やはりSAOでも俺の青春ラブコメはまちがっている。 作:惣名阿万
10話です。ちょっと長いですがよろしくお願いします。
《第1層フロアボス攻略会議》は《トールバーナ》の中央広場で行われる。広場と言ってもそこは階段状の客席がステージを囲むように配置された劇場跡地だ。
現在時刻は午後三時五十分。アルゴを含めた俺たちは会議の始まる十分前に広場へ到着した。
小高い丘から広場を見下ろすと、劇場跡のいたるところにプレイヤーの姿があった。そのほとんどが複数人で固まって談笑している。どうやらすでに前哨戦――パーティーメンバーを獲得するための交渉合戦は始まっているようだ。
そんな広場の端の方に、ひっそりと座るプレイヤーが二人。
片方は赤いフード付きのケープを着た少女。華奢な身体つきはともかく、フードに隠れた顔はここからじゃ窺い知ることはできない。どっかりと適当に座るプレイヤーが多い中、一人だけ行儀よく足を揃えている。
もう一人はフード女子と同じくらい華奢な体格と幼い顔つきながら、その実恐ろしく強い黒髪の少年剣士――キリト。キリトの方もきっちり座っているものの、それは緊張に依るところが大きいようだ。
キリトは俺たちに気付くと明らかに安心した表情を浮かべて手招きしてきた。
特に拒む理由もなく、また丁度いい具合に席も空いていたのでキリトの隣へ。
「よっ、キリト。十日ぶりだな」
「久しぶり。ハチも来たんだな。ユキノさんも、久しぶり」
「こんにちはキリトくん」
《ホルンカ》を出て以来、俺たちは行く先々で何度も顔を合わせていた。どういうわけか、アルゴから購入した情報に従って進むと、必ずそこにキリトがいるのだ。十中八九、アルゴが要らぬ気を回してたんだろう。
初めこそ俺たちを避けていたキリトも遭遇回数が二桁を超える頃には諦めたようで、顔を合わせれば情報交換や世間話をする程度の仲にはなっていた。
キリトは俺とユキノに目を向けた後、さらに俺たちの後ろへその視線を巡らせた。途端、キリトの目が大きく見開かれる。
「Hi. Nice to meet you!」
「え……。ああ、えっと、よろしく?」
わかる。わかるぞ、キリト。いきなり言われてもびっくりするよな。けど、その反応はボッチの証だから気を付けような。
「こいつはパン。ここへ来る前に迷宮区で会った。で、こっちがキリト。何度か顔を合わせたことのある、まあ顔見知りってとこだな」
キリトとパンの間に立ってそれぞれを紹介する。例によってパンがキリトの手を取ってブンブンする。キリトは免疫がないようでタジタジになっていた。
ようやく解放されたところで、俺の陰からアルゴがスッと出てくる。
「ヨオ、キー坊。二時間ぶりくらいだナ」
「アルゴか。どうしたんだ? あの交渉についちゃ答えは変わらないぞ」
「うんにゃ、今度はただの偶然ダ。オイラはハッチについてきただけだからナー」
あの交渉……? なんかよくわからんが、やっぱりキリトもアルゴとはただの顔見知りってだけじゃなさそうだな。
「……あなたにもお仲間がいたのね」
ふと、キリトの向こうからそんな台詞が聞こえた。キリトから人一人分離れた位置に座るあの赤いケープの少女だ。
「ああ、お仲間というか、顔見知りかな」
「ふぅん……。どっちにしても関係ないけど」
……随分やさぐれた女だな。突き刺すような雰囲気がユキノに似ている。腰に差してるのもユキノと同じレイピアだし、こいつも氷属性なのかもしれん。
思わずもう一人の氷属性持ちの方を見やる。と、向こうはそれを予想していたようでこちらへ実にいい笑顔を向けて来た。
「なにかしら? 言いたいことがあるのならじっくりと時間をかけて聞くけれど?」
「いや……なんでもねえよ」
なんなんだよこいつ。笑顔に殺気が籠ってるじゃねえか。怖えよ。あと怖い。
すぐ傍から発せられる凍てつく波動に身体を震わせていると、手を叩く音と共によく通る声が聞こえてきた。
「はーい! それじゃあ五分遅れたけど、そろそろ始めさせてもらいます!」
声のした方へ振り向くと、そこには青い長髪のイケメンがいた。声がどことなく材木座に似ている。が、こいつの方が清涼感三割増しだな。
にしても、すげー髪色だな。ゲーム的には序盤のこの第一層には髪染めアイテムなんて売ってないし、ドロップアイテムだとすれば相当レアな部類だろう。今まで見たことも聞いたこともなかったし。
「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう! 知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな! オレは《ディアベル》、職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」
男がそう言うと、近くの集団がどっと囃し立てた。多分「あいつの」グループなんだろう。
青髪の騎士――ディアベルは、盛り上げ役の仲間たちを制すると真剣な表情になった。
「……今日、オレたちのパーティーが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か、遅くとも明後日には、ついに辿り着くってことだ。第一層の……ボス部屋に!」
ディアベルの言葉を聞いて広場にいるプレイヤーがざわめく。それもそのはず。現状公開されてるマップデータは十五階までで、最上階に到達するのにはあと二、三日かかると思われていたからだ。
もちろんマップデータを公開しないでその先に行っているプレイヤーもいるだろうし、実際俺とユキノも今日の攻略で十七階に到達していた。キリトあたりならもっと上まで行ってたかもしれないし、最上階に辿り着くプレイヤーがいてもおかしくはない。
ただやはり、「いよいよか」とは思う。
ここまで一か月かかってようやく第一層の終わりが見えてきた。今日に至るまで少なくない死者――犠牲者が出てるし、生きてるプレイヤーの大半もはじまりの街から出られずにいるらしい。
ディアベルもその辺に思うところがあったようだ。
「一か月。ここまで、一か月もかかったけど……それでも、オレたちは、示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、はじまりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ! そうだろ、みんな!」
再びの拍手喝采。しかも今度はお仲間だけじゃなく、広場にいるほとんどのプレイヤーからだ。手を叩いていないのは俺とユキノ、あとはキリトにその隣の女子くらいか。
はいはい立派立派。けど、義務なんて言い方をされたくない。
別に偉ぶるわけでもなければ切り捨てるわけでもないが、ここまで来たのは俺自身それなりに努力してきたからだし、はじまりの街にいるやつらはそれを自分で選んだのだから、トッププレイヤーだとかいう理由で責任を持つのはお門違いだ。
俺は俺自身のために戦って、駆けずり回って、結果ここにいる。
誰の為でもない。自分の為にだ。
ディアベルの演説に拍手が続く中、唐突にそれを遮るような声が響いた。
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
歓声が止まり、全員が声の主へ視線を送る。広場の階段席中央やや左に立つ、トンガリ頭の少し小柄なプレイヤー。茶色のトゲトゲとした頭は、以前放送していたバラエティー番組のアイテムによく似ている。
そいつは全員の視線が集まったと見るや、あんまり軽やかとは言えない跳躍で段差を飛び降りていき、ディアベルの横に着地した。
「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」
トンガリ頭の言に、ディアベルは気分を害した風もなく答えた。
「こいつっていうのは何かな? まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するならいちおう名乗ってもらいたいな」
「………………フン」
尊大に鼻を鳴らして、トンガリ頭が振り返った。
なぜだろう。態度が一々小物っぽい。
「わいは《キバオウ》ってもんや」
小物っぽい言動なのに、名前はちょっとカッコ良さげだな。
「こん中に、五人か十人、ワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」
……そういうことかよ、くだらねえ。ほんと、こういう他人に当たり散らすやつってのはどこにでもいるんだな。
「詫び? 誰にだい?」
「はっ、決まっとるやろ。今までに死んでった千五百人に、や。奴らが何もかんも独り占めしたから、一か月で千五百人も死んでしもたんや! せやろが‼」
ディアベルの問いかけに対して糾弾の声を上げるキバオウ。回りくどいキバオウの主張が、ディアベルのお蔭で徐々にわかってくる。
「キバオウさん。君の言う《奴ら》とはつまり……元ベータテスターの人たちのこと、かな?」
「決まっとるやろ」
キバオウは広場のプレイヤーを見回しながら
「ベータ上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にダッシュではじまりの街から消えよった。右も左も判らん九千何百人のビギナーを見捨てて、な。奴らはウマい狩場やらボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや」
それがさも悪いことだというように、キバオウは語る。
だが、果たして本当にそうなのだろうか。
デスゲーム開始から一か月。アインクラッドにおける死者の数は1480人にも及んだ。このペースが続くようなら、全プレイヤーが消滅するのに半年もかからない。
だが亡くなった1480人のうち、少なくない割合を占める死因は自殺だった。ゲームから出られない、HPがなくなったら死ぬ、そんな言葉を一方的に突きつけられて恐慌したプレイヤーが、逃げ出したい一心で安易な手段をとる。そうして自殺を図る者が、特に最初の数日間は後を絶たなかった。
またモンスターとの戦いで命を落とす者も確かに多かったが、彼らの多くはSAOでの戦闘経験がほとんどない初心者だった。慣れない戦いを強行した結果、満足に技を繰り出すこともできず、リアルな敵の姿に竦んで動けず、と、そうして死んでいった者が多かった。
彼らの死は、誰かが責任を負うようなものじゃない。彼らが自分から行動して、その末の結果なのだから、誰かに責任があるとか言うのはおかしな話だ。
ましてや元ベータテスターに責任を押し付けるなんてのは全く以て筋が通ってない。
なぜなら1480人の死者のうちには、元ベータテスターも数多く含まれているのだから。
「こん中にもちょっとはおるはずやで。ベータ上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間に入れてもらお考えてる小狡い奴らが。そいつらに土下座さして、貯め込んだ金やアイテムをこん作戦のために軒並み吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし預かれんと、わいはそう言うとるんや!」
キバオウがその名の通りに噛みついた。広場を見渡し、封殺するように睨みつける。
広場にいるプレイヤーたちは誰一人口を開くことができなかった。今ここで中途半端な反論でもしようものなら、すぐさま元ベータテスターと疑われるだろうからだ。否定したところで言い訳扱いされるし、言い訳なんて意味がない。誰しもが勝手に解釈するのだから。
せめてまとめ役ならばとディアベルを見るも、青髪の騎士は成り行きを見守っていて介入しようとしない。その顔には不自然なほどに戸惑いも驚きもなかった。
まるで、こうなることがわかっていたかのように平然としていた。
「発言、いいか」
ふと、静寂を低く響く声が破った。立ち上がったのは広場の最前列に座っていた男だ。
190cmはあるかという長身に盛り上がった筋肉、褐色肌で頭をスキンヘッドにしていて、背中側だけでもかなり迫力がある。正面から見たら尚更だろう。大男がキバオウの前まで行くと、トンガリ頭が少し縮んだように見えた。
「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪・賠償しろ、ということだな?」
「そ……そうや」
哀れ、キバオウは巨漢の迫力に気圧されて身を引きかける。が、どうにか踏みとどまって睨み返し、叫んだ。
「あいつらが見捨てへんかったら、死なずに済んだ千五百人や! しかもただの千五百ちゃうで、ほとんど全部が、他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったんやぞ! アホテスター連中が、ちゃんと情報やらアイテムやら金やら分けおうとったら、今頃ここにはこの十倍の人数が……ちゃう、今頃は二層やら三層まで突破できとったに違いないんや‼」
キバオウがそう喚いたときだった。
「いい加減にしてちょうだい」
隣のユキノが透き通るような声を上げ、広場の空気が凍り付いた。
ユキノは立ち上がり、静かに広場の中央へ歩いていく。
ピンと姿勢よく歩く姿や彼女の纏う冷風に似た雰囲気、そして総武高校において言えば知らぬ者のない美貌が、この場にいる全プレイヤーの目を奪っていた。
傍を通るたびに息を呑む者、ぽかんと口を開いた状態で固まる者……。それらには一瞥もくれず、ユキノはキバオウとエギル、そしてディアベルの前へ。
「黙って聞いていれば、いつまでもぐちぐちと。恥を知りなさい」
ユキノは開口一番、キバオウへ厳しい言葉をぶつけた。
「な、なんやジブン、いきなりしゃしゃり出てきおってからに……」
「そうやってがなりたてれば意見が通ると思っているなら大間違いよ。あなたの支離滅裂な主張に付き合う時間が惜しいから、黙っていてくれないかしら」
「っ……」
痛烈な一言にキバオウも言葉に詰まる。
その間隙を突いて、エギルと名乗った大男が穏やかな声を挟んだ。
「キバオウさん、あんたはああ言っていたが、金やアイテムはともかく情報はあったと思うぞ」
そう言って、エギルはポケットから一つの冊子を取り出した。羊皮紙を紐で綴っただけの簡易的な冊子で、表紙には丸い耳と三本の髭をあしらった《鼠マーク》が描かれている。
「このガイドブック、あんただって貰っただろう。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布してるんだからな」
ガイドブックと呼ばれるその小冊子を見た瞬間、チラリとユキノの視線がこちらへ向けられる。射抜くような眼差しに思わずたじろぐが、ユキノはすぐに視線をキバオウへ戻した。
「……む、無料配布だと?」
と、キリトが小さな声で驚きを露わにする。
当然だろう。なんせキリトはアレを金を払って購入したはずだからな。
「……わたしも貰った」
「俺も貰ったな」
今までひっそりとしていたフード女子が言うのに続く。
キリトが戸惑いつつ「タダで?」と彼女に訊ねると、彼女はこくりと頷いた。
「道具屋さんに委託してたけど、値段が0コルだったから、みんな貰ってたわ。すごく役に立った」
「ど……どうなってんだ……」
悪いな、キリト。俺もそれには一枚噛んでるんだ。
そもそもアルゴに攻略本作りを依頼したのは俺だ。あの情報屋と初めて会った日、俺は攻略本作ってくれと頼んだんだ。
ベータテスターなら以前攻略した際の情報を知っているだろうし、先行する元ベータテスターから情報を集めて後続に還元すれば、その差も縮まって後々しこりが残るのを防ぐことができるかもしれない。
まあ実際はベータのときと違う部分が少なからずあったようで、アルゴ自身や彼女の仲間連中は文字通り駆けずり回って変更後の情報集めをしてくれた。その甲斐もあって、元ベータテスターが足下を掬われるってこともだいぶ減ってきたらしい。
それが証拠に、攻略本の裏表紙には文庫の帯よろしく鼠の一言が書かれている。
『ベータテスターのお墨付き! 大丈夫。ネズミ印の攻略本だよ!』
何をもって大丈夫なのかは甚だ疑問だが、ベータテスターのお墨付きという文句は他のプレイヤーに複雑な感想を抱かせた。
「ベータテスターの情報なんて信じていいのか」と思う反面、見るからに有益な情報が並んでいれば心も揺れ動くというもの。ましてやそこに書かれたことが悉く攻略の役に立ったとなれば嫌でも信用せざるを得ない。
人間、いつだって自分に都合よく解釈したがるもんだからな。
キバオウは痛いとこを突かれたと言わんばかりの表情を浮かべた。
「――――貰たで。せやけどこいつは……」
「信用ならない、とでも? なら、あなたはこの町まで独力で辿り着いたのかしら」
キバオウの台詞を先取りして、ユキノが追い詰める。あいつマジで容赦ねえな。
「裏表紙の謳い文句を見ても判る通り、こいつに載ってるモンスターやマップのデータを情報屋に提供したのは、元ベータテスターたち以外には有り得ない」
広場にいるプレイヤーの多くが頷いた。キバオウはぐっと口を閉じ、その後ろではディアベルが少しだけ視線を落としていた。騎士の様子に、再び違和感を得る。
「いいか、みんなも知っての通り、情報はあったんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は、彼らがベテランのMMOプレイヤーだったからだとオレは考えている。このSAOを、他のタイトルと同じ物差しで計り、引くべきポイントを見誤った」
「そこに元ベータテスターが追うべき責任はない。少なくとも、彼らが面倒を見なくてはならないなんて義務はないわ。犠牲に対する責任を追及するのは、全く以て見当違いよ」
「今必要なのは、オレたち自身がそうなってしまうのかどうかだ。それがこの会議で話し合われると、オレは思っているんだがな」
ユキノとエギルに立て続けに言われて、キバオウは口籠ってしまう。
そもそもが少なからぬ言いがかりを含んだ主張だっただけに、理路整然と反論されてしまえば何も言えないのも仕方ない。エギルとユキノがそれぞれ別種の迫力を持っていたってのもあるだろうが。
と、そこでようやくと言うべきか、ディアベルが頷いてキバオウに歩み寄った。
「キバオウさん、君の気持ちも理解できるよ。俺だって苦労してここまで辿り着いたのに、そのときにはもう何人か先行して辿り着いてる人がいたからな。でも、そこのエギルさんの言う通り、今は前を見るべきときだろ? 元ベータテスターだからって……いや、元ベータテスターだからこそ、その戦力はボス攻略のために必要なものなんだ。彼らを排除して、結果攻略が失敗したら、何の意味もないじゃないか」
さすがナイトを自称するだけあって爽やかな弁舌だ。寧ろ爽やかすぎて寒いまである。
聴衆の中には深く頷いている者が何人もいるが、悪いな、俺はどうしても人の裏を読んじゃう性質なんだ。
あんたが出来すぎなタイミングで尤もらしいことを言ってくれたお蔭でわかったよ。
「みんな、それぞれに思うところはあるだろうけど、今だけはこの第一層を突破するために力を合わせて欲しい。どうしても元ベータテスターとは一緒に戦えない、って人は、残念だけど抜けてくれて構わないよ。ボス戦では、チームワークが何より大事だからさ」
ぐるりと一同を見渡したディアベルは、最後にキバオウを真顔でじっと見詰めた。キバオウはしばらくじっとその眼差しを受け止めていたが、やがてふんっと鼻を鳴らすと負け惜しみじみた声で言った。
「…………ええわ。ここはあんさんに従うといたる。でもな、ワイは認めんで。元ベータテスターに非があったのは間違いないんやからな」
そう言って、キバオウは鎧をジャラジャラ鳴らしながら取り巻きの方へ戻っていった。
それを見送ったエギルもほんの一言二言ユキノと言葉を交わして元の席に戻り、ユキノも出ていったときと同じく堂々と歩いてこちらへ戻ってきた。
「お疲れさん。まあ、アレだ。俺もイラっときたし、間違ってないんじゃねえの」
「…………ええ。ありがとう」
俺が労うと、ユキノは驚いたような表情を浮かべた後、小さく微笑んだ
なんとも気恥ずかしくなって顔を背ける。と、ふと目についた先でキバオウがこちらを睨んでいることに気付いた。
その目は暗くもなく明るくもなく、ただ何故か寒気の走るような、そんな色をしていた。
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