捻くれたRAILWARS〜日本國有鉄道公安隊〜比企谷八幡の闘い   作:おーあみ

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ED42は大幅省略させてください()




足りない‘‘モノ‘‘

 

 

 

東京駅20番ホーム

 

ここは北陸新幹線をはじめとする新幹線が発着するホームになる

 

なぜ朝の七時に、俺がここにいるのかって?

 

答えは簡単、グンマー帝国の地で高度研修をすることになってしまったからである

 

このためだけにいつもより家をさらに早く出るハメになった

 

何よりも研修中は小町に会えないのが辛い

 

まだ高山と桜井の雰囲気は悪いままだ

 

小海が気を使って「高度教育研修ってどんなことするんでしょうか?」と話題を出したりもしたが、「そんなの行けばわかるわよっ」の一言で終わるのでほぼ終始無言

 

俺たちははくたか507号に乗車する

 

3列側の座席に座るのだが、岩泉にしても高山と桜井に気を利かせているのか、それともたまたまなのか知らないが

 

「おしっ!六人で旅行って言えばこうだなっ」

 

なんて言って座席を180度回転させて向かい合わせにする

 

もちろん不機嫌な桜井は「なんでよっ!?」と言うが、小海が「あおいもいつまでも高山君のこと、怒ってないでさ…」

 

「私なこんな奴のこと、いつまでも考えないわよ!」

 

と制すが、

 

「じゃあ別に向かい合わせていいでしょ?」

 

と言われた桜井は反論出来なくなった

 

バツが悪そうに鼻を鳴らした桜井は、荒っぽく窓側の席に座り、足を組んだ

 

すると岩泉が高山の方をひょいと軽くつかむと

 

「俺は通路側がいいからな、班長代理は…窓側」

 

と、桜井の前の席に高山を強制的に座らせた

 

「あっ、おい!」

 

しかし高山の抵抗虚しく、高山は桜井の前に座る

 

そして俺は真ん中に座らされ、岩泉はそのでかい図体を無理やり通路側の席に押し込んだ

 

「おい岩泉、もうすこし通路側に寄ってくれ」

 

「そりゃ無理だな、もう余裕がねぇ」

 

「お前がデカすぎだろう!?」

「それは違うな、こんな昭和時代の体に合わせたシートの車両を、いつまでも國鉄が走らせているから問題なんだ。平成生まれの俺が体を鍛えているのがわるいわけじゃない」

 

小海が桜井と高山を見ながら

 

「ほんと…二人とも素直じゃないんだから…」

 

「素直とか素直じゃないとか!そんなの関係ないでしょ、はるか」

 

「はぁ…あおいも高山も、少しは話したらどうなの?」

 

西木野がきっかけを作っても、高山と桜井の関係はギクシャクしたままで、そのまま新幹線は研修所の最寄り駅、安中榛名に到着した

 

新幹線の中で何かあったかと言われれば、まぁ高山が運転士を志望する理由を話していたくらいだ

 

「しっかし、本当になんもねぇーな」

 

そう岩泉がぼやくが、そりゃそうだ

 

駅の周りを見回したが、コンビニすら見当たらない

 

そこにあるのは、果てしなく続く舗装された道と区画整理された土地だけ

 

「研修をやるにはもってこいの場所だな」

 

「どうしてですか?」

 

「これじゃ、どこへも遊びに行けないからね」

 

「いいじゃない、私達は鉄道公安隊のっ!高度教育研修受けに来たんだから」

 

桜井は先頭を歩き出す

 

「俺だってそのつもりだ」

 

「別にいいのよ〜高山は公安隊に行かないんだから、ここで帰っても。こんな研修受けなくても國鉄にはきっとはいれるわよ」

 

何気ない一言が、高山を傷つけた

 

「あおい!そこまで言うと無いでしょ!高山君が今まで一緒にやってきたことまで、全て信じられないって言うの!?」

 

桜井と小海はじっと睨み合う

 

しかし桜井のがフンっと前を向き大股で再び歩き出した

 

「素直に謝ればいいんじゃねぇ〜のか?」

 

「うるせーな、そんなことで片付く問題じゎねぇだろっ!」

 

いつもより強く言い返した高山に、岩泉もお手上げなのか、肩を竦め、黙って桜井を追うように歩き出す

 

一言で言えば、今の警四は分裂状態にある

 

「俺も行くか…」

 

 

榛名研修所は、駅から歩いてすぐの丘の上にあった。決して丘の上だからってカステラを分け合ったりしないよ?

 

開発が進めばここにも何かを建築するのかしないのか知らないが、あるのはプレハブが大量にあるだけ

 

第201教室で待てと言われたので、そこでまつ

 

学校の教室を半分にしたようなスペースに、椅子と机が10セットほど置かれている

 

まとまって座ればいいものを、離れて座る

 

流石に俺達もお手上げって感じだ

 

前後二列になっているが、前列の1番左に岩泉、2つ開けて俺、その横に西木野、後列の左から2番目に高山、2つ開けて小海、桜井の順に座る

 

しばらくすると、いかにもベテランの風格をした、恐らく偉い人が入ってきた

 

「おぅ、待たせたな。俺はおめぇらの高度教育研修を担当する成田哲也だ。と言ってもここでの研修所は、それぞれの個性に応じた技術を磨く研修だからな、俺は朝礼と終礼、それと全員で行う学科をやるだけだ」

 

「……」

 

誰も何も答えない

 

すると成田教官はため息をついて

 

「てめぇらは半人前だろうがもう鉄道公安隊員なんだからよ。最初に受けた鼻タレ向けの研修みたいなのはここではしねぇ。だから、一々声出せだの、挨拶しろとは言わねぇてどよぉ…聞こえてんなら返事くらいしたどうなんでぃ?」

 

「…はい…」「はい」「おう」「はぁ…」「…はい」「…ったく…」

 

返事はしたが全員バラバラだ

 

「…本当にお前ら…あの噂の警四か?」

 

「あっ、はい…」

 

「ほぉ〜そんなチームワークで、あれほどのことが出来るもんなのかい、お前ら?」

 

成田教官は人目見ただけで俺達がバラバラなのを見抜いたようだ

 

「すみません、ちょっと色々ありまして…」

 

「そうかい…今回は楽しみにしてたんだがなぁ。まぁいい、それはおめぇらの問題だからな。俺たちはいつも通りに高度教育研修を行う、どんな状態だろうが結果が伴えば良し、結果が悪ければそう報告するまでだ」

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべた成田教官

 

「それしまゃ、研修スケジュールについてだがー」

 

成田教官は二週間に及ぶ研修日程について説明を始めた

 

最初の方は全員で受ける講習も多いが、すぐに個々への研修・講習が多くなっている。桜井は射撃と銃器、岩泉は格闘、小海は列車制御やマニュアル関連、俺は隠匿行動、西木野は応急処置や処置、そして高山はリーダーとしての指導…のようだ

 

研修所では日曜は完全に休日

 

水曜日に来たので、今週は今日含めて4日間研修し、1日休みになる

 

ちなみに完全寮制で、温泉風呂もあるが一つしかなく、時間制の入れ替え式とのこと

 

「それじゃぁ!今日は1日目だから、短期研修の復習をやるぞっ」

 

俺達は以前一ヶ月かけてやった事を、手早く復習していった

 

鉄道公安隊はみだりに銃を撃ってはいけない、公安隊員が勝手に列車を運転してはいけない等…

 

あれ?なんか全て警四にあてはまるんじゃないか?

 

そんなこんなで1日目の講習は終わり、飯を食べ、風呂に入り、少しの自由時間の後就寝。

 

部屋は全員個室だ。つまり岩泉の鼾に悩まされることは無い

 

そして研修所の朝は早い

 

かの松〇修造までとは行かなくとも、朝6時に起床、6時半からグラウンドでランニング。2日目以降で全員が集まるのはここだけになった

 

そして土曜日、昼食を終えるとマイクロバスに乗せられ、車両基地までドナドナされた

 

「うおぉぉぉ…」

 

感嘆の声を上げる高山

 

そこには青色とクリーム色が塗られた機関車が、連結作業を行っていた

 

「横川軽井沢間にある碓氷峠は國鉄最大の難所だ。そして、台風による崖崩れなどの災害も多発し、多くの國鉄職員が犠牲になった場所でもある。明治以来ここを克服すべく多くの工事をやってきた。最初に鉄道が作られた時はアプト式つってな。レールの真ん中にもう一本ギザギザレールがあって、そこに機関車の歯車をガッチリ噛み合わせて登っていたんだ。今は旧線にしか残ってねぇけどな。この頃は列車ごとに乗務員が六人必要ですでなぁ、みんなチームで行動していたんだ。だからよ、リーダーになると他のメンバーを家に呼んで飯食わせたりしてな、上手く気持ちを合わせようと苦労したもんだ…」

 

思い出すように一息ついた成田教官は続ける

 

「それからだぁ、列車の走行技術も進化したっつうゆで、こっちに新線を作ったんだ。それでも最大67.7パーミルの傾斜は残っちまってるけどな…そして、最近になって北陸新幹線がトンネルと橋梁でズバッと山をぶち抜いて作られたってわけよ」

 

「なんだ、その67.7パーミルってのは?」

 

「1キロメートル走ると、高さが約66メートルも上がっちゃうってことよ」

「そんなもんか…」

 

「岩泉、そんかもんかじゃねぇ。鉄道での67.7パーミルは物凄い坂だって思っておいたほうがいいぞ。登る時は強力な電気機関車の補助を受けなきゃ登れねぇし、降りる時は機関車の方でもブレーキかけなきゃスピードがガンガン上がっちまうんだからな」

 

「了解であります!成田教官」

 

岩泉、お前絶対分かってねぇな?

 

「この新線を通る列車は、今でも麓側に補助機関車EF63二両を連結して、上りは押し上げ、降りる時はブレーキとして使用しているのはおめぇらも知っての通りだ」

 

あれか、さっきいた機関車ね

 

「こいつは運転手研修でやるこったから、本来おめぇらには関係ねぇんだが…せっかく榛名研修所まで来た土産だ。機関車の運転を体験させてやろう」

 

「ほっ、本当ですかっ!でっ、電気機関車の運転が出来るなんて、夢のようだ!」

 

「高山君には出来ると思いますが、私にも出来るでしょうか?」

 

「一応、それぞれの機関車には熟練機関士もつくし、先頭を高山に任せてみんな支持に従えばそんな難しくはねぇと思うんだが…何せ4人用だからどうしても余るんだよなぁ…」

 

「なら、私と比企谷が外から見てます」

 

「え?俺も」

 

「別に、そこまでじゃないでしょ?」

 

「まぁ、そうだが」

 

「よしわかった。今回は横川側へ3台、最後尾軽井沢側へ1台の合計4台を使用する坂を下る運転だ。横川側については3台同士で電話連絡できるが、最後尾の軽井沢側の1台はそれがない。誰がその1台を担当する?」

 

「私が行きます」

 

桜井がすっと手を挙げた

 

高山が話しかけようとしていたが、声にならなかったようだ

 

「わかった…では、先頭機関車に高山、2台目には小海、3台目に岩泉だ」

 

高山が機関車に近づくと、何故か大きな声で叫んでいた

 

「げっ!?どうしてこんな旧型電気機関車なんだ!」

 

見てみれば、明らかに古そうなぶどう色の機関車が3台繋がれていた

 

「今回はちょっと操作が難しいED42だ。まぁ、ここでしか体験できない機関車を触った方が研修になっていいだろ?それとこいつは協調運転できねぇから、前後の機関車でうまく呼吸を合わせてやってくれや」

 

「小海さんと岩泉は電話連絡…桜井とは列車無線か」

 

「高山君、ED42に列車無線は無いわよ」

 

「そうだっけ?」

 

「おぉ、流石よく勉強しているな小海。その通り、この時代の列車には無線はねぇ」

 

「じゃあどうやってタイミング合わせるんですか?」

 

「おう、そんなもん警笛と根性よ」

 

『なっ!?』

 

警四全員で声を上げた

 

「無線が無くたって昔の運転手は事故ひとつなかったぜ、らそういうのも体験するのがここでの研修所ってもんよ。じゃあそれぞれの機関車に乗ってくれ。最低限のことについては、お前らの後ろに座ってる機関士が補助してくれるから、あとは自分らでなんとかしろ、全員準備はいいか?」

 

「…はい…」「はっ、はい!」「しゃっ!」「…ったく!」「はい…」「はい」

 

またしても全員バラバラ…

 

「では、乗車!」

 

「あんた達。足、引っ張らないでよね!」

 

「あっ、あおい…」

 

「おい!そんな言い方ないだろう桜井。それに警笛のサイン決めなくていいのかよ!?」

 

「こんなおもちゃ、1人でなんとかするわよ」

 

そして打ち合わせもろくにせず、高山達はそれぞれの機関車に乗り込む

 

「なぁ、比企谷、西木野。あいつらの運転を見てたらよぉ、必ず今のお前らに足りないもの、いや、もともとあったのに今失っちまったもんが見えるはずだ」

 

「本当にそうでしょうか?」

 

「あぁ…西木野に比企谷…それに高山達も、いい眼をしてるからな…」

 

「はぁ…俺の目なんて腐ってるだけですよ?」

 

「お前の眼はなぁ…人を見抜けるんだよ…きっと、それが役に立つ時が来るさ……ほら、そろそろ始まんぞ。しつわかり見て、学んで、今のおめぇらに無いモンを見つけ出してみろ!」

 

「「はい!」」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

『1番線、出発進行!』

 

「うわっ」

 

成田教官と列車近くの小さなプレハブのような建物に入って、モニターで高山達の運転する列車を見ていたら、急にスピーカーから高山の声がした

 

「おっと、言い忘れてた。この部屋から全ての機関車の運転席がモニターできんだ。これもおめぇらに足りないもん探すには役に立つだろぉ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

ジリリリリリリリリ

「1番線から、16時44分発上野行急行白山が発車します。次の停車駅は、熊ノ平、熊ノ平。まもなく発車します。お乗りの方はお急ぎください」

 

騒がしいベルの音とともに、乗車を促す放送が流れる

 

ピョーーー

 

機関車の警笛が高々と響き、列車が動き出す…

 

ピョ

 

ピョピョーーー

 

ピョーーーーーーーー

 

何というか、警笛もバラバラである

 

『時刻よし、はっ━━━』

 

ガシャャン!!グォォォォォォォォォン

 

『桜井の奴っ!!早いんだよ!ブーーブッブッブーーー』

 

『何っ!』

 

『どうすればいいの高山君!?後ろからあおいがー』

 

『とにかくブレーキを緩めて!このままじゃ間の客車が脱線しちゃうから!』ガチャッ

 

高山は小海の確認を取らないまま、乱暴に電話を切った

 

さらにこのタイミングでなにやってんのよ!と言わんばかりの警笛が桜井から飛んでくる

 

「あちゃ〜まぁそりゃサイン決めなきゃ息は合わねぇな」

 

「教官はどうやって息を合わせたんですか?」

 

「あぁ、俺達の頃はよぉ、警笛のサインも、打ち合わせももちろん大事だったが、何より一番重要だったのがよぉ『仲間』って意識だったっけなぁ。さっき言った通り、こいつが現役だったころは列車無線もなかったから、ケツにいる奴には無線は使えなかった。だがなぁ、一緒に飯食ってたりしてるとよぉ、気付かないうちになんつぅんかなぁ…繋がりみたいなもんができてんのよ」

 

「だからなぁ、今のおめぇらに足りないもんは、必ず見えてくる。寧ろ、前まではしっかりとあったんだからな…そうだ、今は忘れてるだけだ…ん、そういやこんなこと前も言ったっけなぁ」

 

その時の成田教官の眼は、いつも通り鋭かったが、奥の方で何かを重ね見ているようだった

 

その言葉に少し引っかかったり、その後のことはあまり覚えていない

 

だが、少しだけでも、垣間見たのかもしれない

 

俺達に今なくて、前にはあったもの…今、忘れてしまっている事が…

 






あとがき


軽井沢ダブルデートがトリプルデートになったり…するのか?
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