流血の錬金術師   作:蕎麦饂飩
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お医者さんが重傷です


等価交換

ビドーに案内されて、シルヴィオはグリードの住まうデビルズネストにやって来た。

一人だけ随分と偉そうな男がいる。恐らく彼が此処のボスでビドーの言う『グリードさん』なのだろう。

シルヴィオはそう辺りを付けた。

 

「貴方がグリードさんですね?」

 

「ああ、如何にも俺がおまえの探してるグリードさんだ」

 

そう言うと、グリードは、部下に酒をグラス二つに注がせて、テーブルの上に置いた。

 

「さあ、飲めよ。喉が渇いただろ?

――それとも毒が入ってるって疑ってるってか?」

 

シルヴィオは、一瞬迷ったがグラスを手に取った。

 

「いえ、お酒が苦手なだけですよ。二杯目からはオレンジジュースをお願いできますか?」

 

「ここは居酒屋だからな、スクリュードライバーなら構わないぜ?

…冗談だ、呑めないなら無理にとは言わねえ。

後、今日は貸し切りだから何を喋っても構わないぜ?」

 

それを聞いて、シルヴィオは少し安心した。

とはいえ、表情は変わらず真面目なままだ。

 

「では、乾杯」

 

「乾杯」

 

 

チンッと小気味良い音がなると、二人は互いに酒を飲みほした。

 

「何だ、イケる口じゃねーか」

 

「アルコールの味が好きでないだけですよ。

ところで、此処からいきなり本題に入っても宜しいですか?」

 

 

「良いぜ? 俺もまどろっこしいのは好きじゃねーからな」

 

「では、ラストさんの事を教えて欲しいのです。

夫や恋人の有無、好きな男性のタイプ、好みの花、何からでも構いません」

 

 

 

 

 

「はっ、何かと思えばラストの事かよ、

ビドーがホムンクルスを知ってる奴がいるっていうからどんな事情かと思ったら、

あのババアの事か」

 

 

 

 

その瞬間、空気が急激に冷えた。

それは雰囲気的な意味では無い。

 

実際、空いたシルヴィオのグラスに注がれたオレンジジュースは凍っていた。

 

 

「女性に対して、しかもラストさんの様な淑女に対してババアとは如何なるご見解でしょうか?

例え、如何に年を重ねても彼女はきっと美しいのです」

 

ここでグリードを含めて、周囲の者達はラストの悪口は基本彼の地雷なのだと理解した。

 

 

「俺が、悪かった。

まあ、アイツとは姉弟みたいなものだからそれなりには知ってr」

 

「では、お義弟くんとお呼びしても?」

 

 

爽やかに、クールな表情で言ってのけるシルヴィオだが、

レスポンスの速さが全然クールとは程遠かった。

 

「俺が兄っていうんなら許してやるよ。

…まさか、ホムンクルスだと解って惚れるとは思わなかったが」

 

「大した問題では無いでしょう。イシュヴァール人でないなら何の問題もありませんよ。」

 

 

「何でイシュヴァール人が其処で出てくるのかは解らねえが、

教えてやっても良い。

だが、条件がある」

 

「何でしょうか? 人に迷惑をかけない範囲でなら、大抵の事はご協力させて頂きますよ。お義兄さん。

錬金術と医療の事ならこの国でもそれなりの腕があると自負しています」

 

 

 

「いや、何でもうお義兄さんなんだ…いや、ツッコむのは後だ。

俺は強欲だからよ、金も欲しい、女も欲しい、地位も欲しい、名誉も欲しい、この世の全てが欲しい」

 

「その『女』の中に、ラストさんが入っていなければ宜しいのではないでしょうか。

略奪婚は推奨しませんが。

それにしても全てが欲しいですか…………っ、やはりラストさんもカウントしてたりはしませんよね?」

 

 

 

 

グリード以下、デビルズネストの人々は皆この様に理解した。

この見た目だけ美形クール、ラスト関係だと基本めんどくさい、と。

 

 

だから、グリードはその話は放って置く事にしてこう聞いた。

 

 

「おまえはお前の知ってる錬金術と医療の事を全部話せ、俺はラストの好みを全部話す」

 

「ええ、等価交換というヤツですね」

 

 

等価交換。言うのは簡単な言葉だが、

ものの価値と言うのは、人によってそれぞれ異なる。




重症です。
草津の湯でも治りません。





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