VS ナチュル・ハイドランシー ATK1900

 

「ぐああああああああああ!!」

 

デューク LP6000 →LP5500 →LP5400

 

「まだよ、わたしにはガスタの静寂カームによりダイレクトアタックが残っている!いきなさいカーム!カームベルト!」

「ぐッ!」

「ボ、ボスッ!」

 

 デューク LP5400 →LP3700

 

「そして、わたしはメインフェイズ2に移行して、ガスタの静寂カームの効果を発動するわ。墓地に存在するガスタ二体、ガスタ・イグルとガスタ・グリフをデッキに戻し、その後一枚ドローする」

 

 リン 

LP8000

HAND2 → 3

 

「わたしはカードを一枚ふせてターンエンドよ」

 

リン 

LP8000

HAND:2

MAIN:THE トリッキー(ATK2000)

   ガスタの疾風 リーズ(ATK1900)

   ナチュル・スタッグ(ATK2200)

   ガスタの静寂カーム(ATK1700)

REVERSE:1

 

「今度はこちらのターンです、ドロー!」

 

 デューク 

LP3700

HAND: 3 → 4

 

 デュークはドローしたカードを確認したあと、フィールドを見る。

 自分のモンスターは全滅し、相手フィールドには4体ものモンスターが存在している。

 状況は不利だが、同時に相手のデッキのコンセプトもわかってきた。

 

「……リンさん」

「なに?」

「あなたのデッキのコンセプトは、ガスタという名の、いえ」

 

 ガスタというテーマがデッキに入っていることに違いはない。 

 けれどリンのデッキは、ガスタだけとはデュークは思わなかった。

 

 カード同時の組み合わせにも相性というものは存在する。

 

 それは効果だけではなく、カードそのものの相性だ。

 デッキの枚数はメインデッキだけで40枚から60枚であるが、一枚だけ異質なカードを入れると、どうにもデッキがおかしくなるとされる。

 

 THE トリッキーというカードはガスタと効果のかみ合わせとしてはいいかもしれないが、どうにもガスタのイメージには合わない。そうなると、リンのデッキは、

 

「あなたのデッキは、風の魔法使いですね?」

 

 風属性の魔法使い。

 それがリンのデッキだ。

 

「えぇ。そうよ。正確には、わたしのデッキにいるのは風を操る者。それが魔法であれ、超能力であれ、風と共にある者たちが、わたしとともに戦うものよ」

「なるほど。あなたのことが少しだけわかった気がします」

「まだよ。わたしたちは、デュエルを重ねることで、互いを知ることができるわ。あなたはわたしのデッキにいる、私のパートナーともいえるモンスターを見ることができるかしら」

「ほぅ。今のガスタは、あくまで前座だとでも?」

「いいえ。それは違うわ。この子たちもわたしのパートナーであるのは事実。でも、一番のお気に入りは別にいるのよ。わたしの魔法使いを、見てみたいでしょう?」

「ならば、そいつを引きづりだしてみせましょう」

 

 本来デュエリストにとって、言葉はいらない。

 言葉に出すのは、その方が気持ちが伝わるからだ。

 

 けれど、それも長ければ蛇足でしかない。

 

 やはりデュエリストたるもの、デュエルで相手を引きずり出さなければ。

 

「私はナチュル・マロンを召喚。こいつは召喚に成功した時、デッキの「ナチュル」一体を墓地へと送るとができる。私はデッキからナチュル・パンプキン一体を墓地へと送る。そして、ナチュル・マロンは一ターンに一度、墓地のナチュル二体をデッキに戻しカードをドローすることができる。墓地のナチュル・パンプキン二体をデッキに戻し、一枚ドロー!」

 

 デューク HAND: 3→4

 

「そして手札から装備魔法、月鏡の盾を発動だ!」

「……戦闘では無敵とする装備魔法ね」

 

 ナギがよく使う装備魔法だ。そのため効果はよく知っている。

 攻撃力では負けなくなるが、欠点としては、相手に与えられるダメージが少ないことか。

 戦闘では無敗といえば聞こえはいいが、実際は戦闘する相手より攻撃力が100上回るだけなのだ。

 時間をかければ対処はできる。

 そうリンは判断したが、デュークの選択はリンの思惑を外れた。

 

「この対象は……あなたにコントロールを奪われたナチュル・スタッグです!」

「……へ?」

 

(装備するなら攻撃力1200のナチュル・マロンのはず。一ターンに一度効果を使えるなら、さっき使ったドロー効果だって、条件を満たせば次のターンに使える。持続して価値があるというのに、どうして?)

 

 鏡をハサミで挟んでいるクワガタムシの様子をいぶかしんでみていたリンであったが、クワガタの様子が変になっていくことに気が付いた。鏡から糸が大量に噴出し、クワガタが繭に包まれたのだ。

 

「え。何?羽化でもするの?」

「私はこのカードを発動しました。見えますか?」

「超進化の……繭?」

 

《超進化の繭》

速攻魔法

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):装備カードを装備した自分・相手フィールドの昆虫族モンスター1体をリリースし、デッキから昆虫族モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

(2):自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の昆虫族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

 リンはデュークが公開した手札を見て、その効果を把握する。

 リンのフィールドに存在するナチュル・スタッグは昆虫族モンスター。

 月鏡の盾が装備されている今、超進化の繭の効果の発動条件は満たしている。

 

「いきます、俺のデッキの最強モンスターを見せてあげましょう!」

「くるわね」

「超進化の繭の効果により、俺のデッキから最強の昆虫を召喚条件を無視して呼び起こす。いでよ、最強の王、究極完全態(きゅうきょくかんぜんたい)・グレート・モス!!」

 

《究極完全態・グレート・モス》

効果モンスター

星8/地属性/昆虫族/攻3500/守3000

このカードは通常召喚できない。「進化の繭」が装備され、自分のターンで数えて6ターン以上が経過した「プチモス」1体をリリースした場合に特殊召喚する事ができる。

 

「攻撃力3500!どうです、ここいらではまず見かけない攻撃力でしょう!!おそれおののくといいですよ!」

「でた!ボスの最強の攻撃力を持つモンスターッ!」

「………3500かぁ」

「私は墓地の超進化の繭を除外して、墓地に存在しているナチュル・スタッグをデッキに戻して一枚ドローします!」

 

 デューク 

HAND:2 → 3

 

「このまま攻撃です!いけ、グレート・モス!その鱗粉で相手を吹き飛ばせ!グレード・モスラッ!!」

 

 リンのフィールドのガスタの疾風リーズが破壊され、ライフが削られる。

 

 ガスタの疾風 リーズ ATK1900 VS 究極完全態・グレート・モス ATK3500

 

 リン 

LP8000 → LP6400

HAND:2

MAIN:THE トリッキー(ATK2000)

   ガスタの静寂 カーム(ATK1700) 

REVERSE:1

 

「やはり、ガスタというモンスターはすべてがリクルーターではないようですね。さしづめ、魔法使いとその使い魔というデッキですか」

「……まだよ。まだ、わたしを理解した気になるのは早いわよ」

「!?]

 

煙がはれる。 

リンの足元にあった伏せカードが表側になっていた。

 

「わたしのガスタが戦闘によって破壊される瞬間に、このカードを発動していたの」

「永続……罠?」

「そうよ。永続罠、憑依解放。これは自分フィールドのモンスターが戦闘または効果で破壊された場合に真価を発動できるのよ。その効果によって、わたしは破壊されたモンスター一体の元々の属性と異なる属性を持つ守備力1500の魔法使い一体をデッキから表側攻撃表示または裏側守備表示で呼べる。ガスタは風属性!よって、風属性以外の守備力1500の魔法使いを呼び出す。わたしは、デッキから地属性の地霊使いアウスを裏守備でセットする」

 

《憑依解放》

永続罠

「憑依解放」の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の「霊使い」モンスターは戦闘では破壊されない。

(2):自分の「憑依装着」モンスターの攻撃力は、相手モンスターに攻撃するダメージ計算時の800アップする。

(3):このカードが魔法&罠ゾーンに存在し、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動できる。そのモンスター1体の元々の属性と異なる属性を持つ守備力1500の魔法使い族モンスター1体を、デッキから表側攻撃表示または裏側守備表示で特殊召喚する。

 

 

「守備力1500はナチュル・マロンでは突破できない。カード一枚伏せてターンエンドです」

 

 デューク 

LP3700

HAND:2

MAIN:究極完全態・グレート・モス(ATK3500)

   ナチュル・マロン(ATK1200)

REVERSE:1

 

「ドローッ!」

 

リン 

LP6400

HAND:2→3

MAIN:THEトリッキー(ATK2000)

   ガスタの静寂 カーム (ATK1700)

   地霊使いアレス(裏守備)

TABLE TRAP:憑依解放

 

「墓地のリーズとカムイをデッキに戻してカームの効果発動よ。一枚ドローする」

 

リン

HAND:3 → 4

 

「さて、どうしますか?あなたの魔法使いをみせてくれますか?」

「……本当ならそうしてあげたいんだけど、攻撃力3500くらいはなれちゃっててね、まだ出番はないわ」

 

 身内の一人がやることが攻撃力をあげて殴るというシンプルな脳筋戦術なのだ。

 3500くらいの攻撃力も、大したことないかと思えてくる。

 きっと、慣れのせいだろう。

 デュエルが攻撃力がすべてだというのなら、リンはナギに勝てる道理はない。

 

 ナギもユーゴもここぞという時には勝負強さを見せるが、勝率となるとリンはナギもユーゴも相手にならないほど安定している。

 

 それはデュエルが、工夫で戦うことができるから。

 時には相手のことすら利用して、戦う柔軟性を秘めているから。

 

「わたしは裏守備でセットされていた地霊使いアレスを反転召喚!」

 

地霊使いアウス

効果モンスター

星3/地属性/魔法使い族/攻 500/守1500

リバース:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手フィールド上の地属性モンスター1体のコントロールを得る。

 

「リバース効果は、自身が存在し続ける限り相手フィールド上の地属性モンスター1体のコントロールを得るというもの。分かっているわね。あなたの、グレート・モスをいただくわ」

「グレート・モス!」

「そしてわたしのアウスは自身と自分フィールドの地属性の力を持って、成長する!グレート・モスをその力の礎として、成長しなさい!アウス!」

「なんだ……アウスの姿は変わっていく!?」

 

 アウスとう名の幼い魔法使いは、自分の何倍もの大きさを誇るグレート・モスの身体を取り込んでいった。そして、栄養でも得たのは体つきも子供のものこら大人の背丈へと成長する。

 

「成長するモンスターがデッキにいるのはあなただけではないの。さぁ、姿をみせなさいッ!憑依装着ーアウスッ!」

 

《憑依装着-アウス》

効果モンスター

星4/地属性/魔法使い族/攻1850/守1500

自分フィールド上の「地霊使いアウス」1体と地属性モンスター1体を墓地に送る事で、手札またはデッキから特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚に成功した場合、以下の効果を得る。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

「アウスでナチュル・マロンを攻撃!」

「永続罠、ナチュルの神星樹を発動です!」

 

《ナチュルの神星樹》

永続罠

「ナチュルの神星樹」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):自分フィールドの昆虫族・地属性モンスター1体をリリースして発動できる。

デッキからレベル4以下の植物族・地属性モンスター1体を特殊召喚する。

(2):自分フィールドの植物族・地属性モンスター1体をリリースして発動できる。

デッキからレベル4以下の昆虫族・地属性モンスター1体を特殊召喚する。

(3):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。

デッキから「ナチュルの神星樹」以外の「ナチュル」カード1枚を手札に加える。

 

「この効果により、自分フィールドのナチュル・マロンをリリースして効果発動!ナチュル・マロンはレベル4以下の植物族モンスター。よって、俺はデッキからレベル4以下の地属性の昆虫族モンスター一体をデッキから呼び出す。出て来い代打バッターッ!こいつを守備表示にて特殊召喚する!」

「戦闘続行!このままいきなさいアウス!憑依解放の効果により、成長したアウスのモンスターの攻撃力は、相手モンスターに攻撃するダメージ計算時のみアップ!さらに、吸収して成長したアウスには貫通能力が備わる!」

 

憑依装着アウス ATK1850 → ATK2650 VS 代打バッター DEF1200

 

デューク 

LP3700 → 2250

HAND:2

TABLE TRAP:ナチュルの神星樹

 

「このまま勝負を決めるわ!」

「いいえ、まだです!代打バッターの効果発動!」

「!?」

「代打バッターは自分フィールドから墓地に送られたとき、手札の昆虫を呼ぶ出す。究極変異態・インセクト女王クイーンを呼び出す!」

「クイーンの名を持つ巨大な昆虫ッ!切り札が出てきたわね!」

「えぇ。私のもう一つの切り札、インセクト女王。虫の成長のうちの、一つの成長の限界点。自然には生まれない、突如として変化した王」

 

 

 自然には発生しない虫。

 それは、過酷な環境に適応するために生まれざるを得なかったということを示している。

 そうなると、その名にふさわしい強力な能力を持っているのだろう。

 だが、現状リンがこいつをどうにかすることはできない。

 

「THEトリッキーとガスタの静寂 カームを守備表示に変更するわ」

 

THEトリッキー ATK2000 → DEF1200

ガスタの静寂 カーム ATK1700 → DEF1100

 

「カードを一枚伏せてターンエンドよ」

「この瞬間、女王の効果が発動する!」

「このタイミングで?」

「自分フィールドにインセクトモンスタートークン1体を特殊召喚する!」

 

女王は自らの身体から卵を産み落とす。

その殻が破られて、小さな虫が誕生した。  

 リンには、この女王は自分の軍隊をつくりだしているようにも燃えた。

 

 

「次々と子供を産み落としていく女王様か。なるほど、昆虫の女王らしいわね」

 

 リン 

LP6400

HAND:3

MIAN:THEトリッキー (DEF1200)

   ガスタの静寂 カーム(DEF1100) 

   憑依装着-アウス (ATK1850)

TABLE TRAP:憑依解放

REVERSE:1(シフトチェンジ)

 

「私のターン、ドロー!」

 

デューク 

LP2250

HAND:2 → 3

MAIN:究極変異態・インセクト女王クイーン(ATK2800)

   インセクトモンスタートークン(DEF100)

TABLE TRAP:ナチュルの神星樹

 

 

「女王でアウスを攻撃です!」

 

究極変異態・インセクト女王クイーン ATK2800 VS 憑依装着アウス ATK1850

 

リン LP6400 →5450

 

「女王の効果発動!女王は、ダメージステップ終了時、自分フィールドのモンスター1体をリリースすることにより相手モンスターに続けて攻撃できる!インセクトモンスタートークンをリリースッ!」

「けど、こちらアウスが破壊されたことで永続罠、憑依解放の効果が発動するわ。デッキから守備力1500のモンスター一体特殊召喚することができる。わたしが呼ぶのはこのカード!来なさいWW(ウィンド・ウィッチ)ーグラス・ベルッ!!」

WW(ウィンド・ウィッチ)?」

 

 リンの場に召喚されたモンスターは、これまでとは一風変わったモンスターであった。

 まず、杖にまたがって飛んでいる、いかにも魔法使いというモンスターであった。

 これまでに見せたガスタというモンスターたちも風を連想させる者たちであったが、あくまでも風をその身に受けている姿が様になっている者たちであった。杖に乗って乗りこなす者たちではなかった。

 

「またせたわね。これが私の魔法使いよ。存分に、その力をみせてあげる。グラス・ベルが特殊召喚に成功した場合、手札から仲間のWWを呼び込むことができる。わたしは、WW-スノウ・ベルを手札にくわえる」

「チューナー……なるほど。シンクロ召喚ですか。しかし、そう簡単にはいきませんよ。女王で二回目の攻撃!攻撃対象はWW!」

「リバースカードオープン、シフトチェンジッ!」

 

《シフトチェンジ》

通常罠

自分フィールド上のモンスター1体が相手の魔法・罠カードの効果の対象になった時、または相手モンスターの攻撃対象になった時に発動できる。その対象を、自分フィールド上の正しい対象となる他のモンスター1体に移し替える。

 

「攻撃対象をわたしのトリッキーへと移動させるッ!守備表示のトリッキーは破壊されるけど、WWはフィールドに残る!」

「ならば、カードを2枚伏せてターンエンド。このエンドフェイズ、女王は新たに命を生み出す!インセクトモンスタートークンを特殊召喚ッ!」

 

デューク

LP2250

HAND:1

MAIN:究極変異態・インセクト女王クイーン(ATK2800)

   インセクトモンスタートークン(DEF100)

TABLE TRAP:ナチュルの神星樹

REVERSE:2

 

リン LP5450

HAND:4(WW-スノウ・ベル)

MIAN:WW-グラス・ベル(DEF1500/チューナー)

   ガスタの静寂 カーム(DEF1100) 

 

「わたしのターン、ドローッ!」

 

リン

HAND:4 → 5

 

「相手スタンバイフェイズに、私は先のターンに伏せた二枚のトラップを発動する。一枚目、安全地帯!」

 

《安全地帯》

永続罠

フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。

(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、その表側表示モンスターは、相手の効果の対象にならず、戦闘及び相手の効果では破壊されず、相手に直接攻撃できない。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。

 

「この効果によって、女王は効果の対象にならず、戦闘及び効果によっても破壊されなくなりました」

「なるほど。さっきみたいにコントロール奪うのは厳しいみたいね」

「さらに、罠発動!蝕の鱗粉ッ!こいつは女王の装備カードとなる。そして、これがフィールドに存在する限り、あなたは女王以外の昆虫を攻撃できず、相手がモンスターを召喚・特殊召喚する度、または相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動する度に、相手フィールドの表側表示モンスター全てに鱗粉カウンターを1つずつ置く。相手フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、そのモンスターの鱗粉カウンターの数×100ダウンさせる!」

「鱗粉をばら撒くようになったのね」

「この効果により、もはや女王を戦闘では破壊させなくなった。そして女王は、もとより他の昆虫が存在するときに効果では破壊されない効果を持っている!」

「出た!ボスの女王ロックだ!」

「そうなると、インセクトモンスタートークンを排除するのも難しくなったわね」

 

 こうなると、リンは女王様しか狙うことはできない。

 しかし、女王は仲間がいるときに力を増す。

 女王は戦闘で破壊することもできず、効果で破壊することもできない。

 

 先ほどの様にコントロールを奪おうにも、対象をとることもできなくなった。

 

 一時的に攻撃力を上回ったとしても、いずれは攻撃力を下げられる。

 事実上の、詰みに近い。

 

「……相手が悪かったわね」

 

 けれど、あいにくとリンには通用しない。

 

「なんですと?」

「その戦術は強力だとは思うわ。けど、私には通じない。わたしのデュエルは、そのやり方でハマるタイプのものじゃない」

 

 ナギのデュエルは、基本攻撃力を挙げて殴る脳筋戦術。

 ユーゴのデュエルは、相手の出方応じて戦術を切り替える対応戦術。

 そして、リンのデュエルは、相手のモンスターを利用して戦う、利用戦術。

 

「わたしは、ガスタの希望カムイを通常召喚!」

 

 リンがこのデュエルで一番最初に使用したカードが再び出てくる。

 ただし、このカードはリバースモンスター。

 通常召喚では効果は発動しない。そうすると、やることは一つ。

 

「シンクロ召喚ですか。ですが、その前に鱗粉がまき散らされるッ!女王よ、羽ばたかせるのです!」

 

MIAN:WW-グラス・ベル(DEF1500/チューナー) → DEF1400/チューナー

   ガスタの静寂 カーム(DEF1100) → DEF1000

 

 女王の羽により飛ばされた鱗粉の影響により、リンのフィールドのモンスターの攻撃力が下がっていく。けれど、それはわかりきっていたことだ。むしろ、相手から感じる風が気持ちいいとまで思っていた。

 

 ――――――――こちらも、風と飛ばしてあげる。

 

 それどころか、対抗して自分の風をみせてあげたいと思った。

 

「いくわよ。わたしは、レベル2のガスタの希望 カムイに、レベル4のWW-グラス・ベルをチューニング!風よ吹き荒れろ!その暴風を持ってすべてなぎはらえッ!!シンクロ召喚ッ!ダイガスタ・スフィアードッ!」

 

《ダイガスタ・スフィアード》

シンクロ・効果モンスター

星6/風属性/サイキック族/攻2000/守1300

チューナー+チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上

 

 出てきたのは、杖を持ち、緑の装飾で着飾った服を着ている人物であった。

 こいつの出現とともに、風がまき散らされる。

 

「このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地の「ガスタ」と名のついたカード1枚を選択して手札に加える事ができる。わたしは、シンクロ召喚に使用したカムイを手札に戻すわ」

「これがあなたの、風の魔法使いですか?この瞬間に再び鱗粉が飛ぶ!」

 

 ダイガスタ・スフィアード(ATK2000 →1900)

 ガスタの静寂 カーム(DEF1000) → DEF900

 

「カームを攻撃表示にする!」

 

 ガスタの静寂 カームDEF900 → ATK1500

 

「そしてバトルよ、スフィアードで女王様に攻撃よ!」

「攻撃力はこちらの方が上だ!」

「それがドツボだというのよ。攻撃力だけがデュエルじゃない!高すぎる攻撃力は、力となるとともに弱点にもなる!」

 

ダイガスタ・スフィアード (ATK 1900)  VS 究極変異態・インセクト女王クイーン(ATK2800)

 

 力があっていいものだ。

 けれど、操れる力は、時として存在するだけで弱点となるという。

 リンは女王を倒せないのなら、倒さないことにしたのだ。

 女王様自身の力によって、相手を倒すことにしたのだ。

 

「スフィアードは戦闘では破壊されない。そして、スフィアードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「ガスタ」と名のついたモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける!よって、900のダメージをあなたにあたえるわ!」

「なんですって!?」

 

 デューク

LP2250 → LP1350

 

 攻撃力自体は女王が上。

 スフィアードと女王の衝突では、リンの方へと衝撃が飛んでいく。

 しかし、スフィアードが衝撃を風へと変え、デュークの方へとぶつけていった。

 

「次はカームの攻撃よ!カームベルト!」

 

 カームは戦闘で破壊されるが、その余波によって生じた衝撃は再び風へと変換されて飛んで行った。

 

「攻撃力の差は1300!よって、1300のダメージよ!」

 

デューク

LP1350 → LP50

 

「……ぐッ!しかし、私のライフはまだ50残っている!」

「そうね、だからこそ、今度は私の魔法使いをみせてあげる」

「なッ!それはスフィアードのことではなかったのですか?」

「これから見せるのは、私の最も好きなモンスター。あなたに敬意をしめし、そのカードでこのデュエルの決着させるわ。メインフェイズ2へと移行して、魔法発動。二重召喚ッ!この効果により、わたしはこのターンにもう一度通常召喚ができる」

 

 二重召喚は発動条件が存在しない魔法である。

 そのためデュークは、リンがやろうとしていることを理解した。

 

(メインフェイズ1でそのカードを使っていれば、鱗粉の効果で攻撃力がさらに下がっていた。それを逆手に取られて、今のバトルフェイズで私のライフは尽きていた)

 

 本当なら、自分はとうに負けている。

 その事実をかみしめた後、デュークはリンにいう。

 

「リンさん」

「なにかしら?」

「あなたに感謝を言わせてください。ありがとうございます」

 

 今自分のライフが残っているのは、決してリンのプレイングミスなどではない。

 自分の一番の魔法使いの存在を言及してしまった以上、それを見せてあげたかったのだろう。

 それは全力で相手をしないという無礼でもあったが、少女の思いやりでもあった。

 

 どちらを感じるかは、人によって異なるだろう。

 

 デュークは、それに感謝を感じるタイプの人間だった。

 それを見抜いていたからこそ、リンも自分を見せようと思ったのだろう。

 

「時にリンさん。一ついいですか?」

「なに?」

「わたしたちあと一緒には、来てくれませんか?あぁ、別に私たちの故郷にきてくださいということではないですよ。シティに行くときに、一緒にこないかと誘っているのです。あなたもデュエリスト。この町にいるだけよりは、シティに行って力を試したいと思うことだってあるでしょう」

「誘ってくれてありがとうございます。けど、ごめんなさい。シティへはいずれ行くとしても、その時に一緒に行きたい人はもう決まっているの」

「そうですか」

 

 残念です、とデュークはつぶやいた。

 リンに一緒に来てほしいと思ったことは事実で、本気で誘ったつもりだった。

 

 デュークは一人ではなく、多くの人間ときている。

 無理やりにでも連れていくことだって物理的にできるだろうが、こんなことをやろうと思う人間はこの場には誰一人としていない。

 

 だってそうだろう。

 ちょっと照れたように頬をかきながら口にする人間に無理を言うなんて、できはしない。

 

「わたしはチューナーモンスター、WWウィンド・ウィッチ-スノウ・ベルを通常召喚」

 

 デュークは穏やかに微笑むと、リンが出すというモンスターの出現を待った。

 

「すでにエクストラモンスターにはダイガスタ・スフィアードが存在している。ということは、レベル7のモンスターをシンクロ召喚するのですか」

「そうよ、まだわたしのフェイバリットが出ていないわ!それを今から見せてあげる!レベル6のダイガスタ・スフィアードに、レベル1のスノウ・ベルをチューニングッ!真冬の風よ。雪も氷も我が力として吹き抜けよ!シンクロ召喚!現れよ!レベル7!WW-ウィンター・ベル!」

 

WW(ウィンド・ウィッチ)-ウィンター・ベル》

シンクロ・効果モンスター

星7/風属性/魔法使い族/攻2400/守2000

チューナー+チューナー以外の風属性モンスター1体以上

「WW-ウィンター・ベル」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地の「WW」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターのレベル×200ダメージを相手に与える。

(2):自分・相手のバトルフェイズに自分フィールドの「WW」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターのレベル以下のレベルを持つモンスター1体を手札から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

「こいつが君のフェイバリット……」

 

 リンが今出したモンスターこそ、リンのフェイバリットカード。

 風を操る、風と一体化した風の魔法使い。

 

「ウィンター・ベルは一ターンに一度、自分の墓地のWW一体を選択し、そのレベル×200のダメージを与えることができる。わたしが墓地に存在するグラス・ベルを選択し、そのレベルである4×200の合計800のダメージを与えるッ!スノー、ブリザードッ!!」

 

 デュークのライフはわずか50。

 これでこのデュエルの決着がついた。

 

 デュークが口を開こうとしたのとほぼ同時、遠くから声がする。

 

「おーい!リンー!」

 

 今回全く役に立たなかった男二人が帰ってきたのだ。

 ユーゴは二人分の釣り竿を持っていて、ナギは両手で二つのバケツを握りしめていた。

 ナギは自身の精霊の影響か、ものすごく力持ちなのだ。

 翌日の筋肉痛があるからやらないらが、その気になれば片手でDホイールを持ち上げることもできるらしい。

 

 軽々と運ぶバケツの中には、大量の魚があった。

 

「見てみてリンちゃん!ボクたちやったよ!」

「これは運が向いてきたんじゃないか?大量に釣れたぜ!いやぁ今は調子が良かったな!ところでこいつら誰だ?」

 

 帰ってきた二人に、ことのあらましを説明すると、ユーゴは自分がデュエルを受けたかったと落胆した。

 落ち込むユーゴを慰めることもせず、リンは二人がつってきた量を見て、どうしたものかと考え込んだ。

 

「どうしたの?」

「こんなにつって、どうするの?これ食べきれる量じゃないでしょ」

「院長先生のとことか、みんなのところにわけにいこうよ」

「お、いいじゃねえか。ハジメのじいさんにも持って行ってやるか」

「あのねナギ。今先生もいないのよ。第一、これ捌けるのはわたしくらいしかいないじゃない。こんな量無理よ」

「そ、そんな!どのみちお姉ちゃんがいても料理なんて無理だし、リンちゃんに頼るしかないと思っていたのに!」

「だったら量を考えなさいよ!」

「じゃあさ、ここでみんなで食べようよ。食べていきますよね?」

 

 リンに怒られているナギであったが、ふとデュークたちに一緒に魚でも食べないかと提案してきた。

 

「いいのですか?」

「あなた方も旅をしてここにいるんでしょ?だったら、せっかくだし一晩くらいここに泊まっていきませんか?ここは教会。経営者がちょっとあれだったとしても、人が来る分には大歓迎なんだ。ここに泊まって、せっかくだから旅の話でも聞かせてくれたらうれしいかな」

「そういうことでしたら、ぜひ。せっかくなので、料理も手伝いましょう。任せてください。故郷ではこういうことはよくやっていたものです。いいですかみなさん、失礼のないように!」

「もちろんですぜボス!」

「おっ。そりゃいいや。なぁいいだろリン。せっかくの機会なんだからさ」

 

 二人からの笑顔の提案を受けて、リンは仕方ないかとため息をついた後、

 

「そんな人数、どこで寝てもらおうかしら」

 

 あきらめて提案を受けることにした。

 

「ご心配なく。我々は寝袋だって持っています。旅の必需品ですからね」

「いや、スペース何とかあけますから、野宿はやめましょう。ここ、いちおう教会ですから、その前で野宿っていうのはわたしが気が進みませんし」

「ねぇリンちゃん。これどう料理する?串刺しにでもする?刺身にでもする?最悪火を通せば腹は壊さないから、とりあえず焼く?」

「リン、リン!オレは塩をたっぷりかけるのもいいと思おうぜ!」

「あんたたちはちょっと黙ってて」

 

 楽しそうに魚を抱える男二人を見て、リンはどうしたものかと頭を抱えた。

 けれどデュークはその様子を見て、リンはこの子たちと一緒にいたいのはこの子たちなのだろうなと、微笑ましく見ていた。

 

 

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