元ロード・エルメロイII世の事件簿「case.砂中の聖なる杯」   作:赤雑魚っ!

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次回作の構想を練っているとどうにもフラットくんがチート過ぎないかと思ってしまって仕方がない今日この頃。…代わりに別の人を持ってこようかなと考えたり、スポーツ系の小説を書こうかなと考えたりなど妄想が膨らみます。マジでどうしよう…

今回は会話が多くて読むのが大変かもしれません。どう改変してもセリフが長くなってしまいました。まじで小説家の皆様を尊敬いたします。

*前回のあとがきでも書きましたが、出来ることなら今回のあとがきには目を通してください。


白い仮面

「───貴様だろう、サーム」

 

 師匠の言葉を聞き、ハサンに集まった視線がサームへと移される。当のサームは落ち着いた態度だ。

 

「……」

 

「否定も肯定もなしか?」

 

 沈黙を続けるサームに師匠が問い詰める。

 

「いや、疑うならばそれ相応の理由があるのだろう?全て話すといい、元ロード・エルメロイII世」

 

 あくまで挑戦的にサームは言う。

 

「そうか。では、先のことを話そう。

 貴様が最初にやっていたのは聖杯の術式の解析だろう。集落で聖杯を使わない。この取り決めに従っていた。そしてある日、貴様の元にも集落を離れようとする者たちから声がかかった。貴様はこれを好機と見、彼らを懐柔した」

 

「私の元に話が来た、か。何故そう思った?」

 

「集落に来た時にミスタ・オルハンは言っていたよ。『一歩間違えばあちらについて行った』とね。だから集落を離反した者たちはミスタ・ハサンを除いてある程度の人間には声をかけていたのは容易に想像できる」

 

 論に根拠があると納得するように、サームは頷く。

 

「だが、オルハンは君たちを殺しにかかったのだろう?その言葉に嘘がある可能性は吟味したか?」

 

「問題ない。我々を襲った彼は()()()()()()()()()()。おそらく殺戮が起こった夜の前日には死んでいる」

 

『───!?』

 

 サームを除いて全員が驚愕した。では、自分と士郎があの日の朝に話したオルハンは一体何者だと言うのだ。

 

「…まずは話を戻そうか。貴様が引き入れた仲間は集落を離れると勢力拡大を図る。そして聖杯の力を使い、彼らは事前に貴様が指示した通りにあの拠点を作り上げ、数日ないし数週間かけて少女の血を多量に摂取した」

 

「一つよろしいかな、ウェイバー殿?」

 

 ここでハサンが師匠の解説に割って入る。口調は丁寧なのに、煮え滾るような怒気が秘められている。

 

「出来事ばかりを並べられても、我が弟が犯人である確たる証拠がなければ納得できる話ではない。そもそもその礼装とやらを一体いつサームは手に入れたのだ?」

 

「彼は毎週金曜日になれば街に出るのだろう?その時に血を受け取ることも、加工した礼装を引き渡すことも十分に可能だ」

 

「……ならば根拠はなんだ?このような吊るし上げをしておいて、荒唐無稽な推理を聞かされては私も我慢はできんぞ?」

 

 明確なる殺意が師匠に向けられている。だが、師匠は身じろぎひとつせずに、ハサンへと返答する。

 

「根拠、ね。…すまないがミスタ・ハサン、魔術に精通する者の犯行において『どうやってやったか(ハウダニット)』も、『だれがやったか(フーダニット)』も論を確立する根拠たり得ない。どんな魔術であれ、使いようによっては同じ手品を可能にしてしまうからだ」

 

「なればこそ───!」

 

「だが、『どうしてやったか(ホワイダニット)』には意味がある。だからまずは私の仮説を聞いてもらえないだろうか?」

 

 ハサンの声を遮って師匠は言う。そしてハサンは、

 

「いいだろう。だがウェイバー・ベルベット、貴様の推理が間違っているようならば、その首は数分後に繋がっていないと思え…!」

 

 丁寧であった口調を崩して威嚇した。

 

「構わんよ。恥ずかしながら魔術刻印を移植するような相手がいない身でね、死後この体がどう扱われようと困ることはないんだ。首を跳ねるだけと言わず好きなように殺すといい。もしもの場合、あなた方にはその権利がある」

 

 思えば二人が話すのは師匠が一方的にキレた時以来だ。終始客人に礼儀を払ってばかりいたハサンにとって今の状況はあまりに不服なものだろう。実の弟が、あの殺戮を引き起こした犯人であると言われているのだから。

 

「では、私がサームを犯人だと断定するに至った鍵、この工房の主──山の翁がなんの研究をしていたのか、中に入って解説しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 師匠に続き、破壊された扉を通過する。その先のものはさっき自分も目撃した。大きな円に、内接した五芒星の接点にはまた小さな円があり、一つを除いて絵が描かれている儀式陣。その図形を描く線は窪みとなっていて、渓流から水が流れ込んでいる。

 

「これが山の翁の研究成果だ。私が持っているのは彼の日記でね、研究資料はアラビア語で、しかも暗号化されていて解読する時間がなかった。日記によると、ここでの研究は暗殺の秘奥××××(ザバーニーヤ)なるモノを手に入れるためのものだったらしい。…儀式陣を見たまえ」

 

 小さな円の中には、裸の男、裸の女、空白、蛇、小さな黒い丸。師匠のスケッチで見た幾本かの波線は裸の女の髪だろう。

 

「裸の男女、数いる動物の中で選ばれた蛇だけでも連想できると思うが、この陣は小さな円に内包された象徴(シンボル)と流水により一つの世界、または物語を作り上げている。ただし、地下にあったのはサームがこれを基にして組み上げた創造陣。こちらは召喚陣だ」

 

 師匠はこの前、自分で否定した論を提示した。ではあの空白も象徴(シンボル)と言うことか?

 

「あぁ、なるほど。創世記ですね」

 

 アレクセイが合点がいったとばかりに呟いた。師匠は彼を向いて頷く。

 

「さすが神父。反応が早いな。彼の言う通り、これは東方のエデンの園を表している」

 

「では、流水はエデンに流れていた大河。空白は……なるほど。教義に則るならばあのお方しかいないでしょうね」

 

「あぁ、空白は君たちが主もしくは神と呼ぶ者。目無くして見、耳無くして聞き、口無くして語る存在。時間と空間に縛られない描くことを禁じられた超常だ。だからこそ、何も描かないことが正解だと山の翁は考えた。おそらく黒い丸は禁断の果実だ」

 

 アレクセイとの礼拝堂での会話を思い出した。崇拝する対象にカタチを与えてはならないならば、たしかに師匠の言う通りだ。

 

「そして、大円に内接するのは蛇の接点が聖地の逆を向く逆五芒星。よくバフォメッドとセットにされることがあるが、逆五芒星は地獄のつながりを表す。陰陽道では五芒星の向きが逆さになるだけで効果が反転することがあるらしい。いわば、聖地が天でその真反対は地獄ということだろう。なんであれ、見るべき方角を定めることは必要だからね。

 ───この中で、地獄に連なる者は一つだけだ」

 

 師匠は聖地とは真反対を向いているという蛇の接点を指差した。

 

「創世記の顛末はこの場にいる方々なら知っているだろう。エデンの園の中央に置かれた二本の樹の果実、神が食べることを禁じたそれの一つ──知恵の樹の果実をアダムのつがい、イヴが口にした。イヴはアダムを言いくるめ、彼にもそれを食べさせる。禁忌を犯した二人を、神はエデンから追放し、園につながる道を智天使ケルビムと回る炎の剣に守らせたという話だ」

 

 一息ついて、師匠はまた話し出す。

 

「イヴが禁断の果実を口にする原因を作ったのがこの蛇だ。アダムとイヴは禁断の果実を食べると死ぬと伝えられていたが、蛇は二本の樹の果実を食べれば神と同じになれるという真実を伝えたそうだ。

 その蛇の正体こそが、広くは悪魔の王サタンと知られ、光より産まれた天使たちの中で、例外的に炎から産まれた天使イブリース。この日記に沿うならば“シャイターン”と呼ぶべきかな」

 

 淡々と話す師匠とは裏腹に、一同に衝撃が走った。だって、それでは山の翁が呼び出した者は………。

 

「曰く、神はアダムを自身の代理者として地上に置こうと考えたが、天使たちはそれに反対したという。天使たちの反応を見た神はアダムに天使たちが知らない知識を与え、彼らに問答を投げかけた。神より賜った知識しか知らない天使たちは答えられないが、アダムはそれに答えられた。そして神は天使たちにアダムに(こうべ)を垂れさせた」

 

 師匠は蛇の円を示していた指を元に戻す。

 

「だが、イブリースは『炎より創られた自分が、泥から創られた者に劣るはずがない』とそれを断り、天界から堕とされた。彼は最後の審判の後、地獄の業火に焼かれるまで猶予をもらい、それまで人間たちを惑わすと誓ったそうだ。そして蛇に化けてイヴを誑かし、原初(さいしょ)の復讐を遂げた。

 これらの点を踏まえれば、我々を『泥人形』と言い見下して嘲笑い、『原初(さいしょ)の復讐者』と名乗っていたのも頷ける」

 

「悪魔の王を呼び出すってのはどれくらいの魔力が必要なんだ?」

 

 話に一区切りついたところを見計らってか、士郎が質問する。

 

「私や君、遠坂凛が参加した聖杯戦争でサーヴァントを呼び出すよりもずっと楽だろう。悪魔は現存するからね。ただ、悪魔の王と呼ばれる存在に見合う器はおそらく見つけるのも一苦労だろう。アレは聖杯からの魔力供給によって実体を保っているはずだ。

 今回ライネスの魔眼が反応したのは召喚の際に、流水に溶け込んだ術式残留物だ。ここは水を溜めないように渓流へと水を返しているからね。ちなみにもうわかっていると思うが、麓の結界が反応しなかったのは内側で召喚されたからだ」

 

 一つ一つ疑問を解消した師匠はここで話題を変える。

 

「では私が先ほど言ったオルハンであって、オルハンではなかった人物についてだ。これは想定だが、本物のオルハンはサームが自棄を起こさないように見張っていた。そして深夜に抜け出しシャイターンを召喚しに行ったサームの後をつけ、その瞬間を目撃しシャイターンに喰われた。オルハンの不在を埋めるため、シャイターンは彼に化ける」

 

「おいおい兄上、らしくないなぁ。カタチばかりを似せたところで君の内弟子の知覚を誤魔化しきれんだろう?」

 

 わざとらしい口調のライネスは師匠を冷やかしているようだ。その実、師匠ならば何かしら結論づけているのだと確信しているのだと思う。

 

「誤魔化す術はある。それのヒントはこの日記に書かれてた」

 

 師匠は日記を開き、それをめくると目的のページを開いて静止する。

 

「山の翁はザバーニーヤを得るために、自己に非自己を取り込む為の技術(スキル)──“自己改造”を身に付けた。取り込むモノによってはソレの在り方に体が引かれることもあったそうだ。

 もしも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?シャイターンが元から持つ能力と相乗して、自分をも騙すほど精巧に取り込んだ者に化けられるんじゃないか?彼は光ではなく、ジンたちと同じく炎から創られ、悪性のジンたちの長なのだから」

 

 煙のように霧散して、カタチを変えて再構成する。先ほど戦ったジンたちもそうしていたし、シャイターンも戦闘中に煙になっては実体化を繰り返していた。もしも翁の能力と相乗するならば、或いは自分の知覚を持ってしても見抜けないかもしれない。

 

「生命を構成する三大要素──肉体、精神、魂に至るまで精巧にオルハンに化けた後は自分の行動にズレが生じていても、自分がオルハンであると疑うことなく行動していたはずだ。でなければわざわざ部屋に張った結界に籠る私とフリューを外に出すこともせずに奴は我々を殺せただろう。不可解な身体能力上昇も、彼がシャイターンであったことを踏まえれば当然だと言える。

 そして、私の魔術に焼かれ、オルハンの体が崩れていくと自分がシャイターンであることを思い出し、炎の煙に紛れて私の前に姿を晒した。だからオルハンの死体がどこにもなかった」

 

 ならば、彼の指先が自分の手に触れた瞬間に感じた悪寒も所々で表層化していたシャイターンの側面であったというとになる。それでも彼を疑わなかったのはシャイターンが一枚上手だったということだろう。

 師匠の説明が続く中、士郎が申し訳なさそうに手を挙げ、また質問した。

 

「悪い。話が戻ってしまいそうなんだが、配下の擬似精霊もまともに扱えないのになんでシャイターンなんて呼び出したんだ?流石に危険な気がするんだが…」

 

 この質問は根本的ではあるが、師匠の論の前提を確立するには必要なことだろう。だが、それも師匠には思い至る節があるらしい。表情には余裕が見られる。

 

「いい質問だよ、衛宮士郎。それこそ今から話そうとしていた彼らの目的につながり、さらにはサームのホワイダニットにもつながる」

 

 師匠はサームを睨みつけ、こう続けた。

 

「───“九十九の美名”だろう?」

 

 その単語を聞いた瞬間、沈黙を保っていたサームが笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 師匠がその単語を口にした途端に、拍手の音が鳴り響いた。わらいながら、サームが手を叩いているのだ。

 

「流石にそこまで考え至っているならば、これ以上の沈黙は嘘になるな。それは私が崇拝するあの子に対する冒涜だ」

 

「やはり、君の中ではもう彼女こそが信仰の対象なのか」

 

 サームが犯人であると自供し始めた途端に、空気が張り詰める。

 刹那、サームが赤い液体が入った試験管を取り出し、中の液体をばら撒いた。すると、彼は光の粒子となり、離れた場所に自分たちと対面する形で現れる。ハサンはそんな彼を見て言葉を失っている様子だ。

 

「工房と渓流でもその礼装を使ったな。少女を見つけるとすぐに走り出し、我々と距離をとった貴様は、ミスタ・ハサンたちを呼び、彼らが魔術礼装の効果範囲に入った瞬間に少女を転移させた。その後で隠し持ったストックで二人を自然な形で助ける算段だったが、月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)が来たから使用は控えた。

 渓流では衛宮士郎の宝具投影と不意打ちに面喰らったシャイターンを斬りつけるふりをして、短刀にでも仕組んでいたそれを発動させたな」

 

「魔術基盤一つで軽蔑の目を向けてくる時計塔のお堅い連中にも、貴様のような者もいるのか…。一体いつ気がついた?」

 

「この工房を、正しくはこの召喚陣を見た時だよ。復讐者(アヴェンジャー)がジンであることは煙のような姿になるから想像できていた。それでいてこれを見せられればシャイターンであることは明白だ。ならばなぜシャイターンが敵の魔術使いに手を貸すのか?それを逆算していけば答えは出る」

 

 サームは「なるほど」と言いながら、メガネのブリッジに触れる。

 

「わざわざ俺たちまで呼びつけたんだ。二人で話を進めてないで教えてくれ」

 

 まさしく自分たち全員の気持ちを士郎が代弁してくれる。師匠は、一度からの方を向く。

 

「そうだったな。時に衛宮士郎、君は聖杯の条件とはなんだと思う?」

 

「ん?なんだよ唐突に……そりゃあ……ほら、願いを、叶える杯?」

 

 たどたどしい口調で士郎が答えてみたが、師匠は呆れ顔だった。

 

「赤点だ。論外だ。魔術師の答えじゃない。君は時計塔で何を学んだ?…いや、もういい。……では、遠坂凛。君はどう思う」

 

 貶しにけなして、「なんでさ…」と呟く士郎を無視し、代わりに凛を指名する。

 

「大まかに言えば、願いを叶えるための術式という器に、無色かつ膨大な魔力が注ぎ込まれたモノ、かしら?」

 

「私もそう思う。たしか君の報告では冬木の聖杯はなんらかの要因で汚染されているらしいな」

 

「えぇ、それがどうかしたの?」

 

「今回サームが行ったのはそれに近しいことだ。もっとも、汚染などではなく、もっと神聖なものだがね」

 

 師匠はサームを指差して、話を続ける。

 

「そこの男はね、彼らの神を讃える九十九の美しい名前──『神』を表す美名から、『永久』を表す美名に終わるモノを聖杯の術式に組み込むことで、『力の器』を形成しようとしているんだ」

 

『──────!?』

 

「少女が言っていただろう?『いろんな名前で呼ばれた』と。だが、命名というのはありふれていふようで特別な儀式でもある。何かしらの周期性や儀式性がなければ陳腐なものになってしまう。だから、礼拝堂を模した建物を作り上げた」

 

「…あれが礼拝堂を模していると知っていたんですか?」

 

 自分が質問してみると、当たり前のように師匠は頷いた。

 

「君と同じくらいの頃に私は旅をしていた。その時に覗いたことがあるくらいだ」

 

 そういえば第四次聖杯戦争が終わった後に、征服王の旅路を巡礼していたと言っていた気がする。

 

「…話を戻そう。君たちが神に捧げる毎日の祈り、その中でも金曜日の礼拝は最低でも一回は礼拝堂を訪れることが推奨されていると聞く。サームの仲間たちは日々の祈りを彼女に捧げ、金曜日には祈りとともに名前を与えた。聖杯の魔力を使い、聖杯の術式に美名という力の器を組み込むように願望を口にしていたんだ」

 

 以前師匠は、現代の魔術師とは天使を蒐集する職業である──つまりは天使の名前に宿る神秘を利用する職業であると言っていた。まさしくこれは、神の名前に宿る神秘を使い、彼女を神に仕立て上げるための儀式ということになる。あまりに冒涜的な行いだ。

 

「だからシャイターンはあいつに協力したってわけ?神の威厳を貶めるために」

 

 凛の言葉に、師匠は頷く。

 

「すでに聖杯の術式はあの少女を神にするために特化したものに変わっているだろう。だから計画を始める前に時間をかけて血を抜き取り、礼装を作った。一日礼拝は五回ならば、最短で二十週間で完遂するはずの計画にタイムラグが生じているのはこのためだ。だが、その判断は正しい。『根源』に興味がなかろうと、奴がやろうとしていることは抑止力による妨害を招く。対抗策の一つでも考えておくのがセオリーだろう。実際に聖杯の噂が漏れたという例もあるしな。まぁ、それで集まってきた有象無象は全てイフリートの器と、門番の悪霊にされたようだがね」

 

 話しながらサームを見て、師匠は鼻で笑った。

 

「皮肉なものだ。神をも恐れぬ貴様が、人間の集団無意識を恐れるなんてな。いや、仕方のないことではあるんだ。君のホワイダニットを考えれば、見えない存在よりも見える存在の方が怖かろう。……そろそろ自分で話す頃合いだと思うが、まだ私に喋らせるか?それとも…」

 

「───二年前だ」

 

 師匠の言葉を遮り、サームが言った。

 

「その様子ならば兄者から聞いているだろ。二年前、あの子が三歳の時に私は死の淵にいた。神には何度も救済を求めたが、一向に振り向いてはもらえなかった」

 

 その表情には当時の苦悩が見て取れる。本当に死ぬ間際だったのだろう。

 

「頰はこけ、体全身が骨と皮だけに見えるほどに痩せ、動くこともままならない。だが、そこで死ぬならば、別にいいと思っていた。祈りを忘れなかった私は来世できっと天へ行けると」

 

「……だが貴様は」

 

「……あぁ、私はあの子の権能のごとき力によって救済された。その瞬間だよ、私の信仰が一変したのは───!」

 

 途端に高揚を見せるサーム。そこに狂信的な何かを見たのは自分だけだろうか?

 

「見えないはずの存在を──神をあの子の中に見出した。それが私の源泉だ。だが、彼女の力はあまりに受動的すぎる。だから思いのままに権能を振るえるようにするのは信者として当然のことだろう?」

 

「サーム、狂信的でありながら、ここまで冷静に計画を練ったんだ。理解しているだろう?それでは君の目的に届かない。神の美名は神の様々な性質を表すが、その実九十九以上あると言われている。それら全てを網羅し、彼女に与えることができても、神、すなわち全能とはいずれ言葉では言い表せない領域に達してしまう。

 二種の禁断の果実を食べる以外に他に手段があるとすれば………それはあまりに残酷な方法だ」

 

「舐めるなよ、ロード・エルメロイII世。私はその残酷な方法をとると言っているんだ。何のためにシャイターンを呼び、何ために多くを殺してきたと思う?私にその覚悟がないとでも?」

 

 ここで、言葉を失っていたハサンが二人の会話に口を挟む。

 

「…何をするつもりだ、サーム?」

 

「簡単な話だ。あなたの弟は少女への信仰が芽吹くまで、異教の人間を殺し続けるつもりなんだ。畏怖からも信仰は生まれるからね。強大な力を持つならば、それが一番手っ取り早い。そうすることで彼女は新たな神となる」

 

「それではまるで邪神ではないかッ!神の威厳を揺るがし、そんなものにあの子を仕立て上げるつもりか!?そんなことのために……オルハンや、集落の者たちを───!」

 

「違うよ兄者。さっきそこの男が説明した通り、オルハンの件は不慮の事故だった。ここに人避けと警備をつけるのがもう少し早ければ、あいつも死ぬことはなかっただろうな。

 集落は……私が開祖となる教えの中でまた新たに作り、その力をあの子のために使うといい。私は見えないものを信仰しなくなっただけで、山の翁は未だ信仰しているよ。だからシャイターンには兄者に声を聞かせぬよう配慮を求めた」

 

 だからハサンはシャイターンの声を聞かなかった。これで最後の謎が解けた。

 

「そうだな。貴様は確かに目に見えるものならば崇拝するし、()()()()()。だからグレイの最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)の光を見、彼女こそが次なる抑止力であると考え、シャイターン召喚という強攻策に出た」

 

「………」

 

 二人が話す中、ハサンは全身に力を込めて、沈黙する。形容し難い感情と怒りが渦を巻いて、なんとか言葉を吐き出そうとしている様子だ。

 

「痴れ者め。貴様の行いは棄教に当たると言うことはわかっていような…?」

 

 吐き出された言葉が内包するのは怒りと侮蔑だ。そんなハサンとは裏腹に、サームは微かな高揚を見せつつも落ち着いている。

 

「何故わかってくれない?私はあの子が神になる世界が平和であって欲しいだけだ。兄者とて知っているだろう?一見平穏に見えるが、外界に触れれば紛争が起きている。我々は紛争の要人を殺し、また新たな頭が選出されれば、殺しを繰り返してきた。あまりにも歪んでいて醜い世界だ───」

 

 まるでカルト教団の演説でも聞いている気分だ。だが、引き込む力があるからこそ、サームは集団のリーダーとして計画を進めてきた。

 

「だから世界を作り直そう。個人の思想から、人の数に至る全てを!そう思って何が悪い!?たとえ億単位で殺そうが人類は滅びないだろう!?」

 

 サームの声が空気を震わせると同時に、自分の中で胸騒ぎが起こり始めた。

 

「世界の皆が一つの見える神を、信ずる者全てを救う神を崇める平和こそが、私があの子に捧げる御礼だ!」

 

 サームの言葉が鼓膜を打つ中、自分は天井に視線が移る。

 

「似た存在が増えただけで揺らぐ威厳?信者に手を差し伸べることのない主だと?そんなもの───」

 

(何か……来る!)

 

 

「───我らが神に呑まれてしまえ」

 

 

 刹那、天井が溶解し、閃光と灼熱の塊が降ってきた!

 イフリートの群れが侵入してきたのだ。

 

「翁の工房を荒らすような真似は避けたかったが、致し方あるまい。我らが神に拝すると言うならば貴様らの命は助けてやらんこともないが、どうする?」

 

 自分たちとサームの間の空間に、目算するのが馬鹿馬鹿しくなるくらいの数のイフリート。宝具の開帳などさせまいと、彼らの手のひらには灼熱の炎が凝縮しつつある。

 

「沈黙は否定と受け取ろう。…焼き払え───!」

 

 サームの指示により、イフリートたちが一斉に光線を放った!

 橙色の光の筋がいくつも重なり、自分たちへと迫り来る。

 誰もが打開策を打とうと思考を巡らせている刹那に自分たちの先頭に躍り出る影が一つ。

 

「“熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”────!」

 

 衛宮士郎だ。彼がその言葉を紡いだ瞬間、地下で見た七枚の花弁が開花した。

 花弁と熱線が衝突する。しかし、花弁に隔てられた自分たちには熱風一つ届いていない。これもまた彼の投影宝具なのだろう。

 さらに士郎は花弁の盾を展開したまま、新たな詠唱を紡ぎ出した。

 

 

「────I am the bone of my sword(体は剣で出来ている).

 

 

 これまでに何度か耳にした呪文。だが、今回の異様さはどこか違った。

 

 

「────Steel is my body(血潮は鉄で), and fire is my blood(心は硝子).

 

 

 まるで世界が悲鳴を上げているように────

 

 

「────I have created over a thousand blades(幾たびの戦場を越えて不敗).

 

 

 侵食されるように────

 

 

「────Unaware of loss(ただ一度の敗走もなく). Nor aware of gain(ただ一度の勝利もなし).

 

 

 ────空間が震撼する。

 

 

「─────With stood pain to create weapons(担い手はここに独り),

waiting for one's arrival(剣の丘で鉄を打つ).

 

 

 足元で、世界を隔絶するかの如く炎が走る。

 

「────I have no regrets.This is the only path(ならば、我が生涯に意味は不要ず).

 

 隔絶された世界に、彼の魔力が満ちていく。電撃と見紛うエフェクトを撒き散らし、自分の色に染め上げていく。

 

 

「───My whole life was“unlimited blade works”(この体は、無限の剣で出来ていた).

 

 

 

 ───途端、目の前の風景が一変した。

 

 

 無数の剣が突き刺さった広大な丘。壮大で殺風景なそこは衛宮士郎の世界だろう。

 世界を自分の心象で塗り潰す魔術の最奥。

 師匠曰く、至った魔術師は軒並み封印指定確実とされる禁忌。

 魔術師たちが魔法に近いと位置付ける固有結界と呼ばれるモノだ。

 士郎は自分たちとサーム率いるイフリートの群れのちょうど中間辺りに佇んでいる。

 

「固有結界か……面白い芸当を持っているな」

 

 イフリートの群れの奥で、サームが言う。

 

「君には魔術への興味はなさそうだが、一点特化の魔術師として大成できる才能だ」

 

「やめてくれ。褒められたってあんたを逃す気にはなれないよ」

 

 士郎は両手に陰陽の夫婦剣を投影する。

 

「助けてくれた人に特別な感情を持って、それが生き方を変えるなんてよくあることだ。俺はあんたがあの子に肩入れすることには大して思うところはないよ。……ただ、その先のことについては看過できない」

 

「そうか?あの夜に君は言っていたじゃないか。『世界の誰にも涙して欲しくない』と。私の目的が達成されれば、君のあの言葉も叶うだろう」

 

「その過程であんたは何人殺すんだ?一体それでどれくらいの人が泣くと思う?」

 

「………」

 

 士郎の言葉を聞き、サームは驚いたように目を見開いた。

 

「なるほど。思った以上に病んでいるようだ。てっきり君は急を要する時にはリアリストなのだと思っていたんだが………そうか、本当に何も失わずに平和を実現しようとしているのか。とんだ夢想家だな」

 

 その言葉には確かな憐れみの念があった。士郎の言っていることが、あまりにも子どもじみていたからかもしれない。

 

「悪い事は言わない。その理想は捨てておいたほうがいい。その先にあるのは君にとって地獄でしかない」

 

「────見誤るなよ、地獄なら既に見た」

 

 

 刹那、周囲の剣が浮かび上がる。

 

 

「だから俺は理想に準じるって決めたんだ」

 

 

 その言葉の直後、無数の剣が走り出す。赤熱したイフリートにその切っ先を向けている。

 

「見誤っているのは君だよ衛宮士郎。イフリートに刀剣は通らない」

 

『■■■■■■■───!!!』

 

 イフリートたちが雄叫びを上げ、士郎へと踏み出した。このまま剣と魔物が衝突すれば溶解される。自分がそう思った時、宙を走る剣の群れが幻想色の爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■───!!!』

 

 魔物たちが雄叫びを上げる。太い脚をバネに、強靭な脚力で衛宮士郎に接近する───筈だった。

 複数本の剣が降りかかった瞬間、それが幻想的な色の爆発を引き起こし、イフリートの体を四散させる!

 壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)──本来の持ち主である英霊が行えば、自身の象徴を失う自爆に等しい一撃。これぞ量産可能な投影宝具の強み。内包された幻想を起爆剤に引き起こされる強大な爆発だ。

 次々とその爆撃を受け、サームの使い魔たちが一瞬で壊滅する。

 

「サアァァァァム!!!」

 

 幻想色の爆風を追い風に、跳躍した衛宮士郎が上空から斬撃を仕掛ける。だが、サームは悠然と衛宮士郎を見上げている。

 刹那、二人の間の空間に紅蓮の炎が溢れ出した!

 そこから衛宮士郎の心象世界がひび割れ、漆黒の布に包まれた人型のバケモノが現れる。

 

「…大源(マナ)の震えを感じて来てみれば、また会ったな」

 

 その剛力の左腕が、士郎が払おうとしていた莫耶を砕く!

 さらに干将を振るえば、高速の右腕が刃物を使い、斬撃を受け止めた。

 刃と刃を押し合い、鍔迫り合いに持って行く。

 

「どうやって人の心象世界に入り込んだんだ…?」

 

 鍔迫り合いの最中、士郎は問う。

 

「貴様らが固有結界と呼ぶそれは、真性悪魔(我ら)が生来持ち得る奥義だぞ?猿真似で作り上げられた世界に干渉するなど造作もないわ」

 

 その答えを聞いた途端、士郎は体を沈ませる。直後に、士郎の体をブラインドに二本の剣がシャイターンに刺さらんと飛んで来た。

 シャイターンがそれらを躱し切ると、砕かれた莫耶を投影し、士郎の斬撃が下から上へと昇っていく。後ろへと避けたシャイターンだが、頭を覆っていた黒い布に斬撃が入った。

 

 

 ────その布がめくれ上がる。

 

 

『──────!?』

 

 刹那、元エルメロイII世とサームを除いた全員がシャイターンの素顔に驚愕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 素顔を見た士郎の僅かな動揺の隙をついて、シャイターンは左腕を振るった。その拳を防ごうと、双剣を前に突き出したが難なく砕かれ、士郎は自分の心象世界を舞った。

 

「士郎───!」

 

 凛が前に出て、『強化』された体で士郎を受け止めるが、勢いを殺しきれずに体勢を崩した。すかさずアレクセイが助けに入り、二人ともことなきを得る。

 

「あぁ、なるほど。確かに恐ろしい奴ではあったが、悪魔の王様って言う割には迫力不足だと思っていたんだ」

 

 凛と共に立ち上がった士郎が、シャイターンの顔を見ながらそう言った。

 

「師匠…これは一体?」

 

 自分はシャイターンの()()()()()を見ながら、隣の師匠に聞いてみる。

 

「簡単な話だよ。さっき話題に出した自己改造の技術(スキル)だ。あれは取り込んだモノの在り方に引かれることもあると言っただろう?シャイターンがあの右腕を受け入れる条件は、山の翁の体を出来得る限り模倣することだった。……そのせいで実力もいくらか翁に引っ張られているんだろう」

 

(…何故そうまでして翁の右腕を受け入れているのだろう?)

 

 人を見下しているはずのシャイターンが、どうしてそこまで…。

 

「左腕の傷はもういいのか?」

 

「無論、山頂にほど近い場所から魔力を吸い上げていたからな」

 

 シャイターンはサームの質問に、大きな左手を広げて、また握る。サームは自分たちを一瞥する。いや、その目は明らかにハサンへ向いている。

 途端、サームが試験管を取り出し魔術礼装をばら撒いた。

 赤い液体は自然法則を無視して、サームの前で円を描く。サームが右腕をそれに突っ込むと、ハサンの顔の前に彼の右腕が現れ、髑髏面を鷲掴みにする。

 

「…私を否定するならばそれでいい。兄者に次いで、私が翁の仮面をいただこう」

 

 半ば引き剥がすように、ハサンの髑髏面が奪われる。そして、サームは奪った髑髏面を被り、こう言った。

 

「───我は“予言のハサン”。いずれ生誕せし神の声を聞く者。神の啓示を受け取る者」

 

 さらに魔術礼装を展開し、今度は空中に大きな楕円を縁取った。

 

「私はただ次の金曜日──九十九の名前があの子に集約する日を待つだけだ。それまであの礼拝堂で貴様らを待つ。元より貴様ら程度、跳ね除けられなければ我らに先はない」

 

 高らかに宣言すると、サームはシャイターンとともに楕円のゲートを通っていく。

 無策に止めるべきではないと、その場の全員が理解していた。いずれにしても、全開のシャイターン相手に互角に振る舞える者などいないからだ。

 敵が消えたからか、士郎が固有結界を消滅させると、天井から夕陽が差し込む魔術工房へと景色が戻った。

 

「どうする兄上?さしずめシャイターンが来る前にサームを袋叩きにする予定だったのだろう?」

 

「まぁ、現実的な手段だからな」

 

(素直に認めた……)

 

 自分が師匠に呆れていると、仮面を奪われたハサンが口を開く。

 

「…ウェイバー殿、先ほどの非礼を詫びよう」

 

「問題ないさ。身内が疑われているならば当然の反応だ」

 

 頭を下げるハサンに師匠はそう言う。それを聞くと、ハサンは頭を上げる。

 

「あなたの推理を聞いた限り、もうあなた方が望んだモノは存在しないのでしょう?」

 

「あぁ、そう言うことになる。…だが、あなたの弟がやろうとしていることを知っておきながら放置というのも体裁が悪いし、後味も悪い」

 

「…それを聞いて安心いたしました」

 

 フリューガーに負けないくらいの髭面が微笑んだ。

 

「私に考えがございます。金曜日まで日がありませんが、私が二日経っても戻らぬ場合は後のことをお任せしてもいいでしょうか?」

 

 今日は火曜日、しかも夕方だ。二日経てばすでに木曜日。ギリギリのラインだが、闘いが相当長引いてもそう時間はかからない。

 

「何か対抗策が?」

 

「はい、もしかしたら我らに加勢して下さるお方が一人。しかし、会いに行って私が殺される可能性が大きいお方でもある」

 

「そのお方とは?」

 

「私も詳しくは聞いていませんが、助力を得られればシャイターンとも互角に振る舞えるであろうお方です」

 

 その目に嘘はないように思えた。師匠も同じことを考えたのだろう。彼の言葉に頷いた。

 

「…わかった。では、我々は二日間で、いざという時の対抗策を練るとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハサンが車で消えてから二日が経とうとしている夜。移動時間を考えればあと数時間後には集落をたたなければならない。

 集落の外で警備の目を光らせているが、敵からしてみれば仕掛けるよりも籠城を選んだ方がいいのは明白だ。しかし、シャイターンの趣味趣向であの虐殺が引き起こされたならばと思うと、念には念をと言うやつだ。

 自分がこうしている間、もしも助力が得られなかった場合に備えて、師匠たちは対シャイターン用の作戦を部屋の中で立てている。

 

「…静かですね」

 

 後ろから落ち着きのある声がした。振り向いてみると、アレクセイが佇んでいる。

 

「警備を交代しますよ。さすがに長時間ここにいるのは辛いでしょう?」

 

 ありがたい提案だが、自分はかぶりを振った。なんとなく寝付けない気がするのだ。自分の反応を見て、「そうですか」とアレクセイは言う。

 

「ハサンさん……遅いですね」

 

 まさかあの雰囲気で逃げ出したと言うことはないだろう。もしかして、会いに行った人物に殺されたと言うことだろうか?

 

「ハサン殿は責任感の強いお方です。……きっとご自身の弟を止めるために出来うる限りの手を尽くそうとなさるでしょう。それ故に可哀想なお方だ。あれほど親愛に満ちているのに裏切られた。…サームさんが、少女の力こそ我らが主がもたらして下さった救済であると気づけたならば、こんなことにはならなかったでしょう」

 

 その声は怒りはなく、ただ慈愛に満ちている。これほど他人を思う人間も珍しい。

 

 

【左様。異教の司祭でありながら敬虔な男だな】

 

 

「「───!?」」

 

 これは声なのか?頭に直接響くようなそれの出所の方へ顔を向けた。

 

「青い……炎?」

 

 夕闇に浮かぶ冷たい印象を受ける青く揺らぐモノがあった。途端、その中から一つの影が放り出された!

 

「!ハサン殿!」

 

 自分とアレクセイが投げ出されたハサンに駆け寄る。そして、アレクセイが青い炎を睨みつけた。

 

「…何者ですか?」

 

【我に名はない。好きに呼ぶがいい】

 

 声が聞こえたのか、中にいた師匠たちが集まってくる。

 

【事情は知っている。我が助力が欲しくば試練を受けよ】

 

 ……この炎の先には何がいるのだろう?シャイターンと同等か、それ以上の何かを感じて震えが止まらない。

 

【誰でも良いぞ?異常者か、魔術師か、異教の司祭か、それとも墓守か?はたまたその全員か?試練を受けようと言う者はこの炎を通り、アラムートの麓に出るがいい!

 ───我はその山頂、アズライールの聖廟にて貴様らを待つ!!】

 

 

 

 

 

 




見ての通り神を取り扱わせていただいておりますのでこの小説を書き始めるにあたり気をつけたことを上げておきます。

・今後の展開で神そのものを扱わない。
・神を貶めるような展開はない。
・味方サイドは冒涜的な敵を否定する立場にあること。
・政治的な宗教問題には絶対に触れないこと。←伊藤計劃さんも言っていました。
・現地語で「神は偉大なり」と言わないこと。←レアルタでは改変されてましたね。
・敵は棄教者であること。

ネットを漁っても偏見混じりの意見ばかりで明確な基準が定まらなかったのですが、以上の点に注意して書いております。
もしも「ここはこう言う風にしたほうがいいんじゃないか?」と言う場合は助言していただけたらと思います。また、「お前はもう詰んでいる」といった場合は感想欄や私に言わずに運営様に直接報告してください。私は専門家ではないので議論ができません。もしも運営様の方から諫言があった場合は大人しく従う所存です。


以下は今回の解説です。

・イスラムにおいてイブリース=イフリートという説もあるようですが、私が読んだ岩波文庫の日本語訳コーランはイブリースを途中から『シャイターン(サタン)』と表記していますので、こちらを採用。
・シャイターンは悪魔の総称でもあるので、狂信者ちゃんは似たような能力を持つ悪魔から左腕をかっさらったことにしております。
・呪腕さんがどうやって右腕を貰ったのかという詳しい経緯を私は知らないので独自設定が多いです。
・自己改造スキルはステイナイトのHFルートで兄貴の心臓だか霊核だかを食べて性格が兄貴に似ていたと言うところを参考にしております。

なにぶん独自設定が多いですが、よろしくお願いします。
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