その違いが、どのような未来へ導くのか_
まだ、誰も知らない。
29人目。
月の下。
波が寄せては返し、砂はそれに合わせて静かに音を奏でる。
_そんな自然の静かな浜辺に似合わない岩が一つ。
そんな巨大な岩の所々が光り輝く中でも文字通り、
「月の光」と。そう例えても不思議ではない程の光を一際放つ場所があった。
擦れる音を上げ、それでいて静かに、そして優しく押し出されるように。
それは_
宝石は、産まれ落ちた。
…今なお目を閉じ、安らかに眠る宝石を知ってか知らずか。
月は、傾き始める。
____________________________________
「_ぁ、ぁぅ。」
宝石は目を覚ます。
空は曇り、空を覆う雲の上から太陽の光が輝く。
産まれて初めて、
色を。音を。感触を知った宝石は、ただただぼんやりとしている。
新しい世界。
自分というものを持って見るそれは新鮮で、
そしてこれからを祝福しているようにも思えるだろう。
横たわる宝石は体を動かして小さく体を丸め込む。
まだ眠い、とでも言いたげに。
そんな宝石の眠る浜辺の空が次第に明るくなっていく。
雲は段々と薄れ、澄んだ青空が顔を覗かせる中。
_黄色と
「いやー。まさか緒の浜に現れるなんてねー。」
「えぇ。_先生に報告しましょうか?」
2人の宝石が相談している間にも、
空には何かを求めるように黒い点が不穏な影を成していく。
「お願いするよ。それに、この子を守らないといけないから急いでよ?」
そう言い放つと同時に、黄色に輝く宝石は黒の刀剣を鞘から抜き放ち_
影がその姿を成すと同時に鞘を捨て、影へと疾走する。
「_よっ!」
ある時は無数に絶え間なく放たれる矢を避け、ある時はその剣で砕く。
相当な高さにいる『敵』の元まで、
その姿からは想像もできないような勢いで即座に跳んでいった。
空中にいるにも関わらず放たれる矢を叩き落して_
「_あぁぁっ!」
一閃。
一際大きい、器を持っていた中央の『敵』を切り裂く。
途端、『敵』は煙のように霧散して消える。
「_おっと!」
残っていた最後の一体が放った矢も運よく掠めるに留まり、
砕くには至らなかった。
「報告してきまし・・・」
「ご苦労さん。ごめんよージルコン。これ案外弱かった。」
丁度2人組の中で
『ジルコン』と呼ばれた宝石がうなだれる。
そんな中、数名の宝石達と共に来たのは_
「ご苦労様、イエロー。_む?これは・・・。」
「先生♪ 新しい仲間ですよっ? 」
_先生。
『イエロー』と呼ばれた宝石が嬉しそうに呼ぶそれは、
そこにいるだけで絶大な安心感があった。
「・・・ふむ。」
先生がその眠る宝石に目を通す。
透き通るような白。
何も手を加えられていないその身体は、
光を浴びて七色に輝いていた。
「_ぅ?」
不思議そうに、宝石が再び目を覚ます。
その瞳は深く澄み通るような青色に輝き、先生を見つめていた。
その姿を見て、先生は『宝石』をそっと抱え上げ_
「ようこそ_『ムーンストーン』。」
優しい眼差しで新しい仲間を迎えたのだった。
博物誌:29人目の宝石
名称:『ムーンストーン』(MoonStone)
組成:AlSi3O8
硬度:六
靱性:中級
色:白