流血の錬金術師   作:蕎麦饂飩
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特別な存在が殺される事、特別な存在を、殺す事


父の死

告げる様に声を放つシルヴィオと、血を吐く様に叫んだスカーは奇しくも同じ言葉を述べた。
直後、宙に浮いたメスが一斉にスカーへと飛び掛かった。

スカーはそれらを躱し、弾き、逸らし、破壊したが、
破壊されなかったメスは再び、反射するようにスカーへと向かってくる。

その上、シルヴィオは更に大量のメスを足元から生成し、
スカーをメスが掠めて、彼から零れ落ちた血液までを新たな赤黒いメスとして精製していく。

これで未だ賢者の石を使っていないというのだから凄まじい。
賢者の石はスカーが傷つけた人々の治療に使われ切ってしまっていたからだ。
それはハボックの治療が先延ばしにされたという事でもあった。

エドやアームストロング少佐の様な力強い錬金術ではないが、
人を殺すのに余りに大きな力は要らない。
鋭く硬い力があれば、人間の柔肌など難なく貫ける。
そして急所を損傷されれば簡単に死に至らしめる。

人体を理解した医者らしい戦い方だった。
医学大全書には、逆説的にあらゆる人間が生存できない可能性が示されているのだ。



スカーは、この上では嬲り殺されると多少の怪我を覚悟で吶喊する事にした。
だが――――




「片腕が無くなった影響で、以前より前進行動にブレが出ていますね」

まるで診療するかの様に呟くと、すれ違い様にスカーの手首を深く切りつけた。
代わりに右肩を破壊されたが、シルヴィオはもう一度スカーの首元近くを切り付けながら飛び散った自身の肉片を再構成して再生した。

スカーに駆け寄ったメイがスカーの傷を癒そうとしたが、スカーはそれを跳ね除けた。
この戦場で、シルヴィオがその隙を見逃す相手でも無い上に、
イシュヴァールの味方だと確定された時点でメイに未来は無い。そしてメイの一族にも。

メイはその事を理解してその場から飛び退く様に離脱した。


「良い判断です。ああ、お嬢さん、他のイシュヴァール人の場所を知っていたらこの後教えてくれませんか?
数が増える前にどんどん駆除していきたいので」

澄んだ声と瞳で告げながら、シルヴィオは自身の腕に付いた血液を地面に叩き付ける様にして、
硬化させた鉄分を元に足元を破壊。
その破片全てを針の様な物に錬成した。その大きさは先程のメスよりも小さいが、その数は先程のメスとは比較にならない。

白衣の下から医薬品の様な粉を取り出して、それを再度錬成。
見るからに変色した液体となった粉を周囲の針にふりかけた。
当たると完全に危ない類だ。


一切の昂揚感も無く、只々冷静な目でスカーを見つめ、シルヴィオがその腕をスカーに振り下ろそうとした時、
爆風がスカーとシルヴィオの間を抜けた。


「…ごめんなさイ」
スカーがその小さな声の方を見ると、メイが下を俯いていた。
スカーと自分だけではどうにもならなかった時の為に、スカーが再び無為な大量殺人をした時の為に、
偶々知り合ったイシュヴァール人に連絡が付くような手段を錬丹術の応用で行っていたのだ。


この爆風は、爆破物で侵入してきた、この場所への更なる乱入者のイシュヴァール人達だった。
その砂煙に、シルヴィオは咄嗟に仮面で顔を覆った。


そして、乱入してきたイシュヴァール人はどうやらスカーに縁深いものであったようだ。

「師父ッ!?」

「此処から逃げるぞっ!!」



新たなイシュヴァール人の乱入に、シルヴィオは寧ろ喜びがあった。
これで、更に多くのイシュヴァール人を抹殺できると。
何時もの様に、声も思考も、その瞳も冷静さを宿していたが。

「飛んで火にいる夏の虫。
害虫の方から駆除されに来てくれるとは、手間が省けます」


イシュヴァールの仲間に引き摺られるように逃げるスカーは、
「待て、まだ師父がっ、師父ーーーーッ!!」と叫んでいたが、
傷が深く、抵抗できずに運ばれていった。


イシュヴァール人がスカーを含め、数人逃げた様だった。
それはとても残念だったが、それでシルヴィオは気落ちして動きのキレを落としたりはしない。



スカーに師父と呼ばれた男の首を、周囲のメスを融合させて巨大なメスへと変えた後、

「言い残す事は?」

「う――――」

何かを言いかけた男の首を切り落とした。


「さて、良く見える処に晒しておきましょう。
指導者的な立場のようですから、
前回の爆破事件の計画の首謀者として、というのが良いですね」


復讐は復讐を産み、復讐は復讐を喰らいながら成長する。
その材料の全てが無くなるまで、復讐は終わらない



殺した後、更に名誉まで殺していくスタンス。


後味の悪すぎる作品ですが、感想を頂けると私、喜びます。
返信が遅くなる可能性はありますが、お許しください。







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