流血の錬金術師   作:蕎麦饂飩
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因みにどうでも良いですが、主人公の名前は父親が『鉄血』なので、
金属の『銀』から来ています。
ちなみに偽名のルヴィオ・ラグーンはアナグラムでもありますが、
RUBIO=スペイン語のブロンド=『金』です。
そう言えば金は、錬金術師に禁止された錬金でしたね。


医者の矜持

エドたちが賢者の石を持ち帰って暫く後、
賢者の石の裏に纏わる闇を調査するために動いていたロイの親友、ヒューズはある事実を突き止めた。

それは、アメストリス軍が、否、アメストリス国そのものが真っ黒であった事。
それを急いで親友兼、盟友のロイ・マスタングに連絡するために、
軍の連絡回線が傍聴されていることから、部外回線から連絡しようとしたところを、
擬態能力を持つホムンクルス、エンヴィーに襲われた。

「軍がヤバい」

その一言を、ロイに電話越しで伝えた直後、力尽きて倒れ伏せた。



その時シルヴィオは偶々夜道を散歩していた。
今日は入院している患者がいないので、イシュヴァール人がいたら殺すための捜索がてら散歩をしていたのだ。

そこで偶々、ヒューズが倒れているのを目にした。

「大丈夫ですかっ、ヒューズさんっ!!」

「何故…俺……前を?」

目の前に患者(・・)がいるシルヴィオは気が付いてもいないが、
ヒューズとシルヴィオ・グラン(・・・・・ ・・・)が遭遇した事は無い。
あくまで『流血』としてしか遭遇した事は無い。
名前を知られている可能性は著しく低い筈なのだ。
あくまでシルヴィオが遭遇した事があるのは、ヒューズの娘が風邪をひいた時に、
出張診療した際に出迎えたヒューズの愛妻グレイシアと愛娘エリシアだけだった。

だが、今はそのような余裕は無かった。
目の前で傷つき倒れている人間を救うのは、シルヴィオにとって、
医者として、いや、人間として当たり前の事だった。

すぐさま地面を材料にメスを造り出して切開し、衣服の繊維を糸として縫合しつつ、
錬金術を並行して使い、血脈や肉を生体錬成の要領で結合。飛び散った血を余計な汚れを削ぎ落して再収集して輸血。

可能な限り、高い効率と精度を注ぎ込んだ医療だった。




だが、それでもあと僅か、あと僅かの部分だけが足りなかった。
単純に処置が遅かったのだ。
故に間に合わなかった。


シルヴィオが大好きな、温かい血の流れる人間はもういない。
冷たくなって動かない遺体がそこに在るだけだった。
シルヴィオの能力により、外傷だけは僅かな縫合を除き、ほぼ完全に無傷の状態になっていたにも拘らず、
時間だけが足りなかった。
もしくは――――――



「ああ、賢者の石がここに在れば良かったのですが、こういう時に限って、ままならないものですね」

そう呟いた後、それを心の中で、
いや、足りないのは賢者の石ではなくて、私の医者としての腕前でしょうね、と訂正した。









次の日、シルヴィオはヒューズの死に立ち会ったが、助けられなかった事をヒューズの家族に詫びに行った。

「すみません。私が及ばなかったばかりに…」

そう謝罪するシルヴィオに対し、ヒューズの妻であったグレイシアは、

「…あなたは良くやってくれました。責めるつもりはありません」
と言っていたが、娘のエリシアは、

「どうして、どうしてパパを助けてくれなかったのっ、先生なんか嫌いっ!!」

そう言って、その小さな手でシルヴィオの足を叩くと、母の下に走り、そのスカートに顔を埋めて泣き出した。



シルヴィオは只々謝罪する他出来なかった。










シルヴィオはその日家に帰って、あることを決めた。

(人もホムンクルスも、誰もが温かい血が流れる人間です。
死んでよい存在ではありません。
この世は死んでも良い、否、殺すべきであるイシュヴァール人が生きていて、
死ぬべきでない、幸せになるべき人間が死んでしまいます。
そうですね、またこのような事があった時の為に、一つくらいは賢者の石を確保しておかなければなりません)


今日の捜索で、町中を歩いている時にイシュヴァール人の子供を一人見ました。
子供だけで生活しているとは考えにくいです。
イシュヴァール人は一人いたら、三十人とは言いませんが群れていることが多いので、
今から、探しに行きましょうか。

もう次は、罪の無い人々を、生きるべき優しい命を犠牲になんてさせません。
救える命を救える存在になりたいです。
その為にはイシュヴァール人を生きたままどんどん解体して、更に医術を高める事も必要ですね。
どうせ殺すなら、人々の為になる殺しの方がきっと良いでしょうし。
勿論、死して尚苦しめる事も、とてもとても大切ですが。



…あの子には嫌いと言われてしまいましたが、私はこれでも先生ですから。



救う事も考えたのですが、やっぱりここでヒューズさんを生かすと後々書きたいシーンが書けなくなるので、このような結末になりました。
技量と発想力があれば、彼をどうにか生かせたのですけれどね。
生かしたまま、作品を繋げられる作者さんがうらやましいです。







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