流血の錬金術師   作:蕎麦饂飩
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鋼鉄の女、鉄血さんの所の息子に無茶を言う。


冬の女に春は来るのか?

『お父様』の錬金術封じをあっさりと破ったシルヴィオ。
彼は地殻変動を利用した本来の(・・・)錬金術が何らかの要因で使えないと言う事実だけに注目して、
錬丹術でその妨害を必要分だけ抉じ開けて、その隙間から本来の錬金術を行使する発想に辿り着き、
その研究をしていた時、軍の依頼という名前の命令で、医者として北に向かう事になった。

シルヴィオは寒いのは嫌いではないが、北に向かうのは少々面倒だと思いながらも命令に従う事にした。
丁度支度をして出ようとしていた時に、エルリック兄弟たちと遭遇した。

「あの時に発動できた錬金術について教えてくれ」

エドにそう言われたシルヴィオは、参考資料を渡して返そうと思ったが、
やはり本人に説明して欲しいと言われたので、エドたちは道中を共にする事にした。

向かうは天険ブリッグズ。



水流であれ、風であれ、水蒸気であれ、様々な形でエネルギーは取得する事も、消費する事もできる。
であれば、地殻変動に限定しない様々な錬金術が可能ではないかという理論であり、
この星を一つの生命体と見立てて、
その代謝作用だけでなく、『血流』の様な物を活用させて頂くという考え方をエドたちに示した。

教え方は極めて丁寧であり、スカーを前にした時と同じ口調と同じ表情である。
とてもではないが、スカーの関係者を惨殺した様子は其処に覗けない。
そしてホムンクルスとも親しげである故に、当初エド達は100%はその理論体系を信じられなかった。

だが、余りに理路整然としており、落とし穴がある様にも見えなかった。




シルヴィオ達はブリッグズの麓で金に物を言わせて高級な防寒着を購入して、北の砦への道を登って行った。
険しい吹雪の中の登山だった。

そしてその途中、謎の大男に襲われた。

喧嘩は良くありませんよとお花畑な事を言っているシルヴィオには、大男は特に脅威とも思っていないのか完全に放置されていた。
逆に、厳めしい義手と全身鎧のエルリック兄弟は明確な敵と認定された。

その大男はどう見てもアメストリスの軍人であるから、味方なのだとエド達は主張するが、
話はまるで聞いて貰えなかった。
そして二人が上手く立ち回って、大男の動きを上手く封じたものの、
吹雪が晴れると、ブリッグズの山岳警備兵がエド達の周囲を囲んでいた。


だが、彼らはエド達に銃を突きつけるのでも、剣を構えるのでも無く、
両手を上に上げていた。

彼らの首には何れも氷で出来た、先が鎌の様になった物が足場の雪から生える様に伸びていた。

「怪我をしたら治して差し上げますが、なるべく動かないように気を付けて下さいね。
私も貴方達を傷つけたくないのです」

付き合いのあるエド達は、その発言が心からの本音だと何となく解るが、
そうで無いものには、動けば首を落とすと言う脅しにしか聞こえなかった。

そんなこんなで、彼らを連行しながら、砦へと進むシルヴィオは漸く目的地へ辿り着いた。



砦の上からシルヴィオたちを見下している女性がいた。
彼女は山岳警備兵を捕虜にしてやってきた曲者たちを見て、猛禽の様に口元を吊り上げた。

「ほう? 見知った顔がいるな」


女性と目線が合ったシルヴィオは社交的に礼をしたが、正直帰りたかった。
その女性、オリヴィエ・ミラ・アームストロングはシルヴィオ・グランの婚約者候補であった女性だからだ。


自分より弱い貧弱な男には興味が無いと豪語しておいて、シルヴィオが見た目とは裏腹に格闘術の天才だと知ると戦いを仕掛けてきて、
挙句にもっと強くなって己を倒せれば結婚してやろうと言う、
婚約の押しつけをしてくる稀代の災女というのが、シルヴィオの印象だった。
見た目は好みではあるが、今となってはラスト一筋なシルヴィオには果てしなく面倒な相手だった。


シルヴィオの前まで歩いてきたオリヴィエは剣を突きつけてかつてのように吠えた。


「シルヴィオ、久しぶりだな。
さあ、構えろ。覚悟を決めろ。私と決闘(結婚)しろっ!!」


「「「「遂に、ブリッグズの万年冬の様に、結婚できないと思っていたボスにもようやく春がっ!?」」」」

そう口々に熱狂した彼女の配下のテンションとは対照的に、
シルヴィオのテンションはブリッグスの何時もの気温の様に下がっていた。

勿論、失礼な言葉で盛り上がった彼らはこの後罰を受けるのは確定事項である。



勝ったら勝ったで面倒で、負けたら負けたで敗者が従う理論で、
逆光源氏式、養成訓練が始まってしまう。
此処に、お色気さんがもっと素直であれば、既にフリーで無い発言が出来るのに…







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