流血の錬金術師   作:蕎麦饂飩
<< 前の話 次の話 >>

6 / 52
何時の間にか、沢山のお気に入りと評価と感想があって驚きました。
感謝と歓喜でいっぱいです。

さて、今回は再び幕間的なお話です。
イシュヴァール人の彼とのお話を制作中なので、しばらくお待ちくださいませ。


『焔』から見た医師と『流血』

『焔』の錬金術師こと、ロイ・マスタング大佐から見て、シルヴィオ・グランという青年は、
一言でいうと、『軍に居なくて良かった男』である。

それは主に、錬成能力と女性絡みの理由である。


国家錬金術師にも、知られる限り、『鋼』以外にはそうそういない、手合せだけで錬金術を行使できる人間であり、
その錬成速度と精度、そして効果範囲が極めて有能であった。

おまけに身のこなしも洗練されており、一挙手一投足から彼がかなりの武術の使い手である事が窺える。
そして父があの『鉄血』のグラン准将であったという事から、軍に身を置いていない事が奇跡の様な人材だった。

ただ、ロイの出世道のライバルとなられても困るので、親切な町医者で過ごしていくのならそれでもいいと思った。



それに、美女と見間違うばかりのその容姿と、美女を見るたびに真顔で口説くような事を言う性質も少々頂けない。
プレイボーイは共に天を抱かずと昔から言われているように、ハーレム王は只一人で良いという男の性も無視はできなかった。
シルヴィオに熱を上げた美女に、声を掛けたロイが袖にされた逆恨みが、全く含まれていないとは言いきれない。

名家故に、グラマン中将の孫娘(リザ・ホークアイ)とも幼いころに面識があったようで、
何時もその美しさを真顔で誉め立てている所も、
煩いお目付け役の目線が逸れると強がっていながらも、思う所が無い訳では無い。


「ずっと見ていかなければならないモノがあるそうで、どうやら私は眼中にないようです。
実に残念な事ですね」

とフラれた事をわざわざロイに言いに来るところも、
溜飲が下がる様な、血圧が上がる様な気分にさせられる。

客観的に見れば、有能な善人だが、ロイの主観からすれば只管気に喰わない男である。








では、最近国家錬金術師の試験に合格した『流血』に対するロイの認識はと言うと、
――――最低であった。

というか、普通に『流血』は人に好かれる様な性格はしていない。
『不穏分子処理官』という肩書を与えられて、
イシュヴァール人が行った犯罪履歴(アメストリス人にとって不利益な事柄も全て犯罪とする)を纏め上げ、
イシュヴァール人自体を、野蛮で危険思想を持った存在として排斥する流れを推し進めている。

最近では、リゼンブールでのイシュヴァール人の破壊行動の調査結果を民衆に流布して、
反イシュヴァール人の機運を醸成しつつある。
敢えて忘れられつつあった過去を揺り起こして、諍いの火種を作る為に、
夫がイシュヴァール人の暴動で亡くなって、女手1つで娘を育ててきた美女がイシュヴァール人たちを非難する会場を作ったりと、
あの手この手でイシュヴァール人を追い詰めるような動きは、見ていて気持ちの良いものでは無い。

今では、自分からイシュヴァール人に石を投げに行った子供たちが、イシュヴァール人たちに追いかけられた事が通報された結果。
石を投げただけで、子どもを殺しにかかる危険集団であると『不穏分子処理官』に判断されて、
錬金術の行使による、無数の石礫でイシュヴァール人20名が抹殺された事もあった。


かつてと違い、イシュヴァール人の数が少なく、散り散りになっている為に、
イシュヴァール人の子供をアメストリスの将校が殺したことによる紛争が同じ規模で再発する事は無いだろうが、
嘗て起こされた悲劇を、政府が黙認する事に、その戦争を経験したロイにとっては嫌悪感すら感じる流れが出来ていた。

寧ろ現在では、積年の恨みによる反撃を受ける前に、
恨みごと纏めてイシュヴァールを全滅させてしまえと言う強硬派の声も、軍内にも聞こえてきた。


新興宗教が圧巻していた町で、教祖の悪事が潰えた後、その混乱に興じて町に新たな宗教を流布しようとしたとして、
イシュヴァール人達と民衆たちが争いを繰り広げている元凶も、それらの流れの一つ出るとさえ言われている。


かつて仲間達と共に乗り越えて、二度と起こしたくないと思った悲劇の体験は何だったのだろうか?
人は喉元を過ぎれば熱さも忘れるのか?
ロイはその遣る瀬の無い未来に向けた感情を隠す様に、手で目を覆った。



プレイボーイVSプレイボーイなお話でした。







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。