「それで?衛宮君の過去を教えて貰ってもいいかな?」
「う〜ん、俺の過去って言っても、アイツとほとんど変わらないぞ」
士郎はエミヤの方を見ながら言った。
今は談話室、道中でイシュタルやエレシュキガルなど、士郎の生前の人物と似たような者達と会うたびに反応して、若干疲れている様子だ。
「それでも良いから教えて、ね」
「はぁ、分かったよ、マスター」
立香の懇願に根負けした士郎は話し始めた。その眼は寂しく、だが、感謝しているのを感じる。
「俺の始まりは、冬木の大災害。色んな建物が燃えて、色んな助けを求める声を聞いて、それを全て拒絶して生き残った。空には黒い太陽が浮かんでた。ずっと後になってから知ったんだが、あれは第四次聖杯戦争の聖杯の泥が漏れ出て起きた災害なんだ」
士郎は語った。『衛宮士郎』という名の人物の最初の話を。
それを聞いた切嗣は申し訳なさそうに謝る。
「……ごめん士郎」
「なんで爺さんが謝んだよ」
「僕も《アラヤの守護者》だから、士郎の過去を少しだけど知ってるんだ」
「?どうして?エミヤんの過去を知ってるの?」
「アラヤの守護者は人々の《こういう人類の味方が欲しい》という願いの集合体、そこに個人の名前は無く、ただ人類を存続させる為の機械でしか無いんだ。僕と士郎は………士郎の生前に僕との関係も深いからそれで流れ込んで来たんじゃないかな?」
アラヤの守護者、そこがエミヤと切嗣の英霊の座になる。もとより、エミヤと切嗣は二人ともアラヤの側面として召喚されているような物。
「続きを話すぞ。やっぱり記憶に深いのは、縁側で切嗣と喋っていた時だな」
「どんなはなしをしたの?」
此処に食いついたのはアイリスフィールであった。
目の前にある羊羹を食べようとしていた手を止めて首を傾げている。
それ以外のメンバーもエミヤ'sを除いて興味津々といった様子である。
「なに、ちょっとした爺さんの昔話だ、気にする必要は無いぞ、アイリスフィール」
「お母さんもしくはママって呼んでって言ってるじゃない!」
「アーチャー、いつもこんな感じなのか?」
「その通りだ、衛宮士郎」
「なんか…大変だな」
「ふん同情などいらん」
心底嫌そうにエミヤは言い、士郎もいつも通りと言ったような顔をしている。そして士郎はため息を吐いたあと、続きを話し始めた。
「アイリスフィールさん、別に会話はとくに変哲のない会話でしたよ」
「ふん、呪いの始まりが変哲のない会話とはな」
「呪い?」
エミヤの意味深な発言にはイリヤが食いついた。
オレンジジュースから口を離し、首を傾げている。
「あ〜っと……どうしようか、爺さん」
「僕としては恥ずかしいんだけどね。言ってあげよう、士郎」
「分かったよ……
爺さんが『僕はね、正義の味方になりたかったんだ』
っていって俺がその後ちょっと話を聞いて、最後に
『なら俺がなってやるよ。安心しろって。爺さんの夢は…』
て言ったんだよ」
士郎の話に切嗣は居心地が悪そうになり直ぐに逃げそうになっていた。士郎もちゃんと言うのは恥ずかしいのか、頬をかいている。
だが、皆んなはそれに疑問を持った様子であった。
「どうしてそれが呪いなの?心温まる話じゃない」
「いや、これは呪いだ。壊れた人間が持って良い願いじゃない」
エミヤの発言にキョトンとした様子の立香達。
「それは続きを聞けば分かる。だから早く話せ、衛宮士郎」
「ああ、分かってるよ。お前に言われなくても」
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