分からんという人は質問していただければお答えします。
あんまりサムスに説明させると独白感薄れちゃうかなぁって
「…失礼する」
「正気か」
アダム。その言葉を飲み下して立ち上がる。足を切り刻むような閃光の逃げ先となる口、歯を食い縛り、唇を固く結ぶも、洩れる苦悶に息が乱される。
こんな事に手間取っている暇はない。相手が何時私を殺すか分からない。生殺与奪の権を握られているのにそれを行使しない。その行為から推測できる意味は一つに絞られないのだ。殺す迄もないか、又は用済みとなれば…少なくとも何時銃口を向けられるか知れたものではない。
両方の選択肢に共通する事だが、道程で死を懇望する憂き目に遭わされても何らおかしくない。
草や微生物を含めた、おおよそ総ての生物は無数の屍の上に立ち、生存する術も嗜好も千差万別だ。共生を選ぶ種族は殆どおらず、故にその例外を除けば共通点は一つ。
生存に伴う犠牲は必ず生まれる。
「っはぁ…ッ″…」
「……」
「レディー、彼女は『人』だ。『敵』ではない」
「……っ…」
「加えて彼女は未だ
襲われた立場ではないからそう言えるのだ。そう怒号を上げる程割ける気力が無かった私は憤りを余所に、直感を刺激した彼の言葉に記憶を探す。
この無愛想なオペレーターが何故知っているのか、どうしてこんな機械らしくない言い回しを選んだのか、そしてアダムを思い出す彼との応酬。
疑問は直ぐに氷解した。
彼は優秀な司令官であり、知恵と判断力、人を統べる力に長けた典型だった。
銀河連邦の事だ。肉を持ち、結果的にだが心さえも持つに至った
コピーとは言えアダムはアダムだ。
彼と、個々の生命を尊ぶという彼の信念を信じるならば、彼女は私が相対してきた生きた機械とは違う、人間のような存在なのだろうか。
そう、それはMB、メリッサ・バーグマンのような…
「……」
胸中を複雑な思いが占める中、アダムが言った。
「サムス、レディーを支えてくれ」
「…了解した」
彼女が動こうとした所、待てと彼が告げた。
「これは警告にして忠告だ。敵の特徴は知っているだろう、レディー」
知っているとも。
生物に寄生した後は宿主の体内に蔓延して…
「先程述べた『敵』は増殖、分裂した可能性が極めて高い」
「……!!」
「…どういう、ことですか」
肩を貸してくれている彼女に躊躇った私は、彼女と彼女に芽生えたモノを信じ、尊重することにした。
「Xという生物を知っているか」
「…いえ」
アダムは彼女に教えていないらしい。不信感を抱かせない為にもここで言ってしまうか。
「ゼリー状の浮遊体だ。侵入した生き物の中で数を増やし、後に殺した宿主に変貌するのが彼らだ」
「…酷いですね」
空いたハッチを通過して光で編まれた昇降機に乗せてもらい、続いて飛び乗った彼女と上がる。
「けれどそれが彼らの生き方だ。そしてそうするしか出来なかった彼らは、終いには恨みを買った相手に滅ぼされてしまったんだ」
「そんな……」
「非道いと思うか?最初に殺された側の人々もきっとそう、感じただろう」
それきり黙ったままの私達は復旧されて間もないメインデッキへと繋がる光のリフトで昇る。
表情の窺えない彼女は呟く。
「…生きるのって、難しい、です」
「あぁ…誰も死なずに済んだら良いのに…」
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壁面に張り巡らされた網のような梯子を伝わずとも出っ張った足場を飛び移っては進む彼女、と抱き抱えられた私。
少しの気恥ずかしさと疼痛を紛らわす為に話を切り出した。
「私には大切な人がいた」
「…」
「でもその人の命を脅かす誰かがいた」
「…はい」
「けれどその誰かはそのまた誰かの大切な人だったんだ」
「……はい」
「私が何も出来ず惑う所為で、二人は死んでしまった」
「……」
「二人が死んで私も、その誰かを想っていた人も悲しんだ」
「……」
「……サムス」
「……」
「私は…どうすれば、良かったんだろう」
「……守れば良かったのでは」
「…」
簡単に言ってくれる。
だが私がもっと強かったら、そう思わずにいられなかったのも事実だ。
まずは一刻も早くスタート地点に立たなければならない。
私を含めた多くの人々の、大切な人命を損なわせた任務。
それを強く想起させるこの状況に私は焦りを募らせる。生き急いでは自分の命を危難に晒す。例えそう分かっていたとしても、望みが一縷でもあれば掴みに往くのが私という人間なのだから…