「やってくれたな!首刈りィ……」
海軍本部で手配書を握りしめる男がいた。
ソイツの名前はセンゴク。
海軍で一番苦労が絶えないすげぇ奴である。
「失礼します、例のものが出来上がりました」
「うむ」
センゴクの下に数枚の資料が渡される。
それは、頭を抱える原因となった海賊に関するレポートだ。
首刈りのナッパ、突如現れた最悪の海賊。
海軍から海賊になる者はいるが、その歴史の中でも史上最悪の離反者である。
『首刈り海賊団』中間報告書
責任者 海軍本部所属 ゴリラ大佐
《被害について纏めた結果、我々は早くアイツを捕まえなければならない。あぁ、それにしてもバナナが、バナナが足りない……バナナ、ウホ……バナナ、ウホ……バナ……ウホ……》
聖地マリージョアに侵入を確認。
天竜人に対する拷問、天竜人ロズワード聖が半死半生となり意識不明となる。
息子チャルロス聖、ナッパと遭遇し殺害されたと思われる。
娘シャルリア宮、強姦の末に殺害されたと思われる。
判明しているだけでナッパによる直接的な被害があった天竜人は三名であり、天竜人達による抗議が予想される。
以降、間接的な被害を纏める。
聖地マリージョア、一部半壊。
レッドラインの一部が崩壊、崩壊に伴い地盤沈下が発生する。
天竜人及びその所有物である奴隷の軽傷者多数。
奴隷達による脱走を含めた行方不明者多数。
この日より、首刈りナッパによる犯罪が確認される。
同僚である海兵とのインタビューより抜粋
《アイツと会った時の事は今でも忘れられない。海軍支部の入り口に穴が空いたからだ。訓練の最中、腕や目を押さえて疼くとか封印されし俺の力がとか騒いでいたが、アレはふざけてたんじゃないって今頃になって理解できたよ。訓練生時代からアイツはその力量を隠しきれてなかった。礼儀作法や銃の使い方はダメだったが、身体を使った訓練や海賊との戦闘では人間離れした動きをしていた。今、思えば六式を修めていたんだろうな。本気を出したら島が壊れるから普段は力を抑えているなんて言ってたが、本当なんじゃないかとたまに思うよ》
経歴を洗った際に判明したことだが、出身であるコノミ諸島周辺にはナッパの事を知るものはいなかった。
見つかったのがナッパが最初に所属した海軍支部であることから、身元を隠して海軍に入り計画的な行動による離反ではないかと推測できる。
徹底的な捜査にも経歴が引っ掛からない事から、裏の組織に所属している可能性が浮上した。
また、訓練生時代に六式を修めていたことから海軍と関わりがあった可能性も考えられたが捜査は難航している。
海軍支部より以前の経歴不明。
六式を修めていたことが判明する。
訓練生時代は、海賊だけに留まらず山賊や強盗犯を率先して捕縛するなど当時は海兵らしい一面があった。
しかし、必ず殺害するなど過激な一面もあり犯罪者としての素養はあった。
これが犯罪者としての素養なのか、正義故の行動かは不明。
なお、同僚と口論になる際は大将赤犬の名前を出していたことから、正義故の行動だという説が有力だと考える。
元部下の手記(役割は海軍支部教官)
《教官に殴られてから、頭がおかしくなった。色々な人間の声が聞こえてくるし、気合で身体が真っ黒に見える。教官や周りの奴らは、ようこそ覇気の世界へと言ってたが直接心で語りかけるのはやめて欲しい。ホント、しゃべる時は口を動かして欲しい。あと、教官のせいで死にそうになる。海賊に突っ込むのやめて、海軍やめたい。覇気で会話するのやめて欲しい、覇気とか疲れる。やめろぉぉ武装色があるからって笑って撃ってくるな!銃は人に向けるもんじゃない!こんな海軍、やめてやる!》
元部下の手記より、ナッパが覇気を習得していることが判明した。
また、指導と称して六式や覇気を訓練していたことも分かった。
本件に関しては人は空を飛べるか飛べないかという議論をしている様子を見たと言う者が多く信憑性は高いと思われる。
また、海軍本部時代には率先して海賊と交戦している際に、空を飛んだや気を放ったなどの意味不明な記述も見つけたがそちらの真偽は不明である。
あと、ナッパが入ってからの殉職率と離職率が増加している事は由々しき問題だと思われる。
捕縛した海賊の供述
《アレは化物だ。首が、首が飛んでった。船も壊れて、何もかもおしまいだ。あんなのがグランドラインにはゴロゴロ居るなんて信じられない。アイツが笑うと、隣の奴の頭が爆発した。奴は、気の力だとか言ってたが意味が分からない。あと、空も飛んでやがったし、バラバラになったりくっついたりした。途中で海軍が来たが手から光が出たと思ったら船が消えてやがった。俺が覚えてるのはそれだけだ、海に飛び込んで運良く生き残れたと思ったぜ》
ナッパの事を知る海賊から得た情報より、兼ねてより真偽不明な力の一端が判明した。
奴は月歩を用いず飛行する能力を有している事が判明した。
また、気という覇気に似た何かを操り大将黄猿のようにレーザーのような攻撃が行えることも判明した。
更に、肉体がバラバラになったりすることから自然系かと思われたが、確認した悪魔の実は動物系である。
この事から、動物系の中でも希少な幻獣種ではないかと考えられる。
大将黄猿への質問より
《奴は力を隠していたと考えられるねぇ~、鷹の目といい勝負とか聞いたがとんでもない。アレは四皇とだって戦えるよ。殺したと思っても次の瞬間には再生する能力も厄介だ。アレが普通に海兵をしていたことの方が驚きだねぇ~なにせ、最期にはヤルキマンマングローを動かしていたし、島くらいなら簡単に壊せるだろう。それに、考えてないようで狡猾な行動が目立つ》
大将黄猿の発言を元に、海賊になってからの行動とそれに伴う影響を調べた。
首刈りナッパは主に前半の海で活動しており、民間人や海賊、海軍など問答無用で襲撃している。
結果、前半の海では支部が幾つも破壊され、海賊達の動きが活発になっている影響が出ていた。
グランドラインでは巨人族を仲間にした事もあり、被害は増大の一途を辿っている。
大将黄猿の発言より、奴は航海を目的としているのではないことが判明した。
普通の海賊のようにグランドラインから新世界に入るのではなく、略奪を楽しんでいる可能性が高い。
ログポースに従わず好き勝手移動していると考えられる。
これが海軍が磁気から進路を推測して追おうにも捕縛できない理由だろう。
センゴクは深い溜め息を吐きながら資料を机に置いた。
痛む胃に、顔を顰めながら考えを巡らせる。
天竜人とへの被害から、王下七武海入りさせて監視する事はできなくなった。
しかも上納金の増額による国への陳情が酷い、それもこれもマリージョアの復興をしないといけないからだ。
そのせいで、海軍の予算の何割かを割かないといけなくなった。
活動が無軌道では軍団規模での襲撃は難しく、更に活動地点が東の海がメイン。
比較的に強くない海兵の多い東の海ではそもそも太刀打ちできず、かと言って後半の海から戦力を移動させる訳にはいかない。
就職率の低下と人員不足が最近顕著になってきた。
海軍をやめる奴を止める対応に眠る暇もない。
最近は王下七武海に襲撃を掛けたとか聞くし、巨人族の部下が悪魔の実を手に入れたという情報もある。
調べたら、赤鬼と青鬼のドリーとブロギーらしい。
能力を使った犯罪から手配書は一億から三億に更新、不可視のドリーと雷鳴のブロギー。
トータルバウンティが億超えとは頭が痛い。
何より不可視の能力で船が見つからないというのが厄介だ。
そして、襲撃する場に居合わせても電伝虫が能力か何かで使い物にならなくなるから応援が呼べない。
これが考えられた上での行動というのが頭を悩ませる。
「目的が分からない、奴は何をしようとしてるのだ。ワンピースを求めているのではないのか、それとも私怨で行動しているのか?」
センゴクの苦悩は続く。