この間に色々とタグ追加しました。警告タグのガールズラブについてですが。見る人によってはそう見える、程度のものです。あと、この章だけの要素になります。
今回、会話文がほとんどありません。それでも良い方はどうぞ。
1話 狂う黒、生まれた黒
不意に目が覚めた。
爽やかな、しかし何処か重い風が吹いている。暗い視界で分かるのはそれだけだ。
まさか目隠しでもされているのだろうか?しかし、首をいくら動かしても目隠しらしき何かは動く気配も無く、頭が何かにぶつかるということもない。風が吹いていることからして開けた屋外だと考えられる。少しでも周りの情報を、と目を開けようも瞼自体がないかのように動かない。まるで見る為の器官全てが消えたようだ、と他人事のように思った。
そして目にかかって鬱陶しかった長い前髪も無い。後ろ髪もかなりの長さがあったはずだが見る影(目は見えないが)もない。あの長さに慣れていた私からしてみればいい迷惑だ。
とりあえず首から上は視覚以外問題は無さそうだ。それならば体はどうか……うん、問題なく動かせる。感覚も寝起き直後と思えない程しっかりしているが、何なんだ?この感覚は。四つん這いになっているようだが何故か違和感は無い。むしろこれが正しい形なのだろう、と思う程この体勢は体に馴染む。
手も目立った異常は無いが、何か硬いものに覆われているようだ。手袋やグローブのようなものかと思ったが、それにしてはかなりの厚みがある。
腕を動かすと肩の辺りに違和感があった。今までは無かった何かが生えている。試しに力を込めてみると、まるでもう一対の腕が出来たかのように動かすいことが出来た。手に当たるであろう部分は軽く拳を握り込める程度で、細かい作業はとてもじゃないができそうにない。このもう一対の腕のような何か───試しに翼脚と呼ぶことにする───は折りたたんで手の部分で肩に固定するのが一番楽な姿勢のようだ。
ここまで考えてふとおかしな事を考えてしまった。私は
「
無意識に出た声は人間のものとは思えない唸り声だった。テレビの副音声のように聞き慣れた自分の声が聞こえたが、それも掻き消されてしまいそうなほど小さいものだ。大声で叫んだなら人の声より獣の咆哮が勝るだろう。
……あれ?そういえば『テレビ』とは
そんなことを考えている内にも、一度思考が引っかかって疑問が一気に溢れ出す。
そもそも自分は誰なのだろうか?ここがどこか分からなくても今まで何をしてきた誰なのかは分かる筈だ。
親が誰なのか、友人は誰か、好きなもの、嫌いなもの、何処で育った、意識を失う前は何をしていたか。そんな事、少し考えればすぐ思いつく筈だ。それなのに、
「
何も、分からない。
……変な話だがそもそも私は人間などではなく、最初からこうだったのかもしれない。最初から唸り声しか上げられない獣だったのでは?
……そう思うと何故か全身に冷水を浴びたような感覚になった。背筋がゾッとする。気温は変わっていないのに寒気がする。ああ、この感覚は何だったか。あまり良いものではないのはすぐ分かる。以前の私ならすぐに分かるのだろうが、今の私には無理だ。出来ない。出来る筈もない。
いきなり暗い視界だけを与えられて、今までのことも、他でもない自分自身のことも分からない。そんな状況で数分足らずの時間しか過ごせていない。そんな私に、こんな感情が分かるか!分からないに決まってる!
いっその事思い切り泣き叫んでしまいたいが、瞼無き瞳がそれを許さない。口から零れるのは人のものではない呻き声だけ。手で頭を掻き毟ることすらできない。
何故だ、何でなんだ。私にはそんなこともできないのか。
……こわいなぁ。自分が分からなくて、周りにはだれもいなくて。
そうか、そうだ、恐怖か。
これは恐怖なのか。忘れていたが、これだけ印象的ならもう二度と忘れられない。
……疑問が解決して少し安心したのと同時に何故か意識が遠のいていく。
頼む、待ってくれ。待ってよ。お願いだから、私はまだ何もしてない。
何か、何でも良いからしないと、そうじゃないと私は。
抵抗する理性と相反して暗い視界がさらに暗くなる。
『◼◼パ◼セン、◼なと◼◼何やっ◼んだ◼』
消えていく意識の中で何か聞こえたような気がした。
~~~~
~~~~
「ん?おーい、パイセン起きてるか?」
「はぁ。どーせ、また寝ないでモンハンか何かやってたんだろ」
「は!?何でオレの話になるんだよ!まぁ、あの時はオレも一緒になって騒いでたけど」
「……あの時◼◼パイセンもいた事、◼◼パイセンにチクるぞ」
「痛い痛い痛い!何でヘッドロック!?どこで習得したんだよそれ!てか離せ!はーなーせって!」
「っつ、痛かった……。テレビで見たのを真似ただけって、こんな簡単にするなよ。マジで死ぬかと思った……」
「確かにパイセンに言うぞって言ったのはオレだけどなぁ。流石にあれは過剰防衛だろ、どっからどう見ても」
「……言ったな?いいかもう絶対するなよ。絶対にだからな!?主にオレの寿命の為に!」
「何だよ鳥頭って!パイセンの記憶力が異常なだけだからな!?」
「いや、だから!絶対に
~~~~
~~~~
遠のいていた意識が急浮上する。
何か懐かしいものを見ていたような気がする。あまりにも当たり前過ぎて知らずの内に記憶から抜け落ちてしまいそうな、楽しくて平穏だった日々の夢を。
「
夢の中の私(仮)の行動は自分(?)でもその判定を押さざるを得ない。いくら親しい仲だとしても流石にアレはないだろ、かなり首が締まってたぞ。
……この話は長くなりそうだから置いておいて、だ。少し休んだからか頭がスッキリする。今ならばこの状況も理解出来る気がする。
私はもう自分の口から出る唸り声には驚かないし、あのようなただの『もしかしたら』の考えに惑わされたりしない。絶対に、さっきのようにはならない。証拠は自分でも驚く程全く無いが、何故か確信があった。
夢の中に出てきた『誰か』のお陰なのだろうか。自分を『
……話が逸れてしまったがまずは今の状況を整理しよう。幸い、あの夢の影響か自分とこの状況に関することをいくつか思い出した。
まず初めに今居る場所。全くの不明。試しに手で周りを探ってみたところ、屋外であり地面が所々に草の生えた地面だというのだけは分かった。そして、自分の腕が動物の脚近い形状になっている、というのも分かった。これについては思い出したからこそもう驚かない。むしろ、そうでなくては思い出した記憶までも疑わなければならない。一人で疑心暗鬼とか嫌だよ?私。
……ごほん、続いて私自身について。名前、年齢、その他含め不明。ただのゲームが好きな学生だったという事と、先程の夢から記憶力が良いらしい、というのは思い出した。
「
そしてここに来た経緯。これに関しては大丈夫だ、全てとはいかないがほとんど思い出した。何処かからの帰り道交通事故に遭い死亡。その後、死後の世界のような場所で神様を名乗る老人と会話。私の死が予定されていたものではないと知らされ、三つの特典を貰ってモンスターハンターの世界へ。確かこうだった筈だ。
その時私が転生先に選んだのが、私が初めてプレイしたモンスターハンターシリーズであるモンスターハンター4のパッケージモンスター、黒蝕竜ゴア・マガラだ。それならば発狂のきっかけとなったもう一対の腕のような何かは見当がつく。ゴア・マガラの特徴である古龍以外では珍しい脚とは別にある一対の翼、狂竜化時には強力な攻撃を生み出すあの発達した翼脚だろう。あの時は狂竜化はしていなかったが、元は翼として動かす部分だ。腕と同様に曲げたり握ったりは容易にできる筈だ。
さて、話を戻そう。神様(断定)から受け取った特典は『狂竜ウィルスの制御』『捕食した動植物及び鉱石などの特性吸収』そして『竜形態と人型への切り替え』の3つだ。効果は名称そのままの効果だ。
……ん?なになに?『テメェ、一つ目とか三つ目とか何なんだよ。何でせっかくの特典をそんなのにしてるんだよ。ふざけてんのか?』だって?私は真面目に考えたし、理由はちゃんとありますとも。
まぁ、ぶっちゃけるとゴア・マガラの様々な意味で傍迷惑な能力を抑える為のものだ。
まずゴア・マガラ最大の特徴とも言える狂竜ウィルスは、周りの環境がリアルバ〇オハザードになる危険がある。ゴア・マガラには視覚器官、分かりやすく言えば目が無い。その為、翼から狂竜ウィルスを含む鱗粉を撒き散らしそれを感知して周囲の様子を感知する。
だが、はっきり言うとこの場合狂竜ウィルスが非常に、軽く憎悪を感じるくらいには迷惑だ。狂竜ウィルスは吸い込んだ生物を狂竜症という症状に陥らせる。感染すると神経系や抵抗力、身体能力が低下する。また、深刻化すると生物の凶暴性が異常なまでに露見する狂竜化という状態になる。
私はこれが本当に、どうしても許容出来ない。この先で何が起きようとも許容出来そうにない。
ゴア・マガラは大好きだ。そうでなければ転生先になど選んでいない。しかし、これだけは嫌だ。ゴア・マガラの成体であるシャガルマガラは、シナト村に伝わる伝説の中で天空山の生物という生物を虐殺した。直接ではなく、それが本能からの行動だったとしても、ゲームの中の作り話ではなく自分が実際にそれを起こすのは耐えきれない。数多の命を無差別に狂わせ、正常でいられる自信が、私が私のままでいられる自信も、耐えられる自信も全くない。
「
それを防ぐための『狂竜ウィルスの制御』だ。完璧に、とはいかないだろうがある程度は防げるだろう。
そして、感染阻止をより完璧に近づけるのが『捕食した動植物及び鉱石の特性吸収』と『竜形態と人型の切り替え』だ。
前者は、狂竜ウィルスを含む鱗粉を他の生物の特徴で上書き出来るのでは?そんな可能性からだ。例えば、ティガレックス希少種やテオ・テスカトルの操る爆破粉塵。これを鱗粉に負荷させれば、火属性に弱そうな狂竜ウィルスを打ち消せる確率は高いだろう。鱗粉も爆破粉塵と同じような攻撃手段として使用していた為、これは十分にいけるのではないか?……火属性を弱点とする
後者は、人の姿になれば狂竜ウィルスも抑えられるのではないか?という淡い期待と私の趣味だ。別に良いじゃん、前は出来なかったことでセカンドライフを楽しんだって。
それに、ハンターズギルドの目も欺けられる。今がどの時間軸かどうかは不明だが、ゴア・マガラと筆頭ハンター達が戦闘した後ならば発見された時点で警戒態勢に入られる。それは私としても全力で避けたい。だってハンターに勝てる自信無いし、狩られる自信しかないし。身体が幾ら強かろうが、それを扱う魂と精神が木綿豆腐じゃ勝てっこないんですー!
……まぁ、そういう訳だ。私は平穏に生きていく。何か色々大変だったような気がする前世はとりあえず何処かに投げておこう!
現実逃避?言うな悲しくなる。
キュルルルルルル
ううっ、お腹鳴った……。近くには誰も居いようだが流石に恥ずかしい。というか、まず此処は何処だ?
起床から気絶まで、数秒。
気絶、十数分。
再び起床から探索まで、数分。
次は探索編になりそうです。
誤字脱字など、ありましたら感想欄や誤字報告で。