スターウォーズ クローン・ウォーズ とある戦術ドロイドの一生…? 作:トッキー
ドゴオォォォォォォ……………ン!!!!
低く、そして鈍い爆発音が響き、艦隊司令部を大きく揺るがせた。
そしてその衝撃で殆どの司令部要員は大きく揺さぶられ、何人かは転倒し、軽傷を負う事となっていた。
爆発が起き、その周囲が破壊されていく音が聞こえてくる度に、ここにもコンソール等といった機械類や人員に何かしらの被害が及んでいた。
「クッ…!軍曹、通信はまだ直らんのか!?」
「も、もう少し待って下さい!あと少しで通信が回復します!!」
「とにかく急げ!ゲート正面まで敵が向かってきてるんだ!!早くしないとここに奴等が雪崩込んでくるぞ!!」
「イ、イエス・サー!!」
そんなやり取りの最中でも、絶えず砲撃の余波が彼らを襲っていた。
司令部要員の一人であるマッキマン将軍は、外の様子を映し出すカメラに目をやった。
そこには何者にも恐れる事を知らない、大量生産された無慈悲なる殺戮兵器が次々とこちらに向かってくるのが見えていた。
司令部内では全ての隔壁を封鎖・溶接し、敵の侵入を防いでいた。
シールドも展開させていたが、敵の相次ぐ攻撃によって出力が大幅に低下してしまい、本来のその意味をあまり成さなくなってしまっている。
対空砲も全力射撃を行なっているが、敵のファイターの数が膨大であるのと、最初の攻撃でその三分の一が破壊されている為に、その成果は思った程挙がっていないのが現状であった。
迎撃の為のファイターも出撃させていたが、敵のその数に圧倒され、半数以上が撃墜されてしまっている。今飛んでいるファイターは、必死で逃げ惑っていると言っても過言ではなかった。
唯一の救いといっては可笑しいが、上陸艇の着陸している場所が司令部の真正面だったという事、そしてMTT(大型兵員トランスポート)が無かった事だ。
普通なら司令部の屋根辺りに強行着陸し、そこをこじ開けて侵入してくるか、若しくはもう破壊されている箇所からそのまま入り込んでくるかである。しかし、ここを襲っている敵部隊は、態々真正面から向かってきているのだ。
MTTも極めて頑強な前面装甲を有しており、盾代わりと同時に、しばしば強行突破する際の先兵として使用されていた。MTTを建物や壁に激突させ、敵の施設内にバトル・ドロイドの部隊を直接投入する事が出来る。ナブーの戦いでもこの戦略が実践され、奇襲によって多くの成果を挙げる事が出来た。
しかし広大な平原等とは違い、今回のような都市部での狭い道では身動きが取れない為に馬鹿でかいMTTを使用しないというのは分かるが、何故上陸艇を態々真正面に着陸させているのか?
これを可笑しいと思った人間は彼の他に数人いたが、その考えを嘲笑うかのように敵の発砲が見えていた。
防衛箇所にいるクローン部隊は、幾度も前線の後退を余儀なくされていた。
そしてもう既に敵が最終防衛ラインまで接近してきているのだ。今度前線を突破されたら、敵が司令部内に雪崩込んでくる事は明白であった。
すぐに彼は残存部隊に命令を下した。
「全部隊に告ぐ、全部隊に告ぐ!!敵は真正面から向かってきている!直ちに敵部隊を撃退しろ!!決して侵入を許すな、何としてでも入り口付近で止めるんだ!!ここを抑えられたら我々だけじゃない、共和国軍全てがお終いだぞ!!」
『ですが、将軍。敵は強大で、しかも次々に部隊を送り込んでいます!!我々だけでは、とても防ぎきれません!!』
「分かっている!先程増援を呼んだ。だから、もう少しだけ持ち堪えてくれ!!」
『分かりました、急いで下さい!!もう目の前まで敵が…おおっと!!』
通信の最中に銃撃を受けた彼は、何とか体を捻りつつ、銃撃してきたドロイドを機能停止にまで逆に追い込むのが見えた。
「大丈夫か!!」
『ええ、自分は大丈夫です。ですが急いで下さい!いよいよ賑やかになってきた!!』
「分かった!!」
通信を終えた彼は、僅かばかりの嘘に心を痛めた。
しかし、そうでもしなければ前線にいる彼らの心は折れていたかもしれない。
彼は通信装置と格闘している部下に眼を向けた。
「状況は?」
「待って下さい、もう少しで…やった、通信が回復しました!!」
彼は急いで通信装置に向き直り、銀河系に展開している全ての部隊に命令を送った。
「この通信を聞く全ての者に命令する!コルサントが分離主義者の攻撃を受けている!!作戦展開中の部隊を除き、これを聞いている全部隊は至急コルサントへ帰還せよ!!繰り返す、コルサント分離主義者の奇襲を受けた!!作戦展開中の部隊を除き、残りの部隊は至急コルサントへ帰還せよ!!これは訓練ではない!!」
そして再びカメラに目をやると、侵攻してきた敵に反撃を始めたクローン部隊と防衛用として配備されていたAT-TE、そして大量のバトル・ドロイドとそれに交じったATTが多数映し出されていた。
次の瞬間に映し出されたものは、双方のブラスターやレーザー・キャノンが入り乱れるものだったが、それも流れ弾にカメラが破壊され、映らなくなってしまった。
彼と、そこにいた全ての人員は、爆発音とそれにより生じた振動を感じながら、思わず扉に目をやっていた。
「チクショウ…」
傷だらけの一人のクローン兵がそう呟くと、それに答えるかのように無数のバトル・ドロイドからのレーザーが降り注ぎ、すぐに彼とその兄弟達は、ブラスターによる返答を行った。
クローンの駐留部隊は、防衛ラインを幾度も突破され、艦隊司令部の正面ゲートに最終防衛ラインを張る事態にまでなってしまっていたのだ。
上等兵の彼は、残っている兄弟達を集め、ここに陣を貼っていた。
「いいか皆、もうすぐ増援が来る!それまで、何としても食い止めるんだ!!共和国だけじゃない、他の兄弟達の為にも頑張るんだ!!」
「「「「「「サー・イエス・サー!!!!」」」」」」
彼等の士気は軒昂だった。しかしそれでも上陸艇は次々と着陸して部隊を送り込み、そして吐き出されたバトル・ドロイド達は何の躊躇もなく前進してきている。
その姿は、見た者にある種の恐怖を感じさせた。
またコルサントの空では、分離主義勢力の戦闘機や爆撃機、上陸艇が所狭と乱舞し、その間をARC-170スターファイターや、それに混じって一般的にジェダイ・スターファイターと呼ばれる、イータ2・アクティス級ライト・インターセプターが飛んでいた。
今の所、空でも分離主義勢力側が有利であった。
しかしジェダイが操るファイターは、その卓越した技量によって難なく敵を回避し、逆に敵を撃墜するという離れ技を見せている。
だがクローン達はそうは行かなかった。いくら専門的な技術を持ってしても、現時点での物量の差を埋めるまでには至らなかったのだ。
今も数機のARC-170スターファイターが分離主義勢力のファイターに追い掛け回されていた。
それぞれのスターファイターの船尾砲手が、必死に背面に搭載された後方キャノンを操作し敵を撃ち落そうとしていたが、無数のヴァルチャー・ドロイドはそれを嘲笑うかのように避け、スターファイターを撃ち落としていった。
撃ち落された一機がこちらに突っ込んでくるのが見え、慌てて彼等は隠れようとしたが運良く———ファイターの乗員達にとっては運悪く———敵の進撃路に墜落した。
敵に向かって墜ちた事と、墜ちた時の爆発の衝撃によって幾許か敵を後退させる事が出来たのは、全く以て皮肉でしかない。
しかし、その残骸ですら乗り越え向かってくるバトル・ドロイド達を見て、思わず背中に流れる冷たい汗を感じた。
「第三、第五小隊は左より回りこめ!残りは敵の正面に当たれ!!」
「誰か、弾!弾持ってないか!!」
「手榴弾、手榴弾だ!!」
「うぅ…誰…か…誰か、助け、て…くれ…」
「衛生兵、衛生兵ーーーー!!」
「ファイターは一体何をやってるんだ!?」
共和国艦隊ドックでは、阿鼻叫喚の相を表していた。
修理途中であった艦船は、本来その羽根を休める筈が奇襲によって止めを刺され、また無事だった艦も不意を突かれた為、半数近くが沈んでしまっている。
そして、新たな作戦の為に多くの物資を集められていた事も災いした。
他のハイエナ・ボマー同様に、空を乱舞している無慈悲な分離主義勢力の爆撃機――プロトン爆弾を増設された爆弾倉に満載した、ヘヴィ・ミサイル・プラットフォーム・ドロイド・ガンシップ――は、プロトン爆弾の多くをこれ等兵士達の必要な物の真上に、正確に投下していった。
そして、それが爆発した時—————更なる地獄を作り出したのである。
数多くの武器・弾薬が誘爆を起こし、その余波は近辺に存在していたシャトルや、クローン兵、そして後続の分離主義勢力の爆撃機を襲ったのである。
その爆発で生まれた余波は、穴埋めの為に集められた新兵達に容赦なく襲い掛かった。彼等の多くは戦場を知らないまま、この世から消え去ってしまったのだ。
「ペレズ!!マーロー!!」
それを目の当たりにした、同じ分隊のジャスティーは悲鳴のような叫び声を上げた。そこには、今しがた吹き飛ばされた二人の壊れたヘルメットや装甲服の一部が転がっていた。
彼と今吹き飛ばされた二人は、生まれ故郷のカミーノから常に一緒だった。それが目の前で爆風と共に消えてしまったのだ。
彼はその事が信じられず、彼はレーザーが飛び交う中で茫然自失となってしまった。
「そん…な、そ、んな…。い、今、め…目の、前に…い、いた…のに…」
「何やってるんだ、馬鹿!!」
そんな彼を一人のクローン兵が物陰に引きずり込んだ。次の瞬間、彼らが立っていた場所を爆風が襲った。
「しっかりしろ、新兵(ルーキー)!もうお前の兄弟はいない!いいか、もういないんだ!!ボサッとしてないで、お前が何をすべきか考えろ!!そして行動に移せ!!お前が行動しなけりゃ、他の兄弟も殺られちまうんだぞ!!分かったら早く動け!!」
今しがた自分を物陰に引きずり込んだクローン兵——―階級は軍曹だった―——が、自分に向かって叫ぶのを、未だに呆然としたまま聞いていた。
しかし今まで呆然としていた彼は、叱咤された事によって何とかブラスター・ライフルを手に、迫り来るバトル・ドロイド達を迎え撃ち始めた。
そのすぐ上空を、傷だらけになりながらも数隻の生き残っていた戦艦が、必死に対空砲火を作りつつ、この場からの脱出を試みていたのが確認出来た。
本来ならば、市街のすぐ傍で戦艦が発砲する事はあり得ない。戦艦の分厚い装甲をも破壊する砲弾が、もしたった一発でも市街のいずれかに当たれば、それだけで大惨事だからだ。
しかし、この時は市街でも――戦艦程の火力ではないが―——発砲が相次いでいた。その多くはクローン駐屯部隊とバトル・ドロイドの大群が吐き出したものであった。
それを尻目に、衛星軌道上に退避しようとした艦艇を目敏く察知したハイエナ・ボマーやヴァルチャー・ドロイドの一群が、その生き残りに止めを刺そうと殺到した。
それを艦艇群が必死に阻止しようと、対空砲火の嵐を形成した。
しかし、この時一機のボマーがその対空砲火によって片翼を破壊され、プロトン爆弾を投弾しないままに、錐揉み状態で一隻のヴェネター級スター・デストロイヤーの二つある艦橋に突っ込み―――爆発した。
航行を開始し、ボマーを迎撃したスター・デストロイヤーは自分が仕える主人と、自らを操船するのに必要な機器を失い、その進路をつい今しがた出航したドックへと変針した。
そうして、先程の爆発とは比べ物にならない混沌と破滅を作り出していったのである。
落ちてきたその巨艦によって、敵の部隊や上陸艇だけでなく、生き残ったクローン部隊にもその余波が襲いかかったのだ。
他の艦艇は何とか脱出したが、出航する前より傷だらけになってしまい、到底戦力として数えられるものとは思えなかった。
しかし他に、奇跡的に無傷に近い数隻の艦艇が脱出しようとしていた。
そこにいたクローン部隊の殆どが、「また殺られる」と信じて疑わなかっていなかった。
だがなんと、その数隻は傷を負わないままコルサント上空へと脱出する事に成功したのである。
これを見ていた何人かのクローン兵は、思わず雄叫びを上げていた。
偶然かもしれないが、今しがた脱出したその艦艇群の旗艦を務めるスター・デストロイヤーの名前は、<ホープ>であった。
それを見た部隊の生き残りの多くはこう思った。
—————俺達の「ホープ」(希望)になってくれ、と。
しかし、それを全て忘れさせるかのような一報が共和国軍の随所に伝達された。
——————————パルパティーン議長が誘拐された。