流血の錬金術師   作:蕎麦饂飩
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いや、特に田原坂は関係ないです(知ってた)

感想や誤字修正ありがとうございます。


雨は降る降る人馬は濡れる、越すに越されぬ田原坂

シルヴィオは実家の金に物を言わせて新調したスーツと、花束を持ってラストを探していた。

普通に考えれば、アメストリスは広いので、約束も取り付けていないし、

住所も知らない相手が、そう簡単に見つかる筈も無いのだが、

何故かシルヴィオは、今日、ラストと逢える予感がしていた。

 

その予感を裏付ける様に、偶然シルヴィオの視界の端をラストの様な女性が通った。

否、見間違える筈も無かった。

シルヴィオはラストと断定したが、直ぐに視界から消えてしまっていた為に見失ってしまった。

 

だが、この付近にいるのは確実なので、いっそう気合を入れてあくまでも自然に探す事にした。

発想が、ロミオ系ストーカーそのものなのだが、彼は家柄、資産、容姿がとても良いのでストーカーでは無いのだ。

敢えて血痕をGPS代わりにさせる様な気狂いは兎も角、

イケメンはストーカーじゃない。いいね。(嘘です)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎☆◆

 

 

華やかなカフェやバーとは程遠い地下実験室。

そこで、ロイ達とラストは対峙していた。

 

ヒューズの死について問うロイに対し、からかう様にはぐらかしながらも、暗に自分達だと仄めかせるラスト。

友の敵討ちに燃えるロイの復讐心を燃焼させるには十分だった。

 

銃でその美脚を打ち抜き、姿勢を崩した所でこめかみを打ち抜いた。

戦場で人々を幾人どころでは無い数で殺したイシュヴァールの英雄には躊躇は無かった。

 

ロイ達はホムンクルス達の事を良く知らないが、

アメストリスが真っ黒である故に、ホムンクルス達にはロイ達の情報が筒抜けだった。

国のトップとその周辺が情報漏えいさせているのだから仕方がない。

 

ラストは水管を切り裂いて周囲を水浸しにした。

空気中の塵を導火線にする焔の錬金術の性質上、周囲が著しく湿ったり、発火物を燃焼しにくくすることは効果的であった。

 

だが、ロイはその水を分解して可燃性どころか、発火性の水素と酸素を充満させてラストを焼き殺した。

 

 

 

とはいえ、ラストはホムンクルス。一度くらいでは死ねない。

死んだと見せかけて、ロイと部下であるハボックを貫いて去って行った。

 

 

 

 

そしてラストは違う場所で、裏切り者の生きた鎧を処刑して、

銃を突きつけるリザ・ホークアイ中尉とアルフォンスと正対した。

 

そしてその心理を揺さぶる為に、ロイの死を告げた。

途端にホークアイの中に沸き上がったのは、虚無と、絶望と、悲しみと、苦しさと――――憎悪。

 

 

「貴様ァ」、とラストに吠えながら銃を乱射する。

そこに正常な理性は無い。

全ての銃弾を怨嗟の実体であるかのように射ち放った。

 

全ての銃弾を打ち放った。それはすなわち弾切れを意味する。

カチカチと、無意味な音を鳴らす引き金を引いていたホークアイだったが、

それが最早、貌にならない殺意でしかないと気が付くと、座り込んだ。

 

ただの上司と部下と言う形を超えたロイの死は、それほどまでに大きかったのだろうか?

ラストはそう解釈した。

 

ホークアイを嬲るような言葉を押し付けたのは、何故かは解らなかったが、

 

「本当に愚かで弱い、悲しい生き物ね」

 

と告げた。

だが、それがそれほどにまで悪いものだとも思えない自分がいる事に、少しだけ驚いた。

 

 

止めを刺そうとしたところ、アルフォンスが守る決意を言葉にして立ち塞がった。

それごと止めを刺そうとしたラストだったが――――、

 

 

 

「良く言った。アルフォンス・エルリック」

 

ラストが殺したはずの男の声が届くと同時に、ラストの身体は爆炎に包まれた。

 

 

 

 

ロイは、自分が傷つけられた分だけでなく、部下や友が傷つけ殺された復讐の炎を以って、

ラストを何度も何度も焼き殺した。

その様は正しく復讐の鬼であった。

 

ラストは助けに来てくれた王子様でも見るかのようなホークアイが視界に居たことが、何故か癪にさわったが、

そう言えば、自分には王子様は来てくれる筈も無いわよね、というような自嘲が次いでやって来た。

 

 

あと一回でも焼き殺されたら、再生できずに終わる。

殺されるのなら()が良かった。

ラストがそう観念した時だった。

 

 

 

 

雨が降った。

大雨だ。

この地下室(・・・)の中で大雨が降っていた。

少し先さえも全く見えない豪雨だ。

降った雨は再び雲となって、際限なく豪雨が再現されている。

 

僅かに雨で濡れた足場でしっかりと身を支える余裕も無いラストは、後ろに倒れかけたが、

その背中は地面に打たれる事は無く、どこかで触れた温かい何かに受け止められた。

 

「何処かの大佐殿は、雨の日は無能だと聞いておりますが、

私は雨の日こそ大変有能だと自負しております」

 

 

そう笑う彼女の王子様に立候補したそうな男の胸に抱かれて、ラストはその意識を闇に沈めた。




ストーカーから昇格あるか?





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