ヒーローの卵として。   作:高任斎

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体育祭終了までのおはなしです。
長く続きはしませんが、楽しんでいただければなによりです。


1:1年A組、ぼっち組。

 前世の記憶に目覚めたのは、4歳の頃。

 テレビや新聞、そして現実で、個性あふれる社会を目の当たりにした私は、前世の記憶から3つほど、ゲームや漫画の作品を連想した。

 そのうちの1つは、この個性が限られた地域ではなく、全世界における現象という時点で除外。

 そしてもう1つは、今ひとつ、目の前の現実との合致率が低いので除外。

 最後に残ったものが正解かと言われると、『あくまでも自分が記憶している範囲』でしかないから、そうとも言い切れない。

 しかし、テレビがまたひとつ大きなピースを与えてくれた。

 

 雄英体育祭の、テレビ放送。

 

 種目は違うけれど、1教育機関といえる、高校の体育祭をテレビ放送する。

 個性と、ヒーローと、雄英学園。

 ああ、やっぱりヒロアカの世界なのか、ここ。

 前世ではあまり漫画やアニメに触れることがなくなった年齢に至っていた私だったが、知人に8巻ぐらいまで単行本を貸してもらって、一気に読んだ。

 なんというか、久しぶりにワクワクしたことを覚えている。

 久しぶりに単行本をオトナ買いして、続きを読もうと思ってたんだけどなあ……。

 そっか、死んであの世界に転生しちゃったか。

 病院で意識不明のまま見ている夢なんて想像は、とりあえずポイだ。

 

 創作世界に転生とか、ぶっ飛んだ考えをすんなり受け入れる時点で、私の心はどこかおかしかったのだろう。

 

 と、いうか。

 目の当たりにする社会の物騒さが、否応なしにそれを求めてきたとも言う。

 いきなり個性をぶっぱなす犯罪者。

 免許制とは言え、個性をぶっぱなして犯罪者を捕まえるヒーローたち。

 前世日本人から見れば、かなりヒャッハーな世界だ。

 千の言葉より一つの暴力。

 一般市民だからって、甘えてはいられない世界。

 

 だから、トレーニングというか、鍛錬だ。

 ヒーローになるよりも、まずは自分の身を守るために。

 私の認識としては、『個性』というのは、あくまでも『個性』でしかない。

 つまり、基礎能力……ベースである素の戦闘力を高めて、『個性』なしの戦闘を可能とした上で、『個性』を戦略及び戦術へと組み込む。

 

 その上で分かったことがある。

 この身体、強い。

 前世でも、スポ根に憧れて小学校の頃からひたすらトレーニングで身体を鍛錬していたからこそ、よくわかる。

 前世での憧れというか目標だった『リンゴ砕き』を、中学生で達成できたことからも、身体のスペックが前世を大きく超えることは明らか。

 握力が130キロを超えると、リンゴがジュースになる前にボコッと砕ける。

 いわゆる、これが『リンゴ砕き』。

 残念ながら、前世では色々と怪我もして、全盛時で90キロ台までしかたどり着けなかったからなあ。

 まあ、力が強いってことと、『強い』ってことは別物だ。

 特に、この世界は『個性』も重要な世界だから。

 どれだけ鍛えても、『個性』でチャラにされるなんてありふれた日常だ。

 チャラになるぐらいならいいが、軽く上をいかれることだってあるだろう。

 原作のオールマイトなんかがいい例だろう。

 

 加えて言うなら、この世界の人間は、前世のそれよりみんな身体が強い感じだ。

 おそらく、『個性』が影響しているのだろう。

 10メートルジャンプできる人間は、10メートルの高さから無傷で着地できる。

 筋肉が、関節が、骨が、それに耐える強度をもっていないと、力を発揮できない。

 いわゆる、主人公の出久の身体が、個性の力に耐えられないアレだ。

 

 あれが元々、生まれつき彼の個性であったなら……身体はそれに応じて発達、強化されていたと思う。

 

 この世界の人間は、ほとんどが個性を持って生まれてくる。

 そして、その個性に耐えられるように成長していくんだと思う。

 この世界の人間が、前世のそれより身体が強いと考える理由はそれだ。

 なので、私の身体も……強いレベルにはあるが、飛び抜けて強いってわけじゃない。

 

 この世界にも、『個性が成長にもたらすもの』的な理論の書物は、結構出ている。

 身体がそうであるように、『知的な個性』は、頭脳方面の成長に影響を与えるようだ。

 つまり、この世界の人は『見た目で個性の方向性を推測できる部分がある』ってことになる。

 もちろん、ある程度……だが。

 

 だから私は、慢心することなく、たゆまぬ鍛錬を。

 子供たちのあこがれ『ヒーロー』になりたいんだといえば、そんな生活も周囲には理解してもらえた。

 もちろん、この鍛錬の限界はある。

 その限界がいつやってくるか……良くも悪くも、それは素質ってやつだ。

 

 

 うん、別に本気でヒーローを目指していたわけじゃない。

 もちろん、ヒーローになってみたいと思う気持ちはあったけどね……ただ、私になれるのかって疑問が付きまとっていた分、どうしてもね、気後れみたいなものがあったと思う。

 特に、雄英のヒーロー科は、本当に競争率300倍なんて世界だった。

 他にも、ヒーロー科のある学校は全国に存在しているが、軒並みすごい人気だ。

 個性社会でありながら、個性を自由に使えない社会っていう理由もあるんだろう。

 自分の個性を、自分の力を、全力で振るってみたいと考えるのは、おかしなことじゃない。

 

 私のそれも、どちらかといえば、記念受験だった。

 せっかく鍛えたんだから、戦いの場に臨んでみたい、自分の力を試してみたい、というのが理由の半分。

 残りの半分は、原作キャラを見てみたいってとこだ。

 ミーハーと笑うなかれ。

 ドキドキしながら読んだ漫画のキャラが、この世界にいる。

 野球少年が、プロの選手に抱くあこがれのようなものだ。

 会ってどうこうしたいってわけじゃない。

 見てみたい。

 漫画では聞けなかった声を聞いてみたい。

 峰田くんと、エロい話をしながら、バカをやってみたい。

 まあ、そんな感じだ。

 

 そして私は、雄英のヒーロー科を受験した。

 

 実技は分からないが、頭脳の方はギリギリアウトレベルと教師に言われている。

 自分ながら、よく頑張ったほうだと思うが……まあ、努力にも限界がある。

 時間という名の限界が。

 と、いうか……『私』の限界かもしれないけど。

 

 

 

 

 入試会場でキョロキョロしているのは、私だけじゃない。

 彼らのそれは、落ち着きのなさだろうが、私のそれは『原作キャラの誰かと会えないかな』ってミーハーな理由だ。

 大規模の大学入試ほどではないにしても、競争率300倍、受験者数1万人以上の中から、原作キャラを探すのは難しかったようだ。

 まあ、筆記試験は仕方ない。

 実技試験だ。

 原作キャラの彼らは、実技試験で活躍できるからこそ、あの場にいる。

 活躍する人間は、自動的に目立つ。

 

 

 そして実技試験。

 いくつかのブロックに分かれるのは原作通りだったけど、敵の設定が違った。

 いわゆる0ポイントの敵が、0ポイントじゃなかった。

 1体15ポイント。

 ポイントに釣られて近づくと返り討ち……ってことだろうか。

 自分の力量と、相手の力量、そのあたりを冷静に判断できるかどうか……あるいは『周囲の人間と協力できるかどうか?』ってところだろう。

 

 

 

 あれ?

 いや、私……なんで主人公たちと無条件で同学年って考えてたんだろう?

 さっき、受験生たちに説明してたのは、プレゼントマイクだ。

 だから……。

 ああ、だから……原作と、それほど時間のずれはないのかな?

 

 というか、あの敵の15ポイントに釣られてケガ人が続出して、次の年から0ポイントに変更されたとかありそうだよね?

 その一方で、原作のレスキューポイントが加わったとか……。

 

 あれ?

 この試験では、どう振舞うのが正解なの?

 何も考えずにヒャッハーしてればいいの?

 それとも、受験生たちを守りながら戦う?

 

 あ、原作知識を利用できない、ガチの受験だこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凄い人がいた。

 イメージとしてはカポエラだ。

 脚だけで戦うというか、変幻自在に脚を攻撃に使う格闘技。

 元は、両手を拘束された奴隷があみだした格闘技とも言われているあれだ。

 

 そいつは、手も使う。

 使うが、威力が低い。

 しかし、脚の攻撃の破壊力は桁が違う。

 おそらくは個性の力なのだろう。

 速度もある、でもそいつはあまり動かない。

 その脚力でダッシュすれば速いだろう……でも、方向転換ができない。

 トリッキーな動きで相手を先に動かし、華麗にカウンターのキックを放つ。

 格好いい。

 しばし見とれた。

 

 

 強い男がいた。

 見るからにパワー系。

 しかし、主な攻撃は投げだ。

 掴み、抱えて、地面に叩きつける。

 注目すべきは、その『掴み』を実現させる握力だろう。

 ロボットの腕を砕く強さ。

 あれも個性の力か。

 殴りもする、蹴りもする。

 しかし、最後は投げだ。

 確かなこだわりを感じさせた。

 

 

 ああ、私も負けていられないな。

 見せよう。

 そして魅せよう。

 私の個性を。

 

 何かを攻撃してる敵の背後から一撃。

 そこにいない誰かの攻撃から逃れようとしている敵の逃げ道に回り込んで一撃。

 残念、それは幻覚だ。

 私のすぐそばを通り過ぎていく敵の腕。

 手応えがないことで体勢を崩した敵に一撃。

 

 私がひたすら鍛錬に努めた理由はわかると思う。

 私はこの肉体で戦う。

 個性は、あくまでも補助だ。

 私の個性は、対象相手を騙す。

 あらゆるものを騙す。

 人も機械も騙しきる。

 フルに使えば、世界だって騙せる。

 

 

 

 もちろん、そんなことをすれば反動がある。

 

 

 

「よう、面白い戦い方してんな」

 

 強い男が声をかけてきた。

 

「その、相手をかく乱する戦い方、わりと好みよ」

 

 凄い人が声をかけてきた。

 

 自分が強いと、凄いと思う相手に何らかの形で認めてもらえたこと、それが嬉しかった。

 戦いの合間に、危険な状態と判断した受験生を助けたりもした。

 感謝する人もいれば、余計なことをするなと怒る人もいた。

 まあ、仕方ないとも思う。

 ポイントを横取りされたと考えても無理はない。

 合格するためにみんな必死だ。

 しかし私は、『格好よく』行動する。

 いや、『格好よく』行動してしまう。

 個性による反動だ。

 せっかくだからと、厨二魂全開で名づけた私の個性。

 

ムービースター(銀幕の主役)

 

 この個性を発動している間は、私主観で、みっともない行動は許されないし、できない。

 ああ、受験に合格できるかどうかはわからないけど、実にヒーローっぽい個性じゃないか。

 

 自分の身を守るってのは、そういう意味もある。

 個性発動からの自己犠牲へのコンボが目に見えていたからね。

『私が囮になる』とか、『ここは私に任せて先に行け』とか、絶対にやってしまう。

 強くなければ生き残れない。

 

 

 

 さあ、15ポイントの敵の登場だ。

 ある者は一発逆転を夢見て。

 ある者は、ダメ押しのポイント稼ぎのために。

 うん、さすがヒーローを目指す人間だ。

 あの、でかくて強くて硬そうな敵に、臆することなく向かっていく受験生が多い。

 さっきから私は、人助けで忙しい。

 

 やがて周囲から受験生が消えていき、私を含めた3人が残った。

 燃える展開だ。

 格好いい展開だ。

 だから私は逃げられない。

 逃げることなんて考えられなくなる。

 

 でかいやつはまず足元から。

 そして、その重量そのものがやつの弱点であり、私たちの武器でもある。

 

 私が個性を放つ。

 彼女が敵の足元を攻撃する。

 男はただチャンスを待っている。

 私と彼女が、何度も仕掛け……その時が来た。

 ぐらついた敵。

 彼女の脚力を利用して、男が飛ぶ、そして掴む。

 無意識に、私はつぶやいていた。

 

「勝ったな」

「……ええ、そのようね」

 

 私と彼女は、男の投げの威力と、自らの重量によって巨大な敵が破壊されるのを見守った。

 

 

 

 

 

 実技試験が終わり、私は彼女と彼の3人であらためて自己紹介を始めた。

 私と違って、ふたりは自信満々だ。

 でも、なんとなくだけど……私も、合格する気がしていた。

 この受験ブロックに関して言うなら、現時点で私は上位にいるのが実感できたから。

 そしてなによりも、このふたりが、私を認めてくれたから。

 

 やはりというか当然というか、前世の記憶がある私と違って、二人はまだ中学生。

 その能力とは別に、どこか子供っぽさがある。

 

「じゃあ、これからよろしくな」

「ええ、長い付き合いになりそうね」

 

 私は、差し出されたふたりの手を取った。

 

 原作キャラはいなくても、この2人のような連中がたくさんいて、そんな仲間たちと一緒に、雄英生として、ヒーローの卵としての生活が始まる。

 

 無条件で、そう信じられる……そんな瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合格。

 おお。

 口元が緩む……それを家族に見られるのが嫌で、こっそりと個性を使う。

 口の緩みが戻っていく。

 長所と短所は表裏一体。

 馬鹿馬鹿しいと思うだろうけど、こういう使い方だってできなくはない。

 私の個性は、『隠蔽』に関して優れている。

 

 家族が喜んでくれる。

 父が、母が、姉が、妹が、無条件で喜んでくれる。

 同時に心配もしてくれる。

 

 そうだ。

 私はもう、ヒーローの卵のような存在だ。

 何よりもまず、この家族の笑顔を守らなければいけない。

 死ねない。

 

 何はともあれ、私はこの春から、みんなの憧れ、雄英ヒーロー科の学生になる。

 

 

 

 

 さあ、今日は入学式。

 ヒーローを目指すと言っても、まだまだ子供だ。

 憧れの雄英生になったせいだろう、周囲はみんな浮かれてる。

 私はまあ、前世の経験がある分だけ、落ち着いてるつもり。

 あの2人もいた。

 同じクラスか……嬉しいというより、なんとなくホッとする。

 

「やあ、また会えたね」

「会えるに決まってるだろ」

「私たちが落ちるなら、合格するのは、精々一人か二人よ」

 

 私は苦笑した。

 筆記試験のマイナスを、実技試験でカバーしたとは言いづらい。

 この自信満々の態度からして、ふたりは筆記試験の方も優秀なんだろう。

 

 私たち3人のようなグループが、教室の中にいくつか出来ている。

 受験で知り合ったのか、それとも以前からの知り合いなのか。

 明るい、どこか浮かれた雰囲気に包まれている。

 ヒーロー志望の人間にとって、雄英のヒーロー科は憧れだ。

 仮に、雄英じゃなかったとしても、ヒーローになるための際そのステージにたどり着いた興奮と達成感みたいなものがあるだろう。

 合格発表から今日に至るまで、家族はもちろん、周囲からも褒められ続けたんだろうと思う、私と同じように。

 先日まで中学生だった子供に、それに抗えというのは難しい。

 

 

 おお、相澤先生だ。

 イレイザーヘッドだ。

 そっか、相澤先生がこのクラスの担任……待て。

 

 

 

 ヤバイ。

 

 この人、原作キャラの1学年上のクラス全員、退学にしたとか言ってなかったっけ?

 うざいとか思われるかもしれないが、浮かれてるクラスの仲間にヒーローとしての心構えと覚悟を促さなければヤバイ事になる!

 

 

 みんな、時間(とき)がきた。

 ヒーローに憧れていた子供からは卒業しよう。

 ヒーローの卵として、自覚と覚悟をその胸に抱き続ける立場になったんだ。

 切り替えよう。

 歩き出そう。

 ここは、スタート地点であり、通過地点だ。

 みんなが憧れを抱いたのは、ここの生徒になることか?

 ヒーローになることだろう。

 ヒーローであり続けることだろう。

 手の届く範囲の、誰かの笑顔を守ろう。

 もう一度いう。

 切り替えよう。

 歩き出そう。

 ここは、通過すべき場所でしかない!

 

 

 個性?

 使ってるよバリバリに。

 素面で言えるかこんなこと。

 

 ああ、しかし相澤先生って、マジで入学式とか無視するのね。

 家族が見に来てるのは、私の家だけじゃないと思うんだけど。

 確かに、ヒーローの自覚を持たせるという意味では納得できなくもないけどなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 起立。

 礼。

 着席。

 

「……嫌味か?」

 

 嫌味もなにも、私以外のクラスメイト全員退学にしたのは、先生じゃないですか。

 

「お前、この状況でそんな口をきくのか?」

 

 たとえ退学になっても、私のやることは変わりませんから。

 また、受験します。

 あの時言った通りです。

 ここは通過地点であって、目標ではありません。

 ヒーローになります。

 ヒーローであり続け、手の届く範囲の誰かの笑顔を守ります。

 

「……」

 

 相澤先生が、みんなを退学処分にした理由を否定しているわけではありません。

 でも、彼らがこの後どうなるか考えたことはありますか?

 

「あいつらに、ヒーローの資格はなかった……それだけだ」

 

 私は首を振った。

 この人は真面目すぎる。

 ヒーローであることに、真摯すぎる。

 真面目すぎるヒーローであるがゆえに、教育者としての観点が欠けているような気がする。

 

 教育は、誤りを正し、導くことに本質があると思う。

 一度の失敗を認めず、切り捨てるだけなら……そこには、絶望しかない。

 

 たぶん、この人は……ヒーローとしての痛みを、失敗の痛みを、知りすぎている。

 だからこそ、この過剰とも思える処罰を下すのではないだろうか。

 

 今の私の行動には、生徒である私の行動には、誰かを動かす力がない。

 ましてや、このヒーローの相澤先生にとってはなおさらだろう。

 ならば、言葉だ。

 今、この人を動かすには、力のある言葉が必要だ。

 

 先生、私が目標とするヒーローが、こんな言葉を残しています。

 

『一人の未来は、無限の未来へとつながっている。一人を救うということは、無限の誰かを救うことだ』

 

 相澤先生は、教師であると同時に、ヒーローでもあります。

 ヒーローとして、あいつらを守ったと言えますか?

 仮に、あいつらが絶望から悪の道に走ったらどうなりますか?

 退学処分の後の、心のケアとか、なにかお考えがありますか?

 最低でも、家庭訪問や説明、そして将来について……語るべきだと思います。

 あいつらは、ここを退学処分になった。

 守る立場を目指す人間から、守られる立場に。

 あいつらを守ってください。

 ヒーローならば、あいつらを守ってください。

 

 あいつらからつながっている、無限の誰かを救ってください!

 

 

 

 いつからか私は泣いていた。

 それが格好悪いとは思わない。

 

 言葉は届いただろうか。

 先生の心を動かすに足る力を込められただろうか。

 

 ああ、先生がやることとは別に、私もまた、私に出来ることをやるつもりだ。

 私は、私の手の届く範囲で、だれかの笑顔を守ろう。

 先生にそれを求めるだけでは、私は、ヒーローの卵としても失格だろうから。

 

 

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