思い付きフォギア   作:diethyl

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 残り3割に2週間かけるやつーwww



 私です





イレギュラーハンタービッキー2

 「こんにちは響ちゃん。今日もよろしくね」

 

 「はい、よろしくお願いします」

 

 私はカウンセリングを受けている。引きこもっているだけならともかくあの有様を見る限り当然だと思うけど少し大げさな気もしなくはない。 ―――――――――――――うん、嘘ついた。どうしようもなく誰かに聞いてほしかったのかもしれない。彼の軌跡を。彼の苦悩を。それを嘘だって、そんな訳がないって、笑い飛ばしてほしかったのかもしれない。そうじゃなければ、彼が救われない。私だって救われない。

 

 「それで、響ちゃんはその夢を毎日見ていると」

 

 「はい、内容はいつも違う場面だけどエックスってロボットのことです」

 

 そんな(かのうせい)を背負えない。そんな意思(こころ)を背負えない。そんな想い(ねがい)を背負えない。 ――――――私は希望(エックス)になれない。

 

 思い出すと体が震える。彼の雄姿は痛々しかった。

 

 「響ちゃん? 寒いの?」

 

 「……あはははは……ちょっと冷えちゃったのかもしれませんかな?」

 

 そう言ってごまかす。だって、ただの夢に怖がるなんておかしいじゃない。

 

 ――――――ただの夢であって欲しかった。

 

 「温かいものどうぞ」

 

 「温かいものどうも」

 

 砂糖がたくさん入ったコーヒーに口をつけて体に体温がいきわたる。この熱は身体が生身であることの証でもあるから心にも染みる。

 

 「友里さん、ありがとうございます」

 

 「ええ、響ちゃんも身体には気をつけて」

 

 

 

 

 

 「状況はどうだ友里」

 

 「はい、司令。報告書は先ほど提出いたしました」

 

 特異災害対策機動部二課では一人の少女についての記述が綴られているデータが大画面に転写されていた。

 

 「そうか、彼女の容態は?」

 

 「はい、接触中は特に大きな乱れは見られないと思いますがいつ錯乱してもおかしくないように見えます」

 

 「対外的にはノイズ災害の生存者迫害からの保護という名目で彼女に接触出来たのは幸いと言うべきか――――――」

 

 幸いの言葉とは裏腹に歯が砕けんと言わんばかりに悔しさを滲ませる風鳴弦十郎。本来守らなければならない一般人を利用する形な上、救済しなければならない人間のケアも副次的なものにしてしまわざる負えない落ち度だと護国の人間としてだけでなく大人としての矜持を著しく傷つけていた。

 

 「気がついて対処できるだけ良かったと思いなさいよ。弦十郎くん」

 

 「了子くんか。それでも、守るべきだった者達だ。翼に奏くんのファンでもあるんだ。それに対する仕打ちとしてはあまりに酷すぎるのはないのか」

 

 「その件も次第に収束していっています。デマによる誤解も悪意の拡散も対処済みです。もうじき収まることでしょう。情報統制も二課の仕事ですから」

 

 「そうか……それは何より、だ」

 

 気持ちを切り替えるように頭を振り、司令としての顔に変える。後悔だけでは前に進めない事を知っている程度には人生を積み上げてきた一人の大人としての男がここにいる。そしてすべきことを見失わないのも大人だ。

 

 「この一連の件は表向きはノイズ災害のアフターケア。裏向きはノイズ災害の後始末。更にその裏側は」

 

 「ノイズ討伐の功労者の事情聴取と確保。大分情報も集まってきたわね」

 

 立花響(さんこうにん)から得た情報一つ一つを用語にして纏めた資料を司令室に持ち込まれる。膨大なデータを整理できたことは全て彼女の手による所が大きい。

 

 「レプリロイドにサイバーエルフ。随分とSFな話よねー」

 

 「問題はなぜ彼女がそんな記憶を持っているか、だ」

 

 「その上彼女はその記憶に潰されているように見えます。あの、彼女から件の聖遺物なり何なり取り除いて、そう、普通の女の子に戻せる方法はありませんか? 櫻井博士」

 

 「そうね、でも以前メディカルチェックを受けさせたの覚えているでしょう」

 

 そう、彼女にカウンセリングの名目で来てもらったが引きこもっていた時期の体調状態から衰弱してないかという名目でメディカルチェックを全面的に行った。

 

 「その結果は?」

 

 「反応なし、一般的な女子と変わらない健康状態だったわ。精神状態を除いておかしな点はなかった」

 

 「秘密裏に彼女の邸宅も調べましたがそれらしきものは一切ありませんでした」

 

 「もちろんアウフヴァッヘン波形も反応なし。別系統の技術で動いているのだとしたら私たちには今のところ手を出せそうにないわ」

 

 「そうか。それなら上もただの被害者の一人としか判断しない、ということになるな」

 

 ただ、と安堵する空気には早いと言わんばかりに険しい表情を浮かべる人間が一人。

 

 「でも一つだけ心当たりがあるわ」

 

 「…………教えてくれないか、了子くん」

 

 重々しく告げようとする言葉にその場にいる人間が息を飲む。そして告げられた言葉は

 

 「輪廻転生(リインカーネイション)

 

 「輪廻(リイン)……転生(カーネイション)

 

 「遺伝子情報内に施された、何らかの「刻印」を持つ人間を器として魂を転写する異端技術。未来永劫に再誕させ続ける輪廻転生システム」

 

 「ちょっと待ってください! それって器になった人間はどうなるんですか!?」

 

 「…………さあ? 私も聞いただけだし、あんまり想像したくないわ」

 

 「そんな…………」

 

 「聞いた話ですがエックスなる人物…………人物はそんなことをする人格のように思えないのですが」

 

 「それこそ仕組みを施したのは本人とは限らないわけだし、まだそうだと決まったわけじゃないわ」

 

 そう言っても否定しきれない可能性を前に空気は淀んでいった。

 

 「彼女がそんな存在だとしたら、永遠に戦わなくてはいけないのか。それではあまりに救いようがないのではないか」

 

 「司令…………」

 

 歯を食いしばり、憤りを隠せない風鳴弦十郎。誰かに戦いを押し付けてしまうことの辛さは人並みに知っているからこそその義憤は実感の持ったものとなっている。

 

 「現状ではライブ以来ノイズの出現が確認できていない状況です。だからこそ、今のうちに彼女が戦うような事態になることを極力避けるように手を打つ必要がありそうです」

 

 「……………………そうすべきではあるが、こちら(二課)も保有している戦力が少なくてな。勧誘したいのも本音だが……」

 

 「司令!」

 

 「本人が戦うようなことを拒否している以上無理強いはできない。ここでの話は他言無用だ」

 

 「…………そうね、その子の事も気になるけど嫌がる子を連れてまですることじゃないし、」

 

 「ええ!? 櫻井さんが自重した!?」

 

 「私だってそれくらいの分別はついているわよ。失礼ね」

 

 未来がどうなるのか誰にも分からない。それでも、戦うことが出来ない人間が戦うことを強要することは間違っていると考えている。そう二課の人間は思っていた。

 

 ――――それでも、英雄(かのじょ)を邪魔に思う人間はこの場にはいる。戦いの時は、すぐそこに―――

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見る。

 

 「どいてくださいエックス、ワタシはDr.ケインを殺したいだけです」

 

 初めての友人を亡くした。

 

 「そうさ、B級ハンターのくせに生意気なお前が気に食わなかったんだよ」

 

 同僚を亡くした。

 

 「命乞いの台詞はもっと下手に出るものだぞ若造」

 

 隊長を亡くした。

 

 「連れてってくれよ、懐かしい未来へ」

 

 親友も亡くした。

 

 なくして亡くして失くして無くして泣くして、

 

 それで何も感じなくなっていった。

 

 ……………………

 

 「そんな……今まで尽くしてきたのに旧式だからって処分するつもりなのか!?」

 

 「燃費を悪く作ったのはお前たち人間じゃないか!」

 

 「生きる権利を奪っておいて抵抗したらイレギュラー扱いか!?」

 

 「嫌! お願い! 助けて! スクラップにしないで!」

 

 平和ってなんだっけ?

 

 「我が社の追加アタッチメントならイレギュラー共を速やかに一掃できますぞ」

 

 「レプリロイドなど信用できるか。このイレギュラー共め!」

 

 「なぁに、サイバーエルフなど所詮は使い捨ての道具。それこそ人間にこそ使われるべきですな」

 

 「ハッ、鉄くずが人間様に逆らおうなんて、永遠にありえねーんだよ」

 

 守りたかったものってなんだっけ?

 

 「ハッ、レジスタンスの連中は歯ごたえがねぇな」

 

 「はー、退屈ね。そんなの戦闘バカに任せとけばいいじゃない」

 

 「フン、貴様らクズどもにエックス様の手を煩わせるまでもない」

 

 「エックス様の意にそぐわないのなら処分するまでだ」

 

 力ってなんだっけ?

 

 ……………………………………………………

 

 「これがお前が守ってきた平和とやらか」

 

 気がつくと装甲が剥げたVAVAが背中から銃口を向けていた。

 

 「お前は結局俺たち同類さ、戦うためだけに生まれてきた、擬似生命体にすぎないのさ」

 

 その言葉を否定したくても声が出なかった。迷ってしまった。その答えを結局生涯出せなかったのだから。

 

 「何を勘違いしたのか救世主気取りなどおこがましいにもほどがあるだろ」

 

 否定のために声を上げようと踏み出そうとしてできなかった。何か、底なし沼にハマってしまったような感覚が―――――

 

 「なら、連中に聞いてみな」

 

 足元にはイレギュラー(倒してきた者)達が、はりついて沈みこんでいく。

 

 「俺達は」

 

 「こんなもののために」

 

 「処分されたのか」

 

 「イレギュラーは」

 

 「奴らではないか」

 

 「いや、」

 

 「本当のイレギュラーは」

 

 “お前だ、エックス”

 

 「――――――――――――――――――――――――――――――」

 

 叫びをあげることさえかなわない。だっていつだって彼らに(ぼうりょく)で抗ってきたんだから。(ぼうりょく)で解決してきたんだから。

 

 「ハハハハハ、とんだ甘ちゃんだな。そのバスターで吹き飛ばせばいいだろう。いつものようにな」

 

 泥のように沈んでいく。もがけばもがくほど沈んでいく。怨霊の重さはレプリロイドの体重より重い。

 

 「なんだエックス、遠慮なくぶっ放してきたときと毛色が違うじゃねぇか。」

 

 もがいて、もがいて、落とされて、顔まで浸かってしまう。口があるうちに何か言わないと。口があるうちに何か詫びないと。口があるうちに乞わないと。

 

 「違う!」

 

 だって、私はこんなことを受ける謂れはない。こんなことを受ける資格はない。こんなことは耐えられない。だから、

 

「私はエックスじゃない!」

 

 エックス(からだ)からセミの抜け殻のように抜け出していく。亡者(残骸)達の群れから走って逃げ出す。走って、逃げて、躓いて、逃げて、転んで…………息が切れるまであがいて――――――

 

 振り返るとエックスが沈んでいくのが見えた。見えてしまった。魂を失ったように眼から光が灯らないエックス。命を失ったように身体から力を失ったエックス。誓いを破ったかのようにすべて無くした人形のようになったエックス。

 

 「――――あ…………」

 

 「なら、こいつはいらねぇな」

 

 VAVAのキャノンがエックスが沈んだ沼ごと吹き飛ばすのが見えた。爆風が強いのに影響を受けないようにこっちに向かってくるVAVA。宿敵を()した後に何をしようというのか―――――――

 

 「てめぇも、いらねぇな」

 

 「――――――――――ぁ」

 

 エックス(ちから)を捨てた時点で抗えるものではない。キャノンの光が灯ったのを見た時点で私の結末は一つしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 「響!」

 

 「あ、」

 

 気が付くと未来が肩をつかんで必死な顔をしていた。

 

 「うなされていたみたいだけど大丈夫?」

 

 「大丈夫だよ。夢は夢なんだから」

 

 そう、すべては夢なんだから。

 

 「うん、今はこのままでいいのよ」

 

 「未来、私、こんなのやだよぉ………………」

 

 このぬくもりと手放したくないのに、未来のそばから離れたくないのに。でも、災害(ノイズ)だって、暴力(イレギュラー)だってやってきてしまったら、未来はどうなってしまうのかと考えてしまう。

 

 この力を戦いに使ってしまったら身体が冷たくなってしまうかもしれないのに。もしかしたらこの温もりすら感じることができなくなってしまうかもしれないのに。だけど、ためらってしまったら―――

 

 「大丈夫よ、戦わなくていいわ」

 

 「え?」

 

 未来が突然私の内面を突く。

 

 「戦わないことで傷つくのは響じゃないんだから」

 

 「何を…………言ってるの…………?」

 

 何かがおかしい、なにかおかしい。

 

 風景もおかしい、世界がおかしい、目の前の未来がおかしい、タタカイの空気がする。

 

 「だって、戦わないのなら」

 

 未来が黒くなっていき細切れになっていく。 ヤメテ――――――――

 

 「コウナルシカナイノ」

 

 灰になる未来。壊された見覚えのある風景。踏みにじられた日常。積み重なった(したい)の山。戦えない結果。戦えなかった結果。力がなかった結果。だってそれは間違いなく――――

 

 エックスが証明したことなのだから。

 

 「―――――――――――!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 「ぁぁぁっぁぁああああああああああああ!!!」

 

 「響ちゃん! どうしたの!?」

 

 「やめて! 嫌! 私は戦わないと! 戦いたくないの! 戦いの先に何もないの! 戦わないと誰も守れないの! 私は! 私は! 誰か助けて!」

 

 「アンプルをお願い! 精神安定剤を早く!」

 

 白衣を着た職員が忙しく走り注射器を持ってくる。

 

 「患者の固定完了しました! 落ち着いてください! 大丈夫です!」

 

 「動脈を確認! 少しの間だから我慢して下さいね」

 

 「安定剤、投薬します! 響ちゃん! しっかりして!」

 

 暴れる患者(ひびき)に対してトリガーで薬が注入される。投薬された彼女(かんじゃ)は一瞬うつろな目をしたと思えば人形のように力が抜けて、床に倒れそうになったところを職員が支えた。

 

 「…………この子に戦わせるつもりなのかしら……? どうしても、戦わせないといけないのかしら? …………翼ちゃんや奏ちゃんに戦わせておいて何だけど、二課は…………政府はこの子に頼らなきゃいけないの? 大人がすべきことを、子供に……ましてや傷ついた子にさせなきゃいけないのかしら?」

 

 思わず、同僚(ふじたか)のようにぼやいてしまう。この少女(優しい子)に背負わされた重すぎる(ねがい)。ノイズが今後出てこないとは言い切れないし、そんな楽観論は二課(最前線)に所属する身としては持てない。だからこそ、他に戦う仲間が必要とされている。 ―――それを目の前の少女に押し付けたくないだけで。きっと熟練の戦士と同等の能力(ちから)を持っていても中身(こころ)は普通の少女なのだ。

 

 「…………どんなことになっても、きっと守るからね。戦うにしても、戦わないにしても」

 

 偽善者でもいい、ひどい大人でもいい。それでも、汚い政治のことからも、怖い戦いからも、眠っている今はすべてから守ってあげたかった。それが大人の務めなのだから。

 

 

 

 

 

 古代の巫女(フィーネ)は思索する。あの瞳を持つものに覚えがあった。

 

 間違いなく英雄(じゃまもの)の目だ。

 

 時代時代にしゃしゃり出てはいらない邪魔をしてきたりこちらの野望(月の破壊)を幾度となく阻んできた。ただ誰かの顎で使われるしか能がないクセに、いつだって大衆の言いなりのクセに。私の恋をまた邪魔するのが目に見えている。

 

 「さて、近い人間(ともさと)からの話だと今は病院でおねんね、といったところか」

 

 だとしたら今こそチャンスというところだ。心構え(かくご)は薄く、目覚め(かくせい)はまだ遠そうな程脆い(じかく)。それでも放っておけばすぐに障害となって計画のじゃまになるのが目に見えている。

 

 「…………最近はノイズの出が悪くなっているが、ちょうどいい。手加減抜きで、それこそ(邪魔者)がいる町ごと潰すつもりで出せば問題ない」

 

 どういうわけか、最近呼び出したノイズが出てこないばかりか、指定された場所とは遠く離れた場所に出現することが多い。これも奴が出現してから起きることだ。

 

 「まぁ、すぐに全てが解決する」

 

 出来ることなら、あいつ(ともさと)も回収してからことに当たりたかったが、必要経費(尊い犠牲)として(英雄)ごと死んでもらうこととなるだろう。

 

 「さて、消えてもらおうか、この世界に英雄(ロックマン)は必要ない!」

 

 悪意は解き放たれ、戦乱はこれから巻き起こる。全ては再び―――エックスをめぐる戦いへと、進化の名を冠した争いへと昇華されていく。

 

 「まぁ、安心しろ、親友もきっと一緒だ。一人の旅路にはならないぞ」

 

 狂気の嗤笑がすぐに世界を覆うこととなる。すぐにノイズが町を覆い、二課だけでは対処出来ない量となっていくだろう。

 

 

 

 …………英雄(ロックマン)の目覚めはすぐそこに―――彼女の戦いがすぐそこに―――

 





 狂気が足りない
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