元ロード・エルメロイII世の事件簿「case.砂中の聖なる杯」 作:赤雑魚っ!
一応ながら私の型月歴は佐々木少年の真月譚月姫、空の境界、ステイナイト、蒼銀のフラグメンツ、プリヤ、ロードエルメロイII世の事件簿、ストレンジフェイク、Zeroのアニメ、そしてFGOです。それらの知識を網羅しているかと言われると不安ですが、それ以上の知識はないです。
なかなかにわかな部類に入ると思いますがよろしくお願いします。
眼前に広がるのはまるで荒波で揺れ動く海の水面の一瞬を切り取ったかのような、それこそ砂の海と言っていいような光景だった。
照りつける日差しは倫敦のそれとは比較にならないが、自分は顔を隠すためにいつもフードをかぶっているし、ここ数年でそれなりに達者になった『強化』を使って強い日差しにも、それが連れてくる熱気にも耐えられる。もちろん多少なら風で舞い上がった砂が目に入っても平気だった。たぶん自分の同行者たち(一人を除いて)もそうだと思う。
ただ鼻を通る砂の匂いはどうにもならない。自分は緑豊かな土地で育ったせいもあり、その匂いだけはこの砂漠を訪れた当初から苦手だった。
「ハァ…ハァ……」
同行者は三人、自分を含めれば四人で行動している。唯一この中で息が乱れ気味な師匠が気になって仕方がない。いつもはスーツを着こなし長身の英国紳士と言った風体の御仁なのだが、『強化』を含め魔術が平凡な彼は用心に用心を重ね極力肌の露出を控えた衣装をしている。ラクダが一歩進むたびに揺れ動く師匠の後ろ姿しか見えない。だが、特徴的な長い黒髪は被り物からはみ出て体とともに揺れ動いているのがわかる。
「し、師匠……」
休憩した方がいいだろうか?しかし、歩くラクダに乗っているだけであるので、ただ歩くよりもずっと疲れないはずなのだ。ここで止まる利点はあまりないような……。
「気にする、ことは…ない、レディ」
「それならいいのですが…こまめに水を飲んでくださいね」
繋げられた4騎のラクダが向かう先は
本人曰く「俺が最も金儲けできる方位を占った」らしい。面識はこれが二度目なのでよく知らない自分が語るのは憚られるが、なんとなく彼らしい気がする。
「おいおい時計塔の
「我が兄なら旅先では基本あんなものだ。気にすることはないさ」
雇用主に途中で死なれては元も子もないフリューガー は後ろを向いて師匠に声をかけた。それに先頭から二番目のライネスが師匠を小馬鹿にするように返答する。返事をする気力も、ライネスの冗談に付き合う元気もない師匠は片手を上げて「問題ない」とジェスチャーする。
しかし、その手の動きも力無くて最後尾を行く自分は不安を覚える。かれこれ二日くらいこの状態が続いているし、もし師匠やライネスの目当てが眉唾物で、自分たちはそれに気づくこともなく彷徨ったあげく、食糧不足でのたれ死んだらどうしようとか、そうなったら真っ先に死んでしまうのが師匠だとか、そんな嫌な想像ばかりが頭を巡り始めている。
「グレイ」
「はい」
師匠が後ろを向いて自分を呼んだ。汗まみれで頰がこけているように見える、今にも死にそうな顔だった。
「そんな不安そうな顔をするな。引き際くらいはわきまえている」
無理やり作られた笑顔。どこか歪んでいて、自分を安心させるために魔術で表情を作っているのだと気づくにはそう時間がかからなかった。度重なる疲労で魔術の精度が落ちているのだろう。師匠は魔術が苦手なのではなく、才能がないだけなので簡易的な魔術ならば普通にこなして見せるだけの力量はあるはずなのだから。
なぜエルメロイII世こと我が師匠がこんな醜態を晒してまで砂漠をさまようことになったのか、それは二週間ほど前に話を戻さなくてはならないだろう。
次回からは長めに書こうかと思っております。