オッス、オラナッパワクワクすっぞ。
ベジータと地球にやって来た俺は、ドラゴンボールを狙おうとしていると勘違いした地球人達と戦っていた。
時にサイバイマンを栽培し、時にヤムチャが犠牲になり、天津飯に砂を掛けたり、ヤジロベーとカップ麺を食べたり、最期には熱い激戦を観戦予定であった。
「悟空!」
「お父さぁぁぁぁん!」
「立て、立つんだ悟空」
「そうだ、ベジータなんか倒してしまえ!負けるな主人公!」
「なんでお前が応援してるんだよ!」
目を瞑り、腕を組んだまま微動しないベジータ。
パネェ、大物感パネェよ。
そのベジータの前で、ぐぎぎと言いながら立ち上がる悟空。
コミックス一巻分くらいボロボロになってるけど、多分漫画にしたら僅か一コマに違いない早さでボロボロになっていた。
「おめぇ、やっぱ強ぇなぁ」
「当然だ、何故なら俺は王子だからな」
「へへっ、負けてられねぇぞ」
「ほぉ、まだ抗うか。面白い、来るが良い」
ベジータが悪どい笑みを浮かべていた。
流石、中ボスなだけあるぜ。
なお、今ならフリーザにも勝てる気がしなくもない。
つうか、気の操作を極めれば神様とも戦える世界だからな。
つまり、気ってスゲー。
所で、気って結局何なんだよ!
「うおぉぉぉ、界王拳3倍!」
「フハハハハ、まだ奥の手があったか」
「うりゃりゃりゃりゃ!」
悟空がスゴイ速さで移動して、高速でパンチや蹴りを繰り出す。
それをベジータは目を瞑ったままスライド移動するように避けていた。
「なんて速さだ、悟空の奴どこであんな力を」
「だが、一発も当たってないぞ」
「フッ、アレは舞空術の応用で自身の重さを消しているのだ。結果、拳の風圧で身体は吹き飛ぶというわけだ」
なお、そのまま飛ばされないようにバランスを取るのが難しいが、ベジータは難なくこなしている。
やっぱりベジータは天才だった。
「畜生、はえーな」
「当たらなければどうということはない、だが芸にしては面白かったぞカカロット」
「くっそぉ、だったら!か~」
悟空が掌を合わせるように構え始めた。
その姿を見たベジータが、あの構えはと驚いた。
「それは、ナッパがたまに練習している例のアレ」
「め~」
「ならば、見せてやろう。くぁ~めぇ~」
「べ、ベジータの奴!まさか、アイツもかめはめ波を撃てるのか!?」
クリリンが驚きの声を上げるが、宇宙じゃビームくらい珍しくない。
まぁ、しゃくれながら俺が練習していたのをベジータは見ていたから知ってたがな。
品のない技だとか言いながら、きっと練習していたのだろう。
「「は~め~」」
「いかん、逃げるぞヤジロベー」
俺はヤジロベーと協力して、悟空の仲間達を抱えて移動する。
いや、絶対アレはやばい奴だと思ったからだ。
「「波ぁぁぁぁぁぁ!」」
「うひゃぁぁぁぁ」
「逃げるんだよぉ~」
かめはめ波とかめはめ波がぶつかり合い、接触した場所でバチバチ言いながらせめぎ合っていた。
あ、遊んでやがる!ベジータの奴、同程度の出力に調整している。
本気のギャリック砲を見たことある俺でなきゃ見逃しちゃうね。
背後で爆発する戦場を後にして、俺達は遠くまで逃げ出していた。
ふぅ、ここまでくれば一安心だろう。
「よし、戻るか」
「待て、俺も連れてけ」
「え~、正直面倒くさい」
がんばれがんばれ、それくらいお前なら破れる。
大丈夫、将来的にはラディッツの20倍は強くなれるお前だ。
知ってる数値で言えば戦闘力130万だ、大猿悟飯10人分だ。
「諦めんなよ!ネバーギブアップ!」
「どういうこと!?」
クリリンを放置して、俺はベジータの元にまで戻った。
すると、そこには片膝を着いた悟空とボロボロになったが仁王立ちしているベジータがいた。
「く、くそぉ……仙豆さえあれば」
「何、その仙豆とやらを食べればまだ戦えるのか?おい、ナッパ」
「お前、俺はドラ○もんじゃ無いんだぞ。いや、持ってるけど」
クリリンからこっそり奪っておいた仙豆を取り出す。
これを栽培しようと俺は思ってたんだがな。
「ふむ、生命エネルギーの塊。気の込められた植物か、よし食わせてやれ」
「おま、それ、セルの時やってるから、いや食わせるけど後悔するなよ」
「サイヤ人の特性の事なら折り込み済みだ」
「お、お前達悪い奴らじゃねぇな……へへっ」
そんな寝ぼけた事を言う悟空に仙豆を食わせてやる。
すると、軽く飛び上がるようにして体勢を整える悟空。
スゴイ、流石仙豆である。回復力スゲーな。
「よく分かんねぇけど、さっきより調子がいいや」
「さぁ、第二ラウンドと行こうか。興が乗った、少々本気を出してやろう」
そう言って、ベジータがフンと力むと纏っていた鎧がパージした。
スゴイ勢いを上げて飛んでった鎧は地面に食い込む。
「うへぇ~ベジータ、オラと戦ってる間ずっとそんなの付けてたのかぁ」
「フン、ハンデには丁度いい。アレは特別性でな、普通より数十倍の重さを持っている」
「益々楽しくなってきたぜ、へへへっ」
「生粋のサイヤ人め」
ベジータはゆっくりとだが、腕を開いた。
右手を広げ、左手を広げ、両腕を広げるような構えを見せる。
まるで友人を迎え入れるような、そんな無防備な構えだ。
「おめぇ、不思議な構えだな。だが、様子見なんかしねぇぞ」
「全力で来るが良い、一撃くらい入れられるかもしれんぞ」
「行くぞベジータ、今なら行ける!界王拳四倍」
悟空の気が、強大になっていく。
だとしても、それほど強いというわけではない。
戦闘力で言えば20ラディッツくらいか。
つまり、戦闘力は32000ぐらいだ。
「鎧を外したベジータは戦闘力が大体二倍になる。今の戦闘力は18000だ」
「そして、気の解放により戦闘力は自在だ。俺自身、最大どのくらいか把握はしていない。だが、負ける気はしないな」
「試してみろ、はぁぁぁぁ!」
悟空が舞空術のような物を使ったのか空中を高速で移動する。
それに対して、ベジータもまた突っ込むように移動を開始した。
「オラァ!」
「フン!」
「避け、ぐっ!ぐあぁぁぁぁ!」
一瞬の攻防、すれ違うように位置が逆になる。
ベジータは無傷で悟空に背を向け、悟空はベジータに背を向けた状態で両肩から大量の血を吹き出した。
「か、掠っただけで、肩が切れた!?」
「気を集中させ、手刀の鋭さを増したのだ」
「へへっ、やっぱお前スゲェなぁ。そんな方法があったなんてな」
悟空は不敵に笑っているが既に満身創痍だ。
か、勝てるわけがない、相手はサイヤ人の王子ベジータなんだぞ。
なんて台詞が聞こえてきそうである。
まぁ、肩が切れただけでサイヤ人の回復力ならちょっとしたらかさぶたくらい出来るから大丈夫だろう。
「どうする、勝ち目はないぞ諦めるか?」
「まだ勝てねぇな、でも戦わないなんて選択肢はねぇ。オラ、ワクワクして仕方ねぇからな」
「まだ、まだと来たか。ナッパの言ったとおり諦めの悪そうな奴だ、来いカカロット!お前の全力を見せてみろと言ったはずだ、そんな物が全力か!」
「良いぜ、もってくれよオラの身体!界王拳十倍だぁぁぁ!」
ドラゴンボール特有の地響きと空間の揺れ、そして周囲の地面から物が浮く。
ピキピキ言いながら回りの石とかが空中に浮かんでいったのだ。
「こ、こんな序盤で界王拳十倍だって!?」
「ククク、見違えたじゃないか。戦闘中に成長するタイプか、面白い」
「フルパワーだ!行くぞベジータぁぁぁぁぁ!」
ブウン、と悟空の背後が爆発した。
あ、あれは左手でかめはめ波を撃って推進力を得ているのか!?
「な、何だこの気の高まり!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ」
「そうか全ての気を片腕に集中させて、クソッタレぇぇぇ!」
悟空の戦闘力が、気が、一気に上昇する。
あまりの成長具合に、危機感を覚えるくらいだ。
その高まりに、ベジータの顔から余裕が消えた。
「ベジータ!」
「ぐおぉぉぉぉぉ!」
「だぁぁぁぁぁぁ!」
ベジータと悟空を中心に、爆発が起きる。
最後にはベジータも本気を出したが、だがこの爆発では姿を確認できない。
爆発が収まり、ようやく二人の姿が見える。
「う、嘘だろ……」
超サイヤ人ではないとは言え、第一形態のフリーザなら余裕で倒せるくらいには強いと想定できるくらい成長していたベジータが……
「し、死んでる……」
胸に穴を開けた状態で立っていた。
両腕で悟空の片腕を抑えていたが、悟空の腕はベジータの胸を貫いている。
しかも、その回りはごっそりなくなっており、空洞となっている。
口から血を流し、生気のない目で佇むその姿は完全に死んでいた。
「悟空ぅぅぅ!」
「お父さぁぁぁん!」
俺が驚きに固まっていると、空を飛んで来た悟空の仲間、Z戦士達の姿があった。
どうやら動揺してしまったのか、俺の気による拘束具が維持できてなかった。
ベジータの倒された姿を見て、クリリン達から喜びの声が上がる。
だが、悟空はその声に答えず固まったままだ。
「ご、悟空?おい、勝ったんだろ」
「お父さん?」
「返事をしろ、悟空!」
悲しい現実に、一人だけ気付いた奴がいた。
勘の良いナメック星人は嫌いだよ。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「し、死んでる!悟空の奴、息をしていない……」
「相打ち……だと……」
その日、二人のサイヤ人が死んだ。
「でぇじょうぶだ、ドラゴンボールで生き返る」
まったく、ベジータよ死んでしまうとは情けない。