カツン カツン カツン   作:モアニン

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普段物事を考えないから短いのだろうか


デッドエンド

また忘れていた。

初戦は必ずと言って良いほどに私はスキャニングを忘れる。

何時からか生まれた生物のデータに対する収集癖が、私に払拭しきれない残念を抱かせた。

 

まただ…と。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

セクター2の最奥、カビの栄えたこの頗る毒々しい見目のエリアにそれはいた。

頭上からの奇襲、丸飲みをブーストを吹かしての回避行動。僅かの間、天地の入れ替わった視界に収まった敵性存在の視覚情報が脳の記憶野にトレースされる。

筒状、幾つか節目のある透けた外殻、硬質でありながら延性、靭性に優れたそれをもつ巨大な生物。

体格に合った大きさの単眼を達磨落とし状の体の頭部に持ち、さながら跳ね回る逆さウツボカズラなヤツは中々に厄介な敵だった。

攻撃するには捕食されるリスクを承知で足代わりの鋭い歯が生え揃った口下に潜り込む必要があったのだ。

速度を変え、天井も壁も足場に飛び掛かってくるヤツは、攻撃を逆手に口からビームやミサイルを食らわせても怯えの色を瞳に浮かべなかった。

それどころか身軽になったことを利用して勢いを増して襲い掛かって来た。

 

擬態を越えた生物の完全な再現、となれば勿論痛覚があり、思考が可能な程の脳味噌も再現出来るのであれば命の危機を感じてそれに付随する感情も沸き上がる筈だ。

しかし更新を重ねるプログラムの様に私の危険度に対する認識を都度改めて只々苛烈に私を排除しにかかる様子は「感情の無い死兵」という印象を私に与えた。

 

矛盾した心象が私に疑わせる。

 

xとは生物なのか――――――と

 

生物兵器よりも兵器然とした彼らが生物という再認識、だからこそここ一帯に既に蔓延り跋扈しているだろうという確信にも似た予想に辿り着いた時、私は胸に手を置いた。

胸の内の鼓動が胸板を強かに叩いていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

戦いが最早生業の私はしかし、生存を賭けた闘争を謳歌出来る性格ではなかった。

ある時、自動航行を行うシップ内で暇を潰す為に雑然と蓄えた電子記録を閲覧していた。

楽しみに乏しかった私は生物に関するデータを娯楽と見出だしたのだろう。

読み始めて内容が軍事や機密資料と分かるものは即座に飛ばすものの、クリーチャーの生態に関しては全て目を通していたことに気付いた時は良い発見をしたと頬が持ち上がった。

しかし暇が出来ればと幾度も見返しては飽きは訪れる。

それからだろう、私が生物を見かけてはスキャナーを起動させるようになったのは。

今回のように忘れてしまうことも多々あるが、ああすればよかったと思うに到るのは、シップとスーツという二つの巨大なデータバンクを全損、或いは欠損してしまったことによる。

ここ暫くはこのシップを使っていたから失われたデータの量は総てと言わずとも大きい。

バックアップを別の記録媒体に移せば…そう考えるも後の祭り。

加えて今後もそのような事はきっとしない。

パワードスーツ任せで私はものぐさに育ってしまったのだから…

 

 

カビ地帯から熱帯多雨林バイオームに心身共に戻ってきた私は違和感を視界に覚え、同時に気付いた。

そこいら中に散在する芋虫だったキハンター星人が一斉に蛹になった、事にではなく、このセクター2という施設が何者かに破壊されつつあるという現状に。

極めて危険かつ凶暴な宇宙生物の活動にも耐え得る様設計された筈のここがだ。

破壊痕を見ればタイムラグもなく犯人像が浮かぶ。

急き立てられるも足音密かに元来た道を戻れば、崩落した内壁の奥に、土砂崩れの様相を呈する壁に半ば埋もれて光を灯さないハッチがあった。

 

壁の向こうに張り巡らされた電子回路は凡そ全滅、頑丈な筈のセキュリティハッチ自身も変型する程損傷しては電力を通せど使い物にならないだろう。

ここまで来るには以前は開通していたこの一本道を通る必要があった。

つまり

 

 

ここは袋小路だ。

 

 

ハッとするのと後方にあるハッチの開閉音がするのは同時だった。

そして『あの』馴染み深い音が私の肝を凍て付かせた。

 

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