「な、なんだアレは」
それは誰の言葉だったのか。
海に浮く、黒焦げた何かの塊。
その上に、二つの影があった。
それは 人というにはあまりにも大きすぎた。
大きく、分厚く、重く、そして筋肉ムキムキマッチョマン過ぎた。
それは 正に巨人だった。
「よぉ船長、アレを見ろ」
「す、すごい……彼処だけ嵐がない」
「アレはエニエスロビー、不夜島と呼ばれる所だ」
「ふーやーちゃーん」
「ナッパ急にどうしたお前……」
気にしたら負け、電波を受信したんだ。
「どうする船長?」
「そうだそうだ、どうする船長」
「オーダーだ、オーダーをよこせ船長」
「あのぉ……急にそんな事言われても、武器をカチャカチャしてる時点で君達戦いたいよね」
さっすが船長分かってる!と無駄に持ち上げる。
さて、見えて来たるはエニエスロビー、鉄格子が周囲を囲っていて邪魔である。
でもって、島の玄関には人がたくさんいる。
役人も海兵も、たくさんだ。
「よ、よーし!アイツは仲間を見捨てねぇ、絶対アイツは来るはずだ。や、やってやる!俺だって、海の戦士だ!行くぞお前ら!」
「ウオォォォォォ!」
「そげキングバンザ―イ!」
「行くぞぉぉぉぉぉ!」
そげキングの声に従い、ドリーが空を飛ぶ。
巨人の月歩、それは海に亀裂を発生させながら巨体を浮かせる。
しかし、その姿は見えない。
透明化した巨人を誰も見ることは出来ないのだ。
「むっ、何者だ!ここに不法侵入するとは、捕まえろ!」
「待て、彼処にいるのはもしや」
玄関に集まる奴らが此方に気付く、しかしそれはもう遅い。
すでに俺たちは動いているからだ。
「どけ、ここに居る方は俺達の船長そげキング様だぞ!」
「そうだそうだ、よく分からんが新しい船長だ」
「今から船長がすごい事をする、ですよね船長」
「おいぃぃぃ、急にそんな前フリされても出来ねぇぞ!?」
そげキングが俺に文句を言った瞬間だった。
空中から落ちてきたであろうドリーによって前門がぶっ壊された。
なお俺達からはいきなり崩れたように見える。
「えぇぇぇぇぇ!?」
「見ろ、これがそげキング船長の狙撃だ!」
「も、門が!?どういうことだ、うわぁぁぁぁぁ!」
「て、敵襲!攻撃、どこからか攻撃だぁぁぁ!」
「た、大変だ!アレは、首刈り海賊団だ!」
「は、早すぎる!いつ攻撃されたか分からねぇ……」
柵を踏みながら、中に侵入する。
出迎えご苦労、死ぬが良い!
「ヒャッハー!人間バスケットボールだ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
「死体を武器に、人間のやることじゃねぇ!」
志半ばで死ぬことは口惜しいだろう、もっと戦いたかったよな。
死んで朽ちるくらいなら、武器として戦場で消費されるのが本望だろう。
つまり、海兵の死体を使って海兵を殴る俺は死者の代弁者である。
エコでしょうか、いいえリサイクルです。
「ヒャッ……あっ?耐久性クソかよ、ちょっと来いよ」
「い、いやだぁぁぁぁぁ」
「お前が武器になるんだよ、そぉい!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁ」
腕を掴んでそのまま振り回して投げる、ドラゴンボールじゃよくあることである。
「あっ、巨人のおっさん!なんでこんなところに居るんだ」
「ルフィ!」
「誰だお前、どっかで会ったか?ん~」
「あっ、そうだった。わ、我が名はキャプテーンそげキング!この巨人海賊団の船長だ。ウソップ君に頼まれて、助太刀に来た」
「ひ、ヒーローだ!マントしてるからそうじゃねぇかと思ったんだ」
俺のせいかと固まってるそげキングの元に、良く見た麦わら帽子が降り立つ。
久しぶりに見たな、いや前から知ってたけど。
そいつは麦わらのルフィ、よく俺が手配書を見てたやつだった。
「ひとまず話は後だ、新手が来たようだ」
そげキングがルフィから視線を逸らす。
その先には覆い被さるような大きな影、何かが上から落ちてくる。
「どこの間抜けだ、正面から攻めこむなんてよ」
「間抜けだぁ……誰に向かってそんな口聞いてやがる!」
「えっ!?ま、まさか……」
眼前に現れた巨人は着地と同時に殴られる、その無防備な顔を殴られる。
痛ーい、心が痛むよ案件である。
そのままマウントを取り殴るブロギー、やめて巨人のライフはもうゼロよ!
「やめてくれ!お頭!」
「よぉ、久しぶりだなぁ!」
「いいんだ、俺達が馬鹿だったんだ。政府は……政府は嘘をついていた、お頭達は捕まってなんか無かったんだ」
止めに入った違う巨人も殴られる。
やだ、野蛮な挨拶!
おいおい泣き出す巨人、それに貰い泣きする巨人。
そしてまさかの自分語りが始まる。
なお聞いてるのはそげキングだけである。
「俺達はお頭達が政府に捕まったと聞いたんだ。そして、百年このエニエスロビーを守りきれば開放してくれるという約束を信じてた」
「馬鹿が、俺達が捕まると侮るか!」
「俺達が、間違ってたんだ……」
「フン、だがな。そんな馬鹿な部下をそれでも許そう」
「お頭ァァァ!」
感動的だなぁ、イイハナシダナー。
政府ってぐう畜って分かんだね。
「そげキング、アンタのお陰で俺達は……」
「えっ、えっ?」
「許せねぇ、政府の奴らぶっ潰してやる」
「ま、待って!待ってくれ!」
「行くぞ、野郎ども」
「いやぁぁぁ!は、離せぇぇぇ!俺、死んじゃう!」
そげキングが意気揚々とオイモに掴まれて肩に乗せられてた。
す、すごい巨人を従えてる。
そして、増える巨人率に寂しさを覚える。
ふぅ……良いだろう俺も奥の手を切ろう。
「な、なんだアレは……」
「た、太陽?」
俺のターンはまだ終わっちゃいないぜ!
喰らえ、巨大化!
「ぎゃぁぁぁぁ!毛玉が爆発してるぅぅぅ!?」
「うわぁぁぁぁ!」
「ば、化物だぁぁぁぁ!」
金色の光に包まれながら、俺の身体が大猿化する。
えっ、悪魔の実の能力だよ。
面倒な説明は、それでだいたい説明できる。
「おーい、おーい!」
「だ、誰か下にいる!?」
わぁぁぁぁと逃げ出す海兵達の中になんかどっかで見た奴らがいた。
あっ、船大工の人である。
お前らこんなとこで油売ってないで船作れよ。
「アンタ、鼻の長い兄ちゃんだろ」
「えっ、いや私はそげキング……」
「そんなのどうでもいい、麦わら達はもう先に言ってるぞ」
「べ、別に追いかけてきたわけじゃ、あれ?なんで握ってるの?」
「オイモにいい考えがある、こうするんだ」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
仕事が速いオイモによりそげキングは投げられた。
大丈夫か?普通に死ぬんじゃないのか?
しかし、そこはそげキングである。
足からビームを出してゆっくりと降りていく。
の、ノロノロビームを使いこなしてやがる。
恐らく靴にでも当てて落ちる速度を落としたんだろう。
どういう原理か分からんが、やはり天才か。
「生きたいと言えぇぇぇ!」
何やら喋ってるなと思ったら、最後の言葉だけ大声だったので聞こえた。
そして我らがキャプテンの攻撃、170の加盟国があるんだぜ世界政府は最強なんだとか言ってる奴の象徴である旗が燃えた。
「船長が悪ふざけであんな弱いやつに肩入れしてると思ったが違ったようだ」
「あぁ、大した男だ。世界に喧嘩を売るとはな……」
「し、信じられねぇ……正気じゃねぇ」
「あんなの狂気の沙汰だぜ……」
その行動にいつの間にかいた巨人達が感想を言い始める。
オイモとカーシーはビビってる。
ドリーとブロギーは震えていた。
「どうした、怖いか?」
「馬鹿言うんじゃねぇ、これは武者震いだ」
「はやくやりたくてウズウズするぜ」
ですよねぇ、本当巨人族ってば戦闘民族である。
よし、では行こうか。
「そげキングの元に行くぞお前ら、突撃ィィィ!」
「「「「うぉぉぉぉぉ!」」」
その日、人類は思い出した。
奴らに支配されていた恐怖を……鳥かごの中に囚われていた屈辱を……。