やはりSAOでも俺の青春ラブコメはまちがっている。   作:惣名阿万

31 / 58
筆が乗ったので今日のうちに。

16話です。よろしくお願いします。


第十六話:だからこそ、彼女にはわかることがある

 最後に残った陽の瞬きが果てのない雲海へ沈もうとしたとき――。

 

「ハチさん……?」

 

 すっかりまばらになった人影の一つが不意に足を止めて呟いた。

 ともすれば風に溶けて消えてしまうような囁き。けれどここは現実ではなくゲームの中で、システムが世界の理を定めている。どんなに小さな声だとしても、聞こえるとシステムが判断する範囲にいればハッキリと聞こえる。

 

 でもって、他人に名前を呼ばれると過剰に反応してしまうのはボッチの習性だ。

 

「ひ、ひゃいっ!?」

「ひっ……!」

 

 驚いて振り向くと、そこには俺以上に驚いて怖がるサチがいた。両手を身体の前でクロスしてるあたり、それはもう完璧なまでに引いてらっしゃる。

 

 いやいや、ぼーっとしていたところで急に呼ばれたら誰だってビビるだろ。ドッキリ的な。アレだよアレ。だから俺は悪くない。悪いのはこの目。やっぱり俺が悪いんじゃねぇか。

 

「サチ? あー、その、なんだ…………悪い」

「い、いえ。ちょっと驚いちゃっただけで……。こちらこそ、ごめんなさい」

 

 なんだこのお互い譲りあった結果やっぱり気まずくなって何話したらいいかわからなくてどっちも黙っちゃう感じ。忘れてた記憶が蘇るこの感じはそう、俺が中学二年生の秋……。

 

「……あ、あの」

「え、あ、はい」

 

 サチが何か言いかけたのでおふざけは止めにする。決して黒歴史を思い返して泣きそうになったから止めたわけじゃない。本当に。ハチマンウソツカナイ。

 

「あ、その、ハチさんもこの街に来ていたんですね」

「ああ、そりゃまあ攻略組の端くれだからな。っていうか、前にも言ったけど敬語じゃなくていいぞ、ほんと。敬われるような行動とってないしな」

 

 恨まれるような行動はとってるけどね!

 

「そう、だったね。うん……」

 

 思い出すように胸に手を当てて俯くサチ。表情は暗く、肩は震えている。

 

 ま、当然と言えば当然だろう。彼女からすれば俺はギルドを滅茶苦茶にしかけた奴なのだ。怯えるのも無理はないし、寧ろ顔を見てすぐ逃げなかっただけ温情があるくらい。

 

 ベンチから立ち上がって背を向ける。これ以上ここにいてもサチを無駄に怖がらせるだけだし、少し肌寒くなってもきた。

 頭の中は未だぐるぐると回っているが、どれも要領を得ない上に答えなんて出ない。こんな日はさっさと宿に帰って寝るに限る。

 

「じゃあ、俺は……」

「待って!」

 

 帰るわ、と続けようとしたところで呼び止められた。

 振り返ってみると、サチは左手で胸のあたりを抑えながら、右手は少しだけこちらへ伸ばしている。

 

 目が合うと、サチは怯えたように手を引きかけて、けれど途中で止めて握り込んだ。

 

「あの、少しだけ話してもいい、かな。あ、時間があればで、いいんだけど」

 

 未だ肩は震えている。だが弱々しくも確かにそう言って、さっきまで俺が座っていたベンチをちらと見た。

 

 女の子にこう言われて断れる男がいるだろうか。いや、いない(反語)。

 

「まあ、時間とかは別に大丈夫だけど」

 

 っべー、なんかめちゃくちゃ恥ずかしいなんでだこれ。

 

 内心で悶えながら元居たベンチに腰掛ける。

 サチはくすっと少しだけ笑って、一人分開けた隣に座った。

 

「ありがとう。ハチは優しいね」

「バ、バッカお前、俺が優しいとかねーから。アレだよアレ。おもてなしの心? みたいな?」

 

 なにこいついきなり訳わかんないこと言ってんだよ。うっかり惚れちまうとこだっただろ。そんで告白して怖がられてフラれるまである。怖がられた上にフラれちゃうのかよ。

 

 俺の反応を見てクスクス笑ったサチは、しばらくすると笑みを潜めて申し訳なさそうな顔になった。そのままこちらを向き、スッと頭を下げる。

 

「……ごめんなさい。ずっと謝りたいと思ってたんだけど勇気が出なくて。偶然会えなかったら多分、ずっと謝れなかったと思うから」

 

 突然そう言い出したサチに困惑する。

 恨まれることこそあれ、謝られることなんてないと思っていた。

 

「あれから、私は前に出なくてよくなった。黒猫団のみんなとも変わらず一緒にいられて、みんなも前よりずっと真剣に最前線を目指してる。キリトも手伝ってくれるし、稼ぎもすごく良くなったの」

 

 ゆっくりと、噛みしめるような口調。だから俺はただ黙って聞いていた。

 だから、とサチは続ける。

 

「全部、全部あなたのおかげ。だから、ありがとう。ごめんなさい」

「よせ、別になにもしてねぇ」

 

 それは全部、黒猫団の五人が努力した結果だ。

 俺はただ引っ掻き回して滅茶苦茶にして、元々あったものを台無しにしただけ。寧ろ、彼らの関係を修復不能なまでにぶち壊しかねない真似をしたのだ。

 

 そんな自省の念は多少声に現れていただろう。

 だというのに、あろうことかサチは笑みを浮かべていた。

 

「…………なんだよ」

「ううん。ふふ、ほんとにキリトの言った通りだなって思って」

「な、くそっ、あいつ」

 

 余計なこと吹き込みやがって。

 

 俺がイライラ悶々としてる間に、サチは夜の雲海へ目を向けていた。

 

「キリトが色々教えてくれるお陰でみんなすごく強くなったの。ササマルも盾を持つようになったし、ダッカーはスキル熟練度をいっぱい上げてる。テツオはSTRを伸ばして大きな盾に変えたし、ケイタなんて、フルプレートに両手剣で「これで重剣士だー」なんて言い出して。…………みんな、みんな真剣なんだなって」

 

 へぇ。あいつらがそんな風にねぇ。心を入れ替えたって感じか?

 

 サチの言ったパーティー構成なら、レベルとスキル熟練度が上がってくれば十分攻略組でも通用するだろう。

 四人ってとこが気になるが、他のギルドのプレイヤーを入れて暫定パーティーを組むなんてのはよくあることだしな。

 

 と、そこで彼女自身はその後どうしているのだろうと思った。

 

「お前は後方支援に回ったのか?」

 

 訊ねると、サチは少し恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。

 

「えっと、私は《裁縫》スキルを取ったの。今はまだ熟練度も高くないからあんまり貢献できてないんだけど」

「まあ、二週間そこそこじゃなぁ」

 

 プレイヤーの取得できるスキルは熟練度によって強化されていくシステムで、これはそのスキルによる行動を繰り返して行うことで熟練度が溜まっていく仕様だ。

 

 使えば使っただけ熟練度は上がるんだが、如何せんこの熟練度は恐ろしく溜まるのに時間が掛かる。

 例えば俺の《槍》スキルはゲーム開始とほぼ同時に獲得し今まで使い続けているが、熟練度はようやく600を超えた程度。一番使用頻度の高いスキルですら半年かけてもそれしか上がらないのだ。

 まあ同じく最初期に取得した《隠蔽》はどういうわけか900を超えてるんだが。《ステルスヒッキー》の名は伊達じゃない。

 

 俺の《隠蔽》スキルの成長スピードはともかく、このようにスキル熟練度を鍛えるのはやたらと時間が掛かるものなのだ。

 しかも《鍛冶》や《調合》といった職人系のスキルはもっとキツイという噂すらある。

 

「こればっかりは気長にやるしかないんじゃないか」

 

 ギルドの稼ぎに貢献できないという負い目はあるかもしれないが、それもしばらくの辛抱だ。プレイヤーメイドの商品を売りに出せるくらいまで熟練度が上がれば貢献度は逆転する可能性も十分ある。

 

 サチもそれについては承知しているのだろう。

 うん、と頷いて続けた。

 

「みんなもわかってくれてるし、《裁縫》はじっくり育てていくつもり」

「そうしてくれ。一流になってくれたら俺も依頼できるし助かるからな」

 

 パッと思い付いたことを口にする。

 すると――。

 

「ほ、ほんと!」

 

 サチは勢いよく振り向いて顔を寄せてきた。近い近い。

 

「あ、ああ。ほんとほんと。ハチマンウソツカナイ」

「絶対だよ、約束ね」

「はいはい約束約束」

 

 わかったからとりあえず離れてくれませんかね。

 

 顔を寄せてくるサチの頭に手を乗せて押し返す。

 サチは笑顔のまま元の体勢に戻り、俺が触っていた頭に自分の手を当て、やがて正気に返ったのか顔を真っ赤に染めた。そして頭に手を乗せたままプルプルと震え始める。

 

 え、なにこの可愛い生き物。思わずこのまま抱きしめてやろうかと思ったが、その場合あっという間に《黒鉄宮》の監獄に飛ばされるのが目に見えてる。

 

 赤くなって震えるサチを横目に見つつどうしたものかと考えていると、やがて落ち着いたらしいサチがまだ少し赤い顔で口を開いた。

 

「あの、あとね。私、まだみんなと一緒に戦ってるんだ」

「は? けどお前、《裁縫師》でやってくんだろ?」

「そうなんだけど、それだけじゃなくて、一緒に戦うのもやめずに頑張ろうって思って」

 

 おずおずとそう言う。あれだけ戦うのを怖がっていたサチが、自分から戦闘を続けようと考えるなんてな。他の連中と同じように、彼女にも心境の変化があったのかもしれない。

 

「つっても、さすがに前衛はやってないんだろ?」

 

 戦闘と生産の兼務って時点でかなり厳しいのに、怖がってた前衛までやってるとは思えない。だとすればあとは《シーフ》のような冒険を補助するタイプか、或いは――。

 

「うん。みんなの後ろからデバフ付きの槍で攻撃したり、《鼓舞》スキル使ったりとか、そんな感じ」

 

 典型的な支援タイプだな。フロアボスみたいなレイド組んで戦う敵を相手にするときは連れて行きづらいが、少人数の黒猫団なら縁の下の力持ちになれる。

 

「みんなからはもう無理して戦わなくていいって言われたけど、でも私、SAOをやって初めて自分から強くなりたいって思ったの」

 

 そう言って、サチはちらっと俺の方を見た。

 

 

 

「私も、あなたみたいに強くなりたいから」

 

 

 

 まっすぐな言葉だった。

 本当に眩しいくらいまっすぐで、だからこそ目を逸らしてしまう。

 

 俺は彼女が言うような人間じゃない。

 少なくとも強くなんてない。褒められることや評価されるようなことは何一つ。ただそれこそ手前勝手な理論を振りかざしてきただけだ。

 

 だから、そんな憧憬を持たれる人間じゃない。

 

「そんなんじゃねぇよ」

 

 口をついて出た声は自分でも驚くほど鋭いものだった。

 声音に現れた色に、サチもビクッと身体を震わせる。

 

 また怖がらせてしまったと思うも、一度口にした言葉は取り消せない。あとは流れ出るままだ。

 

「俺は強くなんかないし、お前が気に掛けるような大層な人間じゃない。ボッチだし、悪名高い《マイナー》だしな。実際、ここ数日忙しい攻略組の中で俺だけなんもしてないまである」

 

 この三日間、俺は何もできなかった。

 

 黒幕の手掛かりを探すだのと息巻いた結果が空振りで。

 キバオウや反ユキノ派の連中に注意を払うことも忘れていて。

 ユキノの《軍》への引き抜きに反論することすらできない。

 

 どうすればいいのかも、どうすべきかもわからず、そもそもなぜこんなに考えているのかもわからない。

 理屈ではユキノの《軍》入りに納得しておきながら、どういうわけか何度も繰り返し考え続けてしまうのだ。

 

「今、攻略組が大変ってキリトから聞いてるけど、何かあったの?」

 

 黙り込んだ俺に、サチは恐る恐る訊いてきた。

 

 無関係なサチに話すべきか迷ったが、これは退く気がないなとサチの表情を見て思った。

 仕方なく、先日の《ALS》壊滅からさっきの会議室でのやり取りまでを説明する。黒幕云々については話がややこしくなるためにカットした。

 

 説明を終えると、サチは表情を曇らせて俯いた。

 キリトが彼女に何と説明したのかはわからないが、様子を見る限りじゃ詳しいことは知らなかったようだ。

 

 やがて、長い静寂の後にサチは顔を上げた。

 

「ハチは、そのユキノさんが《軍》に入るのに反対なの?」

 

 かけられた問いはそれだった。ずっと考え続けていることだ。

 

「……正直、わからん。あいつが参謀として《軍》に入るメリットは多いしな。《ALS》の二の舞を未然に防げるし、《軍》が強力な集団になった上でボス戦にも参加するとなれば攻略のペースも早くなる。強いてデメリットを挙げるなら攻略組のリーダーが代わることぐらいだな」

 

 文句のつけようがない上策だ。

 攻略組のリーダーが代わるのも、ユキノと同等のリーダーが出てくればデメリットにならない。しばらくはリンドになるんだろうが、リンドが成長するか別のやつが出てくれば解決だ。

 

 言うと、サチは「んー」となにやら考え始める。

 途中、姿勢はそのままでこんなことを訊ねてきた。

 

「ユキノさんとはいつからの知り合いなの?」

「ん? ああ、言ってなかったか。あいつはリアルで同じ部活なんだよ」

 

 正直にそう答えると、途端にサチがこちらへ振り向いた。

 

「なんだ、じゃあハチはユキノさんが大切なんじゃない。大切な友達、大切な仲間だから、攻略組のために《軍》へ入ろうとするのが嫌なんでしょ」

 

 簡単なことだと、そう言わんばかりに。

 呆れたような笑顔で、ため息すら吐きながら、サチはそう言った。

 

 

 

 胸にストンと落ちた気がした。

 

 

 

 ユキノが《軍》へと入れば、攻略組の様相も変わるだろう。

 ユキノと、キリトと、アスナと、おまけで俺とでパーティーを組むことはなくなる。それは仕方のないことだ。

 

 ユキノが納得した上での選択なら、それで構わない。俺個人の感傷は人の選択を左右していいものではない。

 

 ただ。

 ただ、それでも。

 誰かに役を押し付けてしまうのは、苦しい。

 大切に思っているものを守ろうとして、その結果手放してしまう。そんな彼女の姿を見ることは、それはとても苦しいことだ。

 

 何かを犠牲にすることなくして、集団は成り立たない。そう知っていながら。

 自分は犠牲なんかではないから憐れみも同情も必要ない。そう偉そうに宣っていながら。

 なんてひどい矛盾だろう。

 

「…………あいつは友達なんかじゃねぇよ。俺はボッチだからな。友達なんていない」

「えっ、友達じゃないって……。じゃあ、恋人、とか?」

 

 一部に修正を入れてやると、どういうわけかサチはひどく狼狽え始めた。

 しかもありえない上に恐ろしいぶっとんだ予想を返してくる。

 

「んなわけねぇだろ」

 

 こいつはユキノの舌鋒を知らないからこんなことが言えるんだ。

 あいつと恋人? そんなの命がいくつあっても足りない。一日に何度も精神的に殺されるぞ。

 

「あ、あはは……。そっか。そうなんだ。へぇ」

 

 苦々しく思ったのが表情に出ていたのだろう。

 サチは俺を見て苦笑いを浮かべ、俯くように手元へ視線を落とした。

 

 視線を外周の方へ向ける。

 すっかり日も暮れ、雲は月の光を受けて青白く染まっている。ふとメニューウィンドウを開いてみれば、時刻も19時を回っていた。

 

「そろそろ帰るか」

「あ、うん。そうだね」

 

 言うと、サチは素直に頷いて立ち上がった。

 俺も立ち上がり、メニューを閉じながら訊く。

 

「ホームはまだ《タフト》なのか?」

「うん。変わってないよ」

 

 となると、今から転移門広場まで行って11層の《タフト》に転移し、そこから宿まで歩いて行かなくちゃならないわけか。

 

「あー、その、なんだ…………近くまで送る」

 

 普段なら言わない台詞だが、気付いたら口にしていた。なにこれ恥ずかしい。

 

「あ、ありがと……」

 

 サチもはにかみながら、けれど否とは言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 

 

 

 25層の《ギルトシュタイン》から11層の《タフト》までサチと並んで歩く。

 

 途中、25層に来ていた理由を訊ねたところ、最前線で手に入る《糸》や《革》の素材を使って《裁縫》スキルを鍛えるため、買い出しに来ていたのだとか。

 

 そういうことならとストレージ内の要らない素材を渡した。

 初めはお金がないからと遠慮されたが、いつか依頼を出したときに商品で返してくれればいいと言うと、妙に気合の入った顔で頷かれた。

 

 そして《タフト》の転移門広場から十分ほど。

 《月夜の黒猫団》がホームにしている宿が遠目に見えたところでサチが立ち止まった。

 

「ここまででいいよ。送ってくれてありがとう」

「そうか。《裁縫》の熟練度上げ、頑張れよ」

「うん」

 

 頷いたサチが振り向く。

 と、その先に見知った顔があった。

 

「あ、キリト」

 

 黒ずくめの剣士は軽く手を挙げながら近づいてくる。

 

「サチ、遅かったな……って、ハチ? なんでここに?」

 

 が、横に立つ俺を見て怪訝な表情を浮かべた。

 どうどう。そう噛みつきなさんな。

 

「たまたま会ってな。っていうかお前こそなんで?」

「ケイタたちに22層のフロア情報を教えてくれって言われてな」

 

 なるほどなぁ。しっかり教師役を務めてるわけだ。

 にしても、あいつらもう22層まで来たのか。俺が付き合ったときは16層かそこらだったのに。攻略組を目指してるってのは本気だったのかもな。

 

 俺が黒猫団の奮闘ぶりに心の中で賛辞を送っていると、キリトがハッと何かを思い出したように一歩踏み込んできた。

 

「これから夕食食べに行くんだけど、ハチも一緒にどうだ?」

 

 お、おう。なんで踏み込んできたのかは知らないけど、とりあえず落ち着こうか。そういう海老名さんが喜びそうな行動はやめようね。

 

「いや、別にいいけど、お前だけか?」

「あー……」

 

 訊くと、キリトは途端に苦い表情を浮かべた。

 相変わらずわかりやすいな、こいつは。

 

「……アスナも、一緒に」

「じゃあな。お疲れさん」

 

 予想通りの名前が出てきたところで踵を返す。

 するとキリトは慌てて回り込み、俺の進路を塞いできた。

 

「待て待て。大丈夫だから。俺も説得するし。何より今日のこと、ハチの意見も聞きたいんだよ」

 

 正直、会う度ご機嫌斜めになるアスナと顔を合わせるのは勘弁だが、今日のことを引き合いに出されたらノーとは言いづらい。

 

「ハァ……。わかった」

 

 メリットやデメリット、生じるストレスやその他諸々を秤にかけ、結果として渋々了承するとキリトはあからさまに顔を綻ばせた。

 

 思わず苦笑いが浮かぶ。

 

 ほんと、こいつはわかりやす過ぎて困る。

 そういう顔をされたら放っておけなくなるから。

 

 小さくため息を吐いて、じっと待っていたサチへ目を向ける。

 

「ってことらしい。じゃあな」

「それじゃあサチ、また今度」

「うん。またね」

 

 俺とキリトがそう言うと、サチは嬉しそうに微笑み、胸の前で小さく手を振った。

 

 

 




明日12月10日は本作の一周年となります。

お気に入り登録して頂いている皆様、ありがとうございます!
貴重な感想を頂いている皆様、本当にありがとうございます!!
そして本作を読んでくださっている皆様、本当に本当にありがとうございます!!!

更新間隔が空いたり、後書きで愚痴をこぼしたりと不安定な作者ではありますが、今後も頑張って続けていきますのでよろしくお願いいたします!

ではでは!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。