心の潤いを求めて   作:黒色エンピツ

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今回は視点が安定していませんので、ご了承下さい。

次回からは直します。


第1話

誰かの人生には潤いがある。家族、友達、すぐそばを通った他人。それぞれに何か人生の水のようなものがある。

 

「なーんか、面白い事ないかなぁ。」

 

彩上 陣にはその水がない。特に夢も好きな人も、昔はあったのだろうそれが思い出せない。大学生になって現実的になったが非現実的、鮮烈な事が起こらないかを待っている。

 

「またスマホで二次小説でも読むか……。

ん、LINEか。」

 

『おい、陣!なんか面白そうなもんがあるぞ!』

 

「URL……開いてみるか。」

 

URLを開いた先には印の付けられた近所の地図とその場所での噂だった。

曰く、その場所で子供に会うと異世界に飛ばされるらしい。

 

「うへぇ、嘘くさいな……。」

 

覚えてる限りここはただの薄暗い道路でそもそも子供も近寄らないような場所だ。

…………でも、もし本当だったら?

 

「……どうせ暇だし、行ってみるか。」

 

はずれだったらはずれでいいし。

 

 

 

 

「ここのはず……。」

 

地図の場所に到着はしたが、前見た時と同じで何も無い。普通の道路だ。

 

「まあ、少しは期待してたけどさ……。ここまで何も無いと腹立つな。」

 

「お兄さん、どうしたの?」

 

「お兄さん、誰か探してるの?」

 

「うおっ!?……なんだ、子供か。子供!?」

 

「子供なんてどこにでもいるでしょ?」

 

「変なお兄さん。」

 

陣の発言を聞いてクスクスと笑う少女達。

 

「この子達が噂の……?いや、そんな訳ないだろ……。」

 

「噂って何かしら?」

 

「気になるわ!気になるわ!」

 

「「ねー!」」

 

「調子狂うな……。

まあ、いいや。この道で子供に会うと異世界に飛ばされるってウワサでね。」

 

「私達の事かなー?」

 

「私達の事だわ!」

 

「いやいや、そんな簡単に姿を見せる訳ないだろ。」

 

「本当よ?」

 

「飛ばした人が何をするのかが楽しいのよ!」

 

「でもね、今は飛ばした人がもう居ないの。」

 

「見れないのはつまらないわ。」

 

「だから」

 

「次は」

 

「「あなたにしましょう!」」

 

少女達がそう言った瞬間陣の足元が輝き、その場から消えた。

 

 

 

 

「おい、ジン!聞いてんのか!」

 

「えっ……?あ、ああ、聞いてたぞ。ゼル。」

 

「それならよし!」

 

「じゃあ、俺はちょっと用事があるから。」

 

陣はその場から急いで離れた。

 

「いってぇ……。」

 

一気に流れ込んで来たのはこの世界での陣の記憶……だと思われるもの。

 

「FF8の世界……。」

 

異世界に来た事を確認できた所で自分に何が出来るかを確認する。

 

「ここはバラムガーデン。で、装備が片手剣に銃?……随分と馴染む、ここの俺が昔から使ってたのか。」

 

剣は片刃の良く見る感じの片手剣。銃は何故かリボルバー。

それと確か設定だとG.F.は記憶持ってかれるんだよな……。俺も着けてるみたいだ。外して……アイテムと魔法もドローも使えなくなったな。

 

「アイテムくらい普通に使えるだろ?」

 

試しにポーションを使ってみた。

 

「……問題無く使えるな。」

 

G.F.が異次元空間みたいなもんでも使ってるからか?

 

「ドローは使いたい。でもG.F.がなぁ。どうにかならないか?」

 

陣は考えても仕方ないと思い訓練室に向かう。

 

「ケダチクで特訓だな。

ふぅ、ドロー!」

 

ケダチクが突っ込んできた。

 

「あぶねっ!?っと、意外と動けるんだな。」

 

まあ、世界も違うからそうか。

 

「ドロー!ドロー!ドロー!」

 

これから3ヶ月程ドローを続けてなんとか習得出来たが訓練室にドローの怪物が出ると噂になったそうな。

 

 

 

 

陣はドローが出来るようになった。

 

「まあ、相手に触ってないと出来ないんだけどな……。

ストックも出来るし、G.F.無いんだからこんなもんだろ。」

 

魔法と言えばあれをやってみたいよな。

 

「エンチャント・サンダー!」

 

最初から持っていた剣に手を当ててサンダーを使う。

 

「あばばばばばばばば!?」

 

剣は鉄なんだから電気が通るのは当たり前だった……。

 

「けふっ……け、ケアル。」

 

とりあえず回復だ。

 

「持ち手を何とかしないとなぁ。なんか巻くか?ゴム?いや……魔法の制御だな。」

 

作品は違うがドラゴンクエストではギガスラッシュ、またはギガブレイクと言う技がある。

 

あれはライデインかギガデインを剣に落として相手を斬っている。あれも電撃呪文を応用した攻撃な為、自分に感電するはずだ。

 

「エンチャント・サンダー!…………ぷへぇ……。」

 

め、めげないぞ。

 

「サンダー!サンダー!サンダー!サンダー!サンダー!サンダー!」

 

今度はサンダーの怪物が出ると噂が流れた。

 

 

 

 

なんだかんだで時間が過ぎて本編SEED試験。

主人公組とは別グループになってしまった。

 

「よし、やるぞぉ!」

 

「頑張らなきゃ!」

 

「緊張するな……。」

 

「大丈夫、大丈夫。」

 

周りは緊張してたり、気合入れてたりしてるみたいだ。

 

 

ガタンッ!

 

 

「到着か。」

 

うちの班長は……名前覚えてないや。

 

「皆、頑張ろう!」

 

「おう!」

 

「「ええ!」」

 

「ん。」

 

「……なんだ?随分静かじゃないか、やる気あるのか?」

 

「静かだとやる気がないのか?そもそもやる気が無いと受けないだろ。正直試験なんてダルいもん好き好んでやるか。」

 

「何……?ダルいだと!これは我々候補生の正義の第一歩だぞ!?」

 

「知るか、こっちにだって事情があるんだ。」

 

試験受けてないと他で何が起こるか分かんないし。

 

「そういえば君、G.F.を装着してないって噂になってるらしいね。」

 

「それがどうした?」

 

「いいや?脱落者が一人出来たと思っただけさ。」

 

「落ちるかは分からないだろ。」

 

「G.F.を着けてない人間の能力なんて分かりきってるからね。」

 

「ああ、そう。まあ、今日まで鍛えたから大丈夫だろ。」

 

「ふん、見物だね。」

 

「それでは試験を始める。開始。」

 

「行くぞ、みんな!」

 

さっきの……金髪でいいや。あいつを先頭に走って行く。

 

「さてと、受かればいいな。」

 

俺も後を追った。

 

 

 

 

「ハッ!」

 

「せいっ!」

 

「やあ! 」

 

「えいっ!」

 

ガルバディア兵に善戦してるな。

 

「おーい、気を付けろよー!」

 

「うるさい!自分の役割を果たせ!」

 

「へいへい……。」

 

俺の役割と言えば、回復係だ。

 

「よっと、ポーショーン。」

 

金髪の頭上に投げるとそのまま回復する。

 

「包囲されてきたな……。」

 

このままじゃまずいな。

 

「おい!一度後退して体勢を立て直すべきだ!」

 

「隊長は俺だ!黙っていろ!」

 

「おい、他の奴も独断でいい!早く後退してくれ!囲まれてるんだぞ!?」

 

他の4人はやっと気付いたのか慌てて周りを見ると顔を青ざめた。

そこから隊は崩れた。

まず隊長の男が斬られた。

次はもう一人の男が頭を殴られ気絶。

女二人も逃げるだけだった。

 

「チッ!おい、女二人!そっちのでかい家の壁に集まれ!」

 

「は、はい。」

 

「うんっ。」

 

気絶した男と金髪を掴んで俺も壁に行った。

 

「おいおい、どうすんだよ。」

 

一人意識不明、一人気絶、二人戦意喪失。

 

「ちょっと、燃えてきたじゃあねぇかよ。」

 

視界が鮮明になる。

 

『スキル、孤軍奮闘を習得。』

 

ん?アナウンス?ゲームの音声か?

とにかく、力が湧いてきた。

 

「お前ら……覚悟は出来てんだろうなぁ!」

 

まずはウォータを剣にエンチャントして前方を薙ぎ払う。

 

「お次はっと、エンチャント・サンダー。食らいやがれ。」

 

また薙ぎ払う。するとウォータから電撃が流れて前方の奴らが倒れる。

 

「あー……出来れば殺したく無かったんだけどな。」

 

世界が変わったって言っても人ってのは変わらない。

 

「吐きそ……。んぐっ。」

 

水を飲んで流す。

 

「おい、お前ら逃げるぞ。試験が大事ってのは分かってるけど死んだらどうしようもないだろ。」

 

コクコク頷いてついてくる。

つーか、男二人は重いんだが?

 

 

 

 

「まだ追ってくるのか。」

 

途中で起きた男二人も先に行かせて俺が殿を務めている。

 

「鍛え過ぎたか?それとも双子のせいか?」

 

助かってるからいいか。

多分、試験はこのまま終わるだろう。

 

「今回はダメだったかな。」

 

 

 

 

受かってました。

なんか仲間を助けたとかどうとかが評価されたらしい。

それとパーティーに出席しろと言われた。

リノアとスコールのあれだ。

 

「はぐふぐんぐあぐ……。」

 

うーん、美味い。

パーティーも悪くないね。

 

「あ、あの……。」

 

「んお?」

 

裾を引っ張られて後ろを向くと隊の女二人がいた。

 

「んっっぐぅ……うぐっ!?」

 

「ちょ!水、水!」

 

「ふぃー……助かった。」

 

「それはいいけどさ……。」

 

「おう、それで何の用だ?」

 

「助けてもらってお礼、です。」

 

うーむ、分かりずらいな。敬語の子が長髪ちゃん、もう一人が茶髪ちゃんでいいか。

 

「別に、死なれたら夢見が悪いから。」

 

それと二人共視線が熱いけどあれか、助けられて恋に落ちたとかそういうあれか。そんなもんはただの吊り橋効果だろ。

 

「まあ、礼は受け取るよ。どういたしまして。それじゃ。」

 

とりあえず飯だ。

 

「隣、いいですか?」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「……勝手にどーぞ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「あ、そうだ。あなたってG.F.着けてないのにどうやって魔法を使ったの?」

 

「気合と努力と根性。」

 

「へぇ〜、すごいんだね。」

 

「尊敬します……!」

 

あー、どうしよ。好きになられてもいつかは覚めるし元の世界に戻るんだ。そもそも、ここは虚構、空想の世界だ。……勘違いだったら恥ずかしいし。

明日にとっとと任務受けてガーデンを出るか。

 

 

 

 

「ぜ、前線で任務ですか。」

 

翌日、任務を受けに行く前線に出るように言われた。

 

「そうだ。」

 

「りょーかいでーす……。」

 

おかしい、スコール達はまだ楽な任務だったはずなのに……。

 

 

 

 

「SEEDの陣だ、どうぞよろしく。」

 

流石前線部隊。かなりの人数だな。

 

「私が大隊長だ。早速だが君の部隊は君一人で遊撃部隊だ頑張ってくれたまえ。」

 

「ひ、一人?」

 

「ああ、一人だが?」

 

「何故?」

 

「我々前線部隊は複数人が入り乱れる混戦でも各々完璧な連係が出来るように訓練されている。君と他を組ませた所で上手く行くとは思えない。それに君は一人でも戦えると聞いている。」

 

「それは……。」

 

「もういいかね?では、すぐに戦闘準備だ!」

 

「マジかよ……。」

 

 

 

 

少し時間が過ぎて敵が接近中という情報が入った。

 

「これは……こっちよりも多いな。」

 

練度は不明だが数の利点だけで言えばこちらが不利となる。

これならもっとSEEDを要請すれば良かったのに……。

 

「これより、突撃を開始する!」

 

「と、突撃?」

 

嘘だろ、数的不利なのに突っ込むのか。

 

「進軍開始ィ!」

 

「「「おおおおおおお!!」」」

 

「行きて帰れますように!ヘイスト!」

 

俺は一人だけ孤立して前へ前へと出ていった。

 

「エンチャント・ブリザド!」

 

剣にエンチャントして地面に突き刺すとそのままブリザドが広がっていき、相手の軍の一部が滑って転倒した。

 

「部隊が一人でも先行し過ぎるな!」

 

「うげっ……。」

 

まずいと足を止めると先程の男が隣に並んだ。

 

「先走り過ぎるな。これは個人の戦いではなく戦争。複数人での戦いだと言うのを忘れるな。

……だが先の攻撃、奴らの足並みを崩すには良い攻撃だ。」

 

「……ども。」

 

なんだか照れるな。ガーデンじゃ、こんな事言われたこともない。

 

「我々も行くとするか。まだ戦いは始まったばかりだ。」

 

「……おう。」

 

 

 

 

それからも戦争は続いた。ある一定の時間が経てば相手もこっちも一旦引いて補給し、突撃。彼らの練度はとてつもなく、数の差を覆していた。

途中では少し話した相手や仲良くなれて友達と呼べるくらいのやつが戦死する事があり、急拵えの木を刺しただけの墓の前で泣いた。

飯の間には大隊長さんの話も聞いた。どうやら結婚しており、嫁さんと息子と娘がいるそうだ。美人だったから羨ましく思った。彼は寂しくさせてないかと心配な様子だと語っていた。

人間を殺すのにも慣れてしまった。どこを斬れば、撃てば死ぬのか。機械はどこが弱点で隙があるか。

時には殿を務めた事があった。一人の遊撃部隊だった俺の部隊に数十人程の人員を分けて貰った。……それでも生き残ったのは俺を含めて数人だった。

ある日は終わらない戦争に発狂を起こした者がいた。即座に気絶させたが復帰は厳しいと思う。

来る日も来る日も剣と銃を手に取って戦った。

相手からも恐れられるくらいには有名になった。

気が付けば殿の時とは違い、一時的ではない部下が出来た。

兵士と女性のロマンスを見た。それを見ていた俺は彼に退役を進めたが彼はそれを拒み次の戦いで死んでしまい、墓が増えた。女性には恨まれ、罵詈雑言を浴びせられたが、何も言い返せず、拳を握り締め、己の無力さを感じた。

スコール達の情報がたまたま入ってきた。予想ではそろそろイデアを倒せそうだ。この戦争もそろそろ終わるかもしれない。

…………大隊長が死んだ。味方の一人を庇ってそれが致命傷となった。最後に家族の居場所と伝言と写真を頼まれた。

大隊長の代わりを俺が務める事になった。部隊の全員の命を預かるのは俺には重すぎる。それでも部下となった彼らは励まし、認めてくれた。なら、俺は覚悟を決めて戦うだけだ。

そして、次がきっと最後の戦だ。

 

 

 

 

「お相手さんは千程で、こちらは百か。最初の頃から随分と減ったなぁ……。」

 

「隊長殿。全員準備が整いました。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

俺は整列した隊員達の前に立つ。

 

「皆、良くやってくれた。これが最後の戦になるだろう。人数はこっちが圧倒的に少ない。勝てるかどうかも分からないだろう。帰りたいと思うやつは帰ってもいい、誰だって死にたくはないだろ?」

 

「隊長ー!そりゃ俺達に対する侮蔑だぜ!」

 

「我々はあなたと最後まで戦いましょう!」

 

思わず泣きそうになるのを堪える。

 

「そうだな!お前ら、勝ちに行くから着いてこいや!」

 

ここまで長く、辛かったが、彼らと共に戦える最後の戦争に心が踊った。

 

『スキル、戦友の鼓動を取得。スキル、鼓舞を取得。スキル、戦友の絆を取得。』

 

「行くぞぉ!突撃ィィィ!」

 

「「「オオオオオオオオォォォォ!!!」」」

 

「挨拶代わりだ!サンダガバレット」

 

敵の攻撃準備の整っていた前衛を潰すと一つ後ろのまだ整っていない連中が現れる。

 

「戸惑ってるやつから潰せ!とにかく数を減らせ!」

 

その間に適当な剣を拾う。

 

「エンチャント・ファイガ。」

 

その剣を槍投げの様に投げると着弾点から解放されたファイガの炎が広がる。

 

「お前ら隊長殿に負けるな!」

 

次々と敵を倒していく。だが、少しずつだがこちらの数も確実に減っていっている。

 

「グラビデバレット!そっから、ブリザガバレット!」

 

「進め進めェ!」

 

「ケアルガサークル!」

 

ケアルガをエンチャントし、地面に刺して広域に広げる。やっぱり敵には効果がないんだな。

相手もこっちも数を減らし、疲弊していき、まだ戦える奴で残ったのは俺だけだった。部下ももう動けないだろう。相手はまだ後数百人はいるかもしれないが踏ん張り所だ。

 

「お前らは休んでろ!後は、まあ、なんとかするわ!」

 

「で、でも……隊長!」

 

「一人であの軍に勝つだなんて!」

 

「……あーなんだ……その、エースに任せとけって! 」

 

この無駄に格好つけた言葉は励ましでもあり、自分を鼓舞する為でもある。

 

「さあ、ガルバディア。かかってこいや!」

 

『孤軍奮闘、発動。』

 

軍隊が迫ってくる。景気付けにファイガバレットを飛ばす。

生きろ、生きるために戦え。活路を見い出せ、預けられた命を守れ。

 

「リジェネ!」

 

只戦うのみ。

 

「ゥオアアアァァァ!!」

 

どの魔法を放つかを考えるのも惜しい、攻撃系の魔法を放つ。生き残ってるやつには剣でトドメを刺す。

 

「どうしたどうした!?まだまだこれからだぞ!?」

 

軍全体の動きに乱れを感じる。動揺しているみたいだ。

 

「エンチャント・ホーリー!」

 

剣にホーリーを纏わせ斬り払い周囲を散らす。

 

「死にたくないやつは逃げるか投降しろ!死にたいやつは来い!」

 

ここで隊列が完全に瓦解した。隊列から外れ逃げ出したのだ。一人逃げ出すとそこからまた一人と逃げて行く。逃げる気力もない者は武器を捨てて膝を着いた。もう戦いは決まっただろう。

 

「……こいつで終わりか。」

 

最後に挑んできた兵士の首を落とし、周囲を見渡し呟く。

 

「いつ、元の世界に戻れるんだろうな……。」

 

長い戦いが終わり、ふと時間の流れを感じた。もうどのくらいこの世界にいるんだろうな。

 

「勝った、勝ったぞおぉ!」

 

「我々の勝利だ!」

 

「隊長!あんたは俺達の英雄だ!」

 

勝鬨が聞こえてくる。先程の気持ちを抑えると勝ったという実感が湧いてきて、笑みが浮かぶ。

 

「お前ら!まだ仕事はあるぞ!投降した連中を捕縛しとけよ!」

 

彼らは捕虜になるが、きっと悪い様にはならないだろう。何かあれば俺も一言言っておこう。

 

「戦争は集結した、イデアにも勝ったろ。でも、アルティミシアはまだ生きている。頑張れよ、主人公達。」

 

さて、こんだけ働いたんだ。報酬と休日はたっぷり貰わないとな。

 

 

 

 

あれから金を貰った俺はガーデンに報告してから世界を旅していた。

訪れた場所で賊やモンスターの群れが居ると聞いたら剣と銃を両手に持って討伐・捕縛に行き、病気の母を想う娘が居れば薬の材料を取りに走った。英雄と呼ばれる事もあった。

旅の途中で大隊長の家族に出会った。写真でも見たが随分若いと思ったが、大隊長が老け顔だっただけらしい、割と若かったんだな……。

子供にはまだ早いだろうと奥さんにだけは真実を伝えた。彼女は顔を覆い、声を殺して泣いていた。慰める事も出来ず謝り続ける事しか出来ない自分に腹が立った。

町から出ようとすると奥さんに止められ数日お世話になる事になった。子供達は元気が良く、懐かれてしまった。

……奥さんはどうやら、俺と大隊長を重ねて見ているようだ。早くこの町を出ようと思う。

 

 

 

 

「奥さん、すみません。そろそろ、旅に戻ろうかと考えているのですが……。」

 

「そうですか……あ、お茶でもどうですか?」

 

「ああ、是非。」

 

差し出されたお茶をカラカラの喉を潤わせるために一気に飲む。

 

「それで、急に旅に戻るなんて、どうかしたのですか?」

 

「いえ、長居し続けたので、そろそろと思いまして。」

 

「そうですか……残念です。」

 

不意に、視界が眩む。

 

「こ……れは……。」

 

「もう、手段は選びません。あの人もあなたも、男性は身勝手です。待つ側の気持ちが分かっていません。ならば、私も身勝手になります。」

 

「おく、さ…ん……?」

 

「サラ、とお呼びください。

愛しい、愛しい貴方……。」

 

まずい、まずいまずいまずいまずい……!!!

 

「さあ、ずっと一緒に居ましょう?」

 

「お、俺は彼じゃ……ない……!」

 

「戦場から帰って来て、あの人の後を継いだのでしょう?なら、貴方の心の中にあの人はいるはずです。だから、私は貴方を愛しましょう。」

 

「ち、がっ……!」

 

そんなはずはない!大隊長は死んだんだ!

 

「ねぇ、貴方は英雄なのでしょう?色んな人達を救って来たのでしょう?なら、私も、私も救って……!」

 

英雄という枷が俺を雁字搦めに縛っていく。このまま見捨てたら彼女はきっと壊れてしまうだろう。

俺は……黙って頷くしかなかった。そして、意識が薄れていった。

 

 

 

 

目が覚めると薄暗い場所に居た。洞窟か、地下だろうか?

両腕が重い。鎖で繋がれている。

 

「まだ、ボーッとするな。」

 

「目が覚めましたか?貴方……。」

 

「あ、奥さ「サラです。」……サラ、さん。」

 

「なんでしょう?」

 

「ここは?」

 

「教えません。」

 

「そうですか……。」

 

これからどうするべきだろうか……記憶を消すってのは出来ないしな。

 

「あっ!お腹空きませんか?」

 

「そういえば、そうですね。」

 

「少し待っててください。貴方の為に作って来たんです!」

 

パタパタと去っていく。

鎖を外そうとするが、やはり外れない。

 

「くっ……なろっ!」

 

「なぁに、してるんですかぁ?」

 

背筋が冷える。いつの間にか帰って来ていたみたいで、皿を持って来ていた。

 

「逃げようとするだなんて、酷い人……。」

 

「あ、いや、そんなつもりは……!」

 

「でも、許してあげます。ただし、言う事を聞いてくださいね?」

 

「は、はあ……。」

 

「ご飯にしましょうか。」

 

そう言ってスープを口に含む。あれ、俺には?

 

「ん……。」

 

どうやら、口移しをするみたいだ。

 

「待て、俺は大隊長じゃない!そんな、軽々しくしてはダメだ!」

 

顔を必死で逸らすが押さえられキスをされた。ご丁寧に鼻を塞がれたため口を開くと口にスープが入る。味は美味しい。しかしサラはそこから舌を入れてきた。

 

「んんっ!?」

 

「貴方……貴方ぁ……。」

 

泣きながらキスをしてくる。なぜこんなにも大隊長を想っているのに、俺にキスをしてくるのだろう。大隊長と重ねているのは分かる。

だって、彼女は俺を見ていないのだから。俺を見ているようで見ていない。

頭を振り、離れる。

 

「やっぱり、ダメだ。俺じゃ、大隊長の代わりになる事は絶対に出来ないんだから。」

 

「あ……ああっ……!」

 

奥さんはそのまま出ていった。

これなら、無理矢理にでも出ていけば良かったか……。

 

 

 

 

次の日から奥さんは俺の隣に座り縋って来るだけだった。自分の匂いをマーキングするかの様に感じた。それでもご飯はくれたのは助かった。

数日はこの状態が続いている。子供達は婆さんに預けているそうだ。

ある日からか様子は戻ったが服装が肌色多めになった。何か、変わる様なことでもあったのだろうか?

目が覚めると肌がベタつく気がする。

理由が分かった。奥さんな寝た後に来て顔や首、色んな所を舐めたりキスしていた。正直、堪ったもんじゃない。

最近料理に変わった味が混じってる気がする。食べた後に体がムズ痒い感じがした。

目の前がクラクラする。まるで自分が自分じゃないみたいな気分だ。

 

「う……あ…お……。」

 

「あらあら、やぁ〜っとお薬が効いてきたのですね。」

 

何を言っているかが分からない。考えが纏まらない。え、エスナを……。

 

「ダメじゃないですかぁ。大人しくしててくださいね?」

 

腕を抑えされる。力が入らない。

 

「貴方がいけないんですよ。貴方は悪くないのに、自分を罰して、私に優しくして、私の心を蕩けさせるのですから……。本当に酷い人、そんなにされたら私、我慢が出来なくなりました。」

 

誰かが俺を抱き締めた。もう目の前もボヤけて見えない。

 

「貴方は、私の物。愛してますわぁ……。」

 

誰だ。なんなんだ。敵か?味方か?周りが暗い。敵かも、しれない。

 

『孤軍奮闘、発動。』

 

目が、覚めた。

 

「な、んだ、これは……!」

 

「あいしてます、愛しています、どこまでもこれからもずっと、ずぅ〜っと貴方を想い続けます……。」

 

これは何だ、悪夢だろうか。今まで悲しませない様に頑張ったのに、この結果はなんだ。どこで失敗した。何が悪かった。

 

「ねぇ、英雄様、貴方は……私を、助けてくださいますか?」

 

また、英雄。ふざけるな。俺はこんな、こんなことにするために今まで頑張って来たんじゃない。幸せなってほしかった。前を向いてほしかった。喜んでほしかった。それだけなのに……。

 

「すまない、すまないなぁ……奥さん……。」

 

涙で目の前が滲む。孤軍奮闘が発動している今の俺なら鎖も壊せるだろう。

 

「ふんっ!」

 

もう、ここから出よう。居ても居なくてもきっと、不幸になってしまうだろう。

 

「あ、貴方……。」

 

「俺は違いますよ。貴方の英雄になることは出来ません。恨んでください…それでは、さようなら。」

 

「ま、待って、待って……!」

 

「あ、そうでした。ずっと、伝えられていませんでした。彼からの伝言板です。『私は家族を愛している。サラ、死んでも愛する』と」

 

「ああっ……。」

 

奥さんは蹲って泣いてしまったが、そのまま荷物を拾ってその場から去った。

 

 

 

 

そこからも旅は続いた。戦い方は随分と変わってしまっていた。

今までは小賢しいくらいの戦い方をしていたが、今は人質を取ったり、尋問するために一人殺したりする事がある。前ではありえないだろう。

自分は英雄にはなれない、そう確信した時から変わってしまったのだ。

許しを乞われても殺した。逃げようとした敵も殺した。いつか、両手は血に染まっていた。それでも、惨劇を見ていない人からは英雄と呼ばれ続けた。

そして、次を最後の戦いにして、死場所とするためにある場所を訪れた。

 

 

 

 

「よぉ……お前がアルテマウェポンだろ?」

 

目の前には巨大な剣を持った怪物が居た。

 

「とりあえず、貰うぜ。」

 

近づいて足に触りドローを行う。

 

「っし、アルテマゲット。んじゃ、メテオバレット。」

 

直撃したと思った。

 

「なに!?」

 

巨体に似合わない速さで避けられ、横から剣を叩き付けられるのをこちらも剣で防ぐ。

 

「ちっ……クッソ!!」

 

耐えられずに吹きとばされる。馬鹿力かよ。

 

「グラビジャバレット!」

 

当たった瞬間、アルテマウェポンの巨大な体が重力によって収縮され押し潰れるが力を入れたかと思うとすぐに弾かれた。

 

「嘘だろ!?」

 

距離を取ると下半身の口に力が溜められているのが見えた。

 

「まっ……リ!!」

 

瞬間、光が俺を飲んだ。

 

「…………ぶねぇな、リレイズ間に合ったか。」

 

助かった、けど剣が折れたか……。

 

「銃は無事だけどっ!っと、取らせてくれないよな。

こっちだって成長してんだ、媒体無しで手から魔法が出せるようにもなったしな!」

 

腕を後ろに引き絞って殴るように突き出す。

 

「但し魔法は拳から出る!サンダガ!」

 

コントロールされた雷が放射状になって拳から飛び出すと、アルテマウェポンに直撃した。

 

「どうあっても掌からは超近距離じゃないと使えないんだよなぁ。

それにもっとでかいのをかましたいけど、隙がないな。」

 

山賊とかなら人質なりなんなりで作れるのに。

 

「くっそ、予想よりも強いな。」

 

壁に叩き付けられながら愚痴る。

 

「バフはかけてるんだかな。キッツい……。」

 

必殺技みたいなんでも作ってりゃ良かったかも。

 

「ふーっ……。エンチャント、アルテマ。」

 

いつも使う魔法はドローした相手を倒してから誰もいない安全な場所で行って調整してきた。けど、これはぶっつけ本番。

気持ちを落ち着けて弾丸にアルテマを篭める。

ドスドスとアルテマウェポンが走って来るのが見える。

 

「アルテマ・バレット」

 

白い極光が銃口から迸る。両手で銃を持つがずるずると後ろに下がっていく。

 

「調整、ミスったか……!!」

 

制御より、火力を優先した結果、暴走気味になってしまったか。

ゆっくりと光が細くなり、止まっていく。

放射された所には何も残っていなかった。アルテマウェポンも倒せたようだ。

 

「……これじゃ、バレットじゃなくてバスターだな。」

 

疲れからか座り込む。

これからどうしようか。目的は果たしたけど、結局死ぬことは無かった。軽く死にかけだが、回復すればいいだけである。

 

「……ケアルガ。」

 

傷は治り、体力も回復した。あれだけの傷があっさりと消えた。

 

「……今までの道を帰るか。」

 

 

 

 

今まで会ってきた人達に会いながら帰ると笑いながら楽しそうに暮らしていた。助けた人に泊めてもらったり、感謝として食べ物をもらったりした。

奥さんはどうなっただろうか?正直会うのは危険な気がすると思ったがやはり気になり寄ることにした。

結果としては心配は杞憂であった。奥さんは明るく笑顔で過ごしていた。俺が話しかけると謝罪とともにご飯の誘いを受けて食べたが腕が上がっていて驚いた。今は食堂を営んでいるらしい、納得だ。

数日滞在し、去ろうとした時には家族で見送りに来てくれた。その後ろには大隊長がいて、鼻を鳴らしてニヤリと笑って見えた。

それからも旅は続いたが、最後には海の見える丘に着いた。

 

 

 

「……綺麗だ。」

 

自然と言葉が出ていた。

思えば、この世界に来てから戦いばかりで景色は見ていなかった。

自分の姿を見ると赤いラインの入った黒い軍服の様な格好に黒いマントだ。硝煙の臭いも染み付いて、汚れていた。持っていた剣も折れて、それからは銃と拳だけで戦っていたから銃も汚れて、拳は生傷が絶えなかった。

 

唐突に足元が光った。

 

「終わったかな。」

 

この世界でやる事が終わった事を悟った。

光が一際強くなると俺はその場から消えた。

 

 

 

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