-月の宝石-   作:テディア

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後光、貝殻を。

 

ここ数日は平和な日々が続いている。

涼やかな風を受けてなびく髪とリボン。

槍を片手にそよぐ草原を見ながら今日も空を見る。

動く雲の形が絶え間なく違う姿を見せる中、私は一つ欠伸をした。

 

消耗した服を最近レッドベリルに直してもらったのもあって、

キュロットとネクタイもいつもより綺麗。

ただ今日は空の雲がいつもより少ないのが気になるけども。

眠気に目の辺りを少し抑えながら次の場所へ歩く。

見張りではない見回りの仕事は見張りと余り変わらない。

空をぼんやりと眺めながら足を運ぶ。

歩いて、歩いて、歩いて。ただそれだけの繰り返し。

暇つぶしに槍で曲芸みたいな事をやるのももう慣れてしまった。

…地味に他の石が知らない特技でもあるのだけど。

 

とはいえもうそろそろ昼過ぎになる。

はやくこの仕事も終わらないかな…

 

なんて事を考えていると、見張り場所ではない場所で見慣れた影が一つ。

…と、心と体の硬さを間違えちゃったような奴の影も一緒。

博物誌の仕事、あの様子だとまともにやってなさそうだけど…

 

「あ、ムーちゃん!」

「お、ムーンライトじゃーん。」

 

こちらに気付いたダイヤが手を振ってくる。

一方のフォスはダイヤの横でこちらを見つめていた。

フォスは完全にお荷物で、ダイヤは一人だけ。

ボルツはきっとダイヤを必死に探しているだろうな。

そんな事を考えながら二人に近づいた。

 

「後輩よ。さぁ!いいアイデアを出して!さぁ!さぁ!」

「フォスね、さっきからずっとこんな感じなの。あなたなら力になってくれる?」

「あー…そうだね。例えば__いや、まずはそれよりも。」

 

適当に思いついたのを言おうとした辺りで二人の背後に半透明の黒点が見える。

その時点で話しを一度区切って意識を月人への対処に切り替えた。

続けて右手に持った槍の穂先を下へ向け、地面を左手で支えてしゃがみ込む。

フォスは困惑し、ダイヤは何かを察したように振り返るが、それでは遅い。

 

そして十分に体勢を整えた所で弾かれたように走りだす。

黒点が現れる頃には既に黒点のすぐ近くまで来ていた私は、黒点が開き切り、

月人達が現れた瞬間にかなり強めに跳躍する。

 

 

_そして、そのまま槍を上に振り上げるようにして勢いよく器を切り裂いた。

速度を落とさずに宙で一回転し、上から月人全体を見下ろす。

案の定、霧散しながらもこちらを狙う月人とこちらに放たれた半透明の矢が見える。

…が、それを体を逸らして回避。そのまま砂浜に着地して体を起こす。

振り返って確認すると、先程の月人が落下しながら霧のように消えていく所だった。

 

一瞬の出来事に呆然とするフォスとダイヤ。

その呆けは次第に驚きの表情へと変わっていく。

…少しだけ、面倒になりそうな予感がする。

 

「「うっそー!?」」

「本当。……じゃあこれで失礼致します?」

 

面倒な事態になる前に早々に切り上げて学校に戻ろう。

そう思って頭巾を被り、振り返ると_

 

「「げ」」 「ボルツ!」

 

物凄く、ものすごーく怖い顔をしたボルツが目の前にいた。

 

「…お前ら二人は本当に嫌そうな顔をしてくれるな?」

「あーいやそのほらなんというか助けてムー」

「いや嫌ムリ無理それは気のせいフォスのせい」

 

お互い、擦り付けてでも無罪を主張しようとする。

そもそもボルツは普段から何を考えているのか読めないし、

ただでさえ普段の表情が固いのに、さらに固くしなくてもいいじゃない…

取り敢えず、自然に離れてから遠巻きに声を聞き取ってみる。

 

「ねぇね、ボルツ。フォスがアイデア出なくて困ってるみたいなんだけど。」

「…知らん。一度腕だけ落として目の前で粉にでもしてみたらどうだ?」

「ひどくない!?硬度十が硬度三半を粉にするとか先生に言いつけるぞ!」

 

…会話の内容の方が酷いと思うんだけどなぁ。

でもフォスはそろそろ一度は懲りた方がいいとみんな思ってるかもよ。

少なくとも私はそう思って___

 

 

 

融けて_

    あ のま ま_

          あっけない_

 

_そんな事を考えている時に、何かが脳裏を掠めた。

悪寒、予感、…あるいは予知。

砂嵐のように視界を白黒に揺れる不鮮明なぐらつきが襲う。

しばし失われた平衡感覚と視覚にふらつく体を膝で支え、次に理解できた言葉は_

 

「それはまずい…!」

「…へ?」

 

さっきの雰囲気は何処へやら。

全員が血相を変え、学校へと全速力で走っていく。

はて、学校の上がやけに明るい…?

 

「あれ、月人?…なっ…!?」

 

現状理解、きっと先生はお昼寝でもしているのだろう。

あの雲の上の丸いのに似たやつもさっき見た。

つまりそれなりに危険なのかもしれない。

 

…そこまで考えて事の重大さに気付いた私は慌てて学校へ向けて走り出した。

 

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