スターウォーズ クローン・ウォーズ とある戦術ドロイドの一生…? 作:トッキー
コルサントでは、あちこちで泥沼の戦いが行われていた。
突如として現れた分離主義者の大艦隊によって、首都としての機能は著しく低下し、同時に銀河全域まで広がった戦線でもその余波が広がっていたのだ。コルサントではそこかしこで、両軍のブラスターやファイターの光線が都市を傷付け、そして大砲によってその残骸すらも粉々にしていた。
またその余波が、コルサントの住民に直接襲い掛かっていた。
攻撃で傷つき倒れてきた建物に端等も破壊され、その下いた住民は為す術もなく押し潰されるか、階下に落下していったのだ。
その様子を、掩蔽壕に避難した住民達は絶望の目で見ていた。
それもその筈、クローン大戦も終盤になりかかり、いくらクローン軍が優勢と報じられていても、彼等の心底には『本当に勝っているのか?』『いつになったら戦争は終わるんだ?』
という、疑いと厭戦の思いしか無かったのだ。
そしてそれを裏付けるかのようにこの攻撃が行われている。この事実が彼等をより一層絶望に追いやっていたのだ。
だが突如として、恐るべきバトル・ドロイドの軍勢が撤退し始めた。艦隊司令部等の軍事施設は、もう少しで占領が完了するという段階まで行っているのに関わらずである。
その事に住民達は最初困惑していたが、撤退しているという事実を知った瞬間、歓喜の声がアチラコチラで噴出した。
『やはり我々が勝っているというのは事実だったのだ』、と。
しかし、それを忘れさせる報せが、コルサント中に知れ渡った。
――――――パルパティーン議長が誘拐された。
<インヴィジブル・ハンド>の尖塔内では、若きジェダイ、銀河共和国最高議長、そして両手を切り落され、2本のライトセーバーを首元に当てられた分離主義勢力のリーダーがいた。
そしてその分離主義勢力のリーダーであるドゥークー伯爵は、まるで信じられないものを見たかのように膝をつき、呆然とした表情で若きジェダイと銀河共和国最高議長を見ていた。
たった今、目の前のジェダイに自身の両手を切り落とされた。そして最高議長である彼は何と言ったか。
・・
「殺せ」と――――確かにそう言った。
そんな馬鹿な、それでは話が違う。
ドゥークー伯爵は心の中でそう叫んでいた。
だが目の前にいるジェダイは、怒りと悲しみ、そして戸惑いの表情を浮かべ自分を見つめている。
そして何かしらきっかけ―――最高議長の命令等があれば、すぐにでもこの光刃を動かし自分を殺す、そのような事が彼の目から見て取れた。
そして先程から自身の殺害を促す言葉を継いでいる。
思わず彼は叫んだ。
「議長、どうか!」
分離主義勢力のリーダーの男は懇願した。貴族としての誇りも、銀河の伝説となった勇気も、今の彼にはどれも無縁だった。
彼は命乞いをしたのである。それまで彼が殺した多くの犠牲者と同様に。
「議長、どうか!私を罰しないと約束した筈ですぞ!我々は取引した!お願いです!助けて下さい!!」
だがその答えに、パルパティーンは極寒の宇宙と同じ冷たさで答えた
「私を開放したら、という約束だった。私の友人達を殺す為の囮に使うという約束ではなかった筈だ」
これを聞いた瞬間、ドゥークーは全て作戦通りに進んでいると気付いたのだった。シディアス卿の作戦通りに。そしてこれはジェダイの罠だった。だがそれは囮であり、獲物ではなかった。
「アナキン…彼を殺せ」
そしてパルパティーンは静かに命令した 。
ドゥークーは目の前にいる若きジェダイを改めて見た。すると先程の意志の強さは鳴りを潜めつつあり、代わりに別の感情が出てきている事に気付いた。
それは戸惑いであった。
アナキン・スカイウォーカーはドゥークーを見下ろしていた。そこにいるのはシス卿ではなく、敗北し、打ちひしがれた哀れなる老人であった。
その姿を見ていると、突然自身の心の中に目には見えないながらも、光刃を動かせないといわんばかりの強い力を感じた。
もしこのライトセーバーを動かせば、戻れない。まだやり直せると、動かしてはならないと言わんばかりの見えない力を、彼は感じたのである。
「それは―――」
パルパティーンはいきなり吠えた。
「殺せ!今すぐ殺すのだ!」
突然の変貌に思わずアナキンは、動きを止めパルパティーンに目をやった。同時にドゥークー伯爵も最高議長を見たが、彼の目を見て、分離主義勢力のリーダーは今回ばかりでなく何年も―――それこそクローン戦争が始まる前から自分を騙していた事を悟ったのだった。
そして自分は後継者等ではなく、単なる駒だったという事も。
アナキンは先程からの声に気付いた。それは命令ではなく―――長年待ち望んでいた事に対する許可だった。だが彼は心の何処かで見えない一線によって、辛うじて踏み止まっている。このまま命令されたら、やがてドゥークー伯爵を殺す。
そこに一種の緊迫の状態が生まれたが、それを破ったのは一発の<インヴィジブル・ハンド>への流れ弾だった。
流れ弾が命中した影響で、艦全体が大きく揺れた。ドゥークー伯爵はその隙をついて、青い稲妻によって更に焼かれる手首の痛みを無視し、若きジェダイを壁まで押し飛ばした。のである
そしてフォースの力を借り、エレベーターの入口付近まで一気に飛び上がった。
壁に激突したアナキン・スカイウォーカーは、手負いの分離主義勢力のリーダーがエレベーターシャフトに飛び込むのを、見ているしかいなかった。
なんとか体を起こした彼は、急いで最高議長の拘束を解こうとした。だが議長は褒めるのではなく、非難の視線と言葉を彼に浴びせた。
「何故戸惑ったのだ、アナキン!」
「彼は…丸腰でした」
「だが、あ奴をみすみす見逃すなど!!」
「僕は!!」
アナキンは議長の言葉を遮り、自分に言い聞かせるように大きく叫んだ。
「僕は、ジェダイです!!」
そして最高議長は、そんな彼の慟哭を聞いて幾分落ち着いた様子を見せ、そして彼にこう言った。
「ああ、そうだな。君はジェダイだ。今の行動は、ある意味で正しいかもしれん。だが覚えておきなさい。その甘さが、いつか命取りになるぞ」
「オビ=ワンやマスター・ヨーダにいつも言われています…」
「…そうか。さぁ、グズグズしておれん。ここから脱出せねば」
「ええ。少し待って下さい」
最高議長はエレベーターシャフトにまっすぐに向かったが、アナキンは瓦礫に埋もれたオビ=ワンを助けようとした。
「その者など放っておけ、アナキン。もう時間がない」
「彼を置いていくなんて出来ません」
「アナキン、彼はもう助からん。置いていくのだ」
「彼とは―――」
彼はそこで一瞬口淀んだが、次の瞬間ハッキリとした口調で言い放った。
「生きるも死ぬも一緒です」
エレベーターシャフトを飛び下りたドゥークーは、なんとか扉が開いている階を見つけ、そこに飛び込んだ。
時折攻撃を受け、揺れる船体の振動を感じ取り分離主義勢力のリーダーは、この戦艦がもう保たない事を悟った。そして脱出ポッドに向かおうとしたが、それが廊下が所々瓦礫に埋まり、何処にあるのか分からなかった。
だがちょうどのその時、一人のニモイディアンの技術士官が、彼の目に飛び込んできた。
「待て…」
「何だ、今忙し…ドゥ、ドゥークー伯爵!何故こんな所に!?それにその怪我は」
「ポッドは、何処だ…」
「は、は?」
「脱出ポッドは、何処だ!」
「は、は、はい!す、す、すぐ、すぐそこです!!」
「そうか、ありがとう」
技術士官は、ドゥークーのあまりの剣幕に恐れ慄き、すぐに必要な者がある場所を教えた。
用済みになった彼は、フォースによっていきなり壁際へ飛ばされ、激突し首があらぬ方向へ曲がった。分離主義勢力の総旗艦の技術士官にまで上り詰め、艦を正常な状態に戻そうとした一人のニモイディアンは、あっさりとその人生に幕を下ろしたのである。
ドゥークー伯爵は脱出ポッドに入り、痛む腕を叩きつけるようにして制御装置を起動させ、傷だらけの戦艦から最寄りの味方の戦艦に退避していった。
一隻のルクレハルク級バトルシップに収容されたドゥークーは、艦長と面会した。
「ドゥークー伯爵、ご無事ですか!」
「私の事はいい。戦況はどうなっている」
「アー、どうにも我が軍が不利かと…」
「分かった…。急ぎ退却しろ。潮時だ。この艦は、この座標の惑星に退避させろ無線封鎖も忘れるな」
「ラジャー、ラジャー」
収容されたドゥークーは、ドロイドの艦長に退却と一切の無線の封鎖を命じ、ある惑星にハイパージャンプした。
用意されたバクタ・タンクに浸かりながら、分離主義勢力のリーダーは改めて思い知ることになった。
私のマスターどちらの味方だった?
スカイウォーカーの目には怒りと戸惑いが見て取れたが、それだけでも十分な答えだ。
裏切りこそがシスの道なのだ。
…………あ……………あ。
俺…は…?
な……何、で…艦長、や…部下…達が…目、の前に……?
そ…う…だ、いきなり…目の……前で…爆…発が。
「ア…ア…」
「し、司令官!しっかりして下さい!!」
「ナ…何、ガ…アッタ…?」
「対空砲火を突破した共和国軍のファイター群が、丁度艦首シールドが消失していた時に左舷に魚雷攻撃を行って、その後に被弾した敵ファイターの一機が第一艦橋に突っ込んだんです!その時の余波で、この第二艦橋にも被害が出て…。今<エグゼクション>が代わりに指揮を取っています!!」
シールドの…消失だと!?
「ソ…ソ、ンナ、報告…無カッタ…ジャ、ナイカ…」
「す、すみません。魚雷が直撃する間際にシールド発生装置が不具合を起こして…」
「ヒ、被害ハ…」
「ハ、ハイ。左舷フラック・ガン群の内、4基が破壊され使用不能。残る8基の内、3基が調整に手間取っています。左舷対空砲も2割が破壊されました。あと…」
「ドウ…シ、タ?」
「その、第一艦橋は大破しました。そこにいた副長以下全ての乗組員が…」
なんとか体を起こし、艦首の方に目をやると、第一艦橋までの通路の3分の1余りがまるでそこだけ削ぎ落とされたかのように、綺麗サッパリ無くなってしまっていた。
艦橋に関しては言わずもがなだ。
そして艦橋の窓に写った自分の姿は酷いものだった。
左目の光受像器は破壊され、両腕もデュラスチール製の軽金装甲が所々破壊され、中の配線等が火花を上げているのが見え、体中は煤だらけだった。そのあまりの酷さから、よく破壊されなかったと考えていた。俺はすぐに艦長に艦隊に必要と思われる命令を下した。
「全、艦隊ニ…連絡。『本…艦ハ、健在、ナリ』。繰リ、返ス!『本艦、ハ…健在、ナリ』!!」
「ハ、ハイ!!全艦隊に告ぐ!全艦隊に告ぐ!『本艦<ワーカーズ・ボエジ>は健在なり』!!繰り返す、『本艦<ワーカーズ・ボエジ>は健在なり』!!」
体の一部が壊れている自らが発する声は、流暢とは言えないが、なんとか命令する事は出来た。
そして艦長から命令が下されたのを聞いた俺は、すぐに自分の気になっていた事を思い出していた。
「キ…旗艦、ハ…」
「は?」
「旗艦…ハ、<イン…ヴィ…ジ、ブル・ハン…ド>ハ、ドウ…ナッタ?」
「し、司令官!あまり無理をなさらずに…」
「旗…艦ハ、ドウ、シ…タ…!」
「は、はい。先程グリーヴァス将軍の艦に、ジェダイが率いるファイターの一個中隊が向かいました。対空砲火でクローンのファイターは全滅しましたが、ジェダイは将軍の艦のドックに突入した模様です」
突入しただと!?マズイ!!
「ソレ、ハ…ドレ、位前、ダ!」
「え!?ええっと、確か30分位前かと思います。…あ、それと先程グリーヴァス将軍の私室付近から、脱出ポッドの射出が確認されました。中の生体反応から見て、恐らくドゥークー伯爵ではないかと…」
伯爵が生きている!?何故?もしや…俺というイレギュラーの影響なのか?
「ソ、ノ…ポッドハ、ド、ウシタ」
「ハイ。付近を航行していた味方の戦艦が拾い、隙を突いて急いでハイパードライブで脱出しました。ですが、ハイパースペースに入ってから、その艦とは連絡が一切取れなくなりました…」
その報告を聞いた俺は軋む体を何とか動かし、慌てながらも、遥か下にいた将軍の艦を目で追った。将軍の旗艦<インヴィジブル・ハンド>は右舷から黒煙を吐き、所々から爆発を起こし、そして艦中央部からは戦艦を航行する為に必要なコードや、機器が見て取れる事が出来た。
そして次々に脱出ポッドが射出されていくのを見て、俺はここが潮時だと判断し命令を飛ばした。
「チ…地上、部隊及ビ、航空…部隊ニ…連絡。『全軍…直チニ、撤退…セヨ』。繰リ…返ス!『全軍、直チニ…撤退、セヨ』」
「ラジャー、ラジャー。全軍に通達する!『直チニ撤退セヨ』!!繰り返す、『全軍直チニ撤退セヨ』!!」
「司令官、撤退出来ずに孤立している部隊はどうすれば?」
「撤退…出来、ソウニ、ナイ部隊ハ、地下ニ…潜リ、今…カラ送ル、座標デ、時ガ…来ルマデ、待機…スルヨウ、命令シロ」
「ラジャー、ラジャー!」
「司令官!敵クルーザーが一隻、接近してきます。艦名は<ホープ>です。向こうが通信を求めてきていますが、どうしますか?」
「ツ、繋ゲロ」
少しして<ホープ>と通信が繋がった。そこには将軍でもジェダイでも、またクローンの通信士官でもなく、今では珍しくなったフェーズI・クローン・トルーパー・アーマーに身を包んだ人物が出てきた。
艦長や他の部下達は少し身構えたが、俺は気にせずに通信を行った。
・・・
「司令官、作戦は成功しました。我々はこの後どうすれば?」
「今…艦隊ニ、戦線ヲ…抉ジ開ケ、サセル。オ前達ハ…退却スル、艦隊ト共ニ…撤退シロ」
「ラジャー、ラジャー!」
そして<ホープ>の連絡したトルーパーはその装甲服を脱ぎ、その正体を表した。そこにはクローン・トルーパーではなく、薄暗い塗装を施されたBXシリーズ・ドロイド・コマンドーがいた。
実は彼等は艦隊ドックを強襲する時に、どさくさに紛れ敵戦艦を拿捕するよう命令を受けていたのである。そして指揮官であるTOKK‐1に作戦成功の報告をしたのである。
報告を受けたTOKK‐1は艦長に新たな命令を下した。
「『レベル・フリート』ヤ他ノ艦隊ニ…邪魔、シテイル戦艦ヤ…ソノ破片ヲ、吹キ飛バシテ…戦線ヲ抉ジ開ケ、サセル。全軍退却…ダ!!」
一体の戦術ドロイドから発せられた命令は、すぐさまコルサントに展開していたすべてのドロイド軍に伝達された。
官庁街や軍事施設を攻撃していた無慈悲な戦闘ドロイド達は、突如捕虜を伴って上陸艇に乗って艦隊に引き返していった。退却する事が出来なかったドロイドは、ワイヤーを使って地下の集合場所に潜り、互いに休止状態になるのを確認し、時が来るのを待つ事にした。
宇宙では、独立星系連合宇宙軍の残存艦隊の全火力を使い、退却路を確保しようとした。当然銀河共和国の艦隊も、なんとか展開している艦艇を、その敵艦隊の進路に展開させていた。
一隻のクルーザー<マス・ラムダー>が、果敢にも敵艦に相打ち覚悟で戦いを挑もうとしていた。目の前にはルクレハルク級バトル・シップがおり、見る見る間にその距離を縮めていった。その場にいた誰もが両艦とも宇宙の藻屑となると想像していたが、次の瞬間にはその想像を裏切られる事になった。
なんと衝突し爆発した瞬間、そこにはルクレハルク級バトルシップがほぼ無傷といっても良い形でそこに存在していたのである。
この事実に、共和国艦隊やクローンの戦闘機部隊が狼狽した。そしてその隙を突き、次々に独立星系連合宇宙軍の残存艦隊は、ハイパースペースにジャンプしていった。殿を務めた戦艦<エグゼクション>がハイパースペースにジャンプした時、そこには両軍の戦艦や戦闘機、そして地上では破壊されたバトル・ドロイドやクローン兵の死体、両軍の戦車やドロイドを運んでいた上陸艇等が存在していた。
コルサントのアチラコチラで黒煙を上げながら燃えている様々な残骸を、市民だけでなく議員達も目にしていた。
表面上は手にした勝利。しかしその代償は決して小さなものではなく、コルサントの住民達に新たな不安を抱かせるものとなっていたのである。
―――――こうしてコルサントの戦いを幕を閉じた。双方に多大な損害を与えて。