黒天伝~黒蝕竜転生~   作:紫黒ステラ

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あけましておめでとうございます!

正月とは全く関係ない話になりますが、それでも良いという方はどうぞ。


二話 思索、逃走、飛行?

シャァガァァ(目が見えないって不便以外)ァァァアアァ(の何者でも無いじゃねぇか)(!!)ァァアアアッッ!!」

 

 開幕咆哮……うっ、指先と脳内3○Sが。

 まぁそれはとにかく、ホントに今更だよ!此処が何処なのか調べようとしたけど、改めて思い知らされた。視覚、マジ重要。

 周りに誰も居ないのは、このように吠えても何も反応が無い事から分かっている。しかし、此処が狩場……つまりモンスターが徘徊するフィールドだった場合は最悪としか言いようがない。詳しい環境が分からないせいで、何時、どんな奴が、何処から来るかすら分からない。

 まぁ、狂竜ウィルスは全力で抑えているため此処が何処だったとしても周りへの被害は無い筈だ。ゴア・マガラは狂竜ウィルスを何らかの方法で感知出来るようなので、周りにウイルスが流出していれば直ぐに分かる筈だ。……狂竜ウィルスの使用が出来ないから悩んでいるのだが。

 

 とりあえず、火山や雪山といった過酷な環境ではないのが幸いだ。特に火山系の狩場だと、ゴア・マガラの弱点である火属性を扱うモンスターがそこら中にいる為、そうでなくて良かったと心の底から安堵した。

 何せ私が初見でゴア・マガラ装備を作った時、あまりの火属性耐性の無さに声を上げてしまった程だ。火山になんて居たら大型モンスターに遭遇した時点でアウトだ。多分瞬殺だよ?

 

 まぁ、それはそうとして。此処はゴア・マガラと縁がある場所ではないか、と私は考えている。全くの無縁の場所には送られる、というのは流石に有り得ないだろう。

 そうなると最大候補は天空山及び、天空山に位置する禁足地だ。天空山はゴア・マガラの成体であるシャガルマガラの伝説の舞台になった場所であり、シャガルマガラが回帰する場所だ。

 禁足地はMH4でシャガルマガラと対決する地であり、伝説が原因で禁断の地として封鎖された場所だ。他にも候補はあるが、特に可能性が高いのはこの二箇所……というか天空山だ。

 とりあえず、天空山の何処かだと仮定して話を進めよう。

 

 此処が禁足地だった場合、確かめるのは簡単だ。ただ端から端まで歩けば良い。

 一部のクエストでは禁足地でゴア・マガラを狩猟するものがある。ゴア・マガラ()の体長がどれほどかは不明だが、ゴア・マガラが何歩歩けば端に辿り着くかくらい分かる。まぁ、多少のズレはあるだろうが、ある程度合っていれば此処は禁足地であると確定する。

 ん?普通ゴア・マガラの歩幅なんて分からねぇだろ?ゴア狂を舐めるなよ。ゴア・マガラが登場するクエストは全て何十回もクリアした。歩幅くらい余裕で覚える。ゴア狂を舐めるな!

 

 ……ゴホン、逆に天空山だった場合は不味い。色々な意味で不味い。狩場である『天空山』ならそこまで問題は無いが、狩場ではないのなら難易度は跳ね上がる。簡単な話、地形が全く分からないからだ。

 狩場の『天空山』ならば今居るエリアさえ分かれば後はどうにでもなる。しかし、そうではないのなら詰んだも同然だ。

 ゲーム内では天空山の中でマップとして歩けるのはシナト村と狩場、そして禁足地のみだ。それ以外の場所は少なくも私が知る限りでは描写されていない。こんなこと、目隠しをされて知らない土地を歩くようなものだ。というか、その状態だ。

 

 ……うーん、何かしら試さなくては日が暮れる。今が何時か分からないが早くした方がいいだろう。

 それに特典を使って狂竜ウィルスは抑えているものの、いつかは限界が来る。その対策も早急にやらなくては……ん?特典?

 

「……グ、ガルルルゥ(あ、人型になれば良いのか)

 

 さっきあれだけ語ってた自分の特典を忘れてたZE☆

 

~~~

~~~

 

 走る。ただひたすらに走る。

 少しでも足を止めてはならない。脅威はすぐ後ろを駆けている。

 

「ニャッ、ニャッ、ニャッ」

 

 天空山エリア6。

 此処では一方が命を賭ける鬼ごっこが起こっていた。

 追いかけられているのは、白と茶色の馴染みやすいふわふわした毛皮──今は汗で皮膚に張り付いているが──を持つ猫型の生物。この世界において『アイルー』と呼ばれる生物だ。

 普段は二足歩行の彼は背後の存在から逃げる為に四足歩行で、文字通り必死に走っていた。しかし、幾ら素早さが売りのアイルーと言えども、その距離は刻一刻と縮まっていく。 ただ、『相手が悪かった』としか言いようがない。

 

 何故なら相手は、大型モンスターの中でも身軽さでは上位に位置するモンスター。

 青白い雷を思わせる鱗は、引き締まった筋肉が動かされるたびに雷光虫の光を反射し輝く。

 

 そのモンスターの名は雷狼竜ジンオウガ。その身軽さと雷を纏う一撃は、例え訓練されたハンターすらも打ち砕く。

 

「ガァァァァァァァァアアアア!!」

「ウニャァァァァァ」

 

 雷を纏う狼竜が咆哮する。今、アイルーの心中は恐怖と家族への思いがいり混じっていた。

 

 彼はまだ若い。否、幼いと言っても過言ではないアイルーだ。今までの生涯を集落で過ごし、家族や仲間達と仲良く暮らしていた。その日の食料に悩むことは少なくなかったが、争いごとは滅多に起こらず楽しい暮らしをしていたと胸を張って言えるだろう。

 その日は彼の父が体調を崩してしまった。命に関わる程ではないが、苦しむ父の姿と心配する家族達を見て彼は『自分がどうにかしなくては』と考えた。家にある薬草類と自然に生えているアオキノコを調合すれば父の体調が良くする薬が出来る。彼はそれを思い出した。

 それからの行動は早かった。

 家族に隠れてアオキノコを採りに行く準備し、集落のアイルーから隠れて集落の外へ初めて踏み出した。生まれて初めて見る集落の外。確かに周りのアイルー達に言われた通り、恐ろしいモンスターがたくさん居た。しかし、背後から気配を消して忍び寄り、ピッケルを頭に向けて振り下ろせば目を回して倒れてしまった。

 だからこそ彼は調子に乗っていた。皆が言っていたのは話を盛っただけ、要らぬお節介なのだと。自分はこんなにも強いのだと。慢心していた。

 

 それが悪かった。

 

 最近居座るようになったらしいババコンガには遭遇しなかったが、それよりも危険なモンスターと遭遇してしまった。それだけなら直ぐに逃げれば良い。逃げ切るのは至難の業だが、ジンオウガもそこまで追跡することは無いだろう。

 しかし、本来ならば見かけた時点で逃げなくてはならない相手に、彼は無謀にも立ち向かってしまった。

 そこからは単純な話だ。立ち向かった彼はジンオウガの怒りを買ってしまい、自分がやってしまったことの重大さと目の前の恐怖に気付き全速力で逃げているのだ。

 

 不意に見えた岩と古い建造物の残骸の間の狭い隙間。アイルーである彼には簡単に入れるが、ジンオウガには前脚すら入れなれないだろう。

 アイルーに希望が見えた。

 

「(あそこに入れば……!)」

 

 一目散にその隙間に駆け込み、身体を滑らせる。

 これでジンオウガは入ってこない。あいつが自分を諦めて何処かに行けば……。身を隠そうとも伝わってくる気迫に思わず息を潜める。

 ジンオウガはアイルーが入った隙間を眺めていたが、暫くすると背を向けて歩き出していった。

 

「……ど、何処かに行ったのかニャ?」

 

 安堵して隙間から顔を覗かせようとするアイルー。しかし、ようやく見えた希望は直ぐに見えなくなる。

 

ダァン!ダン!ダン!

 

「フニャァ!?」

 

 建造物の残骸に何かが身体を打ち付ける音が響く。深く考えなくても分かった。ジンオウガが自分が隠れている場所を壊そうとしている、と。向こう側から何度も鈍い音が鳴り、それに合わせて壁と天井からパキパキという音が鳴る。

 逃げなくては。そう思うのに身体が動かない。近くにあるのは間違いなく『死』だ。

 

「ふぇ、にゃぁ……」

 

やがて、ひびは徐々に広がっていき……

 

~~~

~~~

 

「大きい岩」

 

一面に生えたススキっぽい植物。

 

「巨石で塞がれた出入口」

 

 全体的に神々しいようなおどろおどろしいような空気。

 

「はい、どこからどう見ても禁足地ですね。分かりやすい」

 

 ということで、人型になったところ此処は禁足地だということが分かった。まさか予想が当たっているとは思わなかった。まぁ、ここならばモンスターが入り込むことは無いだろうから、暫くは落ち着けるだろう。

 

「……それにしても」

 

 自分の姿を改めて確認する。

 黒を基調とした上品なゴシックロリータに、ゴア・マガラの翼を思わせる紫黒のマント。背中の中央程まである黒髪は結わずにそのまま流しているが、乱雑には見えずたなびくたびに光を照り返していた。足元は黒いタイツに、同じく黒い編み上げブーツ。

 そして何より特徴的なのは足首で鈍い光を放つ足枷だ。繋がれた鎖は途中で切れている。だが、流石にこれは……私でもちょっと、無いとは言わないがかなり衝撃的だ。なんでや。

 足枷はともかく、鏡や水辺が無い為全体を見ることは出来ないが我ながら似合っているのではないか?スカート部分にフリルが付いていて少し恥ずかしいものの、それ以上に身体に馴染む。ヒールの高さ五センチ程と少し高いが、地面に触れる面が広いお陰か案外動きやすい。

 

「動きやすいのは有難いかな、これから結構歩きそうだし」

 

 さて、現在位置は分かった。次は何をすれば良いのか……。

 順当にいくのならば天空山の探索だが、やはりこれにも問題がある。

 禁足地は文字通り、立ち入る事を禁じられた地だ。出入口は天空山のベースキャンプに続く道のみ。だが、通常は禁足地へ続く道は大岩で閉ざされている。『シャガルマガラの討伐』を含む一部のクエストでは開かれるがそれも稀な事だ。その為陸路では移動出来ない。

 つまり、飛べない人の姿では禁足地を出る事は出来ない。その為、移動手段は自然と空路になる。嵐の中でも変わらずに飛行出来ていたゴア・マガラならそのくらい簡単に出来るのだろうが、私には狂竜ウィルス使用禁止の縛りがある。何も見えない中で目的の場所に辿り着かなくてはならない。

 

「……どこの無理ゲーだ!」

 

 自分で決めた事だがこんな時に足を引っ張るとは……。

 だが、これを変えるつもりはない。狂竜ウィルスの被害と私の悩みを比べれば、どちらが大きいかは明らかだ。

 だからといって自己犠牲という訳ではない。これは私のけじめのようなものだ。というのも、前世の私はとんでもなく安定していないというか……大分いい加減というか、ふわふわした人物だったような気がするのだ。その償いということでも無いが、せめて今世では決めた事をやりきろうと思うのだ。

 

 そういう訳で!お先真っ暗空中ツアーin禁足地~天空山を開始したいと思います!はい拍手~!パチパチパチ~!

 ……うん、言いたいことは分かってるよ。でも、こうでもしてテンションを上げないとやってられないんだよ……。

 

 何しろ天空山には剣山が多く存在し、少しでも高度の調整を間違えればあっという間に黒蝕竜の串刺しが完成するだろう。私の甲殻が硬ければその限りではないが、翼膜などの柔らかい部位は損傷するのではないだろうか。

 私の死因が事故死のせいか、怪我をするのが少しだけ怖い。あの音をもう一度聞かなければならないのか、あの表情をもう一度見なければならないのか。そんなことで頭がいっぱいになる。後者にはまだそれの当てはまる人物が居ないが、あの時の映像が無意識に再生されてしまう。まぁ、分かるのは表情だけで顔は霧がかかったように見ることができないのだが。

 

 ……まぁ、とにかく失敗しなければ良いのだ。

 全身の震えが止まらないがこんな事を言っている場合ではない。

 日は丁度南を通り過ぎたばかり。そこまで距離は離れていないが、私には目が無いという縛りがある。行動は迅速に、だ。

 一度やる事を整理しよう。最大の難所は『狩場の天空山へ移動する、往復する』。天空山へ行く目的は、『空腹をどうにかする』『周りの探索』。そして、言っていなかったが『ゲームとの違いが無いか確かめる』だ。

 

「……行くか」

 

 一度深呼吸。震えを抑えたまま竜の姿を思い浮かべる。竜形態から人型になる際は人の姿を思い浮かべた為、その逆の方法を用いれば人型から竜の姿になれるというのは分かっていた。

 

 あっという間に人の面影は消え去り、代わりに黒い竜が現れる。それと同時に私の身体も人から、人ならざる竜の身体としての活動が始まる。

 

 翼の動かし方は本能からか何となく分かる。

 ならばやることはただ一つ。

 ……ふっふっふ。これ、一度言ってみたかったんだよね。

 

 

 

 

 

 アイキャンフラァァァイ!!




思索、一分。
逃走、一時間程戻って二分間。
飛行?、数分間。

今年もよろしくお願いします!
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