やはりSAOでも俺の青春ラブコメはまちがっている。   作:惣名阿万

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コロナウイルスが猛威を揮う今日この頃。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。

私は楽しみにしていた映画が延期になったり、東京オリンピックが延期になったり、毎週通っていたラーメン屋が休業になったりと外の世界に楽しみを見いだせなくなりつつある(大袈裟)ので、連日部屋に引きこもっています。

みなさんも体調管理には気を付けてお過ごしください。



というところで、第2話です。
よろしくお願いします。





第二話:或いは、それは誰の願いでもない

 

 

 クリスマス。

 

 それは子どもにとって誕生日や正月に並ぶ一年で最も特別な日の一つだ。サンタクロースに願いを掛け、良い子にしていれば欲しい物を無条件で得られる一夜である。

 そういうわりに他人に迷惑を掛けず、他人の邪魔もしないとびきりの良い子だったはずの俺は欲しい物貰えたためしがないんですけどバグってるんじゃないですかね。

 

 一方で、大人にとっては意見の分かれる日だろう。

 最高の一日だとドヤ顔する奴もいれば、一部の特権階級がこよなく愛する催しで持つ者と持たざる者の差を明確かつ残酷に知らしめる奇祭だと血涙を流すやつもいる。

 俺クラスともなるとクリスマスなんざただの平日と変わらないと思えるのだが、そこに何か特別な意味を見出そうと躍起になる人間はどんな世代にも少なからずいるのだ。

 

 12月も終盤を迎えた現在。世はクリスマスムード一色であり、それはこのアインクラッドでも同様だった。

 街を歩けば雪化粧を施した木々や建物が並び、ガス灯やら松明やらが照らす下ではカップルたちが聖夜の訪れを今か今かと待ちわびている。

 

 だが少し待って欲しい。

 仮にも聖人が生誕したとされる日に(かこつ)けてワイワイガヤガヤイチャイチャと騒ぐのは如何なものか。

 

 そもそもが神道の国である日本においてクリスマスというのは外来のイベントである。しかも本来は粛々と家族や身近な人と過ごすための厳かな日のはずが、何故こうもリア充御用達のお祭りになってしまったのか。

 何かと理由を付けて祭りを開きたがるのは江戸っ子の性と言うが、生粋の千葉生まれ千葉育ちである千葉っ子の俺にはその辺りの経緯とか機微とかはさっぱりわからん。

 

 クリスマスなんて、カーネルさん家のチキンと不二さん家のケーキを買って小町と慎ましく仲睦まじく過ごせればそれでいい。いや仲睦まじくはやりすぎか。けど千葉の兄妹なら許されるだろ多分。

 

 ――なんてことをちょっと前までの俺なら思っていたし、なんならしたり顔で演説を披露することも吝かではなかった。

 それで女性陣がドン引きしようがちょっと傷つくだけで今さらだし、男連中が苦笑いを浮かべる姿も容易に想像できた。

 

 しかし、事ここに至ってそれは不可能だろう。

 なぜなら――。

 

「おいこらハチの字、てめぇよくもぬけぬけと俺の前にツラ出せたなこの野郎! お前は、お前だけは俺と同じこっち側だと思ってたのによぉ」

「同感。連れ戻すために色々やるっていうのは聞いてたけど、まさか結婚までするとは思わなかったからなぁ」

 

 嫉妬と羨望に狂ったクラインと、どこか不機嫌そうなキリトの言う通り、俺は晴れて既婚者、つまりパートナーを得ているのだ。

 俺自身がいくら「クリスマスなんて平日だ平日」と宣ったところで客観的事実がそれを許さない。というか、いくらなんでも今そんなことを口にする勇気はない。さもなくばパンダに食い殺されるだろう。色々な意味で。

 

 遺憾の意を示す二人に対し、エギルは戸惑いが強いようだった。

 

「俺はいつか落ち着くだろうとは思っていたが、まさかあのときの嬢ちゃんとはな。てっきり10層手前で別れたっきりだと思ってたんだが……」

「まあ、色々あったんだよ」

 

 ほんと、色々あったなぁ。散々探し回っても見つからず、かと思えば向こうから接触してきて、黒幕ムーブで惑わされたかと思えば捨て猫みたいに弱った姿で現れたりもした。

 いつだって肝心なことは口にせず、今に至ってもその辺りは語るつもりはないらしい。そのくせ何かと庇ってくるもんだから、あまりの都合のよさに勘違いしてしまいそうになる。

 

 ただ、あの笑顔は嘘ではないと、信用に足るものだということはわかっている。

 俺やユキノに向ける笑みも、俺たちを見るときの眼差しも、あの部室で一緒に過ごした『彼女』と同じ色をしていたから。

 

「その『色々』も含めて、二人には訊きたいことがいっぱいあるのよね」

「あ、私も。ハチとパンさんって、攻略以外のとき何してるのかなーって」

 

 アスナがニヤリと意地の悪い笑みを浮かべれば、サチが軽く手を叩いて乗っかる。

 そんな二人を見てまっさきに反応したのは、ユキノだった。

 

「聞かないことをお勧めするわ。ロクな答えが返ってこないから」

「ンー、そう言われると益々聞きたくなっちゃうナー。二人の新婚生活について♪」

 

 言って、アルゴがニタリといやぁな笑みを口元に湛える。これは根掘り葉掘り聞かれた挙句、数千コル分の情報を抜かれるやつだろうなぁ。

 

 そうしてお年頃の淑女であるアスナとサチ、アルゴを筆頭に、同じくお年頃の黒猫団男子組、野次馬根性丸出しのクラインが俺とパンに視線を集める。

 そんな彼らにユキノは「忠告はしたわよ」とこめかみを抑えてため息を吐き、エギルはテーブルの端で苦笑いを浮かべていた。

 

「や、別になんもないぞ。朝起きて攻略行って、宿帰ったら風呂入って寝るだけだし」

 

 一応の抵抗というか弁明のためにそう言うと、途端にアスナから睨まれる。

 

「ハチくんには訊いてません。そもそもハチくんにそういうの期待してないし」

 

 アスナの言に、うんうんと頷く一同。いや、全員揃って同じ反応とか、さすがに失礼じゃない? ハチマン泣いちゃうよ。

 

「それで、二人っきりのときってどんな感じなんですか?」

 

 サチがパンへ訊ねる。その目には純粋な興味が浮かんでいた。

 

 問いかけに対してパンは「そうだねー」と曖昧な相槌を打つと、ちらりとこちらへ視線を送ってきた。それから悪戯を企てる子どものような笑みを浮かべる。

 

 とても嫌な予感がした。こういうとき俺の勘は大抵当たるのだ。

 活き活きとした表情のパンとは対照的に、俺の目は死に死にとし始める実感があった。

 

「Darlingと二人っきりのときはねー、ずーっとくっついてるよ。バスルームではDarlingの身体をワタシが洗ってー、ベッドではAll nightで抱きしめてるの。「やめろ」って言いながら恥ずかしそうにモゾモゾするDarlingがso cuteでー♡」

 

 のっけからアクセル全開な発言に、さしものアルゴですら引き気味だった。もちろん、他の連中は軒並み目が点になっている。

 その中でアスナは顔を真っ赤に染めながらも顔は逸らさず、一方サチは処理が追いつかないのか表情がフリーズしている。

 

 ユキノが再度ため息を漏らす中、パンは調子に乗って更に続ける。

 

「エッチのときも最初はワタシがDarlingにゴホーシするんだけど、途中からはDarlingにメチャクチャにされちゃうの。そのときのDarlingとってもwildでカッコいいんだよー♡」

 

 そう言って、パンからちらりと見られ、俺はこそっと視線を逸らす。

 

 ハハ、誰だよそのDarlingって。どう考えても俺のことですねありがとうございました。というか、アレはパンが散々煽ってくるのにイラッときただけで決して……。

 

「二人のときはずいぶんイチャイチャしてるんだね」

 

 ア、ハイ……。

 

 視線を逸らした先のサチからゾッとするほど冷たい目で見られ、逃げ場所に困った視線は手元のカップに落ちる。

 だがそこに逃げ場などあるはずもなく、中のコーヒーが揺れるだけだ。気を紛らわせるために一口。んー、コーヒーが旨いと気分がいい。砂漠の虎のごとく余裕のある大人になりたいどうも俺です。

 

 居心地の悪さにモゾモゾしながらコーヒーをちびちび飲み下していると、不意に視界が暗くなった。ちょっとどうなってんの。照明暗いよ。

 

「なぁ、ちと向こうで話さねぇか? いやいや、ただほんのちょびっとレクチャーしてもらいてぇことがあんだよ」

 

 声と一緒に肩へ手が置かれる。顔を上げると、クラインが満面の笑みで見下ろしていた。

 そして気付けばいつの間にやら周囲を取り囲まれている。クラインに加え、テツオにダッカー、ササマルといった黒猫団の面々もだ。全員が全員、張り付けたような笑みを浮かべていた。いい、笑顔です。

 

 ははーん。ハチマンわかったぞ。これアレだろ。新人ホストとかが指名貰いすぎて先輩ホストに締め上げられるアレ。「調子乗ってんじゃねぇぞ」って言われちゃうアレだ。

 

「……わかったよ。で、何をすればいいんだ。土下座か靴舐めか。金やアイテムは難しいが、謝罪や誠意ならいくらでも払えるぞ」

 

 媚びるときはプライドを捨てて全力で媚びること、それが俺のプライド。

 

「お、おう」

 

 俺のかつてないほど本気のドヤ顔に、さしものクラインも引いていた。テツオたち三人もドン引きしていて、ユキノとパンの他は全員が苦笑いだ。ちなみにユキノは頭を抱えていて、パンはほわほわと微笑んでいた。

 

 そんな俺だけがどうしようもなく居堪れない、もしくは痛々しい雰囲気の中で、沈黙を破るが如く、ユキノのため息が三度吐き出される。

 

「ハァ……。そろそろ本題に入ってもいいかしら」

 

 頭痛がするのか目頭を押さえて言うユキノに、誰一人反抗する者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 およそ一か月前。たしか48層の攻略が終盤に差し掛かった頃だったと思う。

 二度目のクリスマスを前に、アインクラッドの各層で同じ内容の噂がまことしやかに囁かれ始めた。

 

 曰く、十二月二十四日の深夜0時ちょうど、どこかの森にあるモミの巨木の下に《背教者ニコラス》なる伝説の怪物が出現する。もしこいつを倒すことができた暁には、怪物が背中に担いだ袋の中の財宝を手に入れることができる、らしい。

 

 当初は48層のボス目前、次いで49層のボス戦と立て込んでいたために明確なアクションはなかったものの、50層に来て攻略が停滞し始めたこと、またせっかくの限定ボスなのだから倒してクリスマスプレゼントを頂戴しようという風潮が出始めたことで、今じゃあ《連合》の攻略班も巻き込んだプレゼント争奪戦の真っ最中というわけだ。

 

 俺やユキノ、パンは当初このクリスマスイベントには静観の姿勢で以て対していたのだが、キリトやサチら《黒猫団》とクラインら《風林火山》、それにエギルやアルゴも加えたメンバーに誘われた結果、こうしてこの場にお呼ばれしている。

 

 最終的なメンバーは《黒猫団》の6人に《風林火山》の7人、エギルとアルゴの2人に加え、俺、ユキノ、パン、アスナの4人で計19人だ。

 そのうち《風林火山》は各層に点在する有力ギルドの拠点に張り付いて偵察しているので、ギルドリーダーのクラインだけがこの場にいた。

 

「結論から言うと、これまで有力とされてきた候補の中に『モミの木』はなかった。どれも『巨木』っていう意味では間違いないんだけど、全部スギだったんだよなぁ」

 

 調査担当の黒猫団を代表してキリトが言う。実物を知っているらしいキリト氏が言うんだから間違いないんだろうが、そこのところどうなんですかねユキペディアさん。

 

「確かにモミとスギはよく似ているから、遠目では判別がつかないでしょうね。『巨木』というキーワードに引っ張られてフィールドから見える樹木しか探していなかったのが失敗だったのかも」

「となると、もう一回候補を洗い出す必要があるか。……間に合うのかこれ」

 

 キリトの報告を聞いて、期限までの日数から残り時間を逆算していく。

 残り三日で僅かなヒントから目標を探し出さなくちゃならないんだが、候補となり得る場所が多すぎて困っているのだ。なんだよ『どこかの森』って。せめて何層辺りかだけでもヒントくれよ。

 

 ちなみに、俺たち三人の担当は新しい候補の探索だ。1層から順にマップ上の森という森を渡り歩き、今日で20層までが探索済みとなった。

 結局ほとんど徒労に終わったんだが、賑やかすやつがいたからか不思議と無駄な時間を過ごしたという気はしない。

 

「《FBI》の方でも探してるけど、このリストに挙がってる以外のものはないナー」

「幸いなのは、《聖竜連合》や《天穹師団》もまだ絞りきれてないってことか。連中の尾行が付いたままってのが何よりの証拠だな」

「私もフレンドとか知り合いに当たってはいるんですけど、目ぼしい情報はないですね」

 

 アルゴとエギル、アスナが口々に言う。

 この三人はそれぞれ所属ギルドが違うということもあって、別ルートから情報を集めようとしている。が、天下の《FBI》や最強ギルドと呼ばれ始めた《血盟騎士団》であっても有力な情報は掴めていないらしい。

 

 と、そこでふと何かに気付いたようにキリトが振り向いた。

 

「今さらだけど、アスナ、《血盟騎士団》の方はいいのか? さすがのヒースクリフも年一のボスなら挑戦しそうなもんだけど」

 

 キリトからの問いに一瞬だけきょとんと首を傾げたアスナは、質問の意図を察すると口元を緩ませ、今度はそれを誤魔化すべく大仰に両手を上げて見せた。

 

「それが全然。ギルドのみんなは興味あるみたいなんだけど、団長はいつも通りなの。『フラグmobよりも自己研鑽の方が大事だ』って。あ、でもちゃんとこっちに参加する許可は貰ってきたから、私は最後まで付き合わせてもらうわ」

 

 最後にアスナが「だからよろしくね」と含みのある笑顔で言うと、キリトは心底から嬉しそうに微笑んだ。

 

「そっか。じゃあボス戦以外じゃ久々に一緒に戦えるんだな。またよろしく」

 

 これにはアスナも堪えきれず、顔を真っ赤に染めてぷいと逸らした。相変わらずキリトが関わるとわかりやすいやつだな。

 アスナとしてはいつかコンビを解消されたことへの皮肉も含んだつもりなんだろうが、キリトの純粋過ぎる反応には敵わなかったらしい。

 

 キリトとアスナによって生まれた甘い空気に、周囲は軒並みニヤニヤ笑っている。さっき俺がやり玉に挙げられたときとはえらい違いだ。これが人徳の差か……。

 

「よかったね、アスナさん」

「いやー、アーちゃんが嬉しそうでなによりだヨ」

「アスナ、Now or never! このままアタックだよ!」

「そ、そういうんじゃないですから! 違いますから!」

 

 サチにアルゴ、パンの三人から囃し立てられ、アスナは赤い顔のまま抗議する。特にアルゴとパンはわかってるのに敢えて弄ってるから余計に質が悪い。まあ完全に蚊帳の外の人なので見ているだけなんですけどねー。

 

 しかし女三人寄れば姦しいというが、四人も集まって騒いでるのを見ると逆に微笑ましく思えてくるから不思議だ。

 本当はもう一人女子がいるはずなんだが、当のユキノは「しょうがない人たちね」と言わんばかりに微笑を浮かべている。いやお前なに目線なんだよ。うんうん頷いてるのを見る限り祝福してるのは間違いないんだろうが。

 

 そんな和気藹々ぐだぐだな時間がしばらく続き、弄られ続けたアスナの呼吸が整ったところで、弛緩した空気を払うような咳払いが響いた。

 それまでそれぞれにお喋りをしていた全員が口を噤み、振りむく。そうして全員の注目が集まったところで、エギルがミーティングを仕切り直しにかかった。

 

「さて、そろそろ気を取り直して今後の話だ。現状、俺たちがやるべきことは三つある。ボスの出現場所の特定、戦闘に向けた準備、他の陣営の偵察だな」

「そうね。そのうち偵察については今もクラインさんのギルドに担ってもらっているからいいとして、残るは――」

「戦闘の準備はともかく、やっぱりボスが出現(ポップ)する場所がわからないことには何も始まらないな」

 

 ユキノの言葉をキリトが引き継いで締めくくる。こいつの言う通り、いくら対策を立てても出てくる場所がわからないんじゃ意味がない。

 

「一度情報を精査し直しましょう。方針を立てるにも必要なことだし、もしかしたら何か見落としがあるかもしれない」

 

 ユキノがそう提案して一同を見渡す。

 すると、珍しくアルゴが疲れたような顔で愚痴をこぼし始めた。

 

「そうは言ってもナー。どの層のNPCもみんな同じようなことしか言わないから、正直お手上げって感じだヨ」

「何か法則とかがあればわかりやすいんだけどね」

「法則って、例えば?」

「あれだろ。ボスの出てくる層のNPCだけ他と違うこと言ってくるとか」

「そこまであからさまならとっくに見つかってると思うけど」

 

 ケイタが乗っかるように言うと、ササマルやダッカー、テツオがそれに続いた。

 

 ふむふむ。法則……。法則ねぇ。

 

「アルゴ、ボスの情報を教えてくるっていうのは街にいるNPCか?」

 

 訊ねると、アルゴは面倒くさそうに振り向いて頷いた。どうでもいいけどきみ、やる気失くしすぎでしょ。

 

「アー、ニコラスの情報は各層の主街区にいるNPCが口にするんダ」

「ってことは、それなりに人数がいるってことか。それぞれの層ごとで何人のNPCが言ってくるか、人数わかったりしない?」

 

 俺がそう言うと、それで興味が湧いたのかアルゴは目を光らせた。

 だらけていた身体を起こし、ニンマリと笑みを浮かべる。

 

「フムフム。確かに人数までは数えてなかったナー。オーケー、ちょっと数えてみるヨ」

 

 言って、アルゴはウィンドウを開いた。そのままものすごい勢いで何らかの操作をし始める。

 え、なにこいつ、もしかして該当するNPCの位置全部チェックしてるんじゃないだろうな。だとしたらさすがは一流を自称する情報屋と称賛するべきだろうか。

 

 やる気全開でお仕事に励むアルゴを見て息を呑む面々。そんな中、ユキノがそっと顔を寄せて訊ねてきた。

 

「件のボスに関しての発言をするNPCが多い層にボスが出現すると、そういう解釈でいいのかしら?」

「さあな。まだわからん。けど、ヒントくらいにはなるんじゃないか。50層以下を総当たりするよりかは、まだこの方がアプローチとして間違ってないだろ」

 

 というかそんなことよりあなた近い近い近いですよいつからそんなにパーソナルスペース狭くなったんですか。ともあれこの子の場合、身を寄せてきても顔以上に接近するパーツがないので気持ちまだ余裕があるとも言えるが。

 

 そんなこんなで反対側に身を引くと、ユキノは一瞬きょとんとしてマジマジ見てくる。それから何かに思い当たったのか軽く頬を染め、ぷいっと音が鳴るくらいの勢いでそっぽを向いた。なんだよその反応ちょっと可愛らしいなとか思っちゃったじゃないですか。

 

 と、その瞬間、反対側から異様な雰囲気を感じて震えが走る。そーっと顔をそちらへ向けると、パンがとってもいい笑顔を浮かべていた。なぜかグッとサムズアップまでしてくる始末。こいつマジで何考えてんだかわかんねぇな。

 

 真意の読み取れないスマイルに戦々恐々としていると、作業を終えたらしいアルゴの声が聞こえてきた。

 

「――でもって50層が9人っと。お待たせ、ハー坊。結果が出たゾ」

 

 ナイスタイミングだ、アルゴ。

 

「全部列挙するのも面倒だし、大体でいいよナ。ンー、結論から言うと、一番人数が多いのは45層で12人ダ。でもって43から47層が10人、あとは45層から離れるごとに人数が減る感じだナ。今いる50層は9人で、35層が6人。それ以下の層は一気に減って1人か2人になってるヨ」

 

 アルゴがウィンドウを見ながら言う。メモか何かに書き留めてあるのだろう。

 

「ってぇことは、45層のどっかの森が正解ってことか?」

「単純に考えたらそれが正解かもしれない。けど、たしか45層は――」

「フロア全体砂だらけの砂漠エリアだったな。どこかに秘密の森があるって線も捨てきれないが、いくらなんでもなぁ」

「砂漠の真ん中でクリスマスボスと戦うなんていうのはちょっと……」

 

 男連中が揃って首を捻る。彼らの言う通り、砂漠エリアの45層で仮にもクリスマスボスである《背教者ニコラス》が出現するとは考えづらい。

 

 女性陣もそれぞれ頭を悩ませている。こちらはユキノを中心にアスナとサチが議論を交わしているようだ。パンとアルゴも考えてはいるようだが、これといって思い当たることがないのか、口は開いていない。

 

「45層ではなさそうね。とはいえ、NPCの人数に何らかの法則性があるのは間違いなさそうだけれど」

「そこを中心に人数が減るってことは、45層にいるプレイヤーが一番の対象ってことよね。その条件って何なのかしら」

「暑いところにいる人に、今度は寒い場所で涼んで欲しい、とか?」

「いえ、45層付近の層にもそれなりの人数がいる以上、気候や地形なんかは関係がないのでしょう。もっと別の意味や条件があるのではないかしら」

 

 そこまでユキノが口にしたところで一つ思い至る。

 同時にパンもなにか思いついたようで、あからさまに表情を明るくした。

 

「ハイハイ、ワタシわかったかもー」

「俺もわかったわ、多分だけどな」

 

 一同の視線が集まる。それぞれの目には驚愕や感心、悔しさが滲んで見えた。特にそこの二人、ユキノさんにアスナさん、きみたち負けず嫌いが過ぎるから。そんな親の仇みたいな目で見ないでもらえる。

 

 小さくため息を吐いてから一度パンと視線を交わし、どちらが予想を口にするか伺いを立てる。すると笑顔で「Darlingに任せるよー」との答えが返ってきた。

 

 はいはい、任されましたよっと。

 では皆々様、不肖この比企谷八幡が答えと解説を申し上げてしんぜやしょう。ここ、次のテストに出るから、よく覚えておくように。

 

 

 

 

 

 

《to be continued...》

 

 







かつてない締め方になりましたが、以上第2話でした。
答え合わせは次話となります。

答えがわかったという方、SAO原作を読まれて知っているという方、どちらの場合も感想等でネタバレをするのは控えて頂けるとありがたいです。勝手ながらお願い申し上げます。

次回は答え合わせもありますので、なるべく早めに投稿できればと思います。それでは。



P.S
先日、本作はタイトルを変更しました。
その理由については活動報告の方に挙げておりますので、興味があれば覗いてみてください。大した理由ではないですが(苦笑)
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