森の小屋での一幕   作:けーちゃん

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オリジナルは初めてです。


Prologue&第一話

■Prologue■

 

「だいじょうぶだよ」

 

 耳元に優しい声が届く。

 

「きみは一人でもだいじょうぶ」

 

 諭すようなその声は誰のものだったのか。今では思い出せない。思い出せるのはその人がとても優しかったこと。そして私は彼女のことを好きだったということ。

 耳には彼女の声以外に炎がごうごうと燃える音が入ってくる。煩い煩い煩い。彼女の声が聞こえないじゃないか。

 

「じゃあね、ネムちゃん」

 

 でもこんな夢は見たくなかった。だって、こんな悲しい別れをしなければいけなくなるから。声は離れて行き、意識は覚醒する。そしてこの夢を見たという記憶は何処かへと消えてしまう。

 

 

「今日もネムちゃんを見守っているよ」

 

 

 

「今日も良い天気ですね」

 

 窓を開けて外の空気を入れる。うん!今日も空気が美味しくて、過ごしさすそうな日ですね。小鳥の囀りが聞こえてるのも更に良い。

 

「今日もありがとうございます、太陽神様」

 

 手と手を合わせて数秒目を瞑る。心の中で唱えるのは太陽神へのお言葉。いつも私を見守ってくれる優しい神様。

 風に靡く木々の音が鮮明に聞こえる。

 

「さて、ちゃちゃっと朝ご飯を作りましょう」

 

 私、ネムがいるのは街から離れた森の中だ。そこにはひっそりと家があり、そこで生活をしている。食料は基本的に森が与えてくれる。それだけだと野菜や果物だけになってしまうので、もちろん生き物だって時には捕まえる。

 他に住んでいる人はいない。私が昔どうやって過ごしていたか、どんな幼少期を過ごしていたかの記憶はない。だけれど、日々私に恵みを与えてくださる森などの自然には深く感謝をする事は私に刻み込まれていた。

 

「今日のご飯も美味でした」

 

 寂しくないかと言われたらそんな事ありません。沢山の動物とお話をして、家にある本を読んでいるこの日々はとっても幸せな時間です。それに最近は寒い季節に向けて編み物をしていると、気付けば周りが暗くなっていますし。

 それに私にはいつも独りではありません。

 

「だってほら」

 

 コンコンと扉が叩かれる。

 

 

■第一話 勇者は辛いよ■

 

 旅を始めて数週間。アタシは途方に暮れていた。王様に「数日で次の街につくから頑張って」なんておっしゃりやがっていたが、そんな事は無かった。と言うかそれは、馬車とか魔法とかを使った場合の話であって「王様ふざけるなよ」と怒りが爆発しそうだった。

 おっといけない。怒りを襲い掛かってきたモンスターに向けて、一閃。モンスターを斬る。怒りはただ疲れるだけだし、考えないようにしよう。

 

「もう少し歩いて無かったら今日も野営かー」

 

 剣についた血を拭う。

 ここの森の果物は食べられるものばかりで、動物も何匹か捕まえる事も出来る為食料には困らない。だけど、やっぱり人恋しいというか何というか。お話がしたい。

 

「あれ?」

 

 自分で決めた時間になろうとした時、何処からか人の声がした。たしかこっちの方向だった筈と歩いていくと、明るい木製ののお家を見つけた。なんだか怪しいけど多分大丈夫と自分を言い聞かせて、扉を叩く。

 

「すみませーん。誰かいらっしゃいませんか?」

 

 すると家の中から「はーい」と優しい声が聞こえた。良かった女の人だ。

 

「旅をしている者ですが、一晩だけ泊めていただけませんか?」

 

 はやる気持ちを抑えきれず要件を先に言ってしまった。木の扉が開き、声の主が現れる。見た目はアタシより3つほど上の様に見える。真っ赤な艶のある髪は肩辺りで揃えられていて、顔がちっちゃくて綺麗というよりも可愛いと言った方が似合っている。翡翠色の瞳と目が合うと、にこりと笑って来た。

 

「あら、冒険者さんね。ここの森で迷ったのかしら?」

「恥ずかしながら」

「確かに人が全く通らないものだから、道が分からないもの。仕方ないわ」

 

 おい王様! 皆そこを通っているとか言ってなかったか。今度会うことがあったら殴ってやる。

 

「そうなん……そうなのですか」

「取り敢えずお家に入りましょう。それからでもお話はたくさんできるもの」

 

 手を引かれて家の中に連れて行かれる。柔らかな白い手は暖かい。お母さんの手みたい。部屋の中は紅茶の匂いが仄かに香っていて、とてもいい匂いだ。

 

「こちらに座って」

「ありがとうございます」

 

 私を木の椅子に座らせ、目の前の机に置いてある本を本棚に戻し、ふわりとテーブルクロスを敷く。そして鼻歌交じりに台所に向かう。アタシが欲しかったのはこの癒やしなのか! やっぱり旅は二人以上じゃないと。次の街で絶対探そう。

 部屋の中を見渡す。王国の魔法の魔法灯とは違った温かみのある自然の光を大きな窓から取り込み取り込み、不快感がない。反対側の壁には大きな本棚があって、子供向けの絵本から表紙が革で出来た難しそうな本で揃っている。

 その本棚の脇には扉があってそっちが家主の寝室なのだろう。そういえば名前聞いてなかった。早く名前を聞かなくては。

 

「待たせちゃったかしら」

「そんなこと無いです!」

「良かったわ! 疲れてると思うからゆっくり休んでいくのよ。ここは安全な場所だから。あと、敬語じゃなくても大丈夫よ。貴女を見てると何処か喋りづらそうですもの」

「ありがとうござい……いや、ありがとう!」

「やっぱり! 貴女にはそっちの方が合ってあるわ」

 

 名前を聞こうと思ったのに会話の主導権を完璧に握られてしまった。ここは大人しくアタシが聞かれるまで待ったほうがいいのではないか。

 家主さんはティーポットから紅茶を注ぐ。家にやってきた時と同じ匂いが鼻孔をくすぐる。火を使ってにしては早いので、もしかしたら水魔法で直接水の温度を上げたのかもしれない。

 

「貴女の名前を聞いてなかったわ」

 

 手をぱちんと合わせて言うその姿は自然で、見ていて心が癒やさせる。

 

「アタシはレイカ、【レイカ=フロティス】。歳は15歳で、12歳のときに大陸を守護する神【リミア女神】に見初められ3年間勇者として修業をしてきた。あとは、そう! 王様が隣町にはこの森を通るのが良いと言われてやって来たものの、中々街につかないところこの家を見つけて訪れた」

「レイカ、うん良い名ね。古代語を踏まえてるし、何より貴女に似合っているわ」

「ありがとう」

「次は私の番ね。【ネム】が私の名よ、さんとか付けないで呼び捨てで構わないの。歳はそうね、多分20歳だったと思うわ。うん! これからそうしましょう」

 

 年齢ってそんな簡単に決められるものだっけ? ネムは本気で言っているのか、はたまた冗談を言ってるのか分からない。ただ、楽しそうにニコニコしている。

 

「少し前にこの森に来たのよ。毎日ここで本を読んだり書いたり、動物さんとお話をしているわ。後はレイカみたいな旅人さんを泊めたりしているの。でも、勇者様が来たのは初めてね」

 

 勇者様! なんて甘美な響き!

 私が勇者に選ばれた時もそんな風に言われてたが、やっぱ近所の人にからかい半分で言われるのとは全然違う。

 

「あと、レイカには少し酷な話なんだけど」

「はい?」

「王国から隣の街へは普通転送魔法陣を使って移動するから、ここの森って結構危険なのよ」

「マジですか……」

「でもこうしてレイカと会えることが出来たから、ソレは不幸中の幸いね」

 

 天使だ。ここに天使がいる。

 ニコニコと笑みを浮かべるネムに心奪われる。

 

 

 

 それからは互いに話をした。アタシは王国で生活や修行時代の大変だった話を、ネムは森での些細な出来事やアタシの他に此処を訪れた人の話をした。アタシの話をコロコロと表情を変え聞き、自分の話は表現力豊かに話す。時間はあっという間に過ぎていった。

 

「と言うことはレイカは魔法が苦手なの?」

「うん。中々上達しなくて。宮廷魔道士にも『見込みないわね』なんて言われて、冒険で困らない程度にしか使えないんだ」

 

 基本属性の火・水・風・土のうち火と水は冒険の最中で使える程度には練習したが、戦闘で使うなんてのは出来やしない。風と土は全く何も出来ない。宮廷魔道士には呆れられ、訓練の殆どの時間を魔法を使う相手との戦い方の時間にされた。

 

「宮廷魔道士さんって結構有名な方?」

「名家の出身だって言ってたよ」

「なるほどね。少し待ってて」

 

 飲んでいたティーカップを置き、自室に向かっていった。手に小さな針を持って戻って来た。

 

「本棚を見たら分かるように魔法にはそれなりが知識があるの。それこそ貴女の言っていた宮廷魔道士よりもね」

「本当?」

「えぇ本当よ。今からやるのは昔の魔力計測。魔法使いの家系のみが魔法を使う事を許されている今よりも前の時代。万人が使うことを許された時代の方法」

 

 古代の計測法と聞くだけで少しウキウキしてしまう。自分に魔法の才能があるかどうかではなく、それがどんな物なのかの方に興味が向かってしまう。

 ネムに言われたとおり、手のひらを見せる。先程持ってきた針を人差し指にチクリと指す。プクッと血が出て来て、人差し指をネムが咥えた。咥えた!?

 

「あの、何してるんですか!?」

「ふぁにって、ほはいのほくへいほうを」

「何って古代の測定法を、じゃないですよ」

 

 急いで指を離す。口元に左手を当てるのが少し艶やかに見える。変な妄想をしちゃって、顔が赤くなるのが分かる。

 

「古代の人は血を舐めて、魔力を調べてたのよ。魔力を作る器官が身体のどこにあるかはまだ知られてないけど、血にはそこから僅かに魔力が移されているの」

「へ、へぇ」

 

 そんな正論を言われたら無知はこちらは何も言えやしない。ネムは目を閉じ、口の中では舌を転がしている。

 

「それでアタシの魔力は?」

「魔力の量としては一級品よ。属性も基本属性はもちろん、僅かながら他の属性も有るから鍛えればそれなりになるわ」

「ならどうして魔法がうまく使えないのか分かる?」

 

「簡単よ。魔法使いの家系は幼い頃から魔法を使わせるの、それに比べてレイカは12歳になるまで魔法を使わなかった。簡単に言えば身体が魔法を使う用になっていないのよ」

「マジですか……」

「宮廷魔道士はきっとそれを知らなかったのよ。だから魔法が使えない事を魔力が少ないからと決めつけた。悲しいわ」

 

 ネムの知識が凄いのか、はたまたあの魔道士が頭が硬いのか。両方な気がしてきた。改めて本棚を見ると、古代魔法学から近代魔法解説学など幅広くの本があった。

 

「身体が出来上がった今から、魔法を他の魔法使いのように使うのは難しいわね」

「ですよねー」

「でも方法はあるのよ」

「その方法とは?」

 

 

 

「それはね、魔法陣よ」

 

 

 

 一息置いたその発言に私は?を浮かべた。




【ネム】 年齢不詳のお姉様。髪色は真紅で艶がある。肩辺りで切り揃えられている。天然で、掴み所がないが書いてて楽しい。参考キャラは、fgoのマリーとマタハリ。

【レイカ】 名前は書こうとしていた二次創作の原作キャラから。古代語で『知恵ある者』と言う意味の設定。だが知っている事は少なく、ネムの話に興味津々。活発な娘を意識して書いた。髪は黒く長い、いわゆるテンプレ。

【王様】 よく言葉を省略する。レイカに言った「数日で次の街につくから頑張って」は「魔法を使って早く移動すれば勇者は」と言う言葉が省略されていた。


 
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