やはりSAOでも俺の青春ラブコメはまちがっている。   作:惣名阿万

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無人島を開拓していて遅くなってしまいました。すみません。

とはいえ、今作はシステムもクラフトも家具も衣装もBGMも全部最高ですね。河川工事や崖工事や道路整備をしていると時間を忘れてしまいます。



とまあ与太話はこのくらいにして。

第3話です。あまり話は進みませんが、よろしくお願いします。





第三話:そのうち、野武士な彼にもわかる簡単な謎かけがたぶん見つかる

 

 

 

 間もなくCM明けまーす。5秒前―。4、3、2、1……。

 

 ――はい。それじゃあ答え合わせの方ね、やっていきましょう。

 昨今アインクラッドを賑わしている『ニコラスサンタはどこに来る?』問題について、前回は各階層に点在するNPCの人数という切り口から読み解こうとしてきました。

 

 今回は解答編ということでね、《マイナー》のハチこと比企谷八幡が答えの方、解説していきたいと思います。よくよく聞いてね、理解してもらえればと思います。はい。

 

 なんて、まるでどこかの動画配信者みたいに与太話をすることで段取りを整理していく。ユーモラスに脳内会議を行うことで自分のどうしようもない部分を再確認出来て落ち着くことができるのだ。おい誰だ今どうしようもないって言ったやつ。

 

 そんなこんなで、こちらへ向けられている顔を見渡し、ゆっくりと解説を始める。

 

「例のクリスマスボスが出現するのはどこか。俺たちは今までNPCが口にした『モミの巨木』って情報をもとにボスの出現場所を探していた。けど現状、その木が何層のどこの森にあるのかすらわかってない。ここまではいいか」

 

 全員が無言で頷く。誰もが真剣な顔で、いっそ怖いくらいに睨んでくるやつもいて頬が引き攣る。あなたたちですよユキノさんにアスナさん。

 

「各層のNPCから得られる情報はほとんど同じもの。つまり、クリスマスボスを狙うすべてのギルドやパーティーは同じ条件で競っているわけだ。《聖竜連合》や《天穹師団》といった大ギルドでも条件は変わらない」

 

 そしてそれは《FBI》に関しても同じことが言える。だが情報に関してはアインクラッド随一の《FBI》でも、出現場所の特定には至っていない。

 専門家たちをも悩ませるというのなら、そこにはそれだけの理由があるに違いない。

 

「これだけ探し回ってそれらしいポイントは見つかってないんだ。こうなったらもうNPCの情報だけを頼りに探すだけじゃ見つかる可能性は低い。だから、目線を変える」

 

 言って、一同を見回す。

 首を捻るやつが多いなか、ユキノだけが納得したように頷いた。

 

「与えられた情報を活用するだけではなく、情報を流した側の意図を推察するのね」

「正解」

 

 そう言うとそれまでの鋭い視線はどこへやら、ユキノはテーブルの下で小さく拳を握った。ほんと、こいつの負けず嫌いっぷりはどこでもブレないなぁ。

 

「Darling? ユッキが可愛いのはわかるけど、そんなにジーッと見てたら話が進まないよ」

 

 ニヤニヤ顔のパンに言われ、ジトーッと睨んでくるいくつもの視線に気が付く。どれもが冷たく射竦めるような眼差しで、居心地の悪さを感じながら説明を再開する。

 

「んんっ、本来、クリスマスボスなんてのはアインクラッド中に知らせるべき情報だ。なにせ年に一度しかないイベントなんだからな。なのに、実際は情報を口にするNPCの人数には偏りがあった。イベントに関わるプレイヤーを局限しようとしていたわけだ」

 

 その理由について考えれば、おのずと見えてくるものがある。

 

「今回、《背教者ニコラス》の情報を口にするNPCの人数は45層が一番多かった。これはアスナが言っていた通り、45層にいるプレイヤーに一番話を聞かせたかったからだ。なら、なぜ45層なのか」

 

 言って、俺はアルゴへと顔を向けた。釣られてほぼ全員の視線がアルゴへと向かう。

 

「例の情報を口にするNPCは45層を中心に離れるほど減っていく。それは間違いないんだな?」

「ちゃーんと数えたからナ。間違いないゾ」

「45層から離れるほど減る。これはつまり、45層から離れるにつれてボスへの挑戦に推奨される条件を満たすプレイヤーの数が減っていくということだ」

 

 例えば、新しくオープンするスイーツ店が広告を打ち出すとする。内装も商品も可愛らしさを前面に出したものだったとして、じゃあ広告をどこに展開するか。

 当然、メインの客層となる若い女性の目に留まる場所だ。間違っても男ばかり集まるところに力を入れたりはしない。まったく宣伝しないかは経営側の方針次第だろうが、優先度は高くないはずだ。

 

 この場合、推奨される条件とは『可愛らしいものを好むかどうか』だ。

 男よりは女の方が可愛いものを好む傾向があるのが一般常識であり、だとすればより多くの集客を見込めるよう、女性の目に留まりやすい場所へ広告を集中するのは当然の戦略である。

 

 《背教者ニコラス》についての情報も、性質は違えど原理原則は変わらない。

 必要な情報を適正な相手に集中して宣伝する。今回は45層にいるプレイヤーが最適だったということ。だから件の情報を口にするNPCも45層が一番多く、離れるにしたがって減っていったのだ。

 

 じっと話を聞く彼らのうち、まっさきに口を問いかけてきたのはアスナだった。

 

「その条件って?」

 

 声音に棘はなく、眼差しに険もない。負けず嫌いっぷりはひとまず落ち着いたようだ。

 そっと息を吐いて、答える。

 

レベル(・・・)だよ。もっと正確に言うなら、安全マージンを考慮に入れたレベルだな。ボスの強さから考えて、推奨されるレベル帯のプレイヤーが一番多いのが45層だったってわけだ」

 

 そう言うと、どの席からも納得したような声が漏れた。

 

「なるほど、レベルか。それなら離れるほどNPCの数が減る――対象のプレイヤーが減っていくのにも説明がつく」

「気候や地形も関係ない、シンプルで判りやすい物差しね」

 

 キリトが頷き、アスナがそれに同意するように笑みを向ける。

 一方で、エギルやユキノは腕を組み思案顔を浮かべた。

 

「そうだとすると、ボスの強さは45層クラスってことか。俺たちだけで倒せるか、ちと微妙だな」

「それも問題だけれど、もう一つわからないことがあるわ。ボスの強さに関してはあなたの言う通りかもしれない。けれど、ならそのボスはどこに出現するのかしら」

「それについても、推奨レベルって観点から説明ができる」

 

 とはいえ、ユキノの問いに答えるにはひとつ認識の共有が必要となる。そしてそれは俺が自分で言うより、第三者の口から語られる方が望ましい。

 

「キリト、仮にお前がレイドを率いるとして、45層のボスを安全に倒そうと思ったら最低限レベルはいくつ必要だと思う?」

「はい?」

 

 そこで自分が呼ばれるとは思ってなかったのか、キリトは一瞬呆気にとられる。が、すぐに表情を改めると目を閉じ、ウンウンと唸ってから回答を口にした。

 

「……階層+10だとして、やっぱり55くらいじゃないか」

 

 さすがはキリトさん。百点満点な答えだ。お前ならそう言ってくれると思ったよ。

 

「そう。階層の数+10レベル。ボスという強敵を安全かつ確実に倒すなら、それぐらい必要だ。そしてそれはこのSAOがただのゲームだった場合でも(・・・・・・・・・・・・・)同じだろう」

「っ! なるほど、そういうことか。なら、ボスは45層クラスじゃなくて……」

 

 どうやらキリトはわかったらしい。ぶつぶつと独り言を呟いた後、すぐに「なるほどなぁ」と得心したように顔を上げた。

 

 その後、アルゴもわかったようで笑みを浮かべる。他の連中も頭を捻って考え込むが、それから後に続く者はなかなか現れなかった。

 仕方ないか。これがわかるのはネットゲームをそれなりにやり込んだやつだけだろうし。アルゴに関してはベータテスターだったってのが大きいだろう。

 

 あんまり待っていてもしょうがない。答え合わせの続きに入りますか。

 

「このSAOがデスゲームじゃなくただのゲームだったら、つまり命の懸かってない一般的なMMOだったとしたら、そもそも安全マージンなんてものは必要ない。それはわかるよな」

 

 自信のあるなしはともかく、全員が頷いたのを見て続ける。

 

「安全マージンがいらないとなると、大多数のプレイヤーが適正レベルギリギリかあるいは少し低いくらいで攻略に挑むだろう。経験値効率を考えて、挑戦する層の数字と同じくらいのレベルになってたはずだ。つまり本来のSAOなら45層にいるプレイヤーのレベルは45前後だったということになる」

 

 実際、ベータテストのときは無茶な挑戦もしていたらしい。適正レベル以下でボスに挑むこともあり、その場合はもれなく全滅していたんだとか。

 

「《ソードアート・オンライン》は本来『ただのゲーム』だった。当然、各層の難易度と同様、今回のようなイベント事に関してもそれを前提に作られてる。となれば、クリスマスボスであるところの《背教者ニコラス》の強さも予想することができる」

 

 と、そこまで言ったところでおずおずと手が挙がった。

 視線を送って促すと、ケイタは少し自信なさげに問いかけてきた。

 

「その理論でいくなら、ニコラスのレベルは45ってことになるんじゃないのか?」

 

 ご指摘はごもっとも。実際、その可能性も考慮に入ってはいた。

 しかし、この《ソードアート・オンライン》が一般向けに販売されたコンテンツだからこそ、より可能性の高い推論を導くことができる。

 

「言っただろ。『ただのゲーム』だって。言い換えるなら『ゲームであって遊びでもある』だな」

 

 キリトとエギル、クラインにアルゴといった連中が皮肉げに口元を歪めた。

 彼らの共通点といえばSAOをやる前からゲーマーだったということ。だからこそ雑誌やネットニュースなんかでよく似た言葉を知っていたのだろう。

 

 発言者はこのデスゲームの元凶となった男なんだが、ここでそれを明かして要らぬストレスを抱える必要もない。このまま話を続けていくとしよう。

 

「ゲームにはプレイヤー、つまり消費者がいる。企業は消費者を満足させることで対価を得られ、逆に満足させられなければ消費者――プレイヤーはゲームから離れていってしまうわけだ」

「……なるほど。そういうことだったのね」

「ああ。俺もわかった」

 

 この時点でユキノとエギルが答えに行きついた。残り7人。

 

「現実的に考えて、クリスマスっていう年に一度のお祭りに全滅前提の攻略を強いるなんてのはさすがに苦情が出る。ツリー探しの時点で(ふるい)にかけた上、難易度まで高いとなったらクリアはほぼ不可能だからな」

「あ……。そっか」

 

 今度はアスナが小さく声を漏らした。それからムッと悔しげに唇を引き結ぶ。

 これで残りは6人。

 

「《背教者ニコラス》を強くし過ぎると苦情が出る。かといって弱すぎても歯応えがないって文句を言われる。適度に強く、参加者が楽しんで攻略できる難易度にしなくちゃならないわけだ」

「けどよ、だったらボスのレベルは45より低いってことしかわからないんじゃねぇか?」

「だな。だからさっき言った安全マージンを参考にする」

 

 クラインの問いに頷いて、キリトへ視線を送る。ボスと戦うならどれくらいのレベルが欲しいか、キリトはその具体的な数字を挙げてくれた。

 

「ボスの出現場所を探すって謎解きをクリアしたパーティーやレイドに、ほどほどのスリルを提供しつつ倒してもらう。だからボスよりも高いレベルを持つプレイヤーを対象にしているわけだ。具体的には、10レベル上のプレイヤーたちを」

 

 そこまで言うと、「ああ」という声がちらほら漏れた。

 

「ここまでくればわかっただろ。SAOがただのゲームだったとして、45層を拠点にするプレイヤーよりもレベルが10低い敵の出る層はどこか。ついでに言えば、そこを皮切りに情報を語るNPCの人数が一気に減っている層といえば――」

 

 そこで言葉を切る。

 僅かな間の後、最後の一人(クライン)が興奮気味に答えを叫んだ。

 

「35層…………《迷いの森》か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日は変わって12月24日。

 俺たちは例によって《月夜の黒猫団》のギルドホームに集まっていた。

 

 クリスマス仕様の飾りつけが施されたダイニング。テーブルにはポテチやクッキー、饅頭といった菓子類に加え、大皿に山と積まれたパンと人数分のグラス、ワインのボトルが並んでいる。

 

 それぞれの席の前には取り皿が置かれ、あとはメインのチキンとケーキが来ればすぐにでも始められる状態だ。顔馴染み連中で開催するパーティーの準備は三日前から行われ、食材の調達から雑貨の買い出し、ワインの選別まで手分けして用意してきた。

 

 すでに参加者は集合を終え、全員が静かに開始の時を待っている。

 チラッと時計を見れば、時刻は23時27分を示していた。開始予定は23時30分と決めていたのでもう間もなくだ。

 

 けどまあ、これから始まるのはクリスマスパーティーじゃあない。

 

 改めてダイニングを見渡してみる。

 

 キリトはクライン、エギルと三人で談笑している。主にクラインのボケにキリトとエギルが二人掛かりでツッコミを入れる形だ。平常運転だな。問題なし。

 

 続いて《黒猫団》のケイタ、ササマル、ダッカー、テツオの四人。彼らも笑顔で話をしていることからリラックスできているといっていいだろう。《攻略班》の一員になりつつある今、相応の経験を積んできた賜物か。

 

 逆に《風林火山》の6人は緊張しているのか、背筋を伸ばしてチラチラと視線を二か所に振っていた。視線の先を追ってみれば、なんてことはない、ただ女性陣を盗み見ていただけだった。

 まあアインクラッドでも随一の綺麗どころが揃ってるので仕方ないといえば仕方ない。余裕の表れと見做していいだろう。はい次。

 

 隅の方でパンと何やら商談らしき話をしているのはアルゴ。パンはともかく、アルゴは《連合》内でも後方支援なわけだし多少気を張るかもしれないと思ったが、表情を見る限り緊張の『き』の字もないようだ。ある意味いつも通りだな。

 

 最後にキッチンスペース。ここには少し前まで料理を作っていたユキノ、アスナ、サチの三人がいて、作業を終えた今はティーカップ片手に笑みを浮かべている。歴戦の2人はともかく、サチも一緒に料理を作ったことでいい具合に緊張が解れたようだ。

 聞こえてくる声から察するに、《料理》スキルに関する話をしているのか。ユキノは和食、アスナは洋食、サチはお菓子と、それぞれ得意分野が違うぶん意見交換でもしてるのかもな。

 

 和気藹々と過ごす一同。クリスマスという雰囲気に中てられている様子もなく、かといって変に緊張しているわけでもない。これなら何も問題ないだろう。

 

 と、そこで時計の表示が23:29から23:30に変わった。

 

「時間だ。そろそろ始めるぞ」

 

 俺が言うと全員が話を止め、ダイニングの開けた場所に集まってくる。

 クリスマスらしい楽しげな表情で、クリスマスらしからぬフル装備を纏って(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「《背教者ニコラス》かー。どんなやつなんだろうな」

「あれじゃないか。おとぎ話でいうブラックサンタみたいな」

「ってことは袋で殴ってくるのか。何系統のスキルになるんだろ」

「袋なら打撃系……。ならテツオと同じ《片手棍》?」

 

 ケイタたち黒猫団の男性陣はニコラスについて興味津々。けど、袋でソードスキルはさすがにないとハチマン思うな。

 

「《迷いの森》か。マップがなきゃあまず攻略できないらしいが、その点は?」

「抜かりないヨ。オイラはもちろん、キー坊とハー坊、ユッキ―にアーちゃんも持ってるからナ。あとクラインも持ってるんだったカ」

「ギルド全員で前に探索したことがあったからよ。そんときに購入済みだ。なんせハチのやつが持ってなくてえらい目に遭ったって聞いたからな」

「35層が解放されてすぐの日だろ。あのときはまだ《迷いの森》の仕組みがわかってなくて、ハチとユキノさんが迷子になっちゃったんだよなぁ」

 

 おい待て。なんか聞き捨てならない暴露が聞こえてきたんだが。

 

「なに勝手に人の恥ずかしい話暴露してくれちゃってるのお前。言うなっつったろーが」

「あ、そういえばあのとき、ハチとユキノさんがね――」

「んんっ! サチさん、それ以上はプライバシーの侵害だから止めてもらえるかしら」

 

 ユキノも一緒になってこれ以上の暴露を防ごうとする。が、既に手遅れだったらしい。

 

「ええー、いいじゃない話しちゃってもー。ワタシは聞きたいなー。Darlingとユッキがなにしてたのか♪」

「あ、私も聞きたい。教えてよ、キリトくん」

「んー、まあ本人たちの了承がとれれば」

「「いいわけないだろ(でしょう)」」

「ハハ、息ぴったりだな」

 

 並んで詰め寄るとキリトは苦笑いで口を噤んだ。

 これでとりあえずは一安心。かと思いきや――。

 

「そこまで言うと逆に聞きたくなってくるな。果たして迷い込んだ先でハチとユキノの二人はなにをしていたのか……」

「ちなみにこの件、アルゴは知ってるのか?」

「ああ、けどこのネタは2万コルだゾ」

「に、2万……」

「おいおいなんでそんな高ぇんだよ」

「そりゃあ口止め料をもらってるからさ。ハー坊から、ナ♪」

 

 全員の視線がこちらへ向く。当然だろう。個人情報漏らされるどころかそれで商売されかねないのに対策しないわけがない。

 

「くそー、2万か。出せないこたぁねぇが」

「言っとくが俺の資金力は53万だからな」

「どんだけ本気なんだよ……」

 

 バカ言え。こんなんじゃあ本気出したパンには2,3日で買われるぞ。まあ同じ場所で稼いでる分、値段を吊り上げることはできるが。

 まあ最終的には押し切られるだろうから、情報の存在自体をアイツに知られた時点でアウトと言っていい。

 

 それで弄られる未来を想像して身震いしていると、後ろの方からそれはそれは大きなため息が聞こえてきた。

 

「そろそろ出発しないと間に合わなくなるわよ」

「っと、そうだな。じゃあ行きますか。キリト、合図よろしく」

「俺がやるのか……。まあいいけど」

 

 キリトは一度苦笑いを浮かべるも、すぐに気を取り直して前に出た。玄関扉の傍まで来て一同を見渡し、いつもより大きめに声を張る。

 

「それじゃあみんな準備はいいか。合図でスタートするからな。5秒前。3、2、1……GO!」

 

 キリトが扉を開き、ダイニングを飛び出した。

 すぐ後にアスナが続いて、黒猫団の5人、クラインと風林火山の面々、エギルとアルゴが続々とダイニングを飛び出していく。

 最後に俺、ユキノ、パンの三人が走り出て、総勢19人のレイドは《アルゲード》の市中を駆け抜けていった。

 

 

 

 言うなればこれは他の有力ギルドを撒くための力業。年に一度の祭りに相応しい、傍迷惑な強行突破だ。

 今日に至っても監視の目がなくならなかったことから考え出された作戦で、要は『尾行される前にダッシュで逃げよう』という行き当たりばったりな策だ。

 

 本当は《回廊結晶》を使用して見つからずに《迷いの森》の最深部へ行くことも検討されたんだが、「いくらフラグmobのためとはいえそこまで手間と金を掛けて《連合》の仲間を欺くのはちょっと……」という主にキリトからの苦言もあってお蔵入りとなった。

 

 仕方ないので、《聖竜連合》や《天穹師団》が出した偵察要員を出し抜くことは諦め、せめて追いつかれないようにギリギリに出てダッシュで行こうという結論になったわけだ。

 

 そんなこんなで、俺たち19人は雑踏の中を駆け抜けているのである。

 道行くカップルたちを押し退け、群衆の合間を縫って転移門へ向かう行軍は、聖夜を楽しむ人々へ多大な迷惑を掛けていたことだろう。深くお詫び申し上げます。っしゃオラァリア充爆発しろ。

 

「ならあなたも爆ぜ散ることになるわね。ご愁傷様」

「おいなにさらっと人の思考読んでんだよ。なにきみエスパー?」

「その小悪党じみた顔を見れば大体予想がつくわ。不本意ながらね」

「アハハ! ユッキもDarlingのことよーくわかってるもんね!」

 

 すぐ後ろでじゃれ合う声を耳に留めつつ、俺は《アルゲード》の道を走るのだった。

 

 

 

 

 

 







以上、第3話でした。

今回の《背教者ニコラス》戦は割としっかり描いていく予定です。
SAO原作ではキリト氏が単独で打ち破っていたボスですが、拙作では複数パーティーで戦わせたいと思います。

それでは。
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