Fate/555 ―異世界転生記 1― 作:某アークス(三鯖民)
恥ずかしながら構想を練り直し、リメイクと言う形で再起動することとなりました。
それでもよろしければ、ご覧ください。
追記(12/11)
視点変更した際の描写をわかりやすいものに修正しました。
―――あぁ、あの日の事は今でも覚えている。
神様ってやつがいるなら呪ってたさ。
なんで俺達の世界が焼かれなくちゃいけなかったのか、って問い詰めてただろうな。
なんで俺達が死ぬハメになったのかとか、色々と不満溜めてたの思い出すよ。
え?後悔したことややり残したはないかって?
――そいつは無いな。最後の最期で、人生で一度はやってみたいことができたしな。
黒い髪の青年は走っていた。
あたりは崩れた瓦礫が散乱し、あちこちから炎が上がる。
空は黒雲に覆われ、光なぞは何処にもなかった。
あたりを見渡せば、自分と同じように逃げ惑う人、足を止め呆然と空を見上げる人、瓦礫に挟まれた人を救おうと瓦礫をどかそうとする人……
他人に手を差し伸べられる人間は数えられるほどしかいなかった。
どこかから叫び声が聞こえる。
燃えてる家の中、崩れた地下鉄の下、崩落した道路の対岸。
けれども進んで救いに行く人々は数えるほどしかいなかった。
「はぁーっ…はぁーっ」
青年は家族とはぐれた。
父親は仕事場に行ったきり帰ってこなかった。
母親と弟とは逃げる途中で道が分断されて、そこから出会えてない。
「はぁーっ……う、ぐぐ…」
走りどこかに向かう青年の顔は、恐怖と孤独感でぐしゃぐしゃになっていた。
そんな時だった。
瓦礫に挟まれてミンチになった人間だったものと、その近くでワンワンと泣き続ける少年を見かけたのは。
足が止まる。
青年の胸中に、一つの感情が飛来する。
――――――このまま、子供を見捨てて走ればいいのか?
今の状況を考えて、はっきり言ってしまえばそれは愚考だった。
今あの少年を助けたとしても、何も変わらない。
世界が劇的に変化するわけではないと。
その行動を見て感動したどこかの宇宙人が、自分を超人にしてくれるなんてご都合主義は起きないと。
合理的に考えればそうだった。
しかし、青年の心の中に「合理的」という文字はなかった。
なんだか急に、「ここで見捨てたら俺って人間として最低ランクになるんじゃね?」とあまりにも場違い且つ利己的な事を考えていた。
だがそんな事は本人にとってどうでもよかった。
青年は、ただ目の前で泣いている人を見捨てられるほど冷血ではなかったのだ。
「……君、どうしたんだ?」
「ぅええええええ……ま、ママが…」
赤く血に染まった死体を指さす子供。
「……そうか。でも君もここにいたら危ない。お兄さんと一緒に安全な所へ行かないか?」
「やだぁ!ママと一緒がいいのぉ!!」
泣く子供の目線に合わせるように屈む青年。
「…きっと君のお母さんは、君に生きていてほしいと思ってる。けどここにいたら君だって死んじゃうぞ。それをお母さんは望んでないと思う。だから―――」
だがその時、瓦礫が更に崩れ出そうとしていた。
「いいかい、大人たちがたくさんいる方へ走るんだ!早く!」
その大きな声に驚いたのか、泣き止み走り出す子供。
その直後、建物の崩落が始まった。
塞がれる穴、落ちてくる鉄骨。
その一本が、青年の足を押し潰す。
「――――!!」
そして、別の鉄骨が青年の腹を貫通した。
「――――――あーあ、死んじゃうのか俺。…寂しいなぁ……どうせなら誰かに看取られて死にたかったもんだぜ…」
別の瓦礫が落ちてくる音がする。
青年は最期に、先の少年の無事と、母と弟の無事を祈りながら意識を手放した。
だが死の間際、とても暖かい声が聞こえた気がした。
そして不思議なことに、青年――――――いや、もう名乗っていいか。
俺、
そしてその後だ。よれよれコートの人が俺を助けてくれて、同じように助けられたであろう赤毛の少年の事も一緒に見ながら――
―――生きててくれて、ありがとう。
そう、泣きながら言ってたのを今でも覚えている。
―――◆◆◆
―――あ?あの日の事だぁ?
忘れたくても忘れらんねぇよ。
こちとら俺の事を「兄貴」って慕ってくれたやつらが何人と死んじまったんだ。絶対に忘れるもんか。
あぁ?後悔?んなもん大有りに決まってんだろ、話聞いてなかったのかよ?
――まぁ特にって言うなら、親代わりに育ててくれたあの二人に礼言えなかったってことくらい、かねぇ…
「お前らぁ!こっちだ急げ!地下鉄ならまだ大丈夫だぁ!!」
「死にたくなかったら早くこっち来ぉい!」
炎が燃え盛る中、お世辞にもまっとうな人間とは言えない風貌の男たちが、逃げまどってる人たちに対して地下に行くよう呼び掛けていた。
「兄貴ぃ!ここ満杯だって駅員の兄ちゃんが!」
「おう!次の駅が無事かちょっくら見てくる!」
子分らしき少年から報告を受けた白髪の青年が、足場の悪さをものともせず次の地下鉄がある方角まで走る。
だがそんな青年を追う二人の男女の姿が。
「ご一緒させてもらうよ、白井くん」
「ライくんずるいぞー!一人だけかっこいいヒーローの真似事なんてしやがってー!」
「…勝手にしてくれ、工藤さん、持村さん」
白井と呼ばれた白髪の男と、二人の男女は走る。
必死に生きてる人を探し回り、いればすぐさま助けて地下への非難を促す。
だがその途中、瓦礫が崩落して青年は二人と分断されてしまう。
「無事か、お二人さん?!」
「……無事とは言い難いが問題ない!白井くん!君はこのまま誘導を続けてくれ!」
「ちゃっちゃと出ちゃうからさ!こんなとこ!だからライくんは行きなさい!」
二人の意思を踏みにじることは出来ない。そう考えた青年は振り返らず走り続ける。
「ああくそ!あっちぃ!誰かいねえか?!」
叫ぶ青年。だが後ろで大きな物音がした。
振り向くと、ここに入るときに空いていた穴が瓦礫の崩落で塞がっていた。
「おいおい…まじかよ」
近づき、瓦礫をどかそうと試みるがどれも重く、そして充満した煙の所為で意識が朦朧とし始めた。
「……ここが死に場所かよ、火葬にしちゃあ派手すぎるぜ全く」
――思えばでこぼこ道のような人生だった。
外人と日本人のハーフらしい捨て子の俺は、あの二人に拾われた直後凄まじく荒れていた。
だがそんな自分を受け止めてくれた二人には、頭が上がらない。
しまいには荒れていたころぼっこぼこにした連中がこぞって自分の事を兄貴と慕い、ついてきてくれた。
でもそんな奴らともう会えない。
自分を育ててくれた二人に対して、礼の一つも言えないまま死ぬのだ。
「あぁ…くそ、くそったれ。災害だか何だか知らねえが、こんな運命、俺ぁ、やだね……」
ゆっくりと瞼が落ちる。
呼吸が止まり始める。
だんだん遠ざかって、溶けていく。
そんな死の感覚を前にして青年は―――恐怖ではなく、不甲斐ない自身への怒りを抱きながら意識を手放した。
だけどそのあと青年―――ああもう、まどろっこしいな…まぁ俺、
その時のあの人の驚きっぷりったら、マジで目ん玉ひん剥いてたのなんの。ケッカイがどうとか言ってた気がするが、生憎『そっち』方面は門外漢だから分かんなかったけどよ。
―――◆◆◆
―――あの日の事ですか。忘れる筈もありませんよ。何せ一度死にましたから。
今でも時々、体調が悪い時とか、悪夢にうなされる時は決まって見てしまうんです。
何を…って。決まってるじゃないですか。自分が死ぬ瞬間ですよ。
怖くないか、ですか?
―――正直、あまり良い気はしませんよ、『何度も焼き死ぬ』のは。
「こっちもダメ…さっきのほうからはもう煙が来てる…進むしかないんですね」
あちこちから火の手が上がる廊下。
其処を少年は口をハンカチで覆いながら歩いていた。
先程から出口、或いは窓を探し回って進んでいるが、一向に安全に出られる場所は見つからない。
そして何より火の勢いが増しており、それから逃げるように階段を上っていた。
そうしているうちに、自然に上の階へ進んでしまっていたのも、出口から遠のく原因となっていた。
「いざとなったら飛び降りる覚悟を――――?!」
そう言った瞬間、足元が崩れ、少年は下の階へ投げ出される。
「――ぁ、ぐっ…」
落下の衝撃で、打ちどころが悪かったのか右足が動かない。
「――ぁ、あああ!!」
さらに崩れた瓦礫と鉄骨が、残っていた左足を押し潰す。
両脚は完全に使い物にならなくなり、ただ失意と絶望が少年の心にのしかかる。
「あ、あはは…はは、ははははは」
少年の心は圧壊寸前だった。
そして周りの火の勢いはどんどん増していき、ついに自分の衣服に燃え移る。
「――ぃい、いやだ、死にたくない…死にたくない!!」
狂ったように腕を振り、火を払おうとするが、その腕に火の粉が当たり余計焦げる。
「いやだいやだいやだいやだ…誰か、助けて」
ついに少年の腕は、火の海の中にあっけなく沈む。
そこから先の事は覚えてない。ただ肉の焼け焦げた臭いは今も鼻に残ってる。
しかしその少年―――僕、
そしてどうやら、魔術を研鑽する魔術師の家の次男として生まれた様なのでした。
え、家の苗字?…残念ながら、貴方が期待しているような、「間桐」や「遠坂」ではありませんでしたよ。ただまあ、自分の前世?と同じ「青葉」だったのは、個人的に嬉しい所です。
―――◆◆◆
―――ああ、僕の番かい?いいとも、存分に聞かせてあげよう。
彼らを…彼らの「世界」を見つけたのは「彼」のおかげだ。
いやぁ、最初はびっくりしたよ。いつも通りに過ごしていたら彼、いきなり現れて写真を撮るんだ。
ただまぁ、その後聞いた話で全部すっ飛んじゃったんだけどね。
あ、写真と言えば彼から送り付けられてきた写真はひどかったもんだよ!かなりズレてて僕が何重にも分身しているんだ!
――まるで、僕が幻術をかけた相手が見る僕の姿みたいにさ!
「――――――それで君は、わざわざ世界の外側である此処に何の用事だい?」
「少しばっかり手伝ってほしいことがあってな。夢を通して世界を旅するアンタじゃないと頼めない事だ」
不法に入っておきながら我が物顔で椅子に座りこむ男は、マゼンダ色のカメラをいじりながら僕にこう言った。
「いくつかの世界が突然燃え尽きて消えた。その原因を探るのを手伝ってほしい」
「あのねえ、君簡単に言うけどそれ明らかに『違う世界の問題』だろう?僕が見れるのは同じ木の枝までだ。わざわざ他の離れた木を歩いて見に行くほどの体力は持ち合わせてないぞ」
「そう言うだろうと思ったぜ、だからこっちで『目』は用意した。今頃どこかの枝――そっちよりのどこかの世界に跳ばされてる頃合いだろ」
「……へぇ、随分周到な準備だ。でもなんで僕なんだい?それこそ遠くまで見渡すなら別に人はいたはずだ」
「夢魔であるアンタじゃないとダメだ」
「………なぁるほど、分かったよ。で、僕の目となってくれるのは誰かな?」
「こいつらだ」
そう言って彼は何人かの顔写真を取り出す。
「そいつらのうち三人はここ寄りの世界に行ったらしい。見つけたらそいつらの夢を通して情報を集めてくれ」
「ばったり出くわしたらどうしたらいい?ありのまま伝える?」
「自分は神様だって言ってごまかしてくれ」
「どうして?」
「その方が都合がいいからだ」
「へぇー…まあいいや、その仕事は引き受けよう」
「助かる。それじゃあな」
そう言って彼は銀色のオーロラに消えてったんだ。ひどい奴だ全く…
「さて、彼らはどんな模様を見せてくれるのかな?」
あぁ、とっても楽しみだなぁ。
――――――斯くして物語は動き出す。
異物が紛れ、少しずつ道を逸れ、歪む物語。
何故青年たちは生まれ変わったのか?
彼らはこの後どうなるのか?
唯一つ言えるのは、その答えを解き明かすのは彼ら自身であるという事である。
――――斯くして訳の分からないままよれよれコートのおやじさんにに引き取られた俺な訳だが、そこまで来てやっと思い出す。
「あれ、ここ型月世界じゃね?」
そんなこんなで気付けば俺は、『あいつ』のお兄さんになってしまう?!
次回、「俺が兄貴でお前が弟で」
まぁそれはともかくとして、こっちの世界ってニチアサあったっけ?