Fate/555 ―異世界転生記 1― 作:某アークス(三鯖民)
――――目が覚める。
やっぱりあれは白昼夢でも走馬燈でも、ましてや幻覚でもなかった。
一体どういうことだ?頭をひねってもまったくもって現状が分からない。
ふと周りを見渡すとここはどうやら病室。窓からは綺麗な青空。さっきまでの地獄が嘘みたいだ。
自分の体を見る。
やっぱり縮んでる。
(体は子供、頭脳は大人ってか?名探偵じゃあるまいし)
ふと隣を見る。
隣のベッドには、目が死んでる赤毛の少年がぼーっと空を見ていた。
うん。
……いやいや待て待て。
どう見たって「Fate/」シリーズの衛宮士郎君じゃないか。ちっちゃいけども。
となるとアレか?俺を助けてくれた人はひょっとしてぇ……?
「――目が覚めたみたいだね、二人とも」
……よれよれの黒コート。ボサボサ頭に死んだ魚のような目。
うん。どう考えても衛宮切嗣さんです本当にありがとうございましたぁぁぁぁぁ?!
え?うそ?なに?じゃあ俺…いわゆる「神様転生」ってやつで「型月世界」に生まれ変わったのか―――?!
こんな感じで絶賛混乱中の俺をよそに、切嗣さんは俺と隣の士郎を見てこう言った。
「いきなりで悪いけど質問だ。ここで知らないおじさんに引き取られるか孤児院に預けられるか、どっちがいいかな?」
―――知ってる台詞とちょっと違っていたかもしれないが、優しい顔と声音で切嗣さんは俺たち二人に聞いた。
◆◆◆―――
その子たちを見た時、まるで正反対な子たちだと思った。
片や、空をただ眺めて何をする訳でもなくぼーっとしていた。
片や、周りをせわしなく見回してなにやら考え事をしていた。
それで二人とも僕を見るなり、とっても驚いていたよ。
そりゃそうだ、知らない男が現れて急に「僕に引き取られるか施設に行くかどっちがいい?」なんて聞かれれば驚くに決まっている。
―――だけど黒い髪の彼、影人君は迷わず僕に引き取られることを選んだ。
それに続いて赤い髪の士郎君も、僕の元に来ることを望んだ。
そうして彼らは、こんな僕の『息子』達になってくれた。
◆◆◆―――
あの後勢いで「はい」と答え、俺はめでたく衛宮切嗣さんの養子となりました。
そしてあれよあれよと手続きが終わり、ただ今武家屋敷の目の前でございます。
そして俺たち二人に合わせるように屈む切嗣さん。
「ここが今日から、君たちの家だ。そして僕が、君たちの親だ」
「…よろしく、おねがいします。きりつぐさん」
「よろしく、じいさん」
がちがちな俺とは反対に、士郎は早速切嗣さんを「じいさん」呼び。
これには思わず切嗣さんも不意打ちだったのか、肩を落としていた。
「…じ、じいさんか…そっか…僕も年なのかなぁ…」
「いや、まだまだわかいとおもう」
「はは…ありがとう。影人」
「…じいさんってよんだらだめなのか?」
隣で士郎が少し悲しそうな顔をする。
「好きな呼び方でいいよ、士郎」
「ホントか?じゃあじいさんってよんでいいんだな?!」
「あぁ。影人も、僕の事は好きな言い方で呼んでくれ」
「じゃあ、きりつぐさん」
「……そっか。分かった。さ、二人とも中に入って」
……少しばかり精神が体に引っ張られてる気がする。思考や行動が子供のソレだと、自分のことながら思う。
だけど今はいい。
心苦しいが、切嗣さんが俺の事を「生き残った子供の一人」と認識してくれればそれでいい。
誰にも言えない罪悪感を心の中に押し込みながら、切嗣さんが明けた引き戸を、士郎と一緒に俺はくぐった。
その後はいろいろと物の整理したり、当分出番のなさそうな物を庭にある立派な蔵にしまったり。
忙しい引っ越しが終わったころには、すっかり日が落ちていた。
「すっかり暗くなっちゃったね」
手をこすりつけながら切嗣さんが白い息を吐く。
「は、はらへった…」
「…さすがににもつ、おおすぎ……」
男手三人(?)だったとはいえあの荷物をすべて運ぶのには骨が折れた。若い…ってか幼いのに腰痛持ちになるかと思った。それぐらい重かったのを察してくれ。
「なぁなぁきりつぐさん、ごはんどうするの?」
多分荷物の中には切嗣さんの『仕事道具』もあったんだろうなーと思いつつ、心の内にしまいながら切嗣さんに聞く。
「…………ご飯、どうしようか…?!」
「かんがえてなかったのかじいさん?!」
「……うそぉ」
割と深刻に悩む切嗣さんの姿を見て、「あ、だめだこりゃ」と思ってしまった俺は悪く無い、悪く無いと思いたい。
短めですが今日はここで。では。
―――次回予告
どうもどうも、前世は高卒不良、現世では一文無しどころか社会的に存在しないことになってる白井です。さてさて、俺が落っこちたビルの中の事務所。そこの主さんにどうやら気に入られちゃったみたいで、今では立派な住み込みバイト。
次回、「がらんどうとか言ってるけど結構物ありますね」。お楽しみに…ってか?
――――――――――――――――巨大な、まるでその部分だけきれいに削り取られたかのようなクレーター。
その場所に、巨大な黒い人型の『何か』と黒衣を纏った赤い瞳の男と、甲冑姿の青年が立っていた。
「――――――遅かったな」
「これは…君が引き起こしたことなのかい?」
「断じて違う。だが今は多くを貴様に語る事は出来ん」
男は地面に触れ、砂を掬い上げる。
「―――奴の目的が達成されることだけは阻止しなければ」
「奴?それは一体―――」
「悪いが俺にも時間が無い。さらばだ」
男の手から砂が、風に吹かれ飛んでいく。
それをどこか悲しげな眼で見ていた男は振り返り、人型の『何か』へ乗り込む。
人型は飛び上がり、鳥のような姿になり空に消える。
滅びた文明の中心、丸いクレーターの中に残された青年は空を見上げ問う。
「――――君は一体、何者なんだ?」
青年の呟きに応えるものは、その場にいなかった。