カツン カツン カツン   作:モアニン

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うらぎり

あの水色の生物は逃げてきたのだろうか。

大きな部屋に出た私は、何もいないが他とは全く違う特徴を残す此処を見てそう予想した。

飼育施設の一部、セクター1において人工物だらけの空間。

おそらく研究員が用いるだろう連絡通路もなく、まるで隠されたかのような部屋だった。

スーツと一体化した私は鋭敏になった知覚で金属の溶けた、ショートを起こした機械の臭いを嗅ぐ。

熱の籠った臭い。

散在する斑模様から発生し、それらはまだ新しい。

サーモグラフィーと肌がこの大部屋が他の空間よりも格段に暑いことを示していた。

水玉が脳内に浮かぶ。

やはりこれらは戦闘の痕か。

視界をどこに動かしても必ず入るそれらは、想像も及ばない程の激しい戦闘があったことを私に伝えた。

そこで疑問が生まれる。

この戦いを繰り広げた両雄は何処に行ったのか。

死体どころか体液すらも見つからない。

こんな惨状に遭ったにも関わらず。

 

これが直感というものだろうか。

根拠を並べた訳ではないが、確信を伴って容疑者がまた浮かんだ。

 

あの水玉だ。

 

精彩を欠くことは危険だと知っている。

けれど私は失態を犯した後の叱責を、失態を彼が気付く前に埋めなければならない。

 

なるほどこれが恐怖か。

 

新鮮な感覚の筈なのに体が覚えている。

ちぐはぐな感じというのだろう。

胸から喉元の辺りで何かが滞留して吐き出したくなる。

 

道中足が何度ももつれた私は理由を特定するまで考えては転びかけるを幾度も繰り返した。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

『何を落ち込んでいるのかね』

 

「落ち込んでいる・・・?」

 

『そうだ、俯いてどうしたのかね』

 

私は落ち込んでいるのか、そうか。

私が実感に浸る内に彼は言葉を紡ぐ。

 

『一先ずは感謝を述べよう、任務の完了御苦労だった』

 

「・・・?」

 

そうか、そうだ。

私は任務を終えたのだし特に怒られるような事はしてないのだ。

 

『気晴らしに新しい任務を与えよう。』

 

「?」

 

気晴らしになるのかそれは

 

『体を動かせば思考に耽ることもあるまい。君には……』

 

「・・・」

 

彼からの言葉が途切れる。

疑問を口にしようとすると彼が抑揚の無い声を更に押さえ付けた声で喋りだした。

 

『・・・セクター2、TROに直ちに急行してもらう。

熱帯環境を再現したセクターだが・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

『凡そ信じられない事だが、レディーがXの侵入を手引きした…可能性が、ある』

 

 

「可能性・・・?」

 

 

『そうだ、レディーと接触し事の真偽を確かめろ。理解出来たかね』

 

 

「彼女は味方ではなかったのか」

 

 

『私もそうではないことを願っている、移動に移れ』

 

今までとは全く印象の違う彼の声音は、問い掛けを重ねようとした私の口を封じ足を自然と動かした。

 

 

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