ヒーローの卵として。   作:高任斎

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本日2話目です。
最終話となる10話を読んでない方は、さきにそちらをどうぞ。

……いきなり、9話の次にこの話を読むのも打ち切りエンドっぽくって趣があるかもしれませんが。(笑)


NEXT:続いていく未来。

 季節は流れて……。

 

 雄英が、新たな新入生を迎える日。

 

 

 

 

 ひとりの少年が、決意を胸に。

 しかし、それ以上の不安と緊張、その他もろもろを抱えて……トイレに駆け込もうとした。

 

「……うおっ!?」

「すみません!驚かせてしまって、ごめんなさい!」

「ああいや……驚いたのは、そうじゃなくて……」

 

 どこか戸惑ったような反応の彼の顔に、少年は見覚えがあった。

 鍛錬に勤しんだ1年だったが、もはやライフワークとも言えるヒーロー研究や分析はもちろん、雄英の体育祭もテレビで観戦したからだ。

 

「幻夢さん……ですよね?」

「え?」

「去年の雄英体育祭をテレビで見ました。そうだ、聞きたいことがあったんです。あの個性についてなんですが、あの個性の……」

「よし、落ち着こうか、みど……少年」

 

 少年の語りをストップさせた彼は、ほんの少しだけ遠い目をした。

 

「見たところ、ヒーロー科の新入生かな?」

「はい、緑谷です……ヒーロー科の新入生に、見えますか?」

「え……ああ、もちろんだよ。何よりも目が違う、雰囲気が違う、オーラのようなものがある!これはヒーローとして重要な要素だと私は考える。いいかい、ヒーローってのは……」

 

「あ、は、はい……(この人、語りだすと本当に止まらないんだ)……」

 

 少年のつぶやきに対して、ツッコミ役はいない。

 

「ふむ、見たところ緊張が半分、不安が半分、そして……小さいが、硬く練りこまれた決意といった感じかな?」

「そ、そんな感じですけど……わかるんですか?」

 

 緑谷少年の言葉に、彼、幻夢は苦笑を浮かべた。

 

「1年前の私と同じさ……私だけじゃない、みんなそうさ。勇気と希望を武器にして、不安や恐れを飲み込んでいく……と、すまない。ヒーローの卵がわかったような口をきいてしまったな」

「い、いえ、ありがとうございます!」

 

 幻夢は、そんな緑谷少年をしばらく見つめた。

 

「ふむ、せっかくの出会いだ……私から君に、入学祝いを贈ろう」

「え?」

 

 

 君が目標とするヒーローは誰だい?

 君はどんなヒーローになりたい?

 守りたい誰かはいるかい?

 大事な笑顔を覚えているかい?

 泣かせたくない人はいるかい?

 ……。

 ……。

 

 夢を、希望を、未来を、ほんの少しだけ、見せてあげるよ。

 さあ、目を閉じて。

 

 

 緑谷少年は、素直に従った。

 

 

 

 そのまぶたに。

 映し出されるもの。

 

 

 

 

 

「あ、あの、今僕が見たのって!?」

「はは、よく『未来のビジョンが見えない』などと言うだろう?なに、今のはただ単に私の個性を使った、幻想さ」

 

 幻夢が語る。

 

「夢と希望の道には、困難や挫折がつきものさ……実力が必要だ、運が必要だ、そして仲間が必要だ。前に向かって歩き続けるためには、立ち上がるためには、そんな、何かが必要なんだと私は思う」

 

 幻夢が、笑う。

 

「ほんの少しだけ……私の見せた幻想が、君の力になれたなら嬉しいな」

「あ、ありがとうございます」

「さて、緊張がほぐれたなら、どうする?君が向かうのは、トイレか?それとも……?」

 

 緑谷少年は、もう一度頭を下げ……自分が向かうべき、1年A組の教室へと向かった。

 

「歩き続けろよ、ヒーロー、の卵!」

「はい!」

 

 

 

 幻夢が見せたもの。

 

 家族が。

 友人が。

 そして、顔もわからなかった……仲間たちと。

 

 笑い合っていた……そんな光景。

 

 

 

 それが、緑谷少年の……力になるかどうかは、まだわからない。

 

 未来は、いつだって未確定の中にある。

 

 それでも、明日に向かって……続いていくのは間違いない。

 

 




原作キャラへの上から目線というわけではないのですが、そう感じられたのならごめんなさい。
こういう雰囲気、好きなんですよ。
先輩から後輩へ……みたいな。

これにて完結でございます。

あとは、おまけを少々。
こっちは明日のいつもの時間に投下予約を入れてます。
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