スターウォーズ クローン・ウォーズ とある戦術ドロイドの一生…? 作:トッキー
「司令官、予定通り部隊を展開させました。奇襲は成功です」
「ヨシ。ナラバ、我々ハ陽動ノ為、コノママ敵艦隊ニ攻撃ヲ加エ続ケロ。アト、ハイエナ・ボマーヲ呼ビ戻シ、次ノ出撃ニ備エサセロ」
「ラジャー、ラジャー」
「私ハ少シ席ヲ外ス。艦長、暫クココハ任セタゾ」
「ラ、ラジャー、ラジャー…」
TO-KK1は艦長に命令を発した後、シディアス卿に連絡を取る事にした。事前に「攻撃を開始したら、すぐに連絡せよ」と、シディアス卿が自らこの戦術ドロイドに命令を下してきたからであった。
分離主義勢力が「パルパティーン」を「誘拐」する為には、攻撃の手際やタイミング等を合わせなければならない。
その為に、この通信が必要不可欠となっているのである。そしてそれは、混乱している今だからこそ出来る事でもあったのだ。
本当ならば、この通信自体行われるはずのものではなかった。
しかし、さも「銀河共和国元老院最高議長パルパティーン」が「分離主義勢力に突如襲われ、誘拐された」ように見せる為に、自分達の部下にそれらしい場所に配置させ、その「誘拐される」場面を見せる必要があったのだ。例えそれが敵味方双方に、甚大な被害が出たとしてもである。
そもそも今回のこの戦いは、シディアス卿が一時的にコルサントを離れる事に重きを置いていた。このシスの暗黒卿は、この攻撃で自身を誘拐させる事によって、自分の足跡を追おうとするジェダイの試みを阻止する事を目的としていた。
しかしその事に気付いている人物は、誰一人としていない。—————この戦術ドロイドの「TO-KK1」という存在を除いて。
ここでもし、この通信のタイミング等がずれ敵味方のどちらかに傍受されてしまった場合、共和国だけでなく分離主義勢力側でも「パルパティーン」が「シス」だという事が露見してしまう。
いくら通信をこの艦だけに限ったとしても、油断は禁物であった。
そうなると色々と厄介な事になり、終わりが見え始めたクローン戦争はもっと泥沼の戦いを余儀なくされてしまう。
そしてそれはシディアス卿だけでなく、戦術ドロイドの彼の自身の破滅をも招きひく事に成りかねなかい。
戦術ドロイドであった彼は、そんな事は絶対に避けたい事柄であった。彼はシディアス卿への忠誠等は、最初から持ちあわせてはいないのである。
これはあくまでも彼自分の保身の為であり、その為に今まで表舞台から出ようとは思っていなかった。
彼がそんな事を思っている内に、通信室に着いてしまった。
グリーヴァス将軍は、「パルパティーン元老院最高議長」を誘拐する為に上陸部隊と共に地上の方に向かった。
通信室に入り、通信システムを起動させた。それはすぐに繋がったが、ホログラムに浮かび上がったその姿は、映画通りの黒いローブに全身を覆った薄気味悪い姿であった。
そしてその姿は、グリーヴァスのような直接的な暴力を彷彿させるものとは違い、見た者の心に忍び込み、恐怖を植えつけるかのような空気を纏っていた。
「閣下。コルサントへノ侵攻、無事ニ開始シマシタ。マタ上陸部隊モ、上陸地点ニ侵攻サセテイマス。第二波、第三波モ間モナク出発シマス。全テハ、予定通リデス」
『よしよし、よくやったぞTO-KK1。お主はこのまま、共和国艦隊に攻撃を加え続けろ。上陸部隊も絶えず送り続けるのだ。後続の艦隊も…お主の好きなように扱って構わん』
「感謝致シマス、閣下」
『これで、調子に乗っている共和国の奴らに目に物見せてくれるわ…。ふふふ、奴らの驚く顔が目に浮かぶわい』
シディアス卿はこれから起こるであろう全ての事を、楽しみ、そして待ち望んでいるかのように邪悪な笑みを浮かべていた。
それは、見た者全てに破滅や死を予感させるものでもあった。
『そろそろ共和国の奴らに気付かれるかもしれん。これで通信を終える。よいか?くれぐれも奴らを侮るでないぞ』
「イエス、マイロード」
そうして通信を切り、TO-KK1は再び艦橋に戻っていった。
そこでは、丁度新たに現れた共和国艦隊によって戦況が苛烈に成りつつある戦場と、艦長が慌てている姿があった。彼はその様子を見て、ある意味で間一髪だったのではないかと感じた。
何故かというと、艦長を務めるバトル・ドロイドは、突然目と鼻の先に現れた敵艦隊に慌てふためき、上官の戦術ドロイドを必死に探していたのである。
目の前にいるドロイドが、如何に現時点での臨時の指揮官とはいえ仮にも艦長なのだ。目の前で上官が慌てふためいていると、部下にも、そして戦況に大きく関係してくる。
彼はこの戦いが終わったら、改めて目の前のドロイドのプログラムを再編する必要がある事を感じていた。
そんな思いを余所に、艦長は救世主を見つけるが如くTO-KK1に気付いた。
「あ、司令官!丁度いい所に!新たに敵の増援が現れました!!どうすれば!?」
「慌テルナ。マダコチラガ数デ勝ッテイル。手近ナ敵カラ、叩キノメスンダ。全艦撃チ方始メ!」
「ラジャー、ラジャー!!」
今彼等が率いている艦隊は、旗艦<ワーカージ・ボエズ>を始めとして、プロヴィデンス級キャリアー/デストロイヤーが8隻、ミューニフィセント級スター・フリゲートが6隻、レキュザント級ライト・デストロイヤーが1隻、ルクレハルク級バトルシップが4隻の、計20隻というかなりの大所帯となってしまった。
後続の艦隊に、物は試しとこちらの編成に加わるよう伝達してみたら、嬉々として編成に加わってきたのである。
何故かと各艦の艦長に聞いてみたところ、『グリーヴァス将軍の護衛に加わるより遥かにマシ』との事であった。この通信を聞いて、余程グリーヴァス将軍は嫌われているらしい事が分かった。
それは仕方ないといえるかもしれない。原作でも、部下のバトル・ドロイドを情け容赦なく破壊している事が多々あったのだ。
またコルサント奇襲作戦の作戦会議でも、戦術ドロイド一体を破壊している。さすがにこれについては、ドゥークー伯爵やシディアス卿から苦言が溢れていたが、将軍は一向に気にする様子等微塵も見せなかった。
しかしそれでも、全艦が何故か自然と<ワーカーズ・ボエジ>を中心に、まるで取り囲むかのような配置に付いていたのである。
彼はそのような命令は出していなかったが、何時の間にか<ワーカーズ・ボエジ>を護衛する形となってしまっている。
(一体何故…?)
そんな事を考えていた時、敵艦隊の新たな増援が幾つも出現し、艦隊に対し攻撃を仕掛けてきた。
彼は、自分のそんな些細な疑問を思考の片隅に追いやり、一先ず最も接近してきた共和国艦隊に攻撃を開始するよう命令を下した。
俺はユニット98。
自分の乗艦———プロヴィデンス級キャリアー/デストロイヤー<エクゼクション>———の艦長を任されている、一介のOOMパイロット・バトル・ドロイドだ。
俺は今、コルサントへの奇襲攻撃に参加している。その際、司令官でもある「あの」戦術ドロイドのTO-KK1から、編成に加わるよう命令が伝達されてきた。
俺はそれを聞いた瞬間反射的に返答したが、安心すると同時に、心が満たされるような何とも言えない気持ちになった。
ドロイドの俺が「心が満たされる」なんて可笑しいかもしれない。しかし今の気持ちを当て嵌めるなら、それがピッタリであると思う。
これが「嬉しい」というものなのかもしれない。
これがグリーヴァス将軍であったなら、不満しか口にしなかっただろう。
俺は以前とある作戦に参加していた時にヘマをしてしまい、危うくグリーヴァス将軍に完全に破壊されてしまう所だった。
しかし、あの戦術ドロイドで将軍でもあるTO-KK1が寸での所で間に入り、俺にチャンスを与えてくれた。
俺はあの人によって救われた。
今、あの人が乗っている戦艦を取り囲むように護衛している戦艦の艦長達も、大半が似たような経歴を持っている。
そんな事を考えていた時、目の前に敵の増援が出現し、艦隊に攻撃を仕掛けてきた。
旗艦<ワーカーズ・ボエジ>からは『本艦隊に向かってくる敵を撃破せよ』としか命令がなかった。普通なら細かい内容をもう少し聞く等するのだが、今の自分にはそれだけで十分過ぎるような命令だった。
すぐに目の前の敵に全力射撃を行い、敵艦に相当量の火力を浴びせた。
その間に次々と敵の増援が現れてきたが、そんな事は気にならなかった。
自分がドロイドだというのもある。しかし、それとは別な思いが生まれていたのも事実であった。
俺はすぐに配下のドロイド達に命令を下した。
今度は、あの人を助ける番だ。