第4話です!
周囲を囲むノイズの群れ。その中心には異形へと変貌を遂げた陽日が拳を構え、ノイズ達をその赤い双眸で睨みつけていた。
だが戦いなどと無縁な生活を送っていた陽日。初めての戦闘に拳や足は震え、確かに怯えているのがわかる。
ジリジリと、現れた新たな標的にゆっくりと近づくノイズ達。陽日は一歩後ずさり、気絶する弓美へと視線を落とす。原理はわからないがこの姿でいる間はノイズに干渉でき、炭化させられることもできない。
だがそれはあくまでも自分だけの話。今倒れこんでいる弓美は只の人間、ノイズに触れられるだけで簡単に殺されてしまう。
「乱暴だけど、ごめんね!」
陽日は倒れこむ弓美をお姫様抱っこで抱えると、常人離れした跳躍力でノイズ達を飛び越えるとどこかへと走り去る。離れていく二人を遅れて追いかけるノイズの群れ。
陽日がやってきたのは人がいなくなったビルの前。その陰に弓美を隠した陽日は振り返り、追いかけてきたノイズ達を迎え撃つ。
「弓美を襲うなら、私を倒してからにして!」
飛びかかってくるノイズ達。陽日はお世辞にも鋭いとは言えない拳でノイズ達を殴り飛ばす。素体が子供とは言え、強化されたその拳はノイズ程度一撃で倒しきる威力を誇っている。
後ろへは行かせない、その一心でただひたすらに拳を振るう陽日。拳を振るう回数に比例してその数を減らしていくノイズ。しかし同時に陽日の体力も失われていき、腕が重くそして振るう拳が鈍くなる。
そんな陽日へ追い打ちをかけるように、カエル状のノイズは体を高速回転させ特攻を仕掛ける。巨大な弾丸となったノイズは陽日の胸部へ突撃。
コンクリートの地面を砕く一撃は陽日を容易に吹き飛ばしす。背中からビルの壁にぶつかり、地面に倒れこむ陽日。
「ゲホッ、ゴホッ……!」
胸を押さえ苦しそうに咳き込む陽日。頑丈になっているとは言え衝撃を完全に失くすことはできず、胸部と背中から伝わる痛みに呻き声を上げる。
(いた、い……くるしい……)
弱音を吐く心。泣きたくなる衝動を抑え、四肢に力を込めて立ち上がる。壁に手をかけ、ふらつく体を無理やり安定させる。
(でも、まだ立てる……まだ……まだ!)
赤い双眸は未だ光を失わずノイズ達を睨みつけ、そんな陽日へノイズ達は追撃を、特攻を仕掛ける。立っているのがやっとな陽日は腕を交差させ、ノイズ達の捨て身の一撃をはを食いしばって耐えるしかできない。
文字通り人間サンドバック状態だが、それが今の自分にできること。戦う技術を持たない自分が弓美を守る、唯一の手段。
「うぅ、あぁああああ!」
雨あられのように降り注ぐノイズを受け止め続ける。重い一撃が重なることで腕が軋み、激痛が体を走る。
数分、地獄のような時間が続いたところでようやく、ノイズ達はその数をゼロへと減らす。絶え間なく続いていた衝撃がなくなったからか、それとも限界が訪れたからか、陽日はその場に膝をつく。
変化していた体も元に戻り、痛む腕に表情を崩しながらも弓美の元へと向けて足を運ぶ。ビルの壁の後ろ、そこには静かに眠る弓美の姿があり安堵の息を吐く。
「よかっ、た……ぶじで……」
緊張の糸が解けたのか弓美の無事を確認した後、陽日はその場に倒れこむ。
次第に薄れゆく意識の中、誰かが己の名を呼ぶのを感じながら、陽日は静かに眠りについた。
「まったく、いつまでも帰ってこないから心配したんだぞ!」
「ご、ごめんなさい……」
目を覚ました陽日を待っていたのは弦十郎からのお説教。しょんぼりと項垂れる陽日だったが、それも仕方ないことだと納得する。
「ノイズの反応があったからと駆けつけてみれば……。君とあの少女も無事だったからよかったものを、一歩間違えていれば死んでいたんだぞ」
腕組みをし、はぁ、と息を一つ吐く。それは陽日のトラブルに巻き込まれる体質に対してへだが、彼女が無事に帰ってきたことに対する安堵からくるのものでもあった。
とはいえ弦十郎もそこまで怒る気はなく、早々に話を切り上げると別の話題へと移る。
「とりあえず、腕は少し強めの打撲で済んだそうだ。とはいえ安静にして、ゆっくりと療養するんだぞ」
少し強めの打撲、弦十郎から伝えられた症状に首を傾げそうになるも堪え首肯する。言うべきことと彼女の無事を確認し終えた弦十郎は病室を後にし、一人になった陽日は自身の両腕へと視線を落とす。
「打撲、だけで済んだんだ……」
あの時感じた痛みは打撲、というよりも骨が軋むような痛みだった。打撲だけで済んだとは到底考えられない。しかし実際は腕も動かす分には痛みが走るが、じっとしていればそこまで痛みは感じない。
なぜここまで違和感を感じるかと考え真っ先に思い当たったのはあの姿。この違和感にあの力が関わっていることは想像に難くないだろう。
「でも、全然ダメだった……」
今回、結果的に見れば弓美を守ることができた。だが過程を見れば素直に喜べるものではない。自分はただ壁になっていただけで、守るというにはあまりにも頼りなさすぎた。
力に振り回されるどころかそれ以前の問題。力を振るうことすらできていないのだから、頼りなく感じるのも仕方のないことだ。
「今のままじゃ、守れない……」
守るための力は今この手の中にある。あとはそれを振るうだけの
そこまで考えた時、不意に腹部が熱を帯びる。
──未熟なる者……悟を……振る…時……真…士と…らん
次いで頭の中に流れてきたのは何かを表す言葉。途切れ途切れに紡がれ意味ははっきりとはわからないが、それが何か大事なことを伝えるものだと不思議と確信が持てた。
未熟なる者、その言葉が自分を指し示しているものであるとも。
病室を後にし、一人廊下を歩く弦十郎。難しい顔をして歩く彼はある考え事をしていた。
それは現在、発生数を増やしつつあるノイズについてだ。ノイズの出現率は決して高くはない、だというのにここ1年前後で発生したノイズは例年に比べてあまりにも多い。もはや特異災害対策機動部だけでの対処は難しくなりつつあるのが現状だ。
だからこそ、弦十郎は人類最後の切り札を切るためある人物の元へと向かっていた。
とある部屋の扉を開き中へと入る。そこにいたのは、陽日よりも少し年上の少女。腰まで届く青髪を靡かせる、美少女と呼ぶに相応しい容姿を持つ彼女へ弦十郎は静かに話しかける。
「翼、お前に話がある」
彼女の名前は風鳴 翼。弦十郎の姪にあたる、人類が持つ最後の切り札と呼べる少女だ。
弦十郎が名を呼ぶと翼はゆっくりと体を向け、その視線を弦十郎と重ねる。
「第1号聖遺物『
「──っ!」
弦十郎の言葉に翼は目を見開かせる。それは彼女に終わりない戦いを告げるもの。だが翼はすぐに表情を元に戻し、確かな覚悟をもって応える。
「それが、私にできることなら」
「うん、もう怪我もばっちし治ったわね!」
慌ただしい初登校から数日後、了子から検査結果を伝えられる。
「それにしても結構早かったわね〜。あと五日はかかるはずだったんだけれど……まぁ早く治るにこしたことはないわよねぇ!」
からからと笑いコーヒーを飲む。そうした細かいところを気にしない点も彼女の長所であり短所なので陽日は、あはは、と笑みを返す。
小さく拳を握ったり開いたりしてみるがすでに痛みは消え去っている。
「それにしても陽日ちゃんってほんっとーに運がいいわよねぇ。2度もノイズに襲われて無事だなんて」
何気なく、了子が口にした言葉に陽日の笑みが凍る。そんな陽日の反応に了子は「あら?」と、面白いものを見つけたように笑みを深める。
「な〜に陽日ちゃん、何か身に覚えでもあるのかしら〜? お姉さんに聞かせてもらえる?」
「えっと、その……」
「もう勿体ぶっちゃって! こうなったら体に直接聞くしかないわね〜♪」
両手をワシワシと怪しく動かし、また不気味な笑みを浮かべながら迫る了子。そんな彼女に背筋が凍る何かを感じ距離を取る陽日。
なんというか怖いのだ、彼女は。まるで獲物を狙う肉食動物のようで、気を抜いたら何をされるか分かったものではない。
それにあの姿についてどう説明をすればいいのか、それが陽日にはわからなかった。人から大きくかけ離れた姿、そして力。もし、もしも話した後、拒絶されるようなことがあったら……そう考えると言葉が出てこない。
もちろん、2課の人たちがそんなことをするとは思えないが、どうしても嫌なことばかりが頭に浮かんでくる。
すると不意に、陽日は胸がざわつくのを感じ取る。それは忘れもしない、ノイズが現れた時と同じもので。
それと合わせるように、今度は2課内部にアラートが鳴り響く。何事かと陽日が辺りを見渡していると、了子が落ち着かせるように声をかける。
「大丈夫、別に非常事態が起こったわけじゃないわ。いや、実際には非常事態なんだけどね?」
着いてきて、そう言い部屋を出て行く了子。慌てて後をついて行く陽日へ、歩きながら話を続ける。
「陽日ちゃんが2課にいる以上、隠し通せるものではないから。早めに知っておいて欲しいの」
「知っておいて欲しいこと、ですか……?」
「そう! この国の最重要機密事項にして、この私、櫻井 了子が創り上げた最っ高傑作!」
そして辿り着いたのはオペレート室。その扉を開き了子は陽日の方へと顔を向けると、自信満々といった笑みを浮かべて告げる。
「それが──シンフォギアシステムよ!」
開ききった扉の向こう。大画面に映された映像に陽日は目を奪われた。そこには街に溢れるノイズ、そしてそれに立ち向かう一つの人影。
自分の感違いでなければ、ノイズに立ち向かうその人は、少女は
「風鳴、さん……?」
弦十郎の姪にして2課で唯一歳が近い少女、風鳴 翼だったのだから。
そして何より疑問に思ったのは、モニターに映った彼女の姿。何かの装備を身につけたその姿に、陽日の目は向けられている。
「来たか了子くん。それに陽日くんも」
「弦十郎さん、あれ、風鳴さんですよね……?」
「ああ。あれが今、世界で唯一ノイズに対抗しうる手段。人類の切り札、シンフォギアだ」
「……シンフォギア?」
聞きなれない言葉に首を傾げる陽日。
「そこから先はこのできる女、櫻井 了子にお任せ〜!」
そんな陽日に説明役を買って出る了子。
曰く、シンフォギアとは聖遺物と呼ばれる神話や伝承に登場する武具、その欠片を利用し作られた対ノイズの決戦兵器。異相差障壁と呼ばれるノイズ特有の世界をまたがる力、それを『調律』そして無効化しこちら側の物理法則下へ無理やり引きずり出す。さらにはノイズによる炭素分解を防護し、近接戦闘を行うことを可能とする。
「ノイズを倒す兵器……」
「そう! それこそがこの櫻井 了子が提唱した『櫻井理論』に基づいて作られたシンフォギアってわ・け♪」
映像へ視線を移すと、すでにノイズとの戦闘は始まっていた。翼はシンフォギアの鎧、その脛当部から一振りの剣を取り出しノイズへ斬りかかる。
そして振るわれた剣はノイズを縦二つに斬り裂き炭化崩壊させる。了子の言った通り、シンフォギアは本当にノイズの力を無効化することができるようだ。
次々と振るわれる剣。その悉くがノイズを切り裂き屠っていく。そんな翼の姿に目を奪われる陽日の耳に届くのは一つの歌。耳を澄ませれば、それは戦場で戦う少女が歌う戦歌。
「歌いながら戦ってる……」
「その通り! この歌こそ、シンフォギアの力を最大限引き出す手段。担い手の歌唱により、シンフォギアはその力を解き放つことができるのよ!」
了子の説明を聞きながら、モニターの向こうで戦う翼を見つめる。青い髪を靡かせ戦場を駆ける翼、その姿に陽日は見惚れていた。戦う力と振るう力、その両方を持つその姿に。
ただ力を持っているだけの自分とは違う、戦うための力を持っている翼に。
出現したノイズはわずか10分と経たないうちに翼の手で葬られる。煤が漂う戦場に立つ翼、そんな彼女の姿を見て抱く思いは……。
「……陽日くん? 俯いてどうしたんだ?」
「いえ……なんでもないです」
強くなる、そう思うのは簡単だ。だがその道程の険しさを、彼女の戦う姿を見て思い知らされた。
ただそれでも、自分は止まることなど許されない。託された力は人を守るために、そのために振るうと決めたのだから。
とりあえず思ったこと、主人公の気絶率高すぎ……。
まぁ仕方ないよね、小学生だもの(´Д` )
あと主人公は序盤は弱いです。
原作の五代さんみたく、初っ端から敵と殴り合うほどの戦闘能力はありません。
もしかしたら今後戦闘シーンでイラッとくる時が来るかもしれませんが、温かく見守ってください。
以上、第4話でした!