ソードアート・オンライン〜彼こそが王〜   作:rocar

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 サブタイトルでピンと来ている方もいるかも知れませんが、今回はあの方の登場です。


第2話 悪魔名の騎士

 このデスゲームが始まり、そして現実世界の救援もないまま、一ヶ月が過ぎた。

 この頃になると、生き残ったプレイヤーの3分の1あたりは、自ら動くことを決断していた。

 それが果たして正しい選択だったのかは、微妙なところだ。

 自ら動いた結果、約2000人のプレイヤーが死んでしまったこと、そして一ヶ月かかっても第一層すらクリアしていないことを考えると。

 だがその死者2000人は、きっと無駄ではあるまい。

 その2000人をもってして、自ら動くことを決めたプレイヤーたちは、より一層の慎重さで行動するようになったのだから。

 

 「ふぅ………」

 

 シヴァはメインメニューを開いて自分の現状を確認しながら、物憂げにため息をついた。

 自ら動くことを決めたプレイヤーの内、ハイレベルのプレイヤーはどうやら《攻略組》と呼ばれているらしい。

 ならば自分が攻略組なのかと問われれば、一歩足りない。

 レベル的に言えば、攻略組のレベルが10から12だ。

 それに比べシヴァのレベルは9。それも昨日レベルアップしたばかり。

 

 「慎重が過ぎたか……?」

 

 装備にしても、盾や鎧を優先的に生産、購入してきたからか、武器は初期細剣の『スモールレイピア』をいくらか強化しただけ。

 回復アイテムにも金を賭ける割合が多い。だからと言う訳ではないが、最近は強化でさえ上手くいかないようになってきていた。

 お陰で死を身近に感じる回数は随分と減っていたが、モンスター一体あたりを倒すのに、時間がかかる。

 即ち、経験値を稼ぐのが遅れているのだ。

 いやいや、経験値より命。自らを強くする経験値は魅力的だが、命あっての物種だ。死ねばすべてが無駄。

 

 「それよりは……良いはずだ」

 「おーい、そこの君」

 

 言い訳がましく呟くシヴァに、男の声がかかる。

 声の方を向けば、青を基調とした上等な装備に身を包んだ男のプレイヤー。恐らくは攻略組だろう。

 何より驚くべきは、その男の髪色。装備と同じような、青色である。

 髪色が青いというのは、これまでの人類ではいなかったはずだ。つまり、自分は新たな人類を発見したことになる。ノーベル賞をもらえやしないだろうか。

 と、冗談は置いておいて男の髪色は単純にそういうアイテムを使ったのだろう。

 彼は見たことがなかったが、攻略組であれば自分の知らぬアイテムの一つや二つ、保有していてもおかしくはない。

 

 「俺か……?」

 「そう、君だ。日本人にしては珍しい髪色だと思ってね」

 

 そう言って男はシヴァ髪を指して、次いで自分の髪を指した。

 

 「君も俺と同じタチかい?」

 「……いいや? これは地毛だ」

 「へぇ! 凄いじゃないかそれは!」

 

 青髪の男は大仰に驚く。

 シヴァは男の第一印象を、髪色に拘る男、にした。

 

 「クオーターなんだよ」

 「どこの国なんだい? アメリカ? ロシア?」

 「イギリス」

 「なるほど、道理で顔が整ってる訳だ」

 「イケメンに笑顔で言われると腹立つな」

 

 言葉とは裏腹に、シヴァは青髪の男との会話を楽しんでいた。

 そういえば、装備やアイテムの交渉以外で人と話したのはいつぶりだっただろうか。

 青髪男は自然な足取りで、シヴァが座っているベンチの隣へと腰を下ろす。それをシヴァが不快に思うこともなかった。

 

 「俺はディアベル。君は?」

 「シヴァ。……ディアベル、とは物騒な名前だな。悪魔って意味だろう、それ」

 「ハハ、バレたか。気持ち的には騎士(ナイト)をやっているんだけどね」

 「ならなぜそんな名前に?」

 「『なりたい自分』と、『なるべき自分』は違うものさ」

 「………?」

 

 シヴァにはディアベルの言葉の真意はわからなかったが、彼はそれ以上踏み込まないことにする。

 

 「……で、その騎士様が俺に何の用なんだ」

 「言ったろ。君の髪色が目立ってたんだ」

 「なるほど。俺は髪色マニアに目をつけられた訳か」

 「人に変なレッテルを貼らないでくれ……」

 

 笑顔を保っていたディアベルも、さすがにやめてくれと言わんばかりに顔をしかめた。

 

 「何も髪色に限らない。見た目の一つに目立つものがあればいいのさ」

 「何の話だ?」

 「人を纏めるに役立つって話さ。それだけで印象深いからね」

 「………あー、もしかして、攻略組のリーダー様か?」

 「まだ、違う。でもいずれ、そうなろうと思っているよ」

 

 変わらぬ笑顔で、変わらぬ口調で、とんでもないこと言う。

 この状況下のリーダーとは、命を預けるに値すると信頼される者のことだ。とても並の精神力で務まるものではない。

 

 「本当に……何の用だ」

 「目立つプレイヤーがため息を吐いていたら、誰だって気になるだろう?」

 

 少し警戒見せるシヴァに、ディアベルはあっけらかんと答えた。

 

 「さて本題だ。君は何かお困りの様子。場合によっては手助けできる」

 「………そんなことをして、何のメリットが……」

 「大衆の信頼もまずは一人から、だろう?」

 「…………」

 

 片目を瞑り、茶目っ気たっぷりに言う。

 シヴァは喉の奥で、小さく唸った。

 

 ◇◇◇

 

 「ふむ……。それで、武器の火力不足が悩みの元だと」

 「ああ」

 

 ディアベルの確認に、シヴァが頷く。

 結局、彼はディアベルの協力を仰ぐことになったのは言わずともわかるであろう。

 ディアベルはシヴァの腰の鞘を見た。

 

 「細剣か……。俺は本業じゃないけど、仲間が使ってたな」

 「仲間? パーティーを組んでいるのか」

 「そうだ。気のいい奴らだよ。彼らと俺は訳あって、今は別行動をしているんだけどね」

 

 

 ハハハ、と笑いながらディアベルは仲間たちのことを語る。

 仲が深いのは簡単に見て取れた。

 ソロであるシヴァにとっては羨ましい限りだ。その内パーティーを組むのもアリかもしれない。

 

 「それで細剣の話に戻るが、確かホルンカの森で狩れるモンスターのドロップする素材を使って、中々の性能の細剣が作れた筈だ」

 「ホルンカの森……」

 

 地名は知っていた。

 あそこで白い毛並みの猪を狩ったこともある。

 

 「しっかり強化していれば、よほど不運じゃない限り3層までは充分通じるはずさ」

 「3層……。それを知ってるってことは、ディアベルはベータテスターだったのか」

 「………いや、情報屋から知ったんだ。『鼠のアルゴ』、彼女はベータテスターみたいだしね­」

 「……情報屋。そういう手合いもいるのか」

 

 シヴァは頭の中にメモしておく。

 『鼠のアルゴ』のことは知らなかったが、早くも異名がつくほどの人物ならこの先知り合うこともあるかもあいれない。

 もちろん、生き延びてこそだが。 

 

 「すまない、助かった。この恩は、いつか必ず返そう」

 「……んん? 何終わった気でいるんだい。俺は今手隙なんだ、手伝うよ」

 「………ありがたい、が。さすがにそこまで世話してもらうのは」

 「何、恩の押し売りさ。もし俺が攻略組のリーダーになったら、存分に助けてくれればいい」

 

 そう笑いながら言うと、ディアベルはシヴァを追い越して先に歩き始めた。

 

 「じゃあ行こうか。いざ、ホルンカだ」

 

 

 

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