仮面の下に隠したもの   作:ヤムチャしやがって

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明けましておめでとうございます!
今年も拙作をよろしくお願いいたします!

では第6話をどうぞ!



買い物と共闘

 どうも、高嶺 陽日です。

 私がノイズと戦い始めて早半年の月日が流れようとしています。学校にも慣れクラスのみんなとの仲も良好で、不自由のない生活を送ることができています。

 翼さんとはあの一件以来なんとなくですけど距離が近くなったと、私個人としては感じており。二課で会った時は普通に会話もしますし、食事だってたまに一緒に食べました。

 まだ名前で呼んでもらえていないのは残念ですけど、それでも日々一歩前進。昨日よりもより近く、そしていつかは翼さんとお友達になってみせます!

 

 とまぁ、そんな決意を固めて日々を送っているわけですが

 

 

「さ〜て、今日は目一杯遊ぶわよ〜!」

 

「は、はぁ……」

 

 なぜか今私は了子さんと共に大型ショッピングモールに訪れていました。

 なんで私が了子さんとこの場にいるのかというと

 

『陽日ちゃ〜ん! ちょおっとお姉さんに付き合ってちょ〜だい♪』

 

『へ、了子さん? 付き合っててなにを……』

 

『いーからいーから! 時間は有限よ? 早く行きましょう!』

 

 なんてことがあり、あれやこれやという間に私はここへと拉致されて(連れて)こられたというわけです。

 

「ちょっとちょっと、テンションが低いわよ? もっと楽しんでいかないと」

 

「誘拐まがいの勢いで連れてこられたら誰でもこうなりますよ……」

 

「多少の強引さもいい女になる秘訣よ♪ 奥手すぎてちゃ意中の子なんか仕留められないわよ?』

 

 多少、という言葉に引っかかりを覚えますが、まぁそこはスルーしましょう。

 それよりもまずはここに連れてきたことに対する説明をしてもらわないと。

 

「もう、乙女二人でこんなところに来ると言ったら、そんなの買い物に決まってるじゃない!」

 

「買い物、ですか……?」

 

「だって陽日ちゃん、家から持ってきたお洋服しか持ってないじゃない。そろそろ新しいお洋服も欲しいかなと思ったのよ」

 

 どうやら私の新しい服を買うためだったらしい。けれど自分で言うのもなんですが、私はお洒落とかそういうものに無頓着で、今着ているTシャツにズボンがあれば十分なんです。

 なんてことを口に出したら

 

「な〜に言ってるの、女の子は常に流行に敏感でなくちゃいけないの! 流行り廃りにアンテナ伸ばしてそれに合わせてコーデを変える、基本中の基本よ?」

 

 とか、

 

「陽日ちゃんはもっと自分の魅力に気づきなさい。あなたは原石なの、女としての魅力を磨けばそれだけ輝くのよ」

 

 さらに、

 

「せっっかく可愛らしい容姿をしてるんだから。今日は私が1日、先生として陽日ちゃんの女子力を磨いてあげるからちゃーんと学習するのよ?」

 

 などなど、肩を掴まれ力説されました。どうやらお洒落というものはそれほど大事なものらしいです。

 しかしながら、私はお洒落の知識にかけては右に出る者がいないほど無頓着であるという自負があります。正直、服なんて動きやすければなんでもいいです。

 

「ダメよ、ダメダメだわ陽日ちゃん! 今日はそんなあなたの考えを、二課のお洒落番長である私が1から矯正してあ・げ・る♪」

 

 そう言い、私はうきうき顏の了子さんに手を引かれ、ショッピングモールの中へと足を進めました。

 

 

 

 

「ま、一先ずはこれで決まりかしらね」

 

「そ……そう、ですか……」

 

 あれから洋服のお店を回ること10近く。店に入るや否や服を手に取りそこからは試着よろしく、着せ替え人形タイムの始まりです。

 店舗ひとつでおよそ10分、次から次へと服を着ては脱ぎを繰り返し。そこから了子さんの気に入ったものを購入、そして次の店へ足早に移動しまた同じ工程を踏む。

 気がつけばお昼過ぎで、慣れないことをした私は疲れて息も絶え絶え。対する了子さんは、まだまだ物足りなさそうな顔で購入した袋へ視線を落としています。

 

 ……さすがはお洒落番長というだけあります。その肩書きの意味、身を以て経験しました……。

 

「ちょっと遅いけれどお昼にしましょうか。確か美味しいパスタのお店があったから、陽日ちゃんもそれでいい?」

 

「あ、はい」

 

 そして了子さんのオススメのパスタのお店へと足を運んだ私たち。やはり美味しいと評判だからか、お昼過ぎだというのにもかかわらず空席は僅かしかありませんでした。

 空いている席に座り、了子さんが注文をすませる。ようやく座ることができ、ほっと一息つくと微笑みながら了子さんが話しかけてくる。

 

「ふふっ、疲れちゃった?」

 

「はい、とても……」

 

「まぁ慣れてないからしょうがないわよね。でも、これでもまだ手を抜いてあげてるのよ?」

 

 今ですら足が痛いというのに、これで手を抜いているんだったら、本気を出された日には私死んじゃうかもなぁ……。

 

「ほんとう、お洒落って大変なんですね」

 

「どう? 自分で出来そう?」

 

「……たぶん無理ですね。私じゃお店ひとつでギブアップしそうです」

 

 私の言葉に苦笑する了子さん。

 ここまでしてくれた了子さんには申し訳ないけれど、私には無理でした。一人じゃ満足に買い物もできそうにありません。

 だけど、

 

「でも、了子さんとだったら来てもいいかなって……」

 

「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」

 

 それはどうして、と尋ねてくる。

 答えは……この場で言っていいものか迷うが、了子さんの笑顔に負けてしまいました。

 

「母と買い物をしたらこんな風なのかなって、そう思ったので」

 

 私のお母さんは物心つく前に病気で亡くなったらしく、知っているのは写真の中の彼女のみ。もちろん一緒に買い物などできるはずもありません。

 だから買い物をする了子さんの姿にお母さんの姿を重ねてしまって……母と娘の買い物ってこういうものなのかなって、擬似的にでも体験することができました。

 

「確かに疲れたけど、それ以上に楽しかったです。だから次に行く時も了子さんと一緒がいいなって」

 

「……そう」

 

 小さく呟く了子さん。その瞳は私を見ているようで、それでいて何処か遠くを見ているみたいな。

 そんな了子さんを不思議に思いながら、私はお手洗いへ行くために席を外しました。

 

 

 

 

「ん〜、今日はこれくらいにしましょうか」

 

 パスタを食べ終え、買い物を続けることさらに一時間とちょっと。後半戦は少しゆっくりお店を見て回ったのでそこまで疲れることはなく、純粋に買い物を楽しむことができました。

 背伸びをする了子さんの側には、今日の戦利品である袋がいくつも重ねられています。

 

「買ってもらった後で言うのもなんですけど……本当に良かったんですか? 服をそんなに……」

 

「いいのよ。これくらいの出費、たいしたことないわ」

 

「でも……」

 

「陽日ちゃんはもっと甘えることを覚えなさい。まだまだ子供なんだから、無理に背伸びしなくていいのよ」

 

 コツン、と額を拳で軽く押しそう言ってくる了子さん。

 

「自分の心には素直に、ね?」

 

「……はい」

 

 これが大人の魅力というやつなのでしょうか、微笑むその姿に思わず見惚れてしまいました。それに了子さんもちゃんとした大人なんだなと、言われた言葉を思い返して再認識させられました。

 普段の生活がアレなので、一層深く感じてしまいます。これがギャップというやつなんでしょうか?

 

「さて、それじゃあ帰りましょうか!」

 

「はい!」

 

 了子さんと二人、駐車場へと向かおうとしたその時、胸の中を弄られたかのような感覚が走り

 

「ノイズだぁあああ!」

 

 誰かの叫びとともにそれは現れた。

 

「ノイズ……!」

 

「──弦十郎くん、ノイズが出現したわ。すぐに翼ちゃんを呼んでちょうだい」

 

 電話で弦十郎さんにノイズの出現を伝える了子さん。目を凝らして見ると、逃げまどう人たちの中に確かにノイズの姿があった。

 

(たぶん翼さんが来るまでに時間が掛かる……)

 

 なら、それまでの間 誰が食い止めるのか。そんなことは聞くまでもなく、答えは私の中に。

 

「私は陽日ちゃんを連れて安全な場所まで……って陽日ちゃん⁉︎──いいえ、陽日ちゃんがノイズの方に」

 

 ごめんなさい、了子さん。後でちゃんと謝りますから、どうか安全な場所まで……。

 了子さんの叫びを背中に浴びながら、私はノイズのいる場所へと向かって走り出した。

 

 人の流れと逆に進み続けること約2分。人の波も途切れ、眼前に現れたのは煤だらけになったショッピングモール。そしてその廊下を進行のごとく突き進むノイズの群れ。

 対するは私一人。明らかに戦力の差は歴然。そんな現実に手が、足が、心が震える。

 戦うことは怖い。それは半年が経った今も変わっていない。

 

「でもやるんだ。それが私に託された使命だから……」

 

 そう、自分に言い聞かせる。戦いを恐れる自分を奮い立たせるために……。

 腹部に意識を集中、すると暖かさと同時に何かが浮かび上がる感覚が。

 

 そして一つの言葉を紡ぐ。それは臆病な自分から強い自分へ変わるための呪文。

 仮面の下に弱さ(わたし)を隠す、魔法の言葉。

 

 

 

「──変身!」

 

 

 

 

 

 ヘリコプターの下に見える、ショッピングモールを闊歩するノイズの群れ。

 

「風鳴 翼、目的地へ到着しました」

 

『無理せず戦え! いいな!』

 

 無線から聞こえる弦十郎叔父様の声。それに返事を返し、胸元のペンダントへと手を伸ばす。

 そしてヘリのドアから身を投げるように飛び降りる。空を切る音が耳を鳴らす中、慌てることなく、静かにその言葉を紡ぐ。

 

「──Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 胸に浮かぶ聖詠を歌い、聖遺物『天羽々斬』がシンフォギアとして構築されていく。それは地面に着地する頃には完全な鎧となり、ノイズの群れの中心に私は降り立った私は装甲から一刀の剣を取り出す。

 

「風鳴 翼……押して参る!」

 

 剣を振るい、迫り来るノイズを順に斬り捨てていく。突き、払い、時には脚部の剣で、これまでの培ったものを発揮しノイズを屠る。

 だが現れたノイズは相当の数らしい。いくら斬り払おうとも一向にその底を見せない。

 

「なら、一気に数を減らせば!」

 

 剣を天にかざす。すると青い剣が雨のようにノイズ達へと降り注ぐ。その一撃で一気にノイズの数を減らすことはできたものの、それでもまだ残り数は多い。

 こちらの戦力は一人。戦いが長引けば長引くほど不利になるのは自明。短期で決着をつけるのが好ましいが、大規模な一撃ではこの建物自体を崩壊させかねない。

 

 止むを得ず、先ほどまでと同じようにノイズを切り捨てていると、私を囲むノイズの向こう側に異変を感じ取る。

 目を向ければ、そこには宙を舞い炭化崩壊するノイズが。何事か、目を凝らして見るとノイズの向こうに見えたのは『白』だった。

 

「あれは……!」

 

 拳を、足を、自らの体全てを使いノイズを掃討する異形。見間違うはずもない、あれは半年前に現れた未確認の生命体。

 どうやらあちらもノイズの数に舌を巻いているらしい。だとすれば、私がとる行動も一つ。

 

「道を開けろ!」

 

 剣から斬撃状のエネルギーを飛ばし異形との道を開く。そしてすぐさまそのそばへと駆け寄り、背中合わせに武器を構える。

 突然のことに一瞬、異形はこちらへ目を向けるが、すぐさま周囲を囲むノイズへと視線を戻す。

 

「……お前が敵か味方か、今はその疑問は捨ておこう」

 

「……」

 

「互いにノイズを敵とする身。今この時、力を貸してくれるか?」

 

 私の言葉に異形はこくりと、小さく首肯する。

 

「そうか……ではいくぞ!」

 

 拳と剣。ノイズを葬る世界で二つだけの力。それらは合わさり、迫るノイズを蹂躙していった。

 

 

 

 

 

 

 モニターに映る二つの影。一方は白く、四肢を使いノイズを砕く異形。そしてもう一方は青く、煌めく銀の剣を用いてノイズを斬り払う戦姫。

 片方は無言のまま淡々と、対し少女は歌を口にし輝かしく。

 

「すんなり協力してくれて良かったですね、司令」

 

 藤堯の安堵のこもった声に弦十郎は深く頷く。今まで接触を避けられ続けていた分、翼との共闘は一抹の不安があった。

 

「どうやら俺の杞憂で済んだようだな……」

 

 背中合わせにノイズと戦う二人を見て、弦十郎もまた、安堵から小さく息を吐く。

 だがそれも一瞬で、弦十郎は再び顔を険しくさせる。

 

『──陽日ちゃんがノイズの方に走っていっちゃたの!』

 

 先ほど了子から電話で伝えられたことを反芻させる。

 信じたくはない、できることならば杞憂であってほしい。そんな弦十郎の思いとは裏腹に、彼の脳は冷静にモニターの異形に対して一つの仮説を導き出した。

 

「君は……陽日くんなのか……?」

 

 

 

 

 

 

 





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